日清、「カップ麺」輸送を自動運転化へ?食品大手、いよいよ無人化に本腰

荷主企業が相次ぎ実証に参加



出典:T2プレスリリース

幹線道路における自動運転トラック実用化に向けた取り組みに、荷主側も本腰を入れ始めた。日清食品は2025年6月、自動運転トラック開発を手掛けるT2とともに関東と関西を結ぶ高速道路の一部区間で幹線輸送の実証を開始する。

物流効率化に向け味の素などが出資するF-LINEもT2との取り組みを加速しており、業界の本気度が伝わってくるようだ。


さまざまなプレーヤーが本腰を入れ始めた自動運転トラック。実用化に向けた取り組みの最前線に迫る。

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■荷主の動向

日清食品が実証に参加

日清食品とT2は、レベル4の自動運転トラックによる幹線輸送サービスを2027年に開始することを目指す。今回の実証では、軽量貨物輸送で一般的に使用されている12型パレットを用いてトラックの容積を最大限に活用する輸送モデルが、自動運転という新たな環境下でも機能するかを検証する。

ドライバーが常時乗車するレベル2で走行し、茨城県取手市の日清食品関東工場から大阪府摂津市の自社倉庫へ、その後滋賀県栗東市の日清食品関西工場から神奈川県横浜市にある委託倉庫まで即席麺を配送する。

貨物を積載した幹線輸送における自動運転の走行ルートと走行所要時間、渋滞や気象など事前に想定した条件における走行オペレーションの有効性、積載した即席麺への影響などを検証する予定だ。


積載する即席麺がカップ麺か袋麺かなどは不明だが、カップ麺の自動運転配送が定常化する日がやってくるのか注目だ。

出典:T2プレスリリース

F-LINEも定期運行を見据え実証中

一方、F-LINEは一足早く実証に乗り出した。F-LINEは、味の素、ハウス食品グループ本社、カゴメ、日清製粉ウェルナ、日清オイリオグループの食品メーカー 5 社が出資し、既存物流事業を統合して設立した物流事業会社だ。

F-LINEは2025年2月、加工食品物流では初となるT2との自動運転実証に参加した。F-LINEの川崎物流センターから西宮物流センター間、八尾物流センターから三郷物流センター間を、T2の大型10トントラックに味の素やハウス食品の製品を積載してレベル2走行を行った。

4月にもカゴメやハウス食品の製品を載せ、想定する自動運転区間を延長して走行実証を行っている。引き続き第4回目まで実証を計画しており、その結果をもとに月1回の定期運行化などを判断する方針としている。


【参考】F-LINEの取り組みについては「「味の素」の自動運転輸送、始まる。裏方に三井物産系ベンチャー」も参照。

「味の素」の自動運転輸送、始まる。裏方に三井物産系ベンチャー

パナソニックグループや大王製紙も

荷主関係ではこのほか、パナソニックグループや大王製紙などもT2の取り組みに参加している。パナソニックグループで物流中核機能を持つパナソニックオペレーショナルエクセレンスは三井倉庫ロジスティクス、T2とともに、レベル4自動運転トラックを活用する上で効果的な輸送オペレーションの構築に向け2025年1月に実証を開始した。

新東名高速道路の沼津~豊田間、及び伊勢湾岸自動車道・新名神高速道路を加えた沼津~草津間において、レベル4自動運転に向けた高速道路上でのレベル2実証をはじめ、貨物を積載した幹線輸送における自動運転の走行ルート及び走行リードタイム検証、想定したオペレーションパターンの有効性などについて検証を進めている。

大王製紙は2025年3月、T2が設定した高速道路上の自動運転区間におけるレベル2走行を通じ、大王製紙品を取り扱う関東エリアの倉庫から関西エリアの倉庫まで商品を往復輸送する実証を行った。荷主企業として自動運転トラックの輸送オペレーションを検討・評価するとしている。

東邦ホールディングスや江崎グリコ、キユーピーも

医薬品卸売事業を手掛ける東邦ホールディングスは、T2との戦略的パートナーシップを2025年1月に発表した。自動運転トラックによる医薬品輸送全般の研究開発・実証を進め、東邦ホールディングスの医薬品物流センター間における長距離輸送の自動運転化の可能性の研究を進めていく方針で、2025年7月から実証を行う計画としている。

江崎グリコ、キユーピー、キユーソー流通システムも2025年7月から、関東・関西間の高速道路の一部区間で実証を開始することを発表している。

東京に本社があるキユーピーと大阪に本社を構えるグリコが、両社得意とするドレッシング類とポッキーなどの菓子類を関東・関西間で協力して輸送することで、効率的な長距離自動運転トラックの検証、運行が可能になるとし、想定したオペレーションパターンの有効性検証などを進めていくという。

住友化学と住化ロジスティクスも2025年7月から関東・関西間の高速道路一部区間でT2とともに自動運転実証を開始する。千葉県袖ケ浦市の住友化学千葉事業所から大阪地区の中継拠点まで住友化学の化学品などを積載し、貨物を積載した幹線輸送における自動運転の走行ルートおよび走行リードタイムや想定したオペレーションパターンの有効性、カーボンニュートラル燃料を用いた輸送の有効性などについて検証を行う。

オペレーションの見定めが肝要

こうした取り組みは今後も増加していくことが予想される。T2が現在開発を進めているのは高速道路におけるレベル4自動運転で、物流におけるファーストマイル・ミドルマイルを担う無人化技術として期待が寄せられている。

一方、荷主サイドとしては、倉庫や事業所から高速道路に至るまでの道のりを含め、どのようなオペレーションが効果的かを見定めなければならない。

仮に高速道路におけるレベル4が実現しても、倉庫などから高速道路までは人間のドライバーによる手動運転が必要となる。一般道における無人化はまだまだ先になることが想定されるため、有人・無人運転を上手に切り替えて効率的・効果的な配送を実現する必要があるのだ。

例えば、レベル2兼レベル4トラックを運用し、高速道路直結の物流拠点でドライバーが降り、トラックのみ無人で目的地に走行させる。降りたドライバーは、復路を無人走行してきたトラックに乗り、倉庫などに手動運転する――といった手法が考えられる。

往路・復路のトラックがタイミングよく行き来すれば、効果的なオペレーションを実現できるかもしれない。

また、トラックそのものを切り替える方法も考えられる。倉庫から高速道路直結の物流拠点まで手動運転トラックが配送し、拠点で自動運転トラックに荷物を乗せ換え、無人走行で別の物流拠点まで配送する方法だ。

荷物を乗せ換える手間が増えるものの、物流拠点で復路車両を待つ待機時間が必要なくなるほか、手動運転部分を担うトラックは既存車両をそのまま使用できるなど、自由度が増す。言わば、T2が高速道路限定の輸送サービスを直営し、高速道路区間の配送のみをT2に委託する形だ。

パレットなどを規格化して輸送効率を高めるとともに、無人フォークリフトなどを駆使して荷物の積み込み・積み下ろしも無人化することでパフォーマンスを高めることができる。

高速道路における無人輸送ビジネスには、自動運転トラックだけではなく、高速道路直結の物流拠点や荷物の規格化、無人の積み付け・積み下ろしシステムなども求められる。自動運転実証とともに、ロジスティクス全般に取り組みが広がっていくことに期待したいところだ。

■T2の取り組み

Preferred Networksの技術で自動運転を実現

T2は、AI開発を手掛けるPreferred Networksの技術協力のもと、三井物産が2022年8月に設立した企業だ。

ドライバー不足が深刻化する物流・運送業界において、自動運転トラックによる幹線輸送サービスで課題解決を図っていく構えだ。

2023年に三菱地所と資本業務提携を結び、レベル4自動運転トラックによる日本の幹線輸送と、発着地点となる次世代基幹物流施設を融合させたシームレスな輸送の実現を目指す方針を発表した。

三菱地所は、京都府城陽市東部丘陵地青谷先行整備地区で高速道路 IC に直結した次世代基幹物流施設の開発計画を2022年に始動しているほか、宮城県仙台市太白区郡山北目地区でも2024年に同計画を始動している。

レベル4自動運転トラックをはじめとした次世代モビリティを受け入れ可能な物流施設となる見込みで、京都は2026年竣工予定、仙台は2030年代前半の竣工を目指している。

【参考】T2と三菱地所の取り組みについては「T2と三菱地所、レベル4自動運転トラックの物流網構築へ」も参照。

T2と三菱地所、レベル4自動運転トラックの物流網構築へ

優先レーン予定区間で未介入の走行に成功

T2は2022年11月に高速道路における公道実証に着手した。当初は乗用車を用いていたが、2023年4月には自動運転トラックの自律走行に成功したと発表している。

2024年5月には、「自動運転車優先レーン」に位置付けられている新東名高速道路の駿河湾沼津SA~浜松SA間でレベル2による公道実証を開始し、翌6月には同区間116キロにおいてドライバー未介入で連続自動走行することに成功している。

同年7月には、佐川急便とセイノーホールディングスとともに、日本初となるレベル4自動運転トラック幹線物流輸送実現に向けた公道実証を10月に開始する計画を発表した。

実証は、東京・大阪間の高速道路一部区間で実施する方針で、東名高速道路、新東名高速道路、伊勢湾岸道、名神高速道路、新名神高速道路、京滋バイパスにまたがるという。

同年8月には、中日本高速道路が建設を進める新東名新秦野IC~新御殿場ICで行われた「高速道路の自動運転時代に向けた路車協調実証実験」にKDDIとともに参加し、自動運転トラックの緊急停止時における遠隔監視・指示の実証に成功したと発表した。

同年9月には、国土交通省の「高速道路における路車協調による自動運転トラックの実証実験」の実験車両協力者に採択されたと発表した。自動運転車優先レーンを活用し、路車協調の情報提供有効性の検証などを行うという。

【参考】自動運転車優先レーンについては「高速道に「自動運転車優先レーン」!深夜時間帯に限定、新東名で」も参照。

高速道に「自動運転車優先レーン」!深夜時間帯に限定、新東名で

自動運転トラック輸送実現会議を設立

2024年11月には、レベル4自動運転トラックによる幹線輸送サービス実現に向け「自動運転トラック輸送実現会議 ~L4 Truck Operation Conference~」を設立したと発表した。

同サービス実現にはさまざまな業界のプレイヤー間での共創が不可欠となるため、多くの参加を募り、参加企業間での議論を活発化するとともに各省庁と連携しながら議論内容の対外発信も進めていく構えだ。

佐川急便、セイノーホールディングス、日本貨物鉄道、日本郵便、福山通運、三井住友海上火災保険、三井倉庫ロジスティクス、三菱地所、KDDI、T2が設立時のメンバーに名を連ねる。2025年2月時点で、大林組、日本通運、三菱ふそうトラック・バス、名鉄NX運輸も加わり、14社体制となっている。

■【まとめ】業界の取り組みは進む

業界関係では、ヤマト運輸がダイナミックマッププラットフォーム、日野自動車の子会社らとともに自動運転車優先レーン区間で2025年2月に実証に着手している。自動運転トラックは先進モビリティ製を使用しており、T2の取り組みとは別路線を歩んでいる。

このほか、ティアフォーも自動運転トラック開発に着手している。独driveblocksの技術により、高精度地図を必要としない認識技術の導入を目指している。

2025年4月には、経済産業省の補助事業のもと自動運転トラック開発事業を完了したと発表している。いすゞや三菱ふそうトラック・バス、ヤマトマルチチャーターなどが協力している。

自動運転開発を手掛けるT2、先進モビリティ、ティアフォーの3陣営のもと、業界はどのように動いていくのか。今後の各社の動向に注目だ。

【参考】関連記事としては「自動運転の目的・メリット」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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