自動運転の「目的」は?5つの導入メリット

「ドライバーレス」がさまざまな交通課題を解決に導く



テクノロジー企業やスタートアップを中心に開発競争が激化の一途をたどる自動運転技術。早期実現に向けた各社の取り組みにより、その技術は日進月歩の進化を遂げている。







一方、世界各国の政府も足並みを揃えるかのように法整備やインフラ整備など対応に注力している。官民一体となった取り組みがスタンダード化しているのだ。

民間企業がビジネスを見越し開発に力を入れるのは当然の成り行きだが、各国が社会実装に力を入れる目的は何なのか。自動運転は、ビジネス性のみならず公益に資する大きなメリットを内在しているようだ。

この記事では、自動運転のメリットを大きく5項目に分けて解説していく。

■交通事故の防止

自動運転技術の社会実装による最大のメリットは、交通事故の減少にあるといっても過言ではない。開発企業の多くが、この交通安全の向上を目的に掲げている。

自動運転システムは、基本的に交通ルールを順守して走行するようにプログラムされている。制限速度や一時停止といったルールをはじめ、交差点や横断歩道周辺の歩行者らの動向を予測し、必要に応じて減速・停止するなど車両を安全に制御する。自動運転車は道路交通における模範ドライバーなのだ。

自動運転技術導入による交通事故抑制効果はまだ厳密に算定できないが、2020年中に発生した交通事故30万9,178件のうち、原付以上運転者の第1当事者(最初に交通事故に関与した事故当事者のうち、最も過失の重い者)による法令違反交通事故件数は実に28万8,995件に上る。約93%の交通事故で第1当事者に何らかの法令違反があった計算だ。

法令違反の内訳を見ると、安全不確認やわき見運転、漫然運転といったドライバーの過失が大半を占めている。こうした手動運転車がすべて自動運転車に置き換われば、理論上はこの93%の交通事故の発生を抑止することができる。

また、国土交通省所管の「ASV推進検討会」調査は、第1当事者が自動運転車であれば、第2当事者がノーマル車両であっても死傷事故の約9割を削減可能と試算している。

自動運転システムが高精度かつ正確に機能することが前提となるが、自動運転車の社会実装が交通事故を抑制することはほぼ間違いないと言えるだろう。

【参考】自動運転車の事故抑制効果については「自動運転の事故率は?抑止効果は9割以上?」も参照。

■渋滞の緩和

自動運転車は、2つの観点において渋滞を緩和する効果を併せ持つ。渋滞は、道路の輸送キャパシティを超えたときに発生することは言うまでもない。例えば一般道においては、交差点の青信号で通過可能な台数以上の車両が流入すれば信号待ちの車列ができる。流入過多が続けば車列は長くなり、渋滞を形成する。

高速道路においても、特定のインターチェンジ出口に車両が殺到すれば渋滞が発生する。また、交通事故や工事などで一時的な規制が敷かれると、許容キャパシティが減少するため相対的に流入量が増加することとなり、渋滞が発生することがある。

さらに、こうした渋滞車列の後方では、渋滞をより悪化させるメカニズムも働いている。先行車両が減速した際の追走車両のブレーキだ。一般的に先行車両からコンマ数秒遅れて踏むブレーキは、先行車両の減速量よりもわずかに大きくなることが多い。これが後続車両にどんどん蓄積されていくと、最終的には一時停止する段階に達するのだ。

車間距離の兼ね合いも大きく、混雑しかけている状況では車間距離を多めに取り、前走車の減速分を吸収するような運転を心掛けたい。

自動運転車に話を戻すが、自動運転技術が普及すれば、バスやタクシーといった公共交通の利便性や費用対効果が高まり、自家用車離れを促進する。合わせてMaaSを実装することで交通量そのものが減少し、渋滞が起こりにくくなるといった効果を望むことができる。

また、自動運転車はV2V(車車間通信)によって前方車両などの挙動に合わせてリアルタイムで自車を制御することができるほか、V2I(路車間通信)によって走行先の信号情報や渋滞状況などをいち早くつかみ、先々を見通した運転を実行することができる。

つまり、無駄にアクセルやブレーキを踏まず安定した走行を行うことができるのだ。こうした運転が渋滞時において緩衝材の役目を果たし、先行車両の減速分を吸収して渋滞緩和に貢献するのだ。

【参考】自動運転による渋滞緩和効果については「自動運転車が渋滞を緩和させるワケ 米ミシガン大学の研究「たった1台でも軽減」」も参照。

■運転手不足への対応

自動運転開発において、交通安全の向上とともに開発目的に多く据えられているのがドライバー不足への対応だ。移動サービスにおいてはバスやタクシー、物流面ではトラックドライバーの人材不足が慢性化している。

特に物流面では、EC利用者の増加が宅配需要の増加を招き、ラストワンマイルを中心にドライバー不足が顕著となり、喫緊の課題となっている。

こうした各場面に無人運転を可能にする自動運転車を導入することで、ドライバー不足を解消することができる。移動サービスでは自動運転バスや自動運転タクシーが代表格となる。物流関連では、主に高速道路を走行するミドルマイル向けやラストワンマイルを担う宅配ロボットなどが各シーンに合わせて無人で配送を行う。将来的には、需要に合わせて人もモノも運ぶ貨客混載の自動運転サービスなども登場しそうだ。

こうした自動運転におけるドライバーレス化は、さらなるメリットを生み出す。ずばり、人件費の抑制だ。各事業におけるドライバーの人件費率は思いのほか高く、自動運転化により人件費をカットすることで経営安定化を図ることができるほか、コスト低下分をサービスに転嫁すれば、運賃などを約10分の1程度に下げられるといった調査結果もある。

経営に余裕が生まれれば、赤字が前提となっている地方の公共交通も事業継続性を見出すことが可能になる。物流面では、配送料金の低下がいっそうの宅配需要を生み出し、小売形態などにも変革をもたらす可能性がありそうだ。

実用化の初期段階においてはイニシャルコストや維持管理費用の増加が見込まれるが、こうした費用は普及とともに減少する。かつて、パソコンやインターネットの普及で事務作業の負担が減少したのと同様、「運転」というタスクを最新技術が担うイメージだ。

■運転からの解放

自動運転技術による無人化が自家用車に波及すると、従来ドライバーが担っていた「運転」というタスクを自動運転システムが担うこととなり、ドライバーは運転操作から解放される。

移動に付きものだった運転操作を行う必要がなくなったドライバーは、移動時間を自由に過ごすことが可能になる。条件付きで自動運転が可能となるレベル3ではスマートフォンの操作などに限られるが、レベル4以降では食事やゲーム、仕事、場合によっては睡眠など、運転操作以外にドライバーに許される「セカンダリアクティビティ」の幅は大きく広がる。

自家用車におけるレベル4の多くはハンドルなど従来の手動制御装置を備え、運転を楽しみたいときは手動で、疲れたときなどは自動運転で――といった具合に、手動と自動運転が両立するものと思われる。ドライビングの楽しさを損なうことなく、快適で安全な自動運転ライフを送ることができそうだ。

なお、従来運転に費やしていた時間を可処分時間と捉え、車内向けのエンターテインメントサービスなどさまざまなビジネスが発展する可能性が高い。自動運転の進化・普及とともにこうしたサービスも拡大し、移動時間をより有効なものへと変えていきそうだ。

■災害への対応

台風や地震などの自然災害が毎年列島を襲う災害大国・日本。有事の際、迅速な避難や救助活動、状況確認などが求められることはもはや言うまでもない。

災害発生時の避難活動は急を要する場面も多く、行政などの公助が行き届かないことも決して少なくない。自助、共助による避難が第一に求められることになるが、高齢者など移動に困難を伴う者も多く、地域、自治体としてフォローしていく対策は必要不可欠となる。

この対策における一手段が自動運転車の活用だ。有事の際でも人員を割くことなくさまざまな人の移動を補うことができるほか、すべての自動運転車をフリート管理し統制を図ることで、一時的に過密状態となっている道路を避けながら各避難所へ効率的に差配することができる。

車両タイプだけでなく、自動運転車いすなどのパーソナルモビリティも活躍の機会が増えそうだ。

人の移動以外にも物資の輸送が可能なほか、カメラなどのセンサーを活用して道路の路面状況をはじめとした被災状況の把握を行うこともできる。

また、人が立ち入ることが困難な場所にも向かうことができるため、がれきを乗り越えて走行することができるロボットや、赤外線センサーなど特殊センサーを搭載したロボットの実用化にも期待が持たれる。

■【まとめ】公益性がバックボーンとなり民間開発を促進

公益面では、交通事故の抑制や渋滞緩和、公共交通の維持・発展、ひいては災害対策などにも自動運転技術が貢献することがわかった。各国、各自治体が自動運転技術の積極導入を図る目的は、こうした効果が背景にありそうだ。

ビジネス主体の民間サイドにおいても、こうした公益性が将来の確かな需要につながるため、開発意欲を刺激される点もありそうだ。

自動運転開発・導入の目的はさまざまだが、人やモノの移動に変革をもたらす新たな産業として成長を遂げていくことは間違いない。今後の動向に引き続き注目したい。

【参考】関連記事としては「自動運転とは?技術や開発企業、法律など徹底まとめ!」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)









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