日野自動車と自動運転(2023年最新版)

パートナーシップ拡大、ポンチョが大活躍



トラックやバスを主力とする商用車メーカーの日野。トヨタの連結子会社として日本の商用車市場をけん引する1社だ。人の移動を担うバスや物流を担うトラックは自動運転化への需要が高く、乗用車メーカー同様開発動向が気になるところだ。







この記事では2023年時点における日野の自動運転関連の取り組みについて解説していく。

<記事の更新情報>
・2023年7月14日:自動運転路面清掃車の実証について追記
・2022年5月26日:記事初稿を公開

■日野の自動運転開発

日野は、交通事故死傷者ゼロに向け完全自動運転を目指し技術開発を推進しており、ニーズや社会インフラの状況などを踏まえながら段階的に技術の実用化を図っていく構えだ。

バスや大型トラックなどは、車体の大きさから必要となる検知範囲が広く、大型車でも走行可能な経路情報なども必要となる。車線維持の横制御も車線幅に余裕がないためより高精度なシステムが求められ、素早い動きが難しいためより遠方の情報が必要で、早め早めの判断も必要となる。バスにおいては、乗客の存在を考慮した判断も必要とされるなど、自動運転開発のハードルは高い。

現在開発中のシステムは、全車速において車間距離を維持・支援するACCをはじめ、前走車と協調して車間距離を維持支援するCACC、車線維持走行を支援するLKA、構内における物損事故対策やドライバーの負荷軽減に貢献するGPSルート誘導、自車・周辺の車両や歩行者などとの接触事故対策に貢献する周辺監視システム、ドライバー異常を検知し車両を安全に停止させるシステムなどだ。

こうした技術を高度化し、レベル2からレベル3レベル4へとステップアップを図っていく方針だ。

■自動運転関連のトピック
いすずとITSシステムや高度運転支援技術を共同開発

高度運転支援技術やITS技術の開発分野では、いすゞと2016年から共同開発を進めている。自動運転システムの早期実用化に向けたベースとなるITSシステムや高度運転支援技術を早期普及に向けた協調領域と位置付け、開発を加速している。

2018年には、共同開発の成果として視界支援や路車間通信、加減速支援、プラットフォーム正着制御の4つの技術を発表しており、同年度以降に順次製品に搭載し実用化を図っていく計画としている。

高速道路の隊列走行技術

国が推進する高速道路における隊列走行技術確立に向けた実証実験にも積極的に関わっている。通信技術で先行車の制御情報を受信して車間距離を一定に保つ協調型車間距離維持支援システム(Cooperative Adaptive Cruise Control/CACC)や、道路の白線を認識してステアリングを自動制御する車線維持支援システム(Lane Keep Assist/LKA)などの技術を確立し、後続車有人、後続車無人の隊列走行実用化を目指している。

2020年には、「2021年までに実用的な後続車有人隊列走行システムの商業化を目指す」といた政府目標に対し、日野、いすゞ、三菱ふそうトラック・バス、UDトラックスの大型4社が共同で行ってきた実証実験で得た知見や技術をもとに、ACCとLKAを装着した商品展開を行っていくことを発表している。

2021年2月には、後続車の運転席を無人とした状態で隊列走行実証にも成功している。

各技術は、単体の車両に搭載されることでレベル2のADASとなり、周囲の車両と協調することで後続車有人隊列走行を実現することができる。技術が高度化すれば後続車無人が可能となり、レベル3~レベル4の実現につながっていく。

政府は「2025年度以降の高速道路におけるレベル4自動運転トラックの実現」を次の目標に掲げている。自家用車におけるレベル4が先になる見込みだが、インフラ協調システムなどを最大限活用することで、特別装備の商用車が一足早くレベル4を達成する可能性もある。今後の開発動向に要注目だ。

Volkswagen Truck & Busと長期協力関係構築へ
式典に臨む日野自動車の下義生代表取締役社長(写真左)とVWトラック&バスのアンドレアス・レンシュラー最高経営責任者(写真右)=出典:Volkswagen

日野は2018年、Volkswagen Truck & Bus(現TRATON)と戦略的協力関係構築の枠組みに関する合意書に調印したと発表した。未来に向けた物流や輸送、技術、調達など幅広い分野で長期的視点に立った協力関係を模索していく。

技術領域には、既存の内燃パワートレーンをはじめ、ハイブリッドや電動パワートレーン、コネクティビティー、自動運転システムなどが含まれるという。協力関係を構築することで革新的な技術開発を加速し、グローバルなマーケットポジションを高める狙いだ。

2019年には、グローバル調達におけるシナジー効果の最大化を目的に合弁を立ち上げている。

【参考】Volkswagen Truck & Busとの提携については「日野とVWが戦略的協力関係構築へ合意 「自動運転×商用車」の将来性も見据え」も参照。

大林組と自動運転ダンプの実証に着手

日野と建設大手の大林組は2020年11月、大型ダンプトラックによるレベル4実証をダム建設現場の川上ダムで開始した。

大林組は省人化や生産性の向上を目的に、建機の自動化や自動建機群を一元管理するプラットフォームの構築や建設現場のロボティクスコンストラクションを推進している。

実証では、夜間の建設現場で稼働する現場内の搬送ダンプに自動運転車を1台導入し、有人ダンプと自動運転車が混在する交通下における影響や全車自動運転車の運用などを検討していく。

ベース車両は大型トラック「日野プロフィア」で、約1.3キロのルートを最高時速30キロで走行する。車両の走行位置や経路はGNSS(全球測位衛星システム)データやカメラ、LiDARで把握し、前走車がいる場合はACCで車間距離を保ち、人や障害物などを検知すると停止するという。

ウーブン・アルファとAMP活用に向けた検討を開始
出典:ウーブン・プラネット・グループ プレスリリース

トヨタ傘下のウーブン・アルファといすゞ、日野は2021年6月、自動地図生成プラットフォーム「AMP」活用に向けた検討を進めていくことで合意したと発表した。

AMPはウーブン・アルファが開発を進めるプラットフォームで、車載カメラや衛星画像などを活用することで効率的に高精度3次元地図の生成・更新を可能とするクラウドソース型のオープンなプラットフォームだ。

3社は、高精度な地図を使った自動運転や先進運転支援技術による安全な物流の実現を目指し、AMPの小型トラックを中心とした領域への活用を検討していく。

【参考】ウーブン・アルファとの提携については「自動地図生成のAMP、小型トラックなどへ活用検討 トヨタ・いすゞ・日野がタッグ!」も参照。

上下分離方式のEV開発へREEとタッグ
出典:日野自動車プレスリリース

日野は2021年4月、EV(電気自動車)の車体プラットフォーム開発などを手掛けるイスラエルのREE Automotiveと次世代商用モビリティ開発に向け業務提携契約を締結したと発表した。

両社が構想する次世代商用モビリティはモジュール構造で、REEのEVプラットフォームを採用した動力部分(シャーシモジュール)と、用途に応じて最適に設計された荷室空間(サービスモジュール)で構成される。サービスモジュールはさまざまなニーズに対応可能で、独立したユニットとして物やサービスを届けることができる。シャーシは自動運転にも対応可能という。

両社は2022年度までにハードのプロトタイプを開発し、並行してビジネスモデルの検討・実証実験を進めていく計画としている。

【参考】REEとの協業については「日野とREE、上下分離型の自動運転コンセプトを具現化へ!」も参照。

商用領域のCASE対応で5社が連携

いすゞは2021年3月、CASE対応を加速するため日野とトヨタと商用事業において新たな協業に取り組むことに合意したと発表した。いすゞと日野の商用事業基盤にトヨタのCASE技術を組み合わせ、CASEの社会実装・普及に向けたスピードを加速させる構えだ。

具体的には、小型トラック領域を中心にEVやFCV(燃料電池自動車)、自動運転技術、電子プラットフォームの開発に共同で取り組む。また、各社のコネクテッド基盤をつなぐ商用版コネクテッド基盤を構築するとともに、さまざまな物流ソリューションの提供にも取り組んでいく。

協業推進に向け、新会社「Commercial Japan Partnership Technologies」を設立し、商用事業プロジェクト「Commercial Japan Partnership」のもと商用車におけるCASE技術やサービスの企画を行っていく方針としている。Commercial Japan Partnershipには、同年7月にスズキとダイハツも参画し、5社体制となっている。

MONETと資本業務提携

日野は2019年、いすゞとスズキ、スバル、ダイハツ、マツダとともにMONET Technologiesとそれぞれ資本・業務提携に関する契約を締結したと発表した。

各社の車両やモビリティサービスから得られるデータをMONETのプラットフォームに連携できるようになり、自動運転社会に向けた高度なMaaSプラットフォームの構築を目指す構えだ。

資本関係ではこのほか、総合物流企業のトランコムと同年資本業務提携を交わしている。2022年3月には、三菱UFJ銀行と日野子会社のNEXT Logistics Japanと出資・パートナー契約を結び、物流と金融の事業価値向上を目指すとしている。

自動運転ポンチョが実証で活躍
実証実験でベース車両として使用される日野ポンチョ=出典:東京都(※クリックorタップすると拡大できます)

国内各地の自動運転バス実証では、日野ポンチョをベースにした自動運転車の採用率が高い。群馬大学(日本モビリティ)や先進モビリティなどが同車をベースとした自動運転バスの開発を進めており、BOLDLYなどが実証に活用している。

BOLDLYが活用しているモデルは、LiDARや車内外に設置された12基のカメラRTK GPS、磁気マーカーなどの各種センサーを備えており、信号協調や正着制御なども可能にしている。

これまでに、多摩ニュータウンにおける自動運転バス実証や空港における自動運転バス実証、江ノ島で自動運転バス公道実証実験、中型自動運転バスのプレ実証、埼玉県川口市における自動運転バス実証などで自動運転ポンチョが導入されており、実績は豊富だ。

近々では、2022年1月に実施された「東京都西新宿エリアの公道で路線バスの営業運行による自動運転バスの実証実験」でも使用され、ドライバーが必要に応じて手動介入するレベル2で営業運行を行ったようだ。

計画に遅れが生じる可能性があるが、2022年には小型EVバス「日野ポンチョ Z EV」を発売予定としている。次世代向けの新たなプラットフォームを活用した自動運転車も、そう遠くない将来実現しそうだ。

【参考】東京都における営業運行実証については「東京都の自動運転事業、4年目に突入!選定企業、どう変化?」も参照。

中部空港で自動運転路面清掃車の実証

日野自動車は2023年5月、中部国際空港の滑走路や誘導路を含む空港制限区域内において、路面清掃車を自動運転させる実証実験をスタートさせることを発表した。この実証実験は、加藤製作所と新明工業とともに取り組むものだ。実証期間は約3週間と明らかにされた。

プレスリリースによると、実証実験では自動運転レベル2(部分運転自動化)に対応した小型トラック「日野デュトロ」をベースにした車両が使用され、路面清掃を自動運転で行うことにより、制限区域内作業の安全性・生産性の向上や、労働力不足といった課題を解決することを目指すものとされている。

車両の走行速度は時速20キロ以下で、GNSSデータやLiDAR、赤外線カメラを使うことで車両の走行位置や経路などを把握する。センサーで障害物を検知した場合、衝突を回避するために車両が自動で停止する仕組みとなっている。

自動運転路面清掃車の外観=出典:日野自動車プレスリリース
■【まとめ】広範なパートナーシップでCASE時代に対応

国内外におけるパートナーシップのもと、自動運転をはじめとしたCASE対応に取り組んでいるようだ。2022年3月に発覚したエンジン認証に関する不正の影響は計り知れないが、自動運転化の需要が高い移動や輸送を担う商用車メーカーとして早期信頼回復を図り、次世代モビリティに向けた取り組みを再加速してもらいたいところだ。

(初稿公開日:2022年5月26日/最終更新日:2023年7月14日)

【参考】関連記事としては「自動運転、歴史と現状」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)









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