自動運転トラックの開発企業やメリットまとめ

レベル2の普及開始、レベル4は2020年に実用化





出典:Suning Holdings Groupプレスリリース

インターネット通販の増加などを背景に、深刻なドライバー不足に悩まされている物流業界。国土交通省の調査によると、2017年度のトラック宅配便取扱個数は42億1200万個にのぼるという。取扱個数は今後も右肩上がりが続きそうで、ドライバーの負担増が懸念されるところだ。

ドライバーを取り巻く環境は過酷の一途をたどっているが、その救世主として期待されているのが自動運転技術だ。ADAS(先進運転支援システム)導入による運転負担軽減や隊列走行、自動運転レベル4(高度運転自動化)による無人化で現状を打破し、新しい物流システムの早期構築が求められている。







物流業に変革をもたらす自動運転技術の現状はどのようなものか、開発状況を調べてみた。

■自動運転トラックの利点、メリット
ドライバー不足の解消:隊列走行は新東名高速で2020年度にも導入

EC(電子商取引)業者の台頭によりインターネット通販が激増し、輸送需要は増加の一途をたどっている。また、近年は収まりつつあるもののEC業者間の「送料無料」サービス合戦のしわ寄せも物流業界を直撃し、ドライバーを取り巻く環境は悪化するばかりだ。当然ドライバー不足は深刻化・慢性化し、物流業界は変革を迫られている。

その解決策の一つが、自動運転技術を活用した輸送だ。無人運転の導入はドライバー不足の解消に直結する。現在実証が進められている後続車無人隊列走行も、先頭を走る一人のドライバーにより大量の輸送が可能となる技術で、2020年度に新東名高速道路で実現する予定だ。

安全性の向上:トラック自動運転レベル2は2019年中に拡大

大きく重たいトラックの事故は大事故につながる可能性が高く、安全性の確保が最重要課題となっているが、自動運転技術を導入することで事故の防止や被害拡大を図ることができる。

トラックの自動運転はサイズや重量からより高度な技術を要するため一般乗用車より導入が遅れているが、自動運転レベル2(部分運転自動化)に相当するADAS技術を搭載したトラックが2019年中に本格導入される見込みで、事故抑制効果に期待が持たれている。

配送の効率化:トラックの稼働時間増、運行管理システムも促進

トラックを無人化することで一台当たりの稼働時間を伸ばすことができるほか、走行速度など一定の環境下で運行するため輸送時間も安定する。また、自動運転とともに車両・運行管理システムの導入も飛躍的に進むものと思われ、全体の運行管理計画なども立てやすくなる。

倉庫業の自動化なども組み合わせることで、コストの削減や業務の効率化はいっそう進むものと思われる。

環境面への貢献:排出CO2削減に効果

事業用トラックの大半はディーゼル車で、排気ガスによるCO2(二酸化炭素)などの排出により一昔前は環境への悪影響が大きく騒がれていた。近年クリーンディーゼルなど低炭素型ディーゼルトラックの比率が高まっているが、自動運転の導入で従来より燃費の良い走行が可能になるほか、自動運転と相性の良いEV(電気自動車)が導入されれば、その効果はいっそう高まるものとみられる。

■物流と自動運転、実現のロードマップは?

官民ITS構想・ロードマップ2018によると、2020年度に新東名高速道路での後続車無人隊列走行システムを技術的に実現することとしている。レーダーを用いて前方を走行する車両との車間距離を一定に保つ技術「ACC (Adaptive Cruise Control)」に加え、車車間通信でより精密な車間距離制御を行う「CACC(Cooperative Adaptive Cruise Control:協調型車間距離維持支援システム)」などが実用化される見込みだ。

その後、実証実験を積み重ね、2022年度以降に東京大阪間の高速道路における後続車両無人の隊列走行の商業化実現を目指す。また、これに先立って、2021年までにより現実的な後続車有人隊列走行システムの商業化を目指し、技術的課題や事業面での課題を総合的に検証し、運用ルールを含め整理が必要となる事項について、2018年度中に官民で具体的な議論が進められている。

自動運転レベル4以上の完全自動運転トラックについては、自家用車における自動運転システムの技術面での進展や、隊列走行トラックの実証実験の成果などを踏まえ、高速道路での完全自動運転トラックの実現を2025年以降に目指す構えだ。

■自動運転トラックの開発企業
UDトラックス:限定領域のレベル4を2020年までに実用化目指す

スウェーデンの自動車メーカーボルボグループの子会社であるUDトラックスは、次世代技術ロードマップ「Fujin & Raijin(風神雷神)—ビジョン2030」を2018年4月に発表しており、この中で、自動化の取り組みをロードマップの柱の1つとして位置づけている。

また、デジタル化をベースとしたコネクティビティ技術の開発にも力を入れており、現在、国内と一部海外で走行する約5万台のUD車両がつながっている。2025年までに15万台に増加し、運行状況から収集したデータを解析することで車両の稼働率向上や運行管理、品質・技術革新に役立てていくこととしている。

現在は、工場の構内や港湾など一定区域における安全な低速自動運転技術の開発や、高速道路での自動運転やCACC技術を用いたトラックの隊列走行技術などの開発を進めており、2018年12月には、大型トラックによるレベル4の自動運転デモンストレーションを本社敷地内で実施した。

港湾内や工場構内、物流施設、建設現場などの限定領域を想定したもので、GPS(全地球測位システム)やレーダー、LiDAR(ライダー)、車載カメラ・ソフトウェアなどの自動運転技術を駆使し、発進や停止、Uターン、旋回、バック走行などを高精度で行った。

今後、2020年までには特定用途での実用化を行い、2030年までに完全自動運転トラックと大型フル電動トラックの量産化を目指すこととしている。

【参考】UDトラックスのレベル4車両のデモについては「UDトラックス、自動運転レベル4の走行デモを披露 LiDARなどのコアセンサー搭載」も参照。

三菱ふそうトラック・バス:レベル2搭載「スーパーグレート」2019年末までに発売

ドイツの自動車会社ダイムラーの連結子会社である三菱ふそうは2018年9月、自動運転レベル2(部分運転自動化)技術を搭載した大型トラック「スーパーグレート」を2019年末までに発売すると発表している。

ダイムラーと共同開発した最新技術を活用した新機能で、メルセデス・ベンツブランドの大型トラック「アクトロス」に搭載される技術を共用しており、あらゆる速度域でブレーキ、アクセル、ステアリングを制御する「アクティブ・ドライブ・アシスト」(ADA)」、前走車を含む前方の障害物へ衝突が差し迫った場合、必要に応じて自動フルブレーキを作動する「アクティブ・ブレーキ・アシスト5(ABA5)」を搭載する。

完全自動運転については、社長兼最高経営責任者(CEO)のハートムット・シック氏が会見の席で「レベル3(条件付き運転自動化)を通り越してレベル4を目指す」ことを公言しており、ダイムラーと協調しながら2025年にも高速道路などに限定した完全自動運転トラックを実用化する構えだ。

日野自動車:VWと戦略的提携図る

トヨタグループのバス・トラック部門を担う日野は、車両安定制御システムや歩行者検知機能付き衝突被害軽減ブレーキなどをすでに実用化しており、現在はドライバー異常時対応システムやCACCなどのトラック隊列走行の技術、車線維持走行支援 (LKA:レーンキープアシスト)などの技術開発を進めている。

2018年4月に独フォルクスワーゲン(VW)グループのバス・トラック部門と戦略的協力関係の構築に向けた合意を交わし、既存の内燃パワートレーンやハイブリッド、電動パワートレーンをはじめ、コネクティビティー、自動運転システムなどを含む技術領域で、両者の強みを生かせる協力体制の構築を目指す。

いすゞ自動車:トヨタと提携解消、日野との関係に注目

プリクラッシュブレーキや車線逸脱警報、ミリ波車間ウォーニングを備えた先進視覚サポート技術「VAT」を、大型トラック「ギガ」シリーズに続きカーゴ系主要車型に標準装備しているほか、歩行者に対応した衝突被害軽減制動制御装置(AEBS)を2018年中に小型トラックELFに搭載する予定。

コネクテッド分野では、情報通信による遠隔モニタリングを実用化しており、稼動している車両の状況把握を可能としている。

2016年に、日野自動車と自動走行・高度運転支援に向けたITS技術の共同開発を行うことに合意し、視界支援、路車間通信、加減速支援、プラットホーム正着制御の4つの技術を開発しており、2018年以降順次実用化を進めていく方針だ。

一方で、2006年から続くトヨタ自動車との資本関係解消を2018年8月に発表しており、今後、トヨタ傘下の日野との協業の行く末にも注目が集まりそうだ。

ボルボトラックス:ノルウェーの鉱業企業に自動運転トラック提供

ボルボトラックが実用化しているADASには、前方車両との車間距離を自動で調整するアダプティブクルーズコントロールや、トラックが横滑りを始めた際などに車両の姿勢を立て直す姿勢制御補助装置、レーンキープサポートシステムなどがある。

自動運転に関するロードマップは不明だが、2018年9月に発表した自動運転EVトラックコンセプトカー「Vera(ベラ)」は、自動運転、電化、コネクティビティを組み合わせた運転席のない自律型トラックで、物流業務における最適なフローを提供するという。

また、2018年11月25日までに、ボルボトラックとしては初めて商用自動運転トラックの提供を行うことを発表している。

提供先はノルウェーの鉱業企業で、6台の自動運転トラックを提供し、作業を行う鉱山と近くの港を結ぶ5キロの距離を自動運転で走行するという。車両を販売するのではなく、運ぶ岩の重さに応じて料金を請求する形のようだ。

現在は安全管理のためドライバーが乗車しているが、本格運用を予定している2019年には無人による運搬サービスが実現する見込みだ。

【参考】ボルボの自動運転トラックについては「ボルボが初の自動運転トラック提供 運んだ重量に応じた課金制に 鉱山で活躍」も参照。

ダイムラー:レベル2搭載「アクトロス」量産化へ

独ダイムラーは2018年9月20日までに、自動運転レベル2の技術を搭載した大型トラック「アクトロス」の量産化を発表しており、まず欧州から受注を開始し、2019年には日本でも同じ機能を搭載した車両を販売するようだ。

また、2019年1月に米ラスベガスで開催されたCES2019のプレビューイベントで、自動運転トラックの実現に向けて今後数年間で計5億ユーロ(約620億円)を投資すると発表しており、レベル4以上の技術確立に向け開発を加速していく構えだ。

【参考】ダイムラーのアクトロスについては「ドイツ大手ダイムラー、自動運転トラックの量産化へ 自動運転レベル2の技術搭載」も参照。

ヒュンダイ:レベル3のトラック走行実証試験実施

韓国の現代自動車(ヒュンダイ)も自動運転トラックの開発に力を入れているようだ。自動運転レベル3(条件付き運転自動化)相当の技術を搭載した自動運転トラックの走行実証実験を2018年8月に実施している。最大積載量40トンの大型セミトレーラートラック「Xcient」が実験車両として用いられ、仁川などで40キロを運転手の操作なしで走破したという。

フォード:レベル4のコンセプトモデル発表

米フォードの商用車部門は、自動運転技術を搭載した電動大型トラックのコンセプト「ビジョン」を2018年9月に発表した。自動運転レベル4の技術を搭載するほか、電動化、コネクテッド化、軽量化などに関して同社の将来像を表したものという。

また、2019年1月には、商用バンやピックアップトラックの自動運転共同開発に向け独VWと提携することが報じられている。

テスラ:エンハンスト・オートパイロット搭載トラック2019年に生産開始

米EV大手のテスラは、第2世代の自動運転技術「エンハンスト・オートパイロット」を搭載したEVセミトレーラートラックを、2019年に生産開始すると発表している。自動ブレーキ、車線維持システム、車線逸脱警報システムが装備されており、1度の充電で約800キロメートルの走行が可能という。

エンバーク:自動運転トラックでアメリカ横断に成功

アメリカではスタートアップによる自動運転トラック開発も盛んなようだ。2016年創業のエンバーク・トラックス(Embark Trucks)は2018年2月、西海岸のロサンゼルスから東海岸のジャクソンビルまでの約3900キロを自動運転トラックで移動するアメリカ横断に成功しており、既に公道での試験走行の距離は16万キロを超えた。試験での実績を積み重ね、実用化に向けて着実に前進している。

開発中の車両は、運転を完全にコンピューターに代行させるのではなく、運転手の負担を軽減する仕様で、都市部では人間が運転を担い、高速道路では自動運転に切り替えるイメージだ。車両センサーからのデータを学習処理する機能などを搭載しているという。

Ike(アイク):Uber離脱組がスタートアップで開発継続

米ライドシェア大手ウーバーの元技術者らが立ち上げたスタートアップIke(アイク)が2018年10月、自動運転トラックの開発プロジェクトを明らかにしている。

ウーバーは2016年8月に自動運転トラック開発を進める米スタートアップ企業Otto(オットー)社を760億円で買収するなど同分野にも力を入れていたが、2018年8月に自動運転トラックによる貨物輸送プログラムの終了を明らかにしている。

報道によると、アイクのCEOらは、ウーバーをはじめグーグルやアップルなどで自動運転開発に携わってきた人物で、新会社ではトラックに特化した自動運転開発を進めるようだ。

京東商城やSuning:中国ではEC系が台頭し物流を自動化

ECサイトなどを手掛ける京東商城(ジンドン)は、小型の自動運転トラックを2017年に発表したのを皮切りに、2018年には大型トラックも発表。2020年に中国内の路上を走行する予定という。また、同じくEC系のSuning Holdings Groupの子会社Suning Logisticsも2018年5月に、レベル4の自動走行大型トラック「Strolling Dragon」の運転テストを完了したことを発表している。

物流の自動化を見越した戦略で、中国ではIT系の台頭が目立つようだ。

■日本でレベル2の本格導入いよいよ加速へ

日本国内では2019年に自動運転レベル2が登場する見込みで、物流分野におけるADASの導入が大きく進展しそうだ。

自動運転レベル4の実用化は、自家用車の技術が確立された後に追随することになりそうだが、UDトラックスのように、港湾内や工場構内など安全を確保しやすい限定領域において、割と早い時期に実用化される可能性が高そうだ。

一方、海外では中国内でIT・EC系の動きが目立っており、レベル4の本格実用化に向け、急先鋒に立つ勢いだ。

【参考】物流や倉庫における自動運転技術については「「自動運転×物流」の最新動向まとめ 労働力不足に光明、トラック自動化はいつ?」も参照。







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