高まり続ける物流需要を背景に、世界的にドライバー不足が深刻化している。国内では、働き方改革に伴う物流の2024年問題を背景に、事業変革への対応を迫られている真っ只中だ。
その救世主として期待されているのが自動運転技術だ。ADAS(先進運転支援システム)導入による運転負担軽減や隊列走行、自動運転レベル4(高度運転自動化)による無人化で現状を打破し、新しい物流システムの早期構築が求められている。
物流業に変革をもたらす自動運転技術の現状はどのようなものか、自動運転トラックの開発状況を調べてみた。
・2025年1月22日:いすゞ勢の新東名での実証実験やT2の取り組みなどを追記
・2024年8月30日:自動運転トラック事業をやめた企業について記載
・2019年2月6日:記事初稿を公開
記事の目次
編集部おすすめサービス<PR> | |
車業界への転職はパソナで!(転職エージェント) 転職後の平均年収837〜1,015万円!今すぐ無料登録を | |
タクシーアプリなら「GO」(配車アプリ) クーポン超充実!「実質無料」のチャンスも! | |
新車が月5,500円〜!ニコノリ(車のカーリース) 維持費コミコミ!頭金は0円でOK! | |
自動車保険 スクエアbang!(一括見積もり) 「最も安い」自動車保険を選べる!見直すなら今! |
編集部おすすめサービス<PR> | |
パソナキャリア | |
転職後の平均年収837〜1,015万円 | |
タクシーアプリ GO | |
クーポンが充実!「乗車無料」のチャンス | |
ニコノリ | |
新車が月5,500円〜!頭金0円でOK! | |
スクエアbang! | |
「最も安い」自動車保険を提案! |
■自動運転トラックの利点・メリット
まず自動運転トラックの利点・メリットを説明していく。
ドライバー不足の解消
EC(電子商取引)需要の高まりなどを背景に輸送需要は増加の一途をたどっている。近年は収まりつつあるもののEC業者間の「送料無料」サービス合戦のしわ寄せも物流業界を直撃し、ドライバーを取り巻く環境は悪化するばかりだ。
働き方改革に伴う物流の2024年問題を背景に、物流業界は深刻化するドライバー不足への対策・変革を迫られている。
その解決策の1つが、自動運転技術を活用した輸送だ。無人運転の導入はドライバー不足の解消に直結する。長距離トラックの場合、多くはレベル3や手動走行併用のレベル4で、例えば高速道路のみ自動運転を可能にするといった形で社会実装が進むものと思われる。
現在実証が進められている後続車無人隊列走行も、先頭を走る1人のドライバーにより大量の輸送が可能となる技術として、早期実現に期待が寄せられている。
安全性の向上
大きく重たいトラックの事故は大事故につながる可能性が高く、安全性の確保が最重要課題となっているが、自動運転技術を導入することで事故の防止や被害拡大を図ることができる。
トラックにおける自動運転は、そのサイズや重量からより高度な技術を要するため一般乗用車より導入が遅れているが、自動運転レベル2(部分運転自動化)に相当するADAS技術を搭載したトラックの市場化が始まり、事故抑制効果に期待が持たれている。
また、後続車有人隊列走行を実現するため、定速走行・車間距離制御装置(ACC)と車線維持支援装置(LKA)を組み合わせた技術開発・商品化も進んでいるようだ。
配送の効率化
トラックを無人化することで1台当たりの稼働時間を伸ばすことができるほか、走行速度など一定の環境下で運行するため輸送時間も安定する。また、自動運転とともに車両・運行管理システムの導入も飛躍的に進むものと思われ、全体の運行管理計画なども立てやすくなる。
倉庫業の自動化なども組み合わせることで、コストの削減や業務の効率化はいっそう進むものと思われる。
環境面への貢献
事業用トラックの大半はディーゼル車で、排気ガスによるCO2(二酸化炭素)などの排出により一昔前は環境への悪影響が大きく騒がれていた。近年クリーンディーゼルなど低炭素型ディーゼルトラックの比率が高まっているが、自動運転の導入でこれまでより燃費の良い走行が可能になるほか、自動運転と相性の良いEV(電気自動車)が導入されれば、その効果はいっそう高まるものとみられる。
■海外の自動運転トラック開発企業
ボルボ・トラックス:Auroraとプロトタイプを共同開発
ボルボ・グループのボルボ・トラックスは2018年、ノルウェーのBrønnøy Kalk AS社との提携のもと、鉱山から近くの港までの約5キロのルートを運行する初の商用自律ソリューションの本格実証に着手したのを皮切りに、2019年にはEVトラックコンセプトカー「Vera(ベラ)」を活用した港湾エリアにおける搬送実証計画を発表した。
採石場などの現場や港湾、ターミナル、そして高速道路など、さまざまなシチュエーションにおける自動運転ソリューションの商用展開に向け多方面展開している印象だ。2019年に自動運転サービスを手掛ける部門Volvo Autonomous Solutionsを新設している。
2021年には米Aurora Innovationと提携し、自動運転の共同開発を進めるとともに北米への進出も本格化させた。
2024年には、量産準備が整った自動運転トラックとして「ボルボ VNL オートノマス」を発表した。同年12月には、DHLサプライチェーンを顧客にテキサス州内の2ルートでセーフティドライバー付きの運用を開始している。
▼Volvo Trucks公式サイト
https://www.volvotrucks.com/en-en/
ダイムラー・トラック:2027年に米市場でレベル4実用化
ダイムラー・トラックは、米国市場においてハブツーハブ運行用の長距離輸送用レベル4トラックを2027年に実用化する目標に掲げている。
2019年に自動運転トラック開発を手掛ける米Torc Roboticsに出資・子会社化し、クラス 8 トラックのFreightliner eCascadiaの自動運転化を推進している。Torc Roboticsは2024年、複数車線の閉鎖コース環境でドライバーレス走行の本格実証に着手している。最高時速 65 マイル(時速104キロ)で走行可能という。
▼Daimler Truck AG公式サイト
https://www.daimlertruck.com/en/
ヒョンデ(ヒュンダイ):レベル3トラックの走行実証実施
韓国ヒョンデ(ヒュンダイ)も自動運転トラックの開発に力を入れているようだ。自動運転レベル3(条件付き運転自動化)相当の技術を搭載した自動運転トラックの走行実証実験を2018年8月に実施している。
最大積載量40トンの大型セミトレーラートラック「Xcient」に自動運転システムを搭載し、義王~仁川間の高速道路40キロメートルをドライバーの介入なく走破したという。
▼ヒュンダイ公式サイト
https://trucknbus.hyundai.com/global/en/
フォード:レベル4のコンセプトモデル発表
米フォードの商用車部門は、自動運転技術を搭載した電動大型トラックのコンセプト「ビジョン」を2018年9月に発表した。自動運転レベル4の技術を搭載するほか、電動化、コネクテッド化、軽量化などに関して同社の将来像を表したものという。
また、2019年1月には、商用バンやピックアップトラックの自動運転共同開発に向け独VWと提携することが報じられている。
▼Ford公式サイト
https://www.ford.com/
Plus:米国や中国、欧州でもパイロットプログラム着手へ
2016年設立の中国系スタートアップPlusは、さまざまな車体プラットフォームに統合可能なレベル4ソリューション「SuperDrive」をはじめ、ADAS「PlusDrive」、AI ベースの認識ソフトウェア 「PlusVision」の開発などを進めている。
中国では、2018年に中国の青島港で同社初の無人レベル4の実証を行ったのを皮切りに、2021年には3,000キロメートル超の蘇州と敦煌間を往復する長距離実証も行っている。
SuperDriveは、ヒョンデやIVECO、TRATON GROUPなどとのパートナーシップのもと、米国や欧州、オーストラリアで取り組みを加速しているようだ。
このほか、アマゾンやボッシュ、Luminar Technologies、Navistarなどもパートナー企業に名を連ねている。
▼Plus公式サイト
https://plus.ai/
Kodiak Robotics:自動運転ソリューションのサブスクも計画
2018年創業の米スタートアップKodiak Roboticsは、自社開発した自動運転システム「Kodiak Driver」で長距離輸送のゲームチェンジに挑んでいる。
高速道路を主体とした長距離ミドルマイル輸送を自動運転化し、ファーストマイルのピックアップとラストマイルの配達を従来通りの手動運転で行う現実路線で開発を進めている。対象路線は北米西海岸から東海岸に至る1万8,000 マイル以上の路線を網羅したという。
サブスクリプションサービスも計画しており、自動運転ソフトウェアとハードウェアで構成されるKodiak Driverを1マイルあたりの低額料金で運用するサービスを2025年以降に事業化する予定としている。
2024年8月には、JB Hunt Transport ServicesとBridgestone Americasとともに、アトランタからダラスまでの約 750 マイルに渡る長距離ルートの自動運転走行を行ったことを発表している。
▼Kodiak Robotics公式サイト
https://kodiak.ai/
Gatik:いすゞやNXグループも出資 将来日本市場にも進出?
2017年設立の米Gatikは、軽トラックから中型トラックを対象としたミドルマイルの自動運転に焦点を当てた開発を進めている。
米小売大手のウォルマートと提携しており、2021年夏ごろからはアーカンソー州の店舗間約11キロメートルを無人走行する実証も行っている。
2021年4月には、いすゞの北米法人いすゞノースアメリカコーポレーションと自動運転中型トラックの開発に向けパートナーシップを結んだことが報じられている。その後、2024年5月にはいすゞがGatikに対し、3,000万ドル(約47億円)を出資することに合意したことが発表された。
同年8月には、NIPPON EXPRESSホールディングスもGatikへの出資を発表している。資本関係を通じて自動運転トラック事業の知見を深め、将来的に日本での自動運転トラック事業への参入を目指す方針としている。
▼Gatik公式サイト
https://gatik.ai/
【参考】関連記事としては「自動運転で「ミドルマイル物流」に照準!米Gatikの存在感急上昇」も参照。
Aurora Innovation:乗用車から大型トラックに至るまで自動運転化 2025年中にサービスイン予定
タクシー用途など乗用車向けの自動運転開発で話題に上がることが多い米オーロラ・イノベーションも、振り出しは自動運転トラック開発だ。
自動運転システム「Aurora Driver」は大型トラックから乗用車まで広く統合可能で、トヨタをはじめUber、ボルボ・グループ、FedEx、PACCARなど、移動や輸送を担う企業と広くパートナーシップを結んでいる。
2025年春にもテキサス州で商用開始する予定で、まずはダラスからヒューストンまでのルートで無人走行を実現するとしている。また、同州フォートワースからアリゾナ州フェニックスを結ぶ新ルートも2025年中にサービス化することを発表している。
▼Aurora Innovation公式サイト
https://aurora.tech/
頭角を現すスタートアップが続々登場
このほかにも、例えば中国ではWestwell(2016年設立)、TrunkTech(2017年設立)、FABU Technology(同)、Inceptio Technology(2018年設立)、SENIOR(2020年設立)、Qingtian Truck(2021年設立)など、続々とスタートアップが表舞台に出始めている。
TrunkTechは中国EC大手京東集団傘下のJD Logisticsなどとともに高速道路における自動運転輸送実証を進めており、累計輸送距離は120万キロメートルを突破したという。
また、Pony.aiなど、自動運転タクシー開発などを主力としてきた各企業の中からも、自動運転トラック領域に進出する動きが見られる。
自動運転タクシーなどと同様、自動運転トラックもスタートアップが先行して開発を進めている印象で、今後もまだまだ新規参入が相次ぐことになりそうだ。
▼TrunkTech公式サイト
https://www.trunk.tech/
【参考】TrunkTechについては「TrunkTech、中国×自動運転トラックで大本命!?120万キロという累計輸送距離」も参照。
■自動運転トラック事業をやめた海外企業
その一方、自動運転トラック事業から撤退する企業も出始めている。2016年創業のエンバーク・トラックスは2023年、全従業員宛にレイオフを告げ、その後トラック事業を売却したことが報じられている。詳しくは「自動運転トラック開発の米Embark、会社清算か 従業員70%解雇」の記事も参照してほしい。
2015年創業の中国系新興企業TuSimpleはまさかの転身を遂げたようだ。米ナスダック市場への上場、日本進出など有力企業に数えられていたが、2024年初頭に上場廃止する方針を発表し、米国事業を縮小した。
TuSimple:自動運転業界からアニメ・ゲーム業界への転身……
2015年創業の中国系新興企業TuSimpleは、米アリゾナ州を起点に自動運転が可能な物流網を拡大していく方針を掲げ、長距離自動運転トラックの実用化を進めていく戦略を推し進めていた。
運転席無人の走行実証成功をはじめ、米ナスダック市場への上場、日本進出など有力企業に数えられていたが、2024年初頭に上場廃止する方針を発表し、米国事業を縮小した。その後、2024年末までに社名を「CreateAI」に変更し、事業を大幅変更したようだ。AI技術でアニメやゲーム業界に変革をもたらすとしている。まさかの転身だ。
このほか、隊列走行技術の開発を進めていたLocomationも廃業が報じられている。
【参考】TuSimpleの動向については「自動運転トラック開発の米TuSimple、「AIアニメ事業」に転換 いきなりの発表」も参照。
■日本の自動運転トラック開発企業
いすゞ自動車:アメリカでミドルマイル自動運転に挑戦
いすゞは2016年、日野と自動走行・高度運転支援に向けたITS技術の共同開発を行うことに合意し、視界支援、路車間通信、加減速支援、プラットフォーム正着制御の4つの技術を開発していくことを発表した。
2019年にボルボ・グループと商用車分野における戦略的提携に向けた覚書を締結し、自動運転をはじめとしたCASE対応に向け技術的な協力体制を構築するとともにUDトラックスの譲渡に合意した。
ボルボ・グループとは、20年以上の長期にわたる長期戦略的提携を交わしつつ、2021年3月には日野とトヨタと商用事業でCASE分野における協業を行い、再度トヨタとの資本提携に合意したことを発表している。
2024年には、米GatikやApplied Intuitionとそれぞれパートナーシップを深めている。Gatikとは2021年にいすゞの北米法人がレベル4トラックの開発で提携を交わしており、今回新たに3,000万ドルを出資し、パートナーシップをより強固なものとした。計画では、2027年にレベル4商用車事業を開始するとしている。
Applied Intuitionとは、最長5年間のパートナーシップ戦略に基づきレベル4トラックの共同開発を加速する。日本の高速道路輸送向けにレベル4トラックを開発し、2026年に実証を行い2028年度中の事業開始に向け準備を進めていく方針という。
このほか、UDトラックス、日野自動車、三菱ふそうトラック・バスの国内商用車メーカー4社は、豊田通商、先進モビリティ、みずほリサーチ&テクノロジーズが進めるRoAD to the L4事業に協力し、高速道路における路車協調による自動運転トラック実証に参加している。
【参考】いすゞの取り組みについては「いすゞ、米国で攻勢!ミドルマイル自動運転車を2027年量産開始へ」も参照。
UDトラックス:2030年までに完全自動運転トラックの量産を目指す
いすゞ自動車グループ傘下となったUDトラックスは、2018年4月に発表した次世代技術ロードマップ「Fujin & Raijin(風神雷神)—ビジョン2030」の中で自動運転技術を柱の1つに位置付け、研究開発を進めている。2030年までに完全自動運転トラックと大型フル電動トラックの量産化を目指す方針だ。
レベル4関連では、工場の構内や港湾など一定区域における安全な低速自動運転技術の開発をはじめ、高速道路における自動運転やCACC技術を用いたトラックの隊列走行技術などの開発を進めており、2018年に大型トラックによるレベル4のデモンストレーションを本社敷地内で実施している。
2021年には、神戸製鋼所とレベル4を搭載した大型トラックによる自動運搬技術の実証を行うことを発表した。
大型トラック「クオン」をベースとしたレベル4車両を1台使用し、加古川製鉄所内の運搬コースの一部をルートに2022年下半期を目途に走行実験を行う予定としている。実証を通じ、スマート物流サービスや製造・物流現場のデジタルトランスフォーメーション(DX)を図っていく構えだ。
いすゞなどとともに、RoAD to the L4における実証事業にも取り組んでいる。
【参考】神戸製鋼所との取り組みについては「UDトラックス、自動運転レベル4の共同実証実施へ 神戸製鋼所と合意」も参照。
日野自動車:トヨタグループでの取り組み加速
トヨタグループにおいてバス・トラック部門を担う日野は、車両安定制御システムや歩行者検知機能付き衝突被害軽減ブレーキなどをすでに実用化しており、現在はドライバー異常時対応システムやCACCなどのトラック隊列走行の技術、車線維持走行支援(LKA:レーンキープアシスト)などの技術開発を進めている。
2018年4月に独フォルクスワーゲン(VW)グループのバス・トラック部門と戦略的協力関係の構築に向けた合意を交わし、既存の内燃パワートレーンやハイブリッド、電動パワートレーンをはじめ、コネクティビティや自動運転システムなどを含む技術領域で協力体制の構築を目指す。
トラックではないが、2020年に建設大手の大林組と大型ダンプトラックによるレベル4実証をダム建設現場で実施した。2023年度にも自動自律建機などと自動運転ダンプのDX施工に向けた実証を行っている。
2021年6月には、ウーブン・アルファのAMP活用に向けた検討を進めていくことで同社と合意したほか、10月にはスズキ、スバル、ダイハツ、トヨタ、マツダによる次世代車載通信機の技術仕様の共同開発に参画することを発表している。
【参考】日野の取り組みについては「日野の自動運転戦略 建機やトラックの無人化に着手」も参照。
三菱ふそうトラック・バス:ダイムラー・トラックの技術を共有
ダイムラー・トラック傘下の三菱ふそうは、2019年に国内商用車市場初となるレベル2相当のADAS「アクティブ・ドライブ・アシスト」を搭載した大型トラック「スーパーグレート」を発売した。親会社であるダイムラー・トラックとADASや自動運転技術を共有できる点が何よりの強みだ。
自動運転については、社長兼最高経営責任者(CEO)のハートムット・シック氏 が会見の席で「レベル3(条件付き運転自動化)を通り越してレベル4を目指す」ことを公言しており、ダイムラーと協調しながら2025年にも高速道路などに限定した完全自動運転トラックを実用化する意向を示している。
2024年8月には、電気小型トラック「eCanter」の新型モデルをベースに、レベル2機能を搭載した自動追尾型のごみ収集車のコンセプトモデル「eCanter SensorCollect」を開発したと発表した。
車両前方と後方に搭載したミラー兼用カメラセンサーが運転席から下車するドライバーを検知し、ごみ集積場に到着後もドライバーの後を車両が自動追尾する。遠隔操作も可能という。
TRUST SMITH:国内ベンチャーも自動運転トラック開発へ
東大発AIベンチャーのTRUST SMITHは、工場敷地内における自動搬送トラックの開発を進めている。ファクトリーオートメーションを実現するソリューションを中心とした研究開発の中で、自動運転車による工場内の事業自動化を支援する関連会社SMITH&MOTORSを立ち上げ、障害物回避型アームアルゴリズムや自動搬送ロボット、自動搬送トラックの開発などを進めている。
自動運転システム向けのオープンソースソフトウェア「Autoware」を活用する予定で、レーザレーダーやカメラ、GNSSなどの環境センサーを活用し、自車位置や周囲物体を認識しながら倉庫内などで自律走行を実現していくという。
【参考】TRUST SMITHについては「東大AIベンチャー、「完全自動化工場」へ自動運転トラックの開発スタート!」も参照。
T2:関東~関西間の高速道路で2025年にも自動運転サービス商用化
三井物産は2022年、AI企業Preferred Networksの技術提供のもと、自動運転トラック開発を手掛けるT2を設立した。高速道路を中心にレベル4網を構築していく構えだ。
2023年には三菱地所との資本業務提携に合意し、レベル4トラックによる日本の幹線輸送と、その発着地点となる次世代基幹物流施設を融合させたシームレスな輸送を実現していくという。
2024年11月には、レベル 4 トラックでの幹線輸送サービス実現に向けた仲間づくりの一環として「自動運転トラック輸送実現会議 ~L4 Truck Operation Conference~」を設立した。佐川急便、セイノーホールディングス、日本貨物鉄道、日本郵便、福山通運、三井住友海上火災保険、三井倉庫ロジスティクス、三菱地所、 KDDIが参加している。
2025年に関東・関西間の高速道路一部区間で自動運転トラックを用いた幹線輸送事業を開始する計画で、セイノーホールディングスなど各社とともに実証を積み重ねている。
【参考】T2については「12億、35億…からの7億!自動運転企業T2、資金調達すごい勢い」も参照。
ティアフォー:高精度地図不要のトラック向け自動運転システム開発へ
ティアフォーも自動運転トラック領域に足を踏み入れた。高速道路におけるトラック向けの自動運転システム開発を発表し、2024年度から新東名高速道路で実証に着手するとしている。
独スタートアップdriveblocksの技術を活用し、長距離・広域の高速道路環境に対応できる高精度地図を必要としない認識技術を導入する予定という。
【参考】ティアフォーの取り組みについては「自動運転トラック、新東名高速で「高精度地図なし」実証 ティアフォー」も参照。
■日本における物流と自動運転、実現のロードマップは?
高速道路におけるレベル4実現へ官民が本腰
官民ITS構想・ロードマップでは、2020年度に新東名高速道路での後続車無人隊列走行システムを技術的に実現する目標を掲げ、2021年2月に新東名高速道路の一部区間で3台の大型トラックが時速80キロメートル、車間距離約9メートルで隊列走行する実証に成功している。
レーダーを用いて前方を走行する車両との車間距離を一定に保つ技術「ACC(Adaptive Cruise Control)」に加え、車車間通信でより精密な車間距離制御を行う「CACC(Cooperative Adaptive Cruise Control:協調型車間距離維持支援システム)」などが実用化される見込みだ。
実証を積み重ね、2022年度以降に東京大阪間の高速道路における後続車両無人の隊列走行の商業化実現を目指す方針としていた。
最新の計画となる第2期デジタルライフライン全国総合整備実現会議では、先行的な取組み(アーリーハーベストプロジェクト)として2024年度から「自動運転支援道」整備に向けた実証を開始するとしている。
新東名高速道路の駿河湾沼津SA~浜松SA間の100キロ超の区間で、合流支援情報や車線変更を支援するための情報提供をはじめ、自己位置特定精度を向上する環境整備、V2X・V2N通信の環境整備などを進めていく。また、2025年度以降には東北自動車道の6車線区間の一部でも実施する予定としている。
日本でも、高速道路におけるレベル4実現に向けた取り組みが大きく加速しているようだ。
自動運転レベル4以上の完全自動運転トラックについては、自家用車における自動運転システムの技術面での進展や、隊列走行トラックの実証実験の成果などを踏まえ、高速道路での完全自動運転トラックの実現を2025年以降に目指す構えだ。
【参考】日本における自動運転トラック関連の施策については「物流2024年問題、頼みの綱は「自動運転化」と「トラックGメン」 緊急対策を閣議決定」も参照。
■【まとめ】日本でも高速道路レベル4が大きく加速中
先行する米国では、早くも勝ち組と撤退組に分かれ始めているようだ。勝ち組はほぼ商用化段階に達し、まもなく本格ビジネス化のフェーズを迎えそうだ。
一方、日本でも高速道路におけるレベル4実現に向けた取り組みが本格化し始めた。ティアフォーやT2といったスタートアップ勢が起爆剤となり、どのような発展を遂げていくのか注目が集まるところだ。
日進月歩で進化を遂げる自動運転業界。自動運転バスやタクシーとともに、トラック領域における自動運転化の動向にも引き続き注目していきたい。
■関連FAQ
トラックが自動運転化されれば運転手不足の解消につながり、輸送コストも低減されていく。トラックに限ったことではないが、安全性の高い自動運転システムが実現すれば、事故率も手動運転より飛躍的に低くなる。
アメリカ企業ではEmbark TrucksやKodiak Robotics、中国系企業ではPlus、カナダ企業ではGatik、日本企業では東大発AIベンチャーのTRUST SMITHなどが挙げられる。
まず高速道路での隊列走行で「後続車無人」を実現するのが第一歩だ。その後、高速道路での自動運転レベル4(高度運転自動化)の実現を2025年以降に目指すロードマップを政府は策定している。詳しくは「官民ITS構想・ロードマップ」を参照。
日本のトラックメーカーも自動運転化に向けて技術開発を進めている。例えば、いすゞ自動車グループ傘下となったUDトラックスは、2030年までに完全自動運転トラックの量産化を目指している。日野自動車はADASの技術開発に注力しているが、トヨタグループの一員として、トヨタ本体との技術のシェアに関しての期待感も高い。
ボルボ・トラックスは自動運転スタートアップの米Aurora Innovationと提携し、まず高速道路での自動運転実用化に向けた取り組みを進めている。ダイムラーはいち早く自動運転レベル2を実現したトラックメーカーとして注目を集めた経緯があり、2019年にレベル4実用化に向けて5億ユーロ(約620億円)を投資する計画を発表している。
(初稿公開日:2019年2月7日/最終更新日:2025年1月22日)
【参考】関連記事としては「自動運転が可能な車種一覧」も参照。