日野とVWが戦略的協力関係構築へ合意 「自動運転×商用車」の将来性も見据え

親会社のトヨタ自動車も容認姿勢示す



式典に臨む日野自動車の下義生代表取締役社長(写真左)とVWトラック&バスのアンドレアス・レンシュラー最高経営責任者(写真右)=出典:Volkswagen

トラック・バスの製造・販売で国内最大手の日野自動車株式会社(本社・東京都日野市/代表取締役・下義生)は2018年4月12日、トヨタ自動車と覇権を争う独フィルクスワーゲン(VW)グループのVWトラック&バスと、商用車分野における戦略的協力関係の構築に向けて合意した。

合意内容によると、日野自動車とVWグループが協力する領域は「物流/交通に関わるソリューション調査」や「既存・将来技術」、「調達」などだ。技術分野では「自動運転システム」や「コネクティビティー(接続性)技術」などの共同開発も含まれ、革新的な先進技術の開発でタッグを組むことで、世界市場における両社のマーケットポジションを一層高めることを目指す。


【参考】両社は4月12日に合意書の調印式と報道向け記者会見を開いている。合意書の詳しい内容は日野自動車の「ニュースリリースページ」から確認できる。VWトラック&バスも「プレスリリースページ」(英文)で内容を発表している。

同日開かれた記者会見で、VWトラック&バスのアンドレアス・レンシュラー最高経営責任者(CEO)は、技術領域での協力について「主たる協力の領域はパワートレーン」と説明しながらも、成長分野として世界的に注目が高まる自動運転システムについても言及した。

合意調印後に握手を交わす日野自動車の下義生代表取締役社長(写真左)とVWトラック&バスのアンドレアス・レンシュラー最高経営責任者(写真右)=出典:Volkswagen

日野は2018年1月、自動運転技術の活用に向けて、トラックの隊列走行の走行実験をいすゞ自動車などと開始している。商用車と自動運転の組み合わせで世界において確固たる地位を築くために、日野がVWトラック&バスと今回タッグを組むことは意義深い。

VWトラック&バスを抱えるVWグループは、2025年にドライバーが運転に関与しない「自動運転レベル4」クラスの電気自動車(EV)を発売することを計画している。またVWグループは昨年秋、緊急時を除いてシステムが自動運転の主体となるレベル3の自動運転車を発売した実績も既に有する。


【参考】自動運転レベル4は「高度運転自動化」と呼ばれる。運転の主体が完全に「システム」に移行され、運転手は必要とされない。走行可能領域が限定されなければ最高位となるレベル5の「完全運転自動化」を達成できる技術レベルにあると定義される。詳しくは「自動運転レベル0〜5まで、6段階の技術到達度をまとめて解説|自動運転ラボ 」にて。

さらにVWグループの主力車「ゴルフ」には、車線の逸脱を防ぐ「レーンキープ・アシスト・システム」や前車への追従を支援する「アダプティブ・クローズ・コントロール(ACC)」などが既に搭載されている。これらの技術は自動運転車の実現には必須となるキーテクノロジーとして挙げられる。

フィルクスワーゲンの主力車「ゴルフ」シリーズは、価格は300万円台が中心。2025年に販売開始を予定しているレベル4の完全自動運転車も、同様の価格帯で販売されるとみられる=出典:volkswagen

またVWグループは2017年通期の自動車販売台数で、2年連続でトヨタ自動車を抜いて世界首位になり、自動運転車の開発に向けた資金も着々と積み重ねている。今後、自動運転技術の開発により一層力を入れ、他社メーカーの追随を許さないレベルにまで早期に技術水準を高めることをねらう。

【参考】VWグループの公式ウェブサイト日本語版には、VWグループの自動運転技術について解説した「専用ページ」がある。主力車「ゴルフ」に搭載している技術についても動画付きで解説がされている。


報道などによると、日野自動車の親会社であるトヨタ自動車は今回の合意については容認の構えをみせている。覇権争いを続ける親会社の子会社同士がタッグを組んだ形となった今回の合意。日野はアジアに強く、VWグループは欧州に強い。商用車の価値を共有できるパートナーとして、販売や生産面でも補完関係を築いていきたい考えとみられる。

日野自動車の下社長は記者会見で「日野は今後もトヨタグループの一員である強みを活かしていく」と説明した上で、「VWトラック&バスとの協業を実現していくことにより、先進技術で世界をリードする商用車メーカーとして、お客様へ新たな価値を持続的に提供していく」と語った。


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