衝撃 自動運転の「レベル」実は自分で決められる?アメリカ基準の謎

自己申告でレベル4もできてしまう?



自動運転のニュースで必ず登場する「レベル4」。その意味が、いま業界の中で揺らいでいる。


米自動車技術会SAE(Society of Automotive Engineers)が定める自動運転レベル3・4のうち、自動運転レベル4は特定の条件下で人間の介入なく走り切る段階を指す。だがその「特定の条件」を決める運行設計領域ODD(Operational Design Domain)はメーカー側が線引きでき、さらに米国の一部の州では事業者の自己申告だけでレベル4を名乗れる。

現に、テスラも自社のロボタクシーを自己申告にてレベル4を取得しており、結果として、同じ車・同じソフトでも用途や地域でレベル表記が変わる事態が生まれている。自動運転レベルという物差しそのものの一貫性が、規制と制度の両面から問われている。

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■自動運転のレベルは自分で決められる?

自動運転レベルとは、車の自動化の度合いを示す世界共通の物差しである。米自動車技術会SAEが定めた区分で、運転にまったく自動化のないレベル0から、あらゆる場面を車だけで走り切るレベル5まで、6段階に分かれる。日本もこの区分を採用しており、議論の土台は各国で共通している。

この物差しの中で、人とシステムの役割が大きく入れ替わるのが自動運転レベル3と自動運転レベル4の境目だ。レベル4は、決められた条件の範囲内であれば、ハンドル操作も加減速も周囲の監視も、すべてシステムが担う。人間は運転に関与しない。


レベル2との違いは決定的である。レベル2はあくまで運転支援であり、人間が常に前方を監視し、いつでも運転を引き継ぐ前提に立つ。事故が起きれば責任を負うのは人間のドライバーだ。一方のレベル4は、運転の引き継ぎ要請をシステムが人間に出すことはない。決められた条件の外に出そうになっても、人間に運転を返すのではなく、自ら安全に停止する。つまり「困ったら人間に任せる」のがレベル2、「困っても人間には頼らない」のがレベル4である。

ここを押さえておくと、後で述べる「揺らぎ」の正体が見えてくる。レベル4とは、車の性能の高さを表す称号ではない。決められた条件の中で、人間抜きに走り切り、その責任を引き受けるという約束のことなのである。

【自動運転ラボの視点】
レベル4は性能ランクではなく、条件付きで人間抜きに走り切る約束である。約束の範囲を誰がどう決めるか。その一点に、いま業界の関心が集まっていると言える。

【参考】関連記事としては「自動運転レベル4の定義とは?いつ実用化?」も参照。

自動運転レベル4の定義とは?いつ実用化?


■レベルを左右する運行設計領域ODD、その線引きはメーカー次第

自動運転レベル3・4には、必ず「決められた条件」が伴う。これを運行設計領域ODD(Operational Design Domain)と呼ぶ。走ってよい道路、地域、天候、時間帯、速度といった、システムが正常に働くために前提とする動作条件のことだ。レベル4の「決められた条件の範囲内」とは、このODDのことを指している。

重要なのは、このODDをどこまで広げ、どこで区切るかを、原則としてメーカー側が設定するという点である。狭く区切れば、その範囲内で人間抜きに走り切る難易度は下がる。広く取れば、できることは増えるが、求められる安全性のハードルも一気に上がる。同じ技術でも、ODDをどう描くかでレベルの名乗りやすさが変わってくる。

ここから、自動運転レベルが「絶対的な性能尺度」ではないことが見えてくる。レベル4と聞くと「どこでも完全に自動で走る車」と受け取られがちだが、それは誤解である。正しくは「ある決められた範囲の中でなら、人間抜きに走り切る」という意味だ。だからレベル4を理解するには、必ず「どんなODDの上での話か」という但し書きまでセットで読む必要がある。

レベルという数字だけが一人歩きし、その下にあるODDという但し書きが見えにくい。ここに、定義の揺らぎが生まれる最初の震源がある。

■自己申告制の米国と事前審査制の日本、自動運転規制は国で割れている

同じレベル4でも、それを誰がどう認めるかは国によって大きく異なる。ここが、定義の揺らぎを広げるもう一つの震源だ。

米国は、車の安全をメーカー自身の宣言に委ねる「自己認証」型の国である。メーカーが自ら基準への適合を宣言すれば、車を公道に出せる。しかも自動運転車に特化した連邦の統一基準はまだ整備されておらず、現行の連邦自動車安全基準FMVSS(Federal Motor Vehicle Safety Standards)を満たす車であれば展開できる。連邦レベルでも統一ルールづくりの動きはあるものの、その中心となる自動運転法案SELF DRIVE Actは2017年と2021年に続く三度目の提案で、いまも審議の段階にあり成立はしていない。

この自己認証の発想は、州の制度にも表れている。米テキサス州では2026年5月28日、商用の自動運転を対象とする自動運転商業規制法Senate Bill 2807が施行された。この法律は、商用ロボタクシーを運行する事業者に対し、自社システムがSAEの自動運転レベル4または5に適合すると自ら申告し、州の認可を得るよう求める。第三者による事前の能力検証を必須とはしない、自己申告を土台にした仕組みである。安全性や記録装置の備え、交通法の順守といった条件は課されるが、レベルそのものは事業者の申告に委ねられる。

一方の日本は、対照的に「事前審査」型をとる。日本の自動運転は、1951年制定の道路運送車両法を2019年に改正し、システムが運転を担う「自動運行装置」を保安基準の対象に加えることで法的な裏付けを得た。レベル4の車両は、自動運行装置が特定の走行環境条件の範囲内で運転操作を行うものとして、国土交通省の地方運輸局から事前に認可を受ける。さらに運転者を置かずに走らせるには、道路交通法に基づき公安委員会の許可も必要になる。国が中身を審査して初めて路上に出られる、二段構えの制度である。

レベル4という同じ言葉でも、米国では事業者の自己申告で名乗れ、日本では国の事前審査を通って初めて認められる。制度の土台がこれだけ違えば、同じ「レベル4」が指す中身の重みも変わってくる。

■同じ車でレベルが変わる、用途と地域で割れる表記の実態

定義の揺らぎは、机上の議論ではない。すでに現実の車の上で起きている。象徴的なのが、米テキサス州での出来事だ。

Senate Bill 2807の施行と同じ日、米EV大手Tesla(テスラ)は自社のロボタクシー用ソフトをSAEの自動運転レベル4と自己申告した。だが、同じ運転支援ソフトFSDを積んでいても、消費者が買う個人所有のテスラ車は、法律上はレベル2のままである。商用ロボタクシーはレベル4、個人所有車はレベル2。母体が同じソフトでありながら、用途によってレベルの名乗りが分かれた。

なぜこんなことが起きるのか。鍵は、これまで見てきたODDと制度にある。ロボタクシーという用途に絞り、走行範囲を区切ってODDを定義すれば、その範囲内で人間抜きに走り切る約束としてレベル4を名乗れる。一方、個人所有車はあらゆる場面で使われ、運転の責任は所有者にある。だからレベル2にとどまる。同じ技術でも、どんな条件の上に置き、誰が責任を負うかでレベルが変わる。ODDと制度の組み合わせ次第で表記が動く、その実例である。

地域による食い違いも起きる。テスラはこのソフトを中国でも展開しているが、そちらでは運転支援としてレベル2に分類されている。同じ母体のソフトが、米テキサスではレベル4、中国ではレベル2。レベルという物差しの一貫性そのものが、用途と地域の両面で揺らいでいることがよく分かる。

レベルは車に固定された不変の称号ではない。どんなODDの上で、どの国の制度に沿って名乗られたものか。そこまで確かめなければ、レベル4という言葉だけでは中身を測れない時代に入っている。

テスラ ついに自動運転レベル4認定へ 自己申告制度の隙をついたか

■「定義の揺らぎ」とどう向き合うか、自動運転レベルの読み方と世界ルール

ここまで見てきたように、自動運転レベルの揺らぎは二つの震源から生まれている。一つは、レベルの前提となるODDをメーカーが線引きできること。もう一つは、同じレベル4でも自己申告で名乗れる米国と、事前審査を経る日本とで、制度の重みが異なることだ。レベル4という言葉だけでは、その車が何をどこまでできるのかを正確には測れない。

この揺らぎを世界全体でどう束ねるか。その答えづくりが、いままさに大詰めを迎えている。国連の車両規制調和フォーラムWP.29は、2026年6月23日から26日の会合で、自動運転システムに関する世界統一規則を採決する見通しだ。可決されれば国際レベルでは即日発効する。

注目すべきは、この世界ルールが「レベルという段階表示」とは別の物差しを核心に据えている点である。規則の土台は「安全ケース」と呼ばれる考え方だ。細かな数値を一律に課すのではなく、自動運転システムが有能で慎重な人間のドライバーと同等以上の安全水準で動くことを、メーカー自身が根拠を示して証明する枠組みである。レベルが「どの段階か」を示すのに対し、安全ケースは「なぜ安全と言えるのか」を問う。レベル表記の揺らぎを乗り越える発想が、ここに込められている。

興味深いのは、米国で審議中のSELF DRIVE Actも、この安全ケースの考え方を取り込もうとしていることだ。証明の中身を問うという同じ方向に、世界が足並みをそろえつつある。自己申告か事前審査かという制度の違いを残したまま、それでも「なぜ安全か」を示させる共通の土台を持とうとしている。

そして、この世界ルールづくりで日本は中核の一角にいる。自動運転の基準を議論する専門部会GRVAで、日本は副議長として議論を動かしてきた。自己申告制の米国と事前審査制の日本という制度の分断を、対立ではなく共通の枠組みへとそろえていく。その設計に、日本は深く関わっている。

読者にとっての結論はシンプルだ。これからは「レベル4」という言葉を聞いたら、どんなODDの上での話か、どの国の制度に裏打ちされたものかまで確かめる。それが定義の揺らぎとの正しい向き合い方になる。レベルという数字の一人歩きから、安全をどう証明するかへ。自動運転の物差しは、いま静かに描き替えられようとしている。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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