テスラのロボタクシー スペースXの「Starlink V5」搭載へ 統合への布石か

通信速度は375Mbps超



米EV大手テスラTesla)が、自動運転タクシー「Cybercab(サイバーキャブ)」に宇宙からの高速インターネットを積む。テスラは7月20日、宇宙開発企業スペースX(SpaceX)の衛星通信サービスStarlink(スターリンク)の最新アンテナ「V5」をCybercabへ直接組み込むと、公式X(旧Twitter)で図解つきで発表した。


通信速度は375Mbps超とされる。ただしテスラは、この衛星通信が自動運転の走行そのものに使われるわけではないと説明する。「なぜ自動運転タクシーに宇宙のインターネットが必要なのか」。業界にそんな疑問が広がる一方、スペースXの新規株式公開を前にした、テスラとスペースXの統合への布石だとの見方も出ている。

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■Cybercabに載る「Starlink V5」

テスラは7月20日、公式Xで「Starlink V5 directly integrated in Cybercab」と題した図解を投稿し、自動運転タクシーCybercabにStarlinkの最新アンテナを直接組み込む方針を明らかにした。このStarlinkを手がけるのは、イーロン・マスク(Elon Musk)氏が率いるスペースXである。スペースX側も「自動運転車の未来へ、宇宙からの高速インターネットを」と呼応する投稿をした。

搭載されるのは最新世代のアンテナ「V5」だ。通信速度は375Mbps超とされる。従来のV4より大幅に小型で軽く、消費電力も抑えられている。車内に外付け機器を置くのではなく、車両そのものにアンテナを組み込む設計である点が、これまでにない。ただし、この統合は現行の量産車にすでに搭載されているものではなく、より多くの通信量が必要になる将来に備えて確定させた設計だと説明されている。テスラの車が、単なる移動手段ではなく常時ネットにつながる端末へと近づく一歩と言える。


【自動運転ラボの視点】
走行に使わない通信をあえて車両へ組み込む点が異例だ。テスラは車を移動手段ではなく、常時つながる端末として設計し始めている。ロボタクシー事業の足場づくりと見るのが自然だろう。

【参考】関連記事としては「テスラの「カメラのみ自動運転」、全米で禁止か」も参照。

■「運転には不要」 それでも衛星通信を積む理由

最大の疑問は「走行に不要なら、なぜ衛星通信を積むのか」である。テスラのAI部門を率いるアショク・エルスワミ(Ashok Elluswamy)は、衛星通信は安全な走行そのものには依然として必要ない、という。自動運転の判断は車載のカメラとAIで完結し、宇宙からの通信はそこに関与しない。

では何のために使うのか。エルスワミによれば、通信の主な用途はナビゲーション、顧客サービス、そして車両群の管理である。走行の頭脳と、配車や乗客対応、車両群の運用を支える通信インフラは、別の層に分かれている。無人で走るロボタクシーにとって、乗客と連絡を取り、車両群をまとめて管理する回線は事業の土台になる。走行に不要でも、事業運営には効いてくるという構図である。

■5G・GPS・衛星通信の多層で狙う「途切れない接続」

衛星通信を加える狙いは、通信を途切れさせないことにある。Cybercabはもともと、位置測定の冗長性を持たせるためのデュアルGPSと、5Gの通信回線を備えている。そこに衛星通信という新たな接続手段を重ねる。携帯電波が届かない場所でも、宇宙経由で接続を保てる可能性が生まれる。


この狙いは特許にも表れている。テスラが2025年に公開した特許は、電波を通す素材で車両のルーフを作り、車内にアンテナを内蔵する構造を示している。そこには、携帯圏外でも途切れない接続を保つこと、そしてロボタクシーを遠隔から監視することが用途として挙げられている。無人で走る車にとって、遠隔監視や乗客との連絡が切れないことは安全と運用の生命線だ。衛星通信は、圏外をなくす保険として位置づけられている。

■スペースXの新規株式公開前 テスラとスペースX統合への布石か

今回の動きを、単なる技術統合にとどまらないと見る向きもある。テスラとスペースXは、いずれもマスク氏が率いるが、資本のうえでは別の会社だ。両社の統合観測はかねて絶えない。そこへ今回、両社の技術を一つの車両で結ぶ発表が重なった。

タイミングも重なっている。スペースXは新規株式公開が近いと報じられており、その前にマスク氏がテスラとスペースXを一体化させる布石ではないか、との見方が出ている。実際、発表の直後にあたる7月22日のテスラの決算電話会議で、マスク氏は両社の統合に含みを持たせる発言をしたと複数の媒体が伝えた。さらに、Cybercabが数百万台規模で量産されれば、その一台ごとにStarlinkの端末が載る。スペースXにとってはStarlinkの販路が一気に広がる計算になる。走行に不要な通信をあえて積む背景には、こうした両社の利害の重なりも透けて見える。

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■宇宙とつながるロボタクシーが示すもの

Cybercabへの衛星通信の統合は、自動運転タクシーの競争軸が変わりつつあることを示している。これまで競争の中心は、いかに安全に走らせるかという走行AIの精度にあった。しかし無人の車両群を全国規模で動かす段階に入れば、車をつなぎ、まとめて管理する通信インフラの巧拙が、事業の成否を分ける。走行に不要な通信をあえて積むというテスラの選択は、その変化を先取りした動きと読める。

そして今回のStarlink統合は、テスラとスペースXという二つの会社の距離を、これまで以上に近づけて見せた。両社の統合はあくまで観測の段階にとどまる。だが、宇宙とつながるロボタクシーという一台の車が、その布石になり得ることも確かだろう。次に問われるのは、この構想が実際の車両群でどう形になるかである。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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