テスラ サイバーキャブ生産コストはウェイモの7分の1という衝撃

生産コストは約1.8万ドル



出典:Tesla公式YouTube動画

米EV大手テスラ(Tesla)が投入する自動運転タクシー車両サイバーキャブ(Cybercab)の生産コストが、1台あたり約1.8万ドルにとどまることが明らかになった。米Google系の自動運転開発企業ウェイモ(Waymo)の新型車両Ojai(オハイ)は、1台約12万5000ドルとされ、サイバーキャブのコストはその7分の1にすぎない。同じ投資額であれば、ウェイモの7倍近い台数を自動運転タクシー市場に投入できる計算になる。

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■サイバーキャブ生産コストはウェイモの7分の1

サイバーキャブの生産コストが約1.8万ドルであるという数字は、イベント直前にマスク氏が明らかにしたもので、米資産運用会社アーク・インベスト(ARK Invest)の試算に基づく。テスラ自身が公式に開示した製造原価ではない点には注意が必要だが、複数の海外メディアが同じ数字を報じている。


比較対象となる米Google系の自動運転開発企業ウェイモ(Waymo)の新型車両Ojai(オハイ)ついては、モルガン・スタンレーが1台約12万5000ドルと推定している。アナリストのゲーリー・ブラック氏は、基本車両やセンサー、演算装置などを積み上げて約7万5000ドルと試算しており、どの推定を採用するかでコスト差は3倍から7倍まで幅が出る。それでも、サイバーキャブが低コストで量産できる設計だという方向性は共通している。

この生産コストの差は、自動運転タクシー市場での展開スピードに直結する。同じ資金でより多くの車両を投入できれば、走行データの蓄積や稼働エリアの拡大でも優位に立てる可能性がある。

【自動運転ラボの視点】
生産コストの低さは量産スピードでの優位につながりうる。ただし規制当局の審査や安全性への疑問が解消されなければ、価格優位だけでロボタクシー市場の主導権を握るのは難しいだろう。今後は実際の商用化ペースが焦点となる。

■テキサス州にサイバーキャブが続々投入

テスラは9月3日、米テキサス州オースティンでサイバーキャブのローンチイベントを開催した。招待制で運営され、マスクCEOは登壇せず、参加者は一部の株主とコンテンツクリエイターに限定された。従来のテスラの新型車発表のような大規模な生中継も行われなかった。


サイバーキャブはハンドルやペダル、ミラーといった従来型の運転装置を持たない設計で、テキサス州での商用運行を目指す。イベントに先立ち、同州のDMVのデータではサイバーキャブの登録台数がすでに45台に達しており、量産体制が実際の登録データとして裏付けられる形になっていた。

一方で、こうした限定的な公開形式には、カナダ系証券RBCキャピタル・マーケッツから「価格設定や生産ペース、規制当局の承認といった重要な論点が未解決のまま残された」との指摘も出ている。

■テスラ株が当日5.42%高、翌日は一転6%安に

イベント当日の9月3日、テスラ株は5.42%上昇し376.37ドルで取引を終えた。売買代金は236億ドル超に達し、米国株式市場で3位となる活況ぶりを見せた。モルガン・スタンレーは、数週間以内に25台から50台のサイバーキャブを商用展開できれば株価にプラスに働くとの強気シナリオを示す一方、5台から10台程度にとどまれば下落圧力がかかるとの弱気シナリオも併せて示していた。

もっとも、株高は長続きしなかった。翌4日、テスラ株は6%下落し354.08ドルまで値を下げた。背景には、米運輸省傘下の道路交通安全当局NHTSAが、ハンドルやペダル、ミラーを備えないサイバーキャブの自己認証手続きについて調査を始めたことがある。招待制イベントの内容が「期待外れ」と受け止められたことも、下落の一因とされる。


【参考】関連記事としては「テスラ決算、ロボタクシーは3期連続未達 ウェイモと大差」も参照。

テスラ決算、ロボタクシーは3期連続未達 ウェイモと大差

■テキサス州で増え続ける自動運転車両登録、ロボタクシー市場が拡大

サイバーキャブの量産体制は、テキサス州の車両登録データにも表れている。同州のDMVによると、テスラの自動運転車両の登録台数は8月27日時点で191台、その後270台まで増え、8月31日には従来のモデルY270台にサイバーキャブ45台を加えた315台に達した。9月2日時点ではモデルY375台とサイバーキャブ45台の合計420台まで積み上がっている。

もっとも、この数字はあくまで州への登録台数であり、実際に無人で稼働している車両数とは異なる。テスラは無監視走行車両の台数を公式には開示しておらず、業界の推定も一致していない。自動運転タクシー市場全体で見れば、先行するウェイモはテキサス州だけで736台を登録しており、規模の面では依然としてテスラを大きく上回っている。

■生産コスト優位性がロボタクシー競争の構図を変えるか

サイバーキャブが示した生産コストの低さは、ロボタクシー市場における競争の前提を変えうる要素である。同じ投資額でより多くの車両を投入できるという計算は、規模の勝負になりやすい自動運転タクシー市場において無視できない強みになる。

一方で、イベント翌日の株価急落とNHTSAによる調査開始は、コスト優位だけでは市場の信頼を得られないことも示した。価格設定や生産ペース、安全性をめぐる規制当局の判断など、未解決の論点は少なくない。テスラが1.8万ドルというコスト優位を実際の量産と安全な運行実績に結びつけられるかどうかが、ウェイモとの7分の1という差を意味あるものにできるかを左右するだろう。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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