自動運転ロードマップ、「レベル3」の記載忘れる?

存在感失う背景に「E2E」



出典:首相官邸

自動運転技術・サービスの指針となる最新のモビリティ・ロードマップ2026が公開された。E2Eに代表されるAI開発支援や安全性評価手法の確立、レベル2++の優良認定制度の創設が盛り込まれ、2030年度までに自動運転サービス車両を1万台国内で導入する目標を掲げている。

自家用車市場におけるレベル2++とレベル4以上の自動運転サービスを両方見据えた内容だ。しかし、何かを忘れている気がする。……そう、レベル3だ。レベル3はどこにいったのだろう。


ロードマップからもレベル3の文言はほぼ消え失せてしまったが、レベル3はもうオワコンなのか。高市政権内で「レベル3には触れるな!」という号令が出ているのか。最新ロードマップの概要とともに、レベル3の現状と未来について解説していく。

▼モビリティ・ロードマップ2026の概要
https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/2415ad00-6a79-4ebc-8fb1-51a47b1b0552/9efd41a7/20260721_meeting_mobility_02.pdf

編集部おすすめサービス<PR>
自動車保険 スクエアbang!(一括見積もり)
「最も安い」自動車保険を選べる!見直すなら今!
新車定額!リースナブル(車のカーリース)
お好きな車が月1万円台!頭金・初期費用なし!
車業界への転職はパソナで!(転職エージェント)
転職後の平均年収837〜1,015万円!今すぐ無料登録を
タクシーアプリは「DiDi」(配車アプリ)
クーポン超充実!「無料」のチャンスも!
編集部おすすめサービス<PR>
スクエアbang!
「最も安い」自動車保険を提案!
リースナブル
新車が月々2万円から!
パソナキャリア
転職後の平均年収837〜1,015万円
タクシーアプリDiDi
クーポンが充実!「乗車無料」チャンス
ジェイエイシーリクルートメント

■モビリティ・ロードマップ2026の概要

E2Eやレベル2++の開発・普及に注力

2025年度に選定した先行的事業化地域(神奈川県横浜市、大阪府堺市、兵庫県神戸市、茨城県日立市、長野県塩尻市、宮城県仙台市、茨城県つくば市、神奈川県川崎市、神奈川県平塚市、石川県小松市、愛知県、京都府、香川県三豊市)に対し、課題解決・計画遂行に対する支援や制度的支援などの伴走支援を実施し、2027年度を目途に自動運転サービスの事業化をそれぞれ実現する。

また、そこで得られた事業化モデルを類似の課題を持つ地域へと横展開し、全国的な自動運転サービスの普及につなげる。


自動運転サービスのビジネスモデルに関しては、事業採算性の検証や自動運転サービス等の導入に向けた指針の策定、データの統合・相互利活用基盤の検討、モビリティサービスをけん引する人材の育成、地域交通DX推進プロジェクトCOMmmmONS推進などを進めていく。

出典:デジタル庁(※クリックorタップすると拡大できます)

自動運転車両の走行に必要な技術の開発・普及および環境整備関連では、主要技術(LiDARシステム)の低コスト化や路車協調システムの検討、自動運転を支える通信環境・通信インフラ整備、信号情報提供技術の検討・確立、レベル4自動運転・レベル2++車両を活用した交通・物流サービスの実装促進、E2E自動運転技術の研究開発基盤整備、E2E搭載自動運転車両の安全性評価手法の確立、レベル2++車両の優良認定制度創設と普及促進、自動運転車のサイバーセキュリティ対策の推進などを進めていく。

バスやタクシーにおいては、AIの活用など高度な自動運転システムを搭載したレベル4及びレベル2++の運転支援機能を活用した社会実装に向けた取り組みについて、優良事例として横展開できる事業をより強力に支援するとともに、自動運転車との連携が可能な運行システム等を実現するため、デジタル化・標準化などの地域交通DXを推進する。

加えてレベル2++に関しては、旅客自動車運送事業者のみならず公共ライドシェアなど二種免許がなくとも運行可能な交通形態における利用も含めた促進を図る。


トラックにおいては、高速道路におけるレベル4自動運転トラックの社会実装に向け、輸送効率を向上させるための遠隔監視による1対N運行の実証を含めた事業支援を行う。

E2Eの開発に関しては、大規模な学習用データや計算資源の確保が重要となるため、開発を効率化するためのデータエコシステムの構築や、事業者がE2Eを開発する上で必要となる計算資源の調達などを支援する。

また、E2EにおいてはAIの判断根拠がブラックボックス化しやすい課題があるため、国際動向を踏まえつつシミュレーションなどを活用した安全性評価手法・開発手法を確立するとともに、E2Eによる自動運転を補助する機能のあり方や、E2Eがハードウェアを的確・安全に挙動させられるかの検証方法についても検討する。

レベル2++車両に関しては、一定の安全性や運転支援機能を有することを国が性能認定する「優良認定制度」を2026年中を目途に創設し、搭載車両の普及を促進する。

出典:デジタル庁(※クリックorタップすると拡大できます)
出典:デジタル庁(※クリックorタップすると拡大できます)

■自動運転レベル3の現況と未来

自動運転レベル3とは?

自動運転レベル3は「条件付き運転自動化」と定義されている。アクセルやハンドル操作など、人間のドライバーが担う自動車操作を、一定条件下において自動運転システムがすべて代替する自動運転機能だ。

例えば、高速道路における渋滞走行時など、自動運転システムがあらかじめ定めたODD(運行設計領域)内において、アクセル・ブレーキ・ハンドル操作といったすべての操作をコンピュータが行ってくれる。

ADASに相当する自動運転レベル2の場合も、コンピュータがアクセル・ブレーキ・ハンドル操作を行ってくれるが、これはあくまで補助機能としての運転支援システムであり、ドライバーは常に車両周囲の状況を監視していなければならない。

しかし、自動運転に相当するレベル3になると、ドライバーは常時前方監視義務がなくなり、システムが正常に作動している限り車両周囲から目を離すことが可能になる。

ただし、ODD内であっても、システムが何らかの理由で作動継続困難となる可能性がある。その際、システムはドライバーに対し運転交代要請を発し、ドライバーは迅速にこれに対応しなければならない。

この運転交代要請の有無がレベル4との違いとなる。レベル4は、ODD内であれば原則自動運転を完遂する能力が求められ、万が一の際も人間の手に頼ることなく車両を安全な場所に停車するなどの機能が必要となる。

つまり、レベル4では無人運転が可能となり、効果的な自動運転サービスを提供することができる一方、レベル3はドライバーの存在を前提とした自動運転のため、サービス用途にはあまり向かない。お試し程度の自動運転技術と言える。

ホンダが先陣切るも……各社は足踏み状態に

ホンダが発売したレベル3乗用車「新型LEGEND」=出典:ホンダプレスリリース

日本では、道路交通法と道路運送車両法の改正によって2020年4月にレベル3が解禁された。これを受け、ホンダが世界初となるレベル3搭載市販車・レジェンドを2021年3月にリース限定発売した。

その後、メルセデス・ベンツやBMWが追随するなど、自動車メーカー各社の既定路線になるかと思われたが、実装延期・開発とん挫が相次ぎ、業界全体の熱が下がったかのように感じる。中国系メーカーは意欲的なようだが、ボルボ・カーズやステランティスのようにレベル3計画が宙に浮いてしまった例も少なくない。

GM、フォード勢は2028年にレベル3の市場投入を改めて計画しているが、紆余曲折する可能性も考えられる。

レベル3市場はなぜ広がりを見せないのか。その背景には、宙ぶらりんな位置づけと費用対効果、E2E技術の台頭などが見え隠れする。

レベル3は需要がない?

前述したように、レベル3はシステムから要請があった際、ドライバーは直ちに運転を引き継がなければならない。自動運転としては中途半端なレベルと言える。では、最初から需要がなかったのか……と言えば、そうでもない。

自家用車における自動運転は、ドライバーと自動運転技術の共存が必須となる。また、自家用車は原則どこでも走行可能なため、レベル4導入におけるODDを設定しづらくハードルが高い。こうした点を踏まえ、まずはレベル3から段階的に……という流れが存在する。

自家用車にいきなりレベル4を導入するのは、技術的にも受容性の面でもハードルが高すぎるため、まずはレベル3を……という流れが確かに存在するのだ。お試し自動運転のような格好で社会実装を開始し、徐々に高機能化していくイメージだ。

ただ、お試しとは言え自動運転中は運転の全責任をシステムが担うため、安全面において一切の妥協は許されない。最新システム機器が当然のように装備され、それは販売価格・オプション価格にそのまま反映される。

主にフラッグシップ車に搭載されており、購買層を踏まえれば多少の高価格は受け入れられると思われるが、いまいち振るわない印象が強い。おそらく、費用対効果を考慮するうえで、効果・効用の満足感が薄いのではないかと思われる。

当初のレベル3は、高速道路渋滞時に限定されており、使用可能なシチュエーションが著しく限られていた。毎日のように渋滞する高速道路を走行するユーザーしか恩恵を受けられないODDで、需要が少ないのは明らかだ。

メルセデスは制限速度を満たすODDにアップデートし、一定の需要をつかんでいるようだが、ホンダは限定販売後はレベル3市場から撤退したままで、BMWもレベル3の新規展開を中止している。

都市間の移動距離が長い米国などでは一定の需要が見込めそうだが、普及技術とするには、費用対効果などを考慮すると懐疑的にならざるを得ないのかもしれない。

E2Eの台頭で状況が変わった?

もう一つ、自動車市場に大きな影響を及ぼし始めているE2E技術の存在も背景にありそうだ。E2Eモデルによる自動運転は、走行エリアに条件を付さないレベル5相当の技術実現に期待がもたれるが、その前段階として「レベル2++」の実用化が始まっている。

いわゆる「どこでもハンズオフ」機能で、自動運転ではなくあくまでADASに留まるものの、市街地・高速道路を問わずどこでもハンズオフが可能になる技術は利便性が高く、インパクトも大きい。

ルールベースに基づくレベル3を進化させていくより、需要の高いレベル2++に力を入れ、業績を上げながら将来的なレベル4~5を目指す方が理に適っている――とする戦略の変化が水面下で起こっているのではないだろうか。

技術的な難易度は高いが、レベル3よりもレベル2++のほうが普及を図りやすく、大きな需要が見込まれる。これに乗り遅れると、将来に渡ってシェアを失いかねない。

現状、テスラと中国新興勢以外でレベル2++を実現しているメーカーはおらず、オールド系自動車メーカーはレベル2+がやっとの状況だが、中国自動車メーカーや英Wayveと手を組む日産のように、新興勢とタッグを組んでレベル2++実装を目指す動きも出始めている。

業界全体が新たな局面を迎えつつあるのだ。では、レベル3は今後廃れていくのか……と言えば、そうとも限らない。ルールベースではなく、E2Eベースのものとして改めて登場する可能性が考えられる。

レベル2++の進化の過程で、「どこでもレベル3」が実装される可能性は十分考えられる。あるいは、安全を確保しやすい高速道路でレベル4、市街地ではレベル3……といったパターンもあるだろう。

自家用車において、いきなり市街地でレベル4~5相当の自動運転を実現できるか?――と問われると、信頼を重視する自動車メーカーとしてはなかなか足を踏み出しにくい面もあるのではないか。そこでレベル3をクッションとして実装する……といった戦略はアリと思われる。

目線を変え、サービス車両向けとしては、長距離トラックやバスに適している面もある。しかし、その間ドライバーは睡眠をとることもできず、手持無沙汰に運転席に座り続けることになる。これはかえって苦行となるかもしれない。であるならば、レベル2+やレベル2++のほうが適度に集中力を維持しやすいのではないだろうか。

いずれにしろ、ルールベースの従来型レベル3は発展形が乏しく、E2Eを活用した技術にシフトしていくのは自然な流れと言える。各社の戦略が分かれるところかもしれないが、旧来の技術に固執していては近い将来訪れるだろう自動運転時代に埋没するのは明白となる。各社はどのような道をたどっていくのか、それぞれのビジョンに注目したいところだ。

自動運転開発における「ルールベース」「E2Eモデル」を解説!開発事業者の動向やトレンドも

■【まとめ】既存のレベル3よりもE2E開発が王道に?

戦略上、ルールベースに基づく既存のレベル3よりも、開発トレンドになりつつあるE2E技術を磨き、レベル2++、ひいてはレベル4~5を目指す――という道が王道となった印象を受ける。

E2E自動運転の実現が現実味を帯び始めている中、そこに注力しなければ短期的にも長期的にもシェアを失いかねない状況となっている。開発で先行するスタートアップ勢の戦略にも左右されるところで、テック系企業が自家用車市場でも存在感を大きくする日はそう遠くないのかもしれない。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




関連記事