愛知の米国系ロボタクシー、やっぱり「トヨタ絡み」と判明

May Mobilityは出資先



出典:Flickr / DennisM2 (CC0 1.0 : Public Domain)

Waymoの進出で大きく動き出した日本国内における自動運転タクシー事業。Waymo一強を阻止すべく英Wayveが開発を加速し、ティアフォーやnewmoら日本勢も負けじと取り組みを進めている状況だ。

このような状況下、トヨタのお膝元である愛知県で粛々と実証を重ねている企業がいる。米May Mobilityだ。Waymoらに比べると目立たない存在かもしれないが、トヨタが出資する有力スタートアップで、いち早く日本市場に参入した貴重な存在でもある。


国内企業と強く結びつき、実証を本格化させているMay Mobility。その最新動向に迫る。

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■May Mobilityの最新動向

オンデマンド自動運転=疑似ロボタクシーサービスを継続実証

出典:愛知県公式サイト

愛知県名古屋市では、2026年9月から約半年間にわたり、オンデマンド方式による自動運転サービス実証が行われる。

NTTドコモビジネスが幹事企業を務め、NTTモビリティ、NTTドコモ、May Mobility、名古屋鉄道、名鉄タクシーホールディングス、名鉄交通第一、名鉄交通第二、日本教育財団、名古屋造形大学が協業し、名古屋市都心部の複雑な交通環境下において、STATION Ai、名古屋駅前、愛知芸術文化センター、IGアリーナ前、FUJIなごや科学館の5地点を乗降場とするオンデマンド運行を行う。

5地点間を自由に移動できるサービスだ。5地点を結ぶルートは往復含め計20ルートで、延べ約33キロに上るという。乗降スポットが10カ所、20カ所と増加していけば、タクシーサービスに近い移動サービスとなっていく。May Mobilityはもともとこうしたオンデマンド自動運転サービスを米国で展開していた実績を有する。


NTTグループやMay Mobilityらは、昨年度も3地点を結ぶ自動運転実証を行っており、タクシーに近いオンデマンド運行による実証を行うことで、技術面の検証や運行オペレーション上の課題抽出、社会受容性の調査のほか、車内における対話AIキャラクターの活用による顧客体験の向上を図る実証を進めるとしている。

対話AIキャラクターの活用は、将来的な無人移動サービスを想定したものだ。ドライバーが乗車しない車内において、利用者が安心して移動できる環境の実現を目指し、車内に設置したタブレットシステムで対話AIキャラクターが案内する。

アンケートから利用者の乗車目的や知りたい情報を把握し、対話AIキャラクターによる自然なコミュニケーションを通じて、必要な情報を適切なタイミングで提供し、顧客体験の向上を図る検証を行うという。

車両は、トヨタのミニバン「シエナ」にMay Mobility製の自動運転ソフトウェアを搭載したものを3台導入する。セーフティドライバー以外に利用者5人が乗ることができる。最高速度は時速48キロで、実勢速度に合わせて設定する。


利用は無料で、専用アプリとなる「なごやMaaSアプリ『デライド』」と自動運転ソフトウェアを連携させ、利用者の予約に合わせて各乗降地点に最適に車両を配車する。

■May Mobilityの概要

数々の日本企業と協業

Waymoほどの知名度を有しないMay Mobilityだが、海外自動運転開発スタートアップの中では、ずば抜けて日本との関連性が高い企業だ。

2017年に同社を創業したCEOのEdwin Olson氏は、トヨタの北米開発拠点トヨタ・リサーチ・インスティテュート(TRI)で共同ディレクターを務めた経歴を持つ。

May Mobilityの経営陣=出典:May Mobility公式サイト

こうした縁があってのことだろうか、トヨタをはじめとする日本企業からの出資が非常に多い。2018年のシードラウンドと翌年のシリーズAにはトヨタベンチャーズが参加しており、同年のシリーズBではトヨタ自動車が5,000万ドル(約54億円)出資している。

2022年には、ソフトバンクやブリヂストン(ブリヂストン・アメリカス)、未来創造基金、スパークスグループ、東京海上ホールディングス、2023年にはNTT、あいおいニッセイ同和損害保険、2024年には東京センチュリー、2025年には伊藤忠商事、三菱UFJ銀行――などがそれぞれ出資や協業を発表している。これだけ日系企業と縁を持つ海外スタートアップは珍しい。

May Mobilityも早々に日本法人を立ち上げ、トヨタとソフトバンクの合弁MONET Technologiesとともに2021年に東広島市で実施された実証に参加するなど、本国以外への進出を図っている。ある意味、Waymoよりも早くグローバル路線にかじを切っていたのだ。

May Mobilityはこのほか、2023年にソフトバンクが東京都港区竹芝で実施した実証や、2025年にMONET Technologiesが東京臨海副都心で実施した実証などにも参画している。

愛知県の取り組みにはいずれトヨタが絡んでくる?

NTTは、出資を通じてMay Mobilityの自動運転システムの国内独占販売権を獲得しており、2024年度から名古屋市内で実証を重ねている。

この名古屋での実証は前述のとおり継続されており、NTTグループが注力する自動運転事業だ。トヨタは直接関わっていないが、出資の関係などもありおそらくMay Mobilityは今後もトヨタ車を使い続けるものと思われる。過去には、May Mobilityの技術を搭載したe-Paletteの実証なども行われている。

また、NTTとトヨタは「モビリティAI基盤」の共同開発・運用に向け協業を進めている。2030年までに5,000億円規模の投資を見込んでおり、2025年以降にモビリティAI基盤の開発をスタートし、2028年ごろからさまざまなパートナーと三位一体のインフラ協調による社会実装を開始する計画としている。

愛知県はトヨタのお膝元であることを踏まえると、同エリアの自動運転サービスにさまざまな観点からトヨタが絡んでくる可能性は高いのではないだろうか。

ソフトバンクグループ(MONET Technologies)との兼ね合いで、トヨタは表立って活動しない……と邪推することもできるが、NTT×トヨタの組み合わせはとてつもない影響力を発揮する。愛知県の動向に引き続き注目したいところだ。

自動運転システムは予測機能を充実させたE2E系モデル?

May Mobilityの自動運転システムは、予測型世界モデルとリアルタイム推論エンジンを融合させることで、車両が目の前の状況を理解し、それを推論する能力を備えている。

同社によると、広く普及・実用化されているモジュール式の自動運転スタックや、純粋なエンドツーエンド(E2E)モデルとは根本的に異なるアーキテクチャという。

モジュール式の自律走行システムは、事前に訓練された状況には適切に対応できるが、その範囲外では苦戦を強いられるため、業界は膨大な時間、距離、そして費用をかけ、より多くのデータを収集するという解決策をとってきた。

しかし、May Mobilityはあらゆるシナリオを事前に想定しておくことにすべてを賭けるのではなく、車両が目の前の状況をリアルタイムで分析し、瞬時に状況認識を更新する。その結果、他の手法に必要な何十億マイルもの走行距離と莫大な費用をかけずに、新たな地域や新たな道路形態、複雑な都市環境にも対応できる自律走行システムを実現したという。

May Mobilityが統合した世界モデルは、物理学、交通規則、そして歩行者とドライバーが実際にどのように相互作用するか――という暗黙の慣習から抽出された情報に基づき、道路上でその瞬間に何が起こっているのかを詳細に理解する。

このモデルを繰り返し適用し、次に何が起こるかを予測する。車両は200ミリ秒ごとに最大10秒先までの何百もの可能性のある未来をシミュレーションし、各ドライバーや歩行者、自転車利用者の行動が他の人々の行動にどのような影響を与えるかを予測する。

また、同社の推論エンジンは、ディープラーニングモデルによって生成されたものを含む複数の候補戦略を組み合わせ、選択を実施するマルチポリシー推論エンジンとなっている。

各候補は、世界モデルによって生成されたシミュレーション上の未来に基づいて評価され、安全パラメータを満たさない行動はすべて却下される。シナリオに最も適切に対応できる戦略が車両の制御権を獲得する仕組みだ。

これは、車両が行うすべての動作が正当なものであり、その発生源まで追跡可能であることを意味する。このような追跡可能性は、単一の不透明なモデルから意思決定が行われるシステムよりも、より安全な運用を実現する上で優れているという。

May Mobilityの自動運転システムは、センサー情報をもとに直接判断・制御を行うが、高性能な予測技術により複数の未来を想像することで、ブラックボックス化しやすい感覚的な判断ではなく、説明可能な判断で最善を選択する――といったイメージだ。

改造トヨタ車、米で「完全無人」の自動運転シャトル化 May Mobilityが商用運行

■【まとめ】競争の波に乗ることができるか注目

オンデマンドサービスから開始し、徐々に乗降スポットを増加して疑似ロボタクシーへと進化させていく戦略と思われる。日産のEasy Rideも同様のサービスで、安全性を担保しながらサービスインし、拡大していく手法としては有用と思われる。

今後は、どのタイミングで無人化できるかに焦点が当てられそうだ。Waymoらライバル勢の動きはおそらく2027年中に活発化し、競争激化が予想される。その波にMay Mobilityもしっかり乗ることができるか、今後の動向に引き続き注目したい。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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