自動運転の実現時期、日本政府の計画をセグメント別に解説

自家用車、物流サービス、移動サービス…



社会実装に向けた取り組みが加速し続ける自動運転技術。国は2015年度から毎年「官民ITS 構想・ロードマップ」を策定し、早期実現に向けた計画のもと官民協働体制で事業を推し進めている。

2021年10月現在、計画の進捗状況はどうなっているのか。この記事では、官民 ITS 構想・ロードマップをベースに成長戦略実行計画などを交え、これまでの取り組みの成果と今後の計画について「自家用車」「物流サービス」「移動サービス」「自動配送ロボット」のセグメント別に解説していく。







▼官民ITS構想・ロードマップ2020(2020年7月15日)
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/kettei/pdf/20210615/roadmap.pdf

自動運転システムの市場化・サービス実現目標(期待時期)と評価=出典:首相官邸(タップorクリックすると拡大できます)
■自家用車
高速道路におけるレベル4は2025年をめどに

自家用車においては、一般道路での運転を支援するレベル2を2020年まで、高速道路におけるレベル3を2020年めど、レベル1~2の高度化を2020年代前半、高速道路におけるレベル4を2025年めどに実現する目標を掲げている。

一般道路におけるレベル2は、国道など主要幹線道路において直進運転が可能な運転支援機能(アダプティブクルーズコントロール+レーンキープアシスト)は登場しているが、信号や交差点の通過を支援する機能は未実装となっている。

レベル3をめぐっては、改正道路交通法及び改正道路運送車両法を2020年4月に施行したほか、2021年3月に高速道路渋滞時における自動運転システムを搭載したホンダの「レジェンド」が市場化されている。

高速道路におけるレベル4に向けては、民間において車両技術の研究開発が進められており、レベル4におけるビジネス価値を検討中としている。

また、高速道路上の合流部などにおける道路側から情報提供を行うV2I(路車間通信)の仕組みなどの検討や、高速道路における自動運転車や高度なレベル2技術を搭載する自動車などの走行環境構築に向け、2021 年から官民連携による路車協調に関する実証を行い、その結果を踏まえ必要な情報提供システムの仕様策定を進めていく。

【参考】レベル3の開発動向については「自動運転レベル3とは?定義は?ホンダが先行、トヨタや日産は?」も参照。

■物流サービス
後続車有人隊列走行技術は商用化へ

物流サービスにおいては、物流の効率化・人材不足の解消を目的に、高速道路でのトラックの後続車有人隊列走行を2021年まで、後続車無人隊列走行を2022年度以降に実現する目標を掲げている。

有人隊列走行関連では、日本自動車工業会に所属する日野、いすゞ、三菱ふそうトラック・バス、UDトラックスの大型車メーカー4社が各社の技術開発をはじめ協調技術の確立に取り組んでおり、定速走行・車間距離制御装置(ACC)に車線維持支援装置(LKA)を組み合わせた後続車有人システムの商品化を、2021年をめどに商品化する。

また、発展型として割込車や登坂路、車線変更などにも対応したより高度な車線維持機能を加えた技術開発・商業化を目指すこととしている。

後続無人隊列走行関連では、新東名高速道路の長泉沼津IC~浜松いなさIC間約140キロの区間で実証実験を進め、2021年2月に後続車の運転席を実際に無人とし、助手席に保安要員を乗せる形で3台の大型トラックが時速80キロで車間距離約9メートルの車群を組んで走行することに成功している。

高速道路におけるレベル4自動運転トラックは2025年度以降に

今後の取り組みとしては、2025年度以降の高速道路におけるレベル4自動運転トラックの実現を目指し、高性能トラックの運行管理システムについて検討を進めていくほか、新東名・新名神の6車線化によって三大都市圏を繋ぐダブルネットワークの安定性・効率性を向上させるとともに、新東名の静岡県区間を中心に本線合流部での安全対策や既存の SA・PA の拡幅などの実証環境整備を進めるなど、インフラ面の整備も進めていく方針だ。

■移動サービス
専用走行空間においてはレベル4相当を達成

移動サービスの領域では、レベル4による無人自動運転移動サービスを2020年までに限定地域で実現する目標を掲げていたが、2017年度から道の駅などを拠点とした自動運転サービスの実証を続けてきた秋田県北秋田郡上小阿仁村の道の駅「かみこあに」で2019年11月に自動運転サービスの本格導入が始まっている。なお、運行形態として、公道においてはレベル2で走行している。

また、車内保安要員を置かず、遠隔から1人が3台を監視するレベル3の無人自動運転移動サービスも福井県永平寺町で2021年3月にスタートしている。

高速バス関連では、レベル2以上の運転支援・自動運転技術の実装を2022年度以降に進めていく。宮城県気仙沼BRTの専用道区間では、レベル3実装を目指す実証が2021年1月から行われているほか、ひたちBRTの専用道区間では、インフラ連携を組み合わせたレベル2実証が進められている。

【参考】かみこあにの取り組みについては「道の駅と集落結ぶ自動運転サービス、商用化が決定!まず秋田で」も参照。永平寺町の取り組みについては「誘導線を使う自動運転レベル3で移動サービス!福井県永平寺町でスタート」も参照。

混在空間におけるレベル4は2025年度頃を想定

今後は、2022年度をめどに限定地域における遠隔監視のみのレベル4無人移動サービスを実現し、2025年度をめどに同サービスの展開を40カ所以上に拡大していく。この目標に向け、2021 年度中に実証に資するガイドラインを策定するほか、ドライバーの存在を前提としないレベル4の自動運転を想定した制度設計や、車両の技術開発、ODD(運行設計領域)の類型化、事業モデルの構築、インフラ整備の在り方、その他技術的制度的課題の解決を図り、効率的な横展開を行っていく方針だ。

また、2025 年までに空港の制限区域内でレベル4自動運転を導入するため、2021 年度から成田空港で実証実験を開始し、技術的な検証を行うとともに、必要となるインフラや運用ルールを検討し、2024 年までに指針・ガイダンスの改正などを行っていく。

混在空間におけるレベル4実現は2025年度頃を見込んでおり、地域の特性別にユースケースを整理し、協調型システムの導入を検討するほか、多様なモビリティの活用も視野に入れた事業モデルやデータ連携スキームの検討などを進めていく。

また、研究開発から実証実験、標準化、事業化まで一貫して進めることが可能な産学官研究機関による国際連携拠点の構築も目指すこととしている。

■自動配送ロボット
2020年を境に取り組みが急加速

歩道を前提に低速走行する自動配送ロボットをめぐっては、道路交通法や道路運送車両法など制度上明確な位置付けが行われていなかったことから実用化に向けた国内の動きは非常に鈍く、2020年4月に監視・操作者が近くで見守りながら追従する「近接監視・操作」型に限り、歩道走行を含めた公道実証を行うことができる枠組みが整備されるにとどまっていた。

このような中、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い宅配需要が急増し、非接触型の配送ニーズが高まったことで状況は一変する。2020年5月開催の未来投資会議において、当時首相を務めていた安倍晋三氏が早期実現を促す発言を行い、遠隔監視・操作型の公道走行実証を可能な限り早期に実現するとともに、その結果を踏まえ制度設計の基本方針を決定する目標が掲げられた。

その後、公道実証においては自動運転の公道実証実験に係る道路使用許可基準を準用して道路使用許可を得るなど手続き関連の整備が進み、また「自動走行ロボットを活用した新たな配送サービス実現に向けた技術開発事業」がスタートしたことを受け、同年秋頃に公道実証が一気に加速し始めた。

2021年6月には、警察庁が「特定自動配送ロボット等の公道実証実験に係る道路使用許可基準」を発表し、一定の走行実績があるロボットの許可審査を一部簡素化している。

2021年度内に関連法案提出も

2021年6月発表の「官民 ITS 構想・ロードマップ これまでの取組と今後の ITS 構想の基本的考え方」では、遠隔監視下での複数台同時走行実現に向け、自律走行技術など関連技術の開発に取り組み社会実装を促進し、既存の交通ルールなどの在り方について制度の見直しを行うことが明記された。

また、成長戦略実行計画においても、機体の安全性・信頼性の向上が図られるよう、産業界における自主的な基準や認証の仕組みの検討を促すことなどを前提に、年度内のできるだけ早い時期に関連法案の提出を行うこととしている。

【参考】自動配送ロボットをめぐる国の動向については「首相が喝!自動運転配送ロボの公道実証「2020年、可能な限り早期に」」も参照。

■【まとめ】自動運転技術は2025年ごろに本格実装スタート

自家用車や移動サービスなど、各セグメントでおおむね計画通りに進んでいることが分かった。今後、専用道路や限定空間における自動運転サービスが徐々に増加し、2025年ごろをめどに混在空間や高速道路などにおける自動運転技術の本格的な実装が始まる見込みとなっている。

その間、実証の高度化やレベル4に向けた法改正なども随時進められていく。引き続き国や各企業の動向に注目したい。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)









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