【資料解説】自動運転レベル4を解禁する「道路交通法改正案」

新定義「特定自動運行」「遠隔操作型小型車」とは?



政府はこのほど、無人運転による自動運転レベル4や自動走行ロボットの公道走行を可能にする道路交通法の改正案を閣議決定した。第208回国会に提出され、衆参両院で審議される。







レベル3を盛り込んだ前回の改正法可決から約3年。今度はレベル4に向けた道が開かれることになる。

この記事では、警察庁が公開している提出法案をもとに、自動運転関連の改正内容について解説していく。

■自動運転レベル4関連
新たに「特定自動運行」を定義

改正案では、レベル4による運行を「特定自動運行」とし、従来の「運転」の定義から除くこととするなど、特定自動運行の定義などに関する規定を整備することとしている。

特定自動運行は、車両が整備不良に該当することになった際や自動運行装置が使用条件を満たさなくなった際に、「直ちに自動的に安全な方法で当該自動車を停止させることができるもの」であり、「運行中の道路、交通及び当該自動車の状況に応じて当装置を操作する者がいる場合を除く」条件のもと、その自動運行装置を備えた自動車で同装置を使用して運行することを指す。

つまり、ドライバーなしの状態で運行し、万が一の際などに手動介入することなく自動で安全に停止可能なレベル4による運行を「特定自動運行」とし、従来の「運転」には該当しないものと位置付けたのだ。

運行実施者は特定自動運行主任者を指定

この特定自動運行を行う者は、「特定自動運行計画」を記載した申請書を管轄する都道府県公安委員会に提出し、許可を受けなければならない。公安委員会は、特定自動運行計画が一定の基準に適合するかどうかを審査するほか、危険防止の観点からその他交通の安全と円滑を図るため必要な条件を付することができる。

特定自動運行を実施する者は「特定自動運行主任者」を指定し、特定自動運行を管理する場所に配置するなどしなければならない。特定自動運行主任者は、道路において特定自動運行が終了した場合の措置などに関する規定を整備し、運行終了時に一定の措置を講ずべき事由の有無などを確認しなければならない。

行政処分関連では、公安委員会による特定自動運行実施者に対する指示と特定自動運行の許可取消しや効力停止の規定を設けることとしたほか、警察署長による特定自動運行の許可の効力の仮停止の規定を設けることとしている。

【参考】自動運転関連の法律については「自動運転と法律・ガイドライン(2022年最新版) 日本における現状解説」も参照。

■自動走行ロボット関連
新たに「遠隔操作型小型車」を定義 人の移動も視野に

自動走行ロボット関連では、「遠隔操作型小型車」の交通方法などに関する規定が整備される見込みだ。

人または物の運送の用に供するための原動機を用いた小型車で、遠隔操作によって通行させることができるもののうち、車体の大きさや構造が歩行者の通行を妨げるおそれのないものとして一定基準に該当するものであり、かつ一定基準に適合する非常停止装置を備えているものを「遠隔操作型小型車」と定義した。

遠隔操作には、衝突防止のため自動的に当該車の通行を制御する装置を使用する場合を含むとされており、いわゆる自動運転機能を備えた「自動走行ロボット」が含まれるものと解される。

また、人の移動も明記されていることから、モノを運搬する自動配送ロボットに限らず、自動運転車いすの公道走行なども視野に入れているようだ。

歩道や路側帯を走行、届け出制を導入予定

遠隔操作型小型車は、歩道または歩行者などの通行に十分な幅員を有する路側帯と車道の区別のある道路においては、歩道または路側帯を通行しなければならないこととするほか、遠隔操作を行う者は、遠隔操作型小型車について遠隔操作のための装置を確実に操作し、かつ道路や交通、遠隔操作型小型車の状況に応じて、他人に危害を加えないような速度と方法で通行させなければならないこととするなど、遠隔操作型小型車の通行方法に関する規定を整備することとしている。

遠隔操作型小型車の使用者は、管轄する公安委員会に届出を行い、届出番号など識別するための番号・記号などを遠隔操作型小型車の見やすい箇所に表示しなければならない。

警察官や交通巡視員は、遠隔操作型小型車が著しく道路交通に危険を生じさせ、または交通を妨害するおそれがある際は、急を要すると認めたときに限り必要な限度において停止や移動などの措置を講じることができる。

電動車椅子相当の要件が適用される?

遠隔操作型小型車のサイズや速度などについては、別途道路交通法施行規則や通達などで定められるものと思われる。

自動走行ロボットを活用した配送の実現に向けた官民協議会などにおけるこれまでの検討状況を踏まえると、最高時速6キロで、車体の大きさは長さ120×幅70×高さ120センチと現行の電動車椅子相当の要件が適用されそうだ。

同要件は、2021年6月に整備された「特定自動配送ロボット等の公道実証実験に係る道路使用許可基準」でも採用されている。

歩道や路側帯、これらがない場所では道路の右側端を走行し、交差点などは歩行者の交通ルールに従うほか、原則として歩行者に進路を譲る走行ルールとなる見込みだ。

【参考】自動走行ロボットについては「宅配ロボの自動運転化、「遠隔(現地無人)」という重要ステップ」も参照。

■その他の内容:電動キックボードなどについて

改正案にはこのほか、特定小型原動機付自転車に関する規定や、特定免許情報の個人番号カードへの記録に関する規定なども盛り込まれている。

特定小型原動機付自転車は、車体の大きさや構造が自転車道における他の車両の通行を妨げるおそれのないもので、かつその運転に関し高い技能を要しないものである車として一定の基準に該当するものと定義されている。自転車道を通行することができる

また、このうち車体の構造が歩道などにおいて歩行者の通行を妨げるおそれがなく一定基準を満たし、歩道通追う可能である表示をしているものは「特例特定小型原動機付自転車」と定義し、道路標識などによって歩道通行可能とされている場合には、歩道と車道の区別がある道路でも歩道などを通行することができることとしている。

電動キックボードなどを想定した新たな定義だ。運転免許は不必要だが、16歳未満の運転を禁じることとし、乗車用ヘルメットの着用を努力義務として課している。

従来の原動機付自転車の分類から緩和され、利用促進が図られそうだ。MaaSを構成する新たなモビリティの登場に期待したい。

【参考】電動キックボードについては「自民党MaaS議連で議論された「電動キックボード規制緩和」の提言とは?」も参照。

■施行予定日は?

無人のレベル4走行を可能にする特定自動運行関連と自動走行ロボットなどの遠隔操作型小型車関連は公布から1年以内、電動キックボードなどの特定小型原動機付自転車は公布から2年以内にそれぞれ施行される。

2022年夏ごろまでに国会で法案が可決されれば、自動運転関連は2023年4月ごろに施行される可能性が高そうだ。

■【まとめ】レベル4実用化に向けた取り組みが加速する1年に

レベル4移動サービスの実証は、福井県永平寺町のような車道以外を走行するエリアで2022年度中に始まる可能性が高い。その後、2023年度に入って改正法施行とともに拡大していくものと思われる。

今後、道路運送車両法や道路運送法など関連する法改正が続く可能性もある。自動配送ロボットも実用化に向けた取り組みがますます加速していくことになりそうで、レベル4実証の動向とともに注目必須の1年となりそうだ。

▼要綱|道路交通法の一部を改正する法律案
https://www.npa.go.jp/laws/kokkai/01_youkou.pdf
▼案文・理由|道路交通法の一部を改正する法律案
https://www.npa.go.jp/laws/kokkai/02_anbun.pdf
▼新旧対照表|道路交通法の一部を改正する法律案
https://www.npa.go.jp/laws/kokkai/03_shinkyuutaishouhyou.pdf
▼参照条文|道路交通法の一部を改正する法律案
https://www.npa.go.jp/laws/kokkai/04_sanshoujoubun.pdf
▼参考資料|道路交通法の一部を改正する法律案
https://www.npa.go.jp/laws/kokkai/05_sankoushiryou.pdf

※自動運転ラボの資料解説記事は「タグ:資料解説|自動運転ラボ」でまとめて発信しています。

【参考】関連記事としては「自動運転レベルとは?定義・呼称・基準は?」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)









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