自民党MaaS議連で議論された「電動キックボード規制緩和」の提言とは?

早期規制緩和に向け取り組み加速





出典:Luup社プレスリリース

自由民主党のMaaS推進議員連盟は2020年6月、電動キックボード事業者出席のもとマイクロモビリティPT(プロジェクトチーム)を開き、規制緩和に向けた提言をまとめていくことを決定し、提言案を発表した。

2021年前半を目途に特例措置の在り方に一定の結論を求めることとしており、政府与党による後押しで電動キックボードの社会実装に向けた取り組みが加速するものと思われる。







今回は、提言案の概要とともに、電動キックボードを取り巻く現状の課題についてまとめてみた。

■MaaS議連とは?

新しいモビリティサービスの普及促進を目的に自由民主党が2019年5月に発足した議員連盟で、正式名称は「モビリティと交通の新時代を創る議員の会」という。通称「MaaS推進議員連盟」と呼ばれている。

都市部における道路混雑や人手不足、地方部における高齢化や公共交通のサービス縮小といった社会的課題の解決を目指し、政治主導のもと国や自治体、企業、大学などが連携し、次世代モビリティ社会を見据え新しいモビリティサービスの普及促進を図っていく。

自民党所属の衆議ら30数名が発起人に名を連ね、甘利明衆議が会長を務めている。

■MaaS議連による提言案

「電動キックボードの普及に向けた規制緩和等に関する提言(案)」では、前置きとして電動キックボード導入の利点や現状の課題について触れている。

その上で利点として、電動キックボードが欧米を中心に手軽な交通手段として近年急速に普及している点や国内でもラストワンマイル問題を解決する手段の一つとして期待されている点、また新型コロナウイルス感染拡大を予防する「新しい生活様式」において、オープンエアーで一人乗りの電動キックボードは「三つの密」を避ける有効なモビリティである点を挙げている。

一方、日本では電動キックボードが道路交通法や道路運送車両法において「原動機付自転車」と位置付けられていることから、手軽に利用できる環境が整備されておらず普及を妨げているとして、安全性と利便性のバランスを考慮した上で規制緩和することが必要であるとし、関係省庁に以下3項目の対応を求めることとした。

①欧米並みの電動キックボードの普及を目指し、警察庁、国土交通省、経済産業省等の関係省庁が緊密に連携し、支援するとともに可能な限り早期に規制緩和を実現すること

②電動キックボードのシェアリングに関し、2020年秋頃より、電動キックボードが自転車専用通行帯を含めた公道で走行できるよう、生産性向上特別措置法(規制のサンドボックス制度)に基づく実証などを踏まえた上で、関係省令及び告示について、産業競争力強化法に基づく規制の特例措置を講じること

③電動キックボードを更に普及させるため、上記の特例措置の状況を踏まえ、安全の確保に留意しつつ、国家戦略特別区域法に基づく運転者の要件、安全確保装置、走行場所などに関する特例措置について、2021年前半を目途に結論を得ること

まずは実証を促進し、2021年前半を目途に規制緩和に向けた特例措置の在り方に一定の結論を求める方針のようだ。その後、保安基準や走行条件、運転要件など法規制上の見直しを図る動きにつながっていくものと思われる。

提言は、最終的にマイクロモビリティPTの座長(山際大志郎衆議)が取りまとめることとしている。

■マイクロモビリティ推進協議会のコメント

この提言を受け、電動キックボードの社会実装に向け関係事業者が組織したマイクロモビリティ推進協議会は、「日本においても公共交通機関を補完できる移動手段が求められており、マイクロモビリティの社会実装は急務。これまで各事業者は日本各地の私有地を活用して電動キックボードの意義と安全性を検証するための実証実験を行ってきたが、今後は電動キックボードの社会実装に向けた規制緩和の提言を軸に、規制の特例措置に基づいた実証実験の実施に向け引き続き事業を推進していく」とコメントを発表している。

なお、同協議会には2020年6月現在、Lime、mymerit、mobby ride、Luupが名を連ねている。

■現状の課題
原付扱いが普及の足かせに

電動キックボードは2輪~4輪でボードの上に持ち手となるハンドルと電動モーターが付いたコンパクトな低速モビリティだ。2輪で立ち乗りするタイプが主流だが、安定した4輪で座れるタイプなども登場している。

格安モデルは重量10キロ未満で最高時速30キロ未満、1回の充電で10~20キロメートルほど走行できるタイプが多い。シェアリング向けのモデルでは、50キロメートルほど走行できるものも開発されているようだ。

電動アシスト付自転車のようにコンパクトで手軽な交通手段として期待されており、駅から1キロ圏内の移動など、ラストワンマイルにもってこいのモビリティと言える。

その一方、法律上の扱いは「原動機付自転車」となっており、これが足かせとなって普及を妨げている。

電動キックボードは現行法上、原動機付自転車にあたるため、公道における利用には原付免許やヘルメットなどが必要なほか、前照灯や番号灯、方向指示器といった保安基準を満たし、ナンバーを取得して走行しなければならない。

ナンバーを取得してまで利用しようと思う個人がどれほどいるのか?と考えれば、普及の妨げになっていることは想像に難くないだろう。

先行する海外での課題

普及が先行する海外では、別の問題も顕在化している。走行ルールが整備される前に実用化が始まった国では、車道や歩道の区別なく走行する無秩序な運転が横行し、歩行者や自動車との接触など危険性が指摘され、法規制などが後から追いかけるように整備されているケースもある。

また、シェアリングサービスでは、手軽に乗り捨てできるワンウェイ方式が人気を博す中、その手軽さ故場所を選ばずどこにでも乗り捨てする利用者が増加し、こちらも問題視されている。中には、自宅敷地内などに乗り捨てし、独占利用を図るケースも報告されているようだ。

■安全利用目指し規制緩和やルール整備を

安全な社会実装に向けては、原付としての扱いから自転車に近い扱いに変えていくことが近道となりそうだが、いずれにしろ必要装備や走行可能な場所、速度制限などさまざまな観点からルールを整備する必要がありそうだ。

具体的には、ヘルメットの着用を必須とするか、走行区分は自転車と同等とするか、公園などの公共施設内での走行の取り扱いをどうするか、最高速度をどのように設定するか、年齢制限を導入するかなどだ。

危険性のみを指摘し厳しい規制下に置くのはイノベーションを推進する観点からも好ましくない。適切かつ安全な利用を増進するルール作りが肝要なのだ。

■【まとめ】電動キックボードの規制緩和に向けた取り組みが加速

電動キックボードの実証においては、Luupが2019年10月に規制のサンドボックス制度の認定を受けたことが発表され、実証実験に弾みをつけている。

今後、関係省庁の取り組みや研究が加速するとともに実証を行いやすい環境も整備され、社会実装に向けた各社の取り組みがいっそう盛んに行われることになりそうだ。

新たなパーソナルモビリティの本格実用化に期待したい。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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