自動運転バス、肌感覚では「手動運転とほぼ同等」に!長野県塩尻市で無事故運行

ティアフォー製EVバスでレベル2走行



出典:ティアフォー・プレスリリース

自動運転バスの実証実験が長野県塩尻市で今年初旬まで行われ、その結果がこのほど公開された。実証に用いられたのは自動運転開発ベンチャーであるティアフォーが開発した国内初の「量産型」の自動運転EVバス「Minibus」で、一般向けに試乗体験などを行った。

乗客からは「手動運転と自動運転の違いがほとんどない」とのコメントが出ており、優れた自動運転技術に驚いた人も多かったようだ。


この事業では、塩尻市における公共交通の利便性向上と、自家用車から公共交通への利用移行による交通事故の低減のため、2025年度に市内市街地の生活道路において、自動運転レベル4を含む自動運転サービスを社会実装することを目指している。

▼令和5年度自動運転実証調査事業結果について|長野県塩尻市
https://www.city.shiojiri.lg.jp/soshiki/10/42028.html
https://www.city.shiojiri.lg.jp/uploaded/life/42028_89890_misc.pdf
▼【長野県塩尻市】地域公共交通確保維持改善事業費補助金(自動運転社会実装推進事業)の採択について|ティアフォー
https://tier4.jp/media/detail/?sys_id=68COIbAhMHUPLZ24YL2K8d

■塩尻市での自動運転の取り組み

塩尻市では、2020年度から自動運転およびAI(人工知能)活用型オンデマンドバスを含むMaaS実証実験を実施してきた。2022年度からはコミュニティバス(コミバス)路線の一部をAI活用型オンデマンドバスに置き換え、本格運行を行っている。


この取り組みに参画しているのは、長野県塩尻市やティアフォーのほか、自動運転向けの高精度3次元(3D)マップ作製などを手掛けるアイサンテクノロジー、アイサンテクノロジーと三菱商事による共同出資会社であるA-Drive、損害保険ジャパン、日本信号、三菱電機、KDDIなどだ。日本の自動運転開発を率いているトップ企業が集結している。

2023年10月〜2024年1月に、市内中心部における新型EVバス型車両を用いた自動運転レベル2走行実証と、事業性成立検証、受容性向上施策を実施した。

実証走行では、自動運転車両のレベル4走行支援の念頭に、車載センサーの検出範囲外に存在する対向車両の物標情報を自動運転車にリアルタイム通知することで対向車の交通に影響を与えない右折運行を支援した。また、自動運転車の接近を検知し、一般車両に注意喚起を行った。

今回の実証では、自動運転バスは「レベル2」で走行した。運転席には人が座っているものの、ハンドルやアクセル、ブレーキに触れることはなく、自動運転で時速30キロをスムーズに走行したという。


出典:塩尻市公開資料
出典:塩尻市公開資料

■「手動運転と自動運転の違いがほとんどない」

2024年1月に5日間実施された試乗会では、地元高校生や親子連れ、高齢者、視察者など合計436名が自動運転バスの走行を体験した。試乗した人からは、下記のような感想が寄せられた。継続的な試乗希望が多数あり、おおむね好評を得た結果となったようだ。

  • 市街地では30km/時で十分に感じる。加速力もあるし、乗り心地も良い
  • 手動運転と自動運転の違いがほとんどない
  • 市役所ロータリー右折が手動運転のようで驚いた
  • ほとんど自動で走行できている。全国の中でも先進的な例、自動運転レベル2の中でも技術レベルが高い
  • 実装する姿がイメージできる

また、改善点としては「ブレーキがきつい」「手動運転か自動運転かわかりにくい。運転席の様子を見たい」「雪道でも走行できるようにチャレンジして、他の地域でも走れるように頑張ってほしい」といった意見が出ている。

さらに、小中学校を対象にした出前講座・見学会や、高齢者向け講座・車両見学会、ノベルティ・チラシ製作・車両ラッピング、事業PR動画制作も行った。

出典:塩尻市公開資料
出典:塩尻市公開資料

■レベル4走行の実現までもうすぐ

塩尻市での取り組みは、地域公共交通確保維持改善事業費補助金(自動運転社会実装推進事業)に2024年度も採択されている。2022年度と2023年度に続き3度目の採択となった。

2023年度に一般財団法人塩尻市振興公社が購入したティアフォー製Minibusを使用し、塩尻駅・塩尻市役所間において、一般公道混在空間の自動運転レベル4運行(特定自動運行)の実現を目指している。さらに、持続可能な自動運転サービスの確立を目指し、大手小売店などと連携した収益拡大施策を実施し、事業性確立検証を行っていく。

2023年度に引き続き、アルピコ交通のドライバーと自営型テレワーク事業「KADO」人材へ運行オペレーションの技術を移行し、地域人材による運行を行う。またウェブ予約システムによる自動運転車両予約体制を構築し、遠隔監視・運行管理・運行管制システム・信号機連携実証も実施する。

2024年度も、自動運転バスサービス化への取り組みを強化していく。レベル4での運行は2024年12月中、レベル2走行は2025年1月中に実施する予定となっている。自動運転レベル4の実装まで、引き続き注目していきたい。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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