自動運転社会の到来で登場する10のサービス

無人タクシーや無人配送、パトロール、多目的スペース、保険、観光…


無人の自動運転車が市街地や郊外を当たり前のように走行する未来。限定条件下で自動運転が可能となるレベル3(条件付き運転自動化)、レベル4(高度運転自動化)の実現が間近に迫り、10数年後には一切の制約がないレベル5(完全運転自動化)も実現するかもしれない。







レベル5の実現には多くの困難が想定されるが、諦めてしまえば何も変わらない。そこは開発者の努力を信じることにしよう。

さて、自動運転車が実現すると、社会はどのように変わるのだろうか。各個人としては、通勤や買い物、レジャーなどの自動車に関わる日常生活のスタイルが変わっていくことになるが、社会全体としては、自動運転車を活用したさまざまなサービスの誕生が多方面で影響を高めていくことになりそうだ。

自動運転車の実現によってどのようなサービスが登場するのか、すでに実証が進められているものも含め考えてみた。

■①自動運転タクシー

米グーグル系自動運転開発企業のWaymo(ウェイモ)が自動運転レベル4の自動運転タクシーの商用化を2018年12月に開始し、自動運転史に新たな歴史を刻んだ。現状は万が一に備えドライバーが同乗しているが、2019年中には米自動車メーカーのGM(ゼネラル・モーターズ)も米国内で自動運転タクシー参入を予定しているほか、中国やドバイなどでも実現に向けた動きが加速しており、技術やサービス開発は飛躍的に進むものと思われる。

日本国内では、ロボットベンチャーのZMPとIT系のディー・エヌ・エー(DeNA)が積極的だ。ZMPは2014年度にアイサンテクノロジーや名古屋大学とともに自動運転の公道実証実験を愛知県名古屋市で実施したのを皮切りに開発に本格着手し、2018年8月から9月にかけては、タクシー事業者の日の丸交通とともに世界初となる自動運転タクシーの公道での営業サービス実証実験を行った。

今後、タクシー・配車サービスに必要な予約システムや走行車両管理システムなどの技術向上をはじめ、スマートフォンを用いた自動運転タクシーの予約、乗車、決済などユーザー向けサービス面の研究も進めることとしており、東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年を自動運転実現のゴールに見据え開発を進めている。

一方、DeNAは日産自動車と共同で自由な移動をコンセプトに掲げる交通サービス「Easy Ride」の開発を進めており、2018年3月には、一般モニター搭乗のもと、神奈川県横浜市で約4.5キロのコースを往復運行する実証実験を行っている。2020年代早期に無人運転車両による本格的なサービスの提供開始を目指すこととしている。

また、同社はタクシー配車アプリの分野にも注力している。ここで培った配車やキャッシュレス決済などのサービス技術は自動運転タクシーにも応用可能で、事業化の際にはIT系の強みが存分に発揮されそうだ。

【参考】自動運転タクシー業界の動向については「「自動運転×タクシー業界」の最新動向は? グーグルの事業展開や日本における取り組みは?」も参照。

■②自動運転バス

自動運転タクシーとともに真っ先に実現しそうなのが自動運転バスだ。限定領域下で走行する自動運転レベル4は、空港や大規模商業施設の敷地、安全を確保しやすい公道における近距離移動など、不特定多数の人が移動する場面で導入しやすい。また、公道以外では比較的低速で走行可能な条件も揃っているため、導入初期のリスクを低く抑えることもできそうだ。

無料送迎、有料送迎の双方が考えられ、自動運転タクシー同様キャッシュレス決済の導入なども見込まれる。ただ、スマートフォンを利用しない高齢者などが乗車する機会も多いものとみられ、新たな決済手段の導入などもカギになりそうだ。

開発にあたっては全国各地で実証実験が進められており、鉄道やバス事業者をはじめ、ソフトバンクグループのSBドライブ、DeNA、先進モビリティなど開発事業者の裾野が広い。

SBドライブは、仏スタートアップのNavya社製の自動運転バス「NAVYA ARMA(ナビヤ・アルマ)」や中国の百度(バイドゥ)が開発・量産化を進める自動運転バス「Apolong(アポロン)」を活用し、自社開発を進める遠隔運行管理システム「Dispatcher」と連携させて実用化を図っていく構えだ。

【参考】SBドライブの取り組みについては「SBドライブの自動運転戦略は? ソフトバンクグループのベンチャー企業」も参照。

■③観光サービス特化型タクシー・バス

自動運転タクシーやバスを活用し、観光サービスに特化した新たな事業も生まれるかもしれない。

地域の観光名所を自動運転車が自動でめぐり、車内ではデジタルバスガイドが各所を案内し、搭乗者のかんたんな質問にも返答する。さらに、観光施設の混雑状況や営業情報などを発信したり、入場料や地域の飲食店、土産店などで使えるクーポンを発行したりなど、付随するサービスもいろいろ考えられる。観光の新しい目玉として脚光を浴びる可能性も高そうだ。

また、寝泊りできるホテル型の車内でくつろぎながら観光地を移動する「ホテル一体型移動サービス」も考えられる。現在人気の車中泊に代わるサービスと考えれば、意外と需要は多いのかもしれない。

なお、バス業界ではすでに観光ロボットやバーチャルバスガイドなどさまざまな取り組みが実証され始めており、2018年10月に茨城県日立市でスタートした産業技術総合研究所などによる自動運転コミュニティーバスの実証実験では、バーチャルバスガイド機能などを備えた自動運転レベル4のバスを使用し、遠隔運行管理システムや新しい決済システムの実証などをおこなったようだ。

■④自動運転パトロールカー

交通安全だけでなく、生活の安全も自動運転が担うかもしれない。ドバイ警察が2018年10月に発表した「動く無人交番」のコンセプトが非常に興味深い。

AI(人工知能)を搭載した自動運転の「動く無人交番」がまちの中を巡回し、事故や犯罪を未然に防止する仕組みだ。偵察用ドローンを備えるほか、交通違反などの罰金の決済機能も搭載される予定で、合わせて16の「スマートサービス」が提供されるという。

プライバシーの問題など騒がれそうだが、簡易的なシステムとして「動く監視カメラ」としてまちなかをパトロールするだけでも効果はある。店舗の防犯カメラに導入されつつある、不審者の動きを特定するAIが活躍しそうだ。

また、交通違反の取り締まり用として実用化されれば、その効果(脅威)は移動式オービスの比ではないかもしれない。

【参考】ドバイ警察の取り組みについては「ドバイ警察、AI自動運転技術で街をパトロールする「動く無人交番」をお披露目」も参照。

■⑤無人配送システム

自動運転技術は人手不足が深刻な物流分野でも大いに生かされる。トラック業界では現在隊列走行を中心に実証実験が進められており、高速道路における長距離輸送を念頭に少ないドライバーで多くの荷物を運べるよう開発を進めている。

ラストワンマイルでは、自動運転機能を備えた小型の配送ロボットの活躍が期待される。自動配送ロボットはZMPやHakobotなどが開発を手掛けており、配送事業者とともに実証実験も盛んに行われるようになってきた。

日本郵便株式会社は2019年1月、自動運転による無人搬送の実証実験を福島県の南相馬市と浪江町で実施すると発表した。無人配送にはZMPの配送ロボット「CarriRo Deli(キャリロデリ)」とイタリアのe-novia社が開発した「YAPE」が使用されたという。

また、ヤマト運輸は、自動運転社会における次世代物流サービスの実現を目指すためのプロジェクト「ロボネコヤマト」を立ち上げ、DeNAなどとともに配送実験に取り組んでいるほか、無人の自動運転型輸送機を活用した「空の輸送」という新領域に本格的に着手している。2019年8月までに機体の試験デモを実施し、2020年代半ばまでに実用化する予定で、ロボット化したクロネコの進化はまだまだ止まらなそうだ。

このほか、タクシーなどと連携した「貨客混載」サービスが誕生する可能性もある。ある時は人を運び、またある時は荷物を運ぶ。そういった柔軟な活用方法も検討が進められているようだ。

なお、貨客混載については現在、自動運転ではない一般タクシーでも取り組まれている。佐川急便と北海道内の有限会社HEYタクシーは、タクシードライバーが乗客利用が比較的少ない日中を利用して佐川急便が取り扱う荷物の個別配送を行う仕組みを導入しているようだ。

【参考】物流分野における自動運転については「「自動運転×物流」の最新動向まとめ 労働力不足に光明、トラック自動化はいつ?」も参照。

■⑥自動運転車内向けメディア

自動運転の実現によりドライバーは「運転」から解放され、移動時間を自由に過ごすことが可能になる。この自由な時間を娯楽と結び付けるメディアサービスは間違いなく誕生するだろう。

コネクテッドサービスの進化と相まって高機能な通信設備を備える自動運転車向けに、音楽や映画、ドラマ、ゲームを配信するなど、さまざまなエンターテインメントサービスが次々と生まれることは想像に難くない。

また、地図情報と連動し、移動する要素を取り入れたゲームや、各地のFMラジオ局のように、区域内を走行する自動運転車向けに情報を配信するサービスなども考えられるだろう。

■⑦自動運転車向け保険

自動運転車が実現すると、車両の所有者、ドライバーとなるシステム、搭乗者などの責任関係が複雑化し、万が一の事故時における責任の所在について詳細に取り決めておく必要が生じる。また、サイバーセキュリティの可能性や、物理的な破損だけではなくシステム上・プログラム上の破損による故障への対応も考慮しなければならなくなる。

既存の自動車損害保険では対応できないケースが多々生まれるため、各損保会社らは新たな保険商品開発を鋭意進めている状況だ。

また、カーシェアリングの要領で自動運転車を短期間貸し出すことなども想定されるため、いわゆる「1DAY保険」などの自動運転車向け商品も必要になるだろう。

■⑧自動運転専用メンテナンス事業者

LiDAR(ライダー)やカメラなどのセンサー類やAIなど、従来の自動車とは異なるシステムを多数搭載する自動運転車。故障の際、既存の修理事業者では対応できないケースが増加することは間違いなく、実用化の初期段階ではディーラーなど正規取扱店のみの対応になるものと思われる。

しかし、遠出の際に起こった故障や急を要する場合など、柔軟な対応が求められるケースも多くなることが予想される。こういった需要に対し、広範な技術を身につけた自動運転車専用のメンテナンス・修理サービス事業者も登場するのではないだろうか。

メーカー各社の自動運転システムやセンサー類に精通したエンジニアや、故障部位を診断する汎用システムの開発、故障したセンサー類の応急処置など、さまざまな自動運転車に対応可能な高い技術を持った事業者の登場は、ユーザーにとって大変心強い存在になるだろう。

■⑨無人移動ショップ

自動運転車を活用した移動式のショップは、すでにさまざまな事業者が構想しているようだ。MaaS(モビリティー・アズ・ア・サービス)向けのコンセプトモデル「e-Palette(イー・パレット)」を発表したトヨタ自動車は、活用方法の一つとして移動式のコンビニエンスストアなどを想定しており、ヤマトホールディングスやセブン‐イレブン・ジャパンと共同開発するための協議をすでに開始している模様だ。

無人ショップは、米アマゾンがすでに店員(レジ係)のいないコンビニエンスストア「amazon go(アマゾン・ゴー)」を開店している。スマートフォン決済やカメラシステムなどによる商品管理を連動することで、手に取った商品が自動でオンライン上のカートに登録され、退店時にゲートを通過する際にキャッシュレスで自動精算される仕組みだ。

曜日や時間帯に合わせて需要の高い場所に移動し、販売効率を高めることができるほか、イベント時なども気軽に出店できそうだ。

米国でも、自動運転車による食料品の無人販売サービスを実現する「Robomart」プロジェクトが試験運用を開始する段階に入っているようだ。

■⑩多目的スペースとしての活用

運転席を必要としない自動運転車は、室内空間の自由度が飛躍的に増す。このため、開発メーカー各社も「くつろぎ」をテーマに車内をラウンジ化したコンセプトモデルを次々と発表している。

さまざまな用途への利用が想定され、移動時間の有効活用や、利用したい施設が身近にない場合にその設備を備えた自動運転車を呼び寄せる使い方などが考えられる。

会議室やカラオケボックス、シアタールーム、簡易ホテル、レンタルルームなど、需要に合わせた活用方法がいろいろと事業化されそうだ。

■多目的な利用方法は無限大、自動運転技術の応用にも注目

このほかにも、自動運転EV専用のワイヤレス充電事業が進められるなど、自動運転に付随して誕生するサービスの裾野は広い。また、災害時において人が出入り困難な場所への捜索活動や調査など、既存のロボット技術に自動運転技術を応用することで飛躍的に成果を高めることができる分野は多い。自動運転の実現に向けた開発そのものが、新しい技術として多くの産業に応用され、新しいサービスを生むのだ。

多目的に活用可能な自動運転車の将来と、他分野に応用されていく開発技術。それぞれの今後の展開に注目だ。







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