【最新版】コネクテッドカー・つながるクルマとは? 意味や仕組みや定義は?

トヨタ始めメーカーが続々参入



自動運転開発と並び、近年自動車業界で注目が高まっているのが、インターネットを介して外部とつながるコネクテッドカーだ。安全性への貢献やエンターテインメント機能などをはじめ、コネクテッドカーに必要となる高度な通信技術は自動運転の実現にも欠かせない技術であり、今後ますます開発と実用化は進んでいくものと思われる。


そこで今回は、コネクテッドカーの定義から実現に必要な技術、サービス状況などを調べてみた。

記事の目次

■コネクテッドカーの定義とは?
コネクテッドカーとは?

コネクテッドカーとは、ICT端末としての機能を有する自動車のこと。車両の状態や周囲の道路状況などさまざまなデータをセンサーにより取得し、ネットワークを介して集積・分析することで、さまざまな価値を生み出す「つながるクルマ」を指す。

ITSやテレマティクス、IVIとの違いは?

コネクテッドカーと似たようなものに、「ITS(Intelligent Transport Systems/高度道路交通システム)」や「テレマティクス」、「IVI(In-Vehicle Infotainment/車載情報通信)」という言葉がある。

ITSは情報通信技術などを用いて人と道路と自動車の間で情報の受発信を行い、安全や環境、利便性の面から交通社会を改善するシステムを指す。1990年代ごろから使用されており、コネクテッドカーやテレマティクスの根源となっているものだ。1996年にサービスが開始されたVICS(道路交通情報通信システム) や、2001年にサービスが開始されたETC(電子料金収受システム)などが身近でわかりやすい例だ。


一方、テレマティクスはITSの進化の過程で生まれた技術で、テレコミュニケーションとインフォマティクスから作られた造語である。自動車などの移動体に通信システムを組み合わせることで、交通情報やナビゲーション、盗難時の自動通報など情報サービスをリアルタイムで提供することを指す。

IVIは、インフォメーション機能とエンターテインメント機能を提供する車載システムを指し、音楽や動画などの再生、ニュースなどへのアクセスなど幅広い機能を持つ。

IVIの意味は限定的だが、ITSやテレマティクス、コネクテッドカーは包括的なものであり、概念としての用語であるため明確な線引きがあるわけではない。ITSの進化の過程でテレマティクスやコネクテッドカーという言葉が生まれ、同じ内容の事柄でも使い手によって左右されるケースも多いため、厳密に区別する必要はなさそうだ。

■コネクテッドカーで可能になること
緊急通報システム:事故発生時に位置情報やクルマの状況をいち早く通報

エアバッグが展開するような大きな事故が発生した際、自動的にコールセンターへ通報するシステム。事故発生の位置情報を迅速に通報することにより、救助・救急機関が事故を早期に覚知することができ、事故の負傷者の治療をいち早く開始することが可能となることから、救命率の向上や傷害の重傷化の防止に資する装置として期待されている。


欧州連合(EU)では、新車に緊急通報システム「eCall」を装備することが2018 年 3 月 31 日から義務化されている。また、国連欧州経済委員会自動車基準調和世界フォーラムで「事故自動緊急通報装置に係る協定規則」が策定されたことを受け日本も国際基準を導入することとしている。

テレマティクス保険:運転状況に合わせた新たな保険サービス

ブレーキの回数や加減速動作など、利用者の運転中の行動や時間帯を収集することで運転者ごとの特性から事故のリスクを測り、保険料を策定する仕組み。

日本でも損保ジャパン日本興亜やソニー保険、あいおいニッセイ同和損保、東京海上日動など各社がテレマティクス保険を商品化している。

盗難車両追跡システム:盗難車両を追跡 遠隔操作サービスも

車両の盗難が判明した場合に車両の位置を追跡することができるシステム。 GPSなどを基に車両の位置情報を追跡する機能や、遠隔操作により緩やかに速度減速を行うなど車両を制御する機能が搭載されたものもある。

例えば、トヨタ自動車の「T-Connect」サービスの一つ「マイカーSecurity」やMAZDAの「G-Security」では、車両に搭載されたDCM(車載通信モジュール)などにより、盗難などの異常察知や位置追跡が行える。異常があった際にオートアラームが作動し、持ち主にメールや電話で連絡が入る。要請に応じてオペレーターが車両位置を確認し、警備員を派遣することも可能だ。

災害時における通行実績情報:災害時に通れる道をリアルタイムで提供

大規模災害などの発生時、崩落や落下物などによって道路が遮断されることがあり交通環境に大きな影響を及ぼすが、車両が実際に通行できた道路などの情報を集約し、カーナビやスマートフォンの地図アプリに最新の道路情報を表示させるサービスも行われている。
トヨタ自動車やホンダが独自に道路情報を提供しているほか、ITS(高度道路交通システム)の業界団体であるITS Japanも加盟各社の情報を基にした情報を配信している。

車車間通信システム・路車間通信システム:道路や周りのクルマと情報をやり取り

見通しの悪い交差点などで、運転手から直接見えない自動車や歩行者の存在や信号の状況など、自動車同士や道路に設置された情報インフラと直接通信することで情報を取得するシステム。

安全運転を支援するシステムとして有用であり、また将来的に自動運転車が普及すれば必要不可欠な情報となることから、米国など新車への装備義務付けに向けて検討する動きも出ている。

エンターテインメント:各種情報や音楽、映画、ゲームなどを提供

スマートフォンのようにカーナビにアプリをインストールして観光情報や飲食店情報などを入手する機能や、ドライブシーンにあった音楽を自動再生する機能、自宅の家電などを遠隔操作する機能などが考えられ、一部はすでに実用化されている。

自動運転が実現すれば、移動中に映画やゲームを楽しめるサービス展開も予想される。

リモートメンテナンスサービス:クルマの状態を遠隔管理

オイルやバッテリー残量などをはじめ、自車のメンテナンス情報が自動でサーバーに送信され、販売店などを通してカーナビやスマートフォンなどに点検の必要性など状況が通知されるサービス。クルマに何らかの警告灯が点灯した際、クルマの状態を確認し、オペレーターを通じて走行継続の判断など適切なアドバイスを行うことなども可能となる。

商用車向けサービス:効率的で安全な運行管理システムを提供

走行中の商用車と事務所を接続し、遠隔で車両の位置情報や運転手の運転操作情報、燃費など運行情報を収集、解析する運行管理システムがある。安全や環境への配慮とともに、効率的な運送サービスの構築やドライバーの労務環境改善などにも役立ちそうだ。

■コネクテッドカー実現に必要なこと
通信技術の高度化:5G実用化へ 安定した通信環境を整備

コネクテッドカーにおける通信は、常時接続で大量のデータを遅延なく瞬時にやり取りできる大容量・高速化や広域化が求められる。

短期的には、携帯電話システムやスポット型、狭域・直接通信型のITS用ワイヤレスシステムなど、さまざまな特徴を有する複数のワイヤレスシステムを効果的に組み合わせることで、それぞれのメリット・デメリットを含め多様な通信要件を満たすことになりそうだ。

通信大手のソフトバンクやNTTドコモ、KDDIなどは、超高速で大容量の通信を実現する第5世代移動通信システム「5G」の研究開発に取り組んでおり、ソフトバンクと本田技研が5Gを活用したコネクテッドカー技術の共同研究に着手するなど、自動車業界と結びついた開発も進んでいる。

情報インフラの整備:センサーの設置やサーバー、データ分析など要となるシステム

路車間通信や測位精度の向上、インフラセンサーの高度化や設置、大量のプローブ情報(自動車が走行した位置や車速などの情報を用いて生成された道路交通情報)などビッグデータを処理・集約するサーバー、リアルタイムにビックデータを分析する技術など、多岐に渡る整備が求められる。

また、自動運転を前提に考えれば、ダイナミックマップの構築や高度な交通管制なども必須となってくる。

セキュリティの確保:サイバーセキュリティは必須の技術

コネクテッドカーは常時無線でつながるため、常にハッキングなどのリスクを負うこととなる。このため、パソコンや企業のサーバーなどと同様ファイアウォールやゲートウェイを設置して不正アクセスを検知・遮断することや、通信の入り口なるIVI機器と自動車内部のネットワークとの分離、車載システムとネットワークに暗号化基盤を実装することなどを考える必要がある。

標準規格の整備:互換性を持った通信環境を構築

さまざまな機器が相互に通信を行う上で必須となるのが標準規格だ。各クルマから発せられる交通情報やインフラ側から発せられる交通情報に互換性がなければ意味がなくなる。また、輸出入車はもちろん各部品なども製造国次第で基準にばらつきがあると機能しなくなるため、国際標準も重要となる。

ISO(国際標準化機構)内にも自動車関連の委員会があり、ITSなどの交通システムの標準化や自動車・装置の性能評価などの適合性や互換性、安全性に関する標準化が行われている。

■コネクテッドカーを開発している企業や進捗状況
トヨタ自動車:コネクテッドサービス「T-Connect」本格スタート

全グレードに車載通信機(DCM)を標準搭載した新型クラウンとカローラスポーツの販売を2018年6月に開始し、コネクテッド事業を本格スタートさせている。今後国内で発売するほぼ全ての乗用車にDCMを搭載し、コネクテッド化を加速させる予定で、トヨタが構築したコネクテッドカー向けの情報インフラ「MSPF(モビリティサービス・プラットフォーム)」からさまざまなコネクテッドサービスが提供される。

現在は、クルマに何らかの警告灯が点灯した際、状態を確認し、オペレーターを通じて走行継続の判断など適切なアドバイスを行う「eケア走行アドバイス」や、車両の状態をセンターが常時診断して必要な処置をナビに配信する「eケアヘルスチェックレポート」、緊急通報システム、盗難車両追跡システム、LINEを活用したナビシステムなどの機能が備わっている。

日産自動車:「NissanConnect」提供 マイクロソフトのクラウドサービスと連携

2016年9月に、コネクテッドカーの開発についてマイクロソフトと提携し、マイクロソフトのクラウドサービスを採用すると発表している。

「NissanConnect」サービスでは、マイカーの駐車位置をスマートフォンで把握できるマイカーファインダー機能や、カギの閉め忘れが気になった際など、離れた場所からでもドアロックが可能なリモートドア、車両で点灯した警告灯の通知をスマートフォンで受信し、内容を表示することができる警告灯通知案内、スマートフォンやパソコンで検索した目的地情報をナビに送信し、すぐに目的地設定できる行き先車メール、Google カレンダー連携などの機能が備わっている。

ホンダ:ソフトバンクと研究開発強化

地図・ナビ機能では渋滞予測や車線別情報などさまざまな情報を先駆けて導入してきたホンダ。2016年7月に、ソフトバンクとAI(人工知能)を使った運転支援システムを共同開発すると発表。また、2017年11月にも、高速移動中の自動車で通信する基地局を安定的に切り替える技術や車載アンテナの開発、弱電界におけるデータ送受信性能の確保など、5Gの普及を想定しコネクテッドカー技術強化に向けた共同研究の検討を開始している。

一部報道で2018年度からコネクテッドサービスの展開に向けた体制の構築をはじめとする部署の新設や再編を行うと報じられており、この分野でも巻き返しを図る構えだ。

スバル:コネクトサービス「STARLINK(スターリンク)」2022年までに8割搭載

2018年7月に発表した新中期経営ビジョンで、同社のコネクトサービス「STARLINK(スターリンク)」を順次グローバル展開することとし、将来のサービスプラットフォームの進化・拡充は協調の可能性を検討しつつ、日本や北米などの主要市場で2022年までに8割以上の新車をコネクテッドカーにする目標を据えている。

また、トヨタとのアライアンスの中で、コネクテッドやセキュリティなど新世代技術領域での連携強化を図るともしている。

マツダ:「G-BOOK ALPHA」安心・安全や楽しさを柱にサービス提供

ネットワークでサポートする最新鋭のテレマティクスサービスを提供。コンセプトに「安心・安全」「ドライビングインテリジェンス」「アミューズメント」の3つを据えており、エンジン始動通知や盗難追跡サービス、従来の交通情報にプローブコミュニケーション交通情報を加えた高精度な最適ルートを案内するGルート探索、走行中にメールやニュースのチェック、現在地周辺の情報検索などが可能なドライブポータル機能などを提供している。

GMOクラウド:車種を問わず全てのクルマをコネクテッドカーに

自動車メーカー以外もコネクテッド技術の開発に力を入れている。同社は、車両状況の自動解析と遠隔診断が車載コネクタを通じて行える自動車向けIoTソリューションを提供しており、コネクテッドカーではない既存の車両をコネクテッド化する技術開発に取り組んでいる。

■コネクテッドカーに対するニーズ調査

コネクテッドカーについて企業がどのようなことを求めているのかを調査した内容が興味深い。

IT専門調査会社であるIDC Japan株式会社が2018年11月に発表した内容の中身を読んでみると、コネクテッドカーについては「車両診断/通知」という機能の需要が最も高かった。自動車を使ってビジネスを行う企業などにとっては、車両自体の故障はときに命取りになる。そのため、定期的もしくは常時診断などで自動車の状況が把握できれば非常に役立つことになる。

■新たなビジネス領域として注目集まる

トヨタやマツダなどがすでに実用化しており、ネットワークの構築やデータ分析、セキュリティなど各分野でも研究開発が進んでいる。数年後には各社の足並みが整い、情報インフラの整備とともにサービスの差別化や高度化が進んでくるものと思われる。

また、自動運転車の実用化とともにエンターテインメントの分野も急速に伸びることが予想され、異業種参入が相次ぐ裾野の広い新たなビジネスとしての注目も今後高まるだろう。


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