【最新版】自動運転レベル2の要件や定義、機能を解説

既に市販化、技術も高度化



独Audi社が自動運転レベル3(条件付き運転自動化)搭載車「A8」を発売して約1年が経つが、法規制などの社会の枠組みが追い付かずほぼ実用化されていないのが現状で、市販車の競争は依然として自動運転レベル2(部分運転自動化)ベースに行われている。


一見すると開発競争が停滞していると思われがちだが、自動運転レベル2における機能も着々と高度化が図られており、システムが機能する速度域の広がりやレーンチェンジ技術など、まだまだ進化の余地がある奥深いレベルだ。

今回はこの自動運転レベル2の概要や実用化の状況などをまとめ、現段階における市販化領域の自動運転技術に迫りたいと思う。

■自動運転レベル2の定義・要件

自動運転レベル2の口語的定義は「運転自動化システムが動的運転タスクの縦方向及び横方向両方の車両運動制御のサブタスクを特定の限定領域において持続的に実行。この際、運転者は動的運転タスクのサブタスクである対象物・事象の検知及び応答を完了し、システムを監督する事が期待される」とされている。


自動運転レベル2では、アクセルペダル・ブレーキペダルによる「前後」の制御と、ステアリング操作による「左右」の監視・対応の両方をシステム側が担う。制御の範囲はシステムにより差があり、完全な制御を行うわけではないため運転手がシステムを常に監視する必要があり、ドライバーが運転の主体となる。

■自動運転レベル2とADAS

定義にある通り、運転の主体はドライバーであり、システムはあくまでそれを支援する役割となる。これは、事故を未然に防いだり運転の負荷を軽減したりするための先進運転支援システム「ADAS(Advanced driver-assistance systems)」に位置付けられる。このADASの機能が向上し、周囲の障害物などを100%検知し、100%正しい判断を下し、100%正確な制御を行うレベルに達すれば、晴れて完全な自動運転技術となる。

国内では、日産自動車が2016年にアクセル、ブレーキ、ステアリングのすべてを自動的に制御する「プロパイロット」を新型「セレナ」に初搭載したほか、スバルは2017年に運転支援システム「アイサイト」にアクセル、ブレーキ、ステアリング操作を自動制御する新機能「ツーリングアシスト」を追加し、「レヴォーグ」と「WRX S4」への搭載を始めた。

トヨタ自動車やホンダ、マツダなどもアダプティブ・クルーズコントロールや車線維持支援システムなどを搭載している車種があり、広義には自動運転レベル2に含まれそうだが、速度制限などシステムが機能する条件に差異があるため、日産やスバルのサポートシステムとは区別されているようだ。


■日本メーカーの自動運転レベル2やADAS
日産:プロパイロット

インテリジェントクルーズコントロールは、先行車を検出しているときはセットした車速(時速約30~100キロ)を上限に車間距離を保ち、先行車が停止した際は自車も停止する。ハンドル支援は、車線中央付近を走行するようにステアリングを制御する。時速50キロ以下では前方に車両がいる場合に作動する。

スバル:アイサイト・ツーリングアシスト

全車速追従機能付クルーズコントロールは時速0~120キロの幅広い車速域で機能し、遠くの先行車のほか、ブレーキランプの点灯も認識できる。ステアリング制御は、渋滞時には先行車を認識し、高速巡航時は区画線を認識することで機能する。

トヨタ:トヨタセーフティセンス

追従ドライブ支援機能は、先行車の加速・減速に合わせて一定の車間距離を保ちながら追従走行ができる。時速30キロ以上で設定が可能。ステアリングを制御するレーントレーシングアシストは、時速50キロ以上で高速道路や自動車専用道路を走行中、車線の中央を走るようにハンドル操作をサポートするほか、はみ出しそうな際も制御する。

ホンダ:ホンダセンシング

アダプティブ・クルーズ・コントロールは、あらかじめ設定した速度で定速走行し、先行車に近づいたら自動的に加減速を行って追従走行する。時速30キロ以上(渋滞追従機能付きは0キロ以上)で作動する。車線維持支援システムは時速65キロ以上、路外逸脱抑制機能は約60~約100キロで作動する。

マツダ:i-ACTIVSENSE

レーダークルーズコントロールは、ミリ波レーダーにより先行車との速度差や車間距離を認識し、自動で走行速度をコントロールする。レーンデパーチャーワーニングシステムは、道路上の車線を感知し、車両が車線を逸脱することを予測してドライバーに警告する。

■海外メーカーの自動運転レベル2やADAS
BMW:パーソナルCoPilot

BMWの自動運転レベル2とも呼ばれる最新システムの一つが「パーソナルCoPilot」だ。このシステムには自動運転ブレーキなどの機能が備えられ、車間距離を一定に保つ機能も搭載している。BMWの新型「8シリーズ」への搭載が発表されており、車線逸脱防止機能も含まれている。

メルセデス:インテリジェントドライブ

メルセデス・ベンツが開発するADASシステムの代表的なものが「インテリジェントドライブ」だ。停止後に自動で再発進をするシステムも搭載しているほか、車間保持や車線逸脱防止機能、アクセル・ブレーキ・ステアリングの自動アシスト機能も備えている。ウィンカーと連動した車線変更機能も特徴的だ。

テスラ:オートパイロット

米電気自動車(EV)大手テスラの自動運転機能「オートパイロット」は、将来的な完全自動運転に対応したシステムとされる。現時点では自動運転レベル2に相当する技術が搭載されており、高速道路での運転支援や複雑な道路にも対応する「オートステアリング」なども備えている。

アウディ:車間距離維持など多数の機能

アウディは自動運転・運転支援分野で一歩抜きんでている。既に自動運転レベル3の実装を成功させているが、運転支援レベルの技術としては、右折時の危険警告や速度維持・車間距離維持、車線逸脱防止などだ。渋滞時の停止後の再スタートを支援する「ストップ&ゴー」機能も自動運転レベル2に相当すると言えるだろう。

フォルクスワーゲン:衝突被害の軽減支援も

フォルクスワーゲン(VW)は主力モデル「ゴルフ」などに自動運転レベル2に相当するADASを搭載している。渋滞時追従支援システム「トラフィック・アシスト」やレーンキープアシストシステム「レーン・アシスト」、衝突の危険が予測される場合に被害軽減を支援する「フロント・アシスト」などが主な機能だ。

■レベル2とレベル3の違い

自動運転レベル2は、前後・左右の操作を両方とも制御するものだが、運転主体はドライバーであり、ドライバーは常に周りに注意しながらハンドルを握っていなければならない。

一方、自動運転レベル3になると、限定領域において前後・左右の制御をシステムが完全自動で行う。レベル2がドライバーのサポートであるのに対し、レベル3はシステムが主役となるのだ。システムから要請があった際は速やかに運転に戻る必要があるが、自動運転中はドライバーはハンドルから手を離すことができる。

レベル3を搭載している新型Audi A8は、高速道路において渋滞時など時速60キロ以下を条件に、ドライバーに監視義務のない同一車線内の自動運転を可能としている。

なお、レベル3からは一時的であれハンドルから手を放す自動運転が可能になるため、新たな法規制や交通ルールが必要となる。

■自動運転レベル2は「自動運転」なのか…という議論

自動運転レベル2はあくまでも部分的な運転支援にとどまり、「自動運転レベル2」の中で「自動運転」というキーワードが登場するものの、実態上はあくまで「運転支援」に留まる。一方で自動運転レベル2でも「自動運転機能を搭載」などと表現されることがあることから、国土交通省はこのことに安全上の懸念を示し、メーカー側と自動運転レベル2以下については自動運転という言葉を使わないよう、自動車メーカー側と合意している。

■自動運転レベル2開発競争の勝者がレベル3を先導する

2020年ごろをめどに自動運転レベル3が実用化域で再注目されることになりそうだが、それまでは自動運転レベル2の天下が続く。トラック業界でもまもなく自動運転レベル2の市販化が始まる状況だ。

各社のレベル2開発競争は引き続き熱を帯び、より高度で応用の効く技術の実用化が目下の目標となるが、それが完成の域に達すればおのずと自動運転レベル3や自動運転レベル4が見えてくる。

法整備の課題もあるが、国産車で最初に自動運転レベル3を実用化するメーカーはどこか。その答えが、自動運転レベル2に表れている可能性は高いはずだ。


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