NY市長、「中途半端」に自動運転解禁!車内無人を認めず

しかも他都市でテスト経験がない企業は不可



ニューヨーク市のエリック・アダムス市長=出典:ニューヨーク市公式サイト

米国のニューヨーク市で、安全要員(セーフティドライバー)付きでのみ自動運転車のテスト走行が許可されることになった。ただし、車内無人のドライバーレスでの走行は認めない。なんとも中途半端な解禁だ。

カリフォルニア州やアリゾナ州では、すでに完全ドライバーレスの自動運転タクシーが許可され、商用展開されている。ニューヨーク市でのセーフティドライバー付きでのみ自動運転車の走行を許可するという制度は、他州に遅れを取るものだ。


■ニューヨーク市の新たな許可制度

ニューヨーク市は、市内で自動運転車のテストを希望する企業に対しての新たな許可制度をこのほど発表した。申請者は、衝突事故の詳細やセーフティドライバーが車両を制御する頻度など、過去のテスト情報を提出する必要がある。つまり、他の都市での自動運転車のテスト経験がない企業は、申請できないということになる。

また、申請者は自動運転システムの制御や故障をオペレーターがどのように補い、衝突回避のためにどの程度介入するかなどについての保証手順も提出する必要があるという。

さらに完全ドライバーレスの自動運転車は公道でのテストが許可されず、セーフティドライバー有りの車両のみ許可される。

米GM傘下のCruiseやGoogle系Waymoが、カリフォルニア州で交通事故や交通トラブルをたびたび起こしている。ニューヨーク市では、常にセーフティドライバー同乗のもとテストを行うことで、同様の問題を回避したいと考えているという。


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■他州より慎重な姿勢を示す

ニューヨーク市のエリック・アダムス市長の提案によると、企業は州車両管理局から許可を得る必要があり、申請者はセーフティドライバーの雇用と訓練方法の詳細を提供しなければならないようだ。そして、SAE International(自動車技術者協会)の最近の「ベストプラクティス」に従うことを証明する必要があるという。


ニューヨーク市では、元々セーフティドライバーがハンドルから手を離さないことを義務づけているなど、自動運転車のテスト車両について細かい取り決めがあった。また走行テストの際に警察の護衛を付けることも義務であったが、数年前の法改正によりなくなったようだ。自動運転車のテストもほとんど行われていない状況だ。

自動運転車のテスト制度について、他州より厳しく定めた印象があるニューヨーク市であるが、決して自動運転車の導入に否定的というわけではない。アダムス市長は米メディアに「我々が好むと好まざるとにかかわらず、このテクノロジー(自動運転技術)はやってくる」と語っている。

■自動運転タクシー導入は視野?

企業が自動運転車のテストや導入を進める場合、アリゾナ州やテキサス州など規制が比較的緩いエリアから行っていく傾向がある。一方、ニューヨーク市は世界トップレベルのタクシー都市だ。自動運転タクシーの実装を見込んだ取り組みは、今後進化していくかもしれない。

まずはどんな企業がテスト申請を行うか、気になるところだ。

【参考】関連記事としては「アメリカの自動運転最新事情(2024年最新版)」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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