自動運転レベル4、いつから解禁?

改正道交法、早ければ2022年度内に施行か



レベル4での走行が可能な仏Navya製の自動運転シャトル=出典:Navyaニュースルーム

世界各地で着々と実用化が進められている自動運転技術。日本国内でも自動運転レベル4を可能にする改正道路交通法が閣議決定され、今国会で可決される見通しだ。

社会実装が間近に迫りつつあるレベル4は、いつ解禁されるのか。この記事では、レベル4の社会実装時期やユースケースなどについて解説していく。


■レベル4解禁に向けた動き
自動運転の実現には法改正が必須

レベル4の実現には、技術の向上とともにそれを受け入れる新たな社会の枠組みが必要となる。その代表例が法律だ。自動運転は、自動車などの制御を人間に代わってコンピューターが行う技術だが、従来の道路交通法は人間による手動の運転操作が前提となっており、ドライバーの存在が条件となっているのだ。

日本では、2019年に道路交通法と道路運送車両法がそれぞれ改正(2020年4月施行)され、自動車の装置に新たに「自動運行装置」が新設された。「自動車を運行する者の操縦に係る認知、予測、判断及び操作に係る能力の全部を代替する機能を有し、かつ当該機能の作動状態の確認に必要な情報を記録するための装置を備えるもの」と定義されており、この自動運転装置を使用した自動車の走行も「運転」に含まれる旨規定された。

ドライバーの存在が引き続き前提となっているものの、この改正によって自動運行装置を使用したレベル3走行が可能になった。自動運転時代に向けた第一歩だ。

レベル4法は2022年の通常国会で審議

レベル4解禁に向け、新たな道路交通法改正案が2022年の通常国会に提出される見込みとなった。案には、「運行中の道路、交通及び当該自動車の状況に応じて当装置を操作する者がいる場合を除く」状況下において、「直ちに自動的に安全な方法で自動車を停止させることができる」運行を「特定自動運行」と定義し、従来の運転の定義から除く条文が盛り込まれている。


つまり、ドライバー不在で走行し、自動運転システムがODD(運行設計領域)を外れた際にも安全に停止することが可能なレベル4運行の存在を、従来の運転と区別する形で新たに認める内容だ。

特定自動運行を行う者は、特定自動運行計画の提出・許可や特定自動運行主任者の指定を行う必要があることから、基本的に自家用車ではなく特定の移動サービスなどを対象とした改正案となっている。

自動運転バスなどの運用を考えている事業者が計画の策定や主任者の選定などを行い、管轄する都道府県公安委員会から許可を受けたうえでサービスを提供するイメージだ。

なお、改正案には新たに「遠隔操作型小型車」も盛り込まれている。「人または物の運送の用に供するための原動機を用いた小型車で、遠隔操作によって通行させることができるもののうち、車体の大きさや構造が歩行者の通行を妨げるおそれのないものとして一定基準に該当するもの」で、「遠隔操作には、衝突防止のため自動的に当該車の通行を制御する装置を使用する場合を含む」と定義されており、いわゆる宅配ロボットをはじめとした自動走行ロボットの運用も可能にする案となっている。


レベル4法の施行時期は?

法律改正において気になるのが施行時期だ。レベル4改正法案は、特段の変更なく可決されれば法律の公布から1年以内に施行されることとなっている。

改正法案が提出される第208回国会の会期は2022年6月15日までとなっており、会期内に法案が可決されればそれほど間を置かずに公布され、そこから1年以内に施行される流れだ。仮に2022年6月に公布されれば、そこから2023年6月までの間に施行されることとなる。

参考までに、レベル3改正時は、2019年5月に国会で可決後、2020年4月に改正道路運送車両法とともに施行されている。この例に習えば、レベル4改正法も関連する他の法律などとともに2023年4月に施行される可能性が高そうだ。

もちろん、社会実装へのスピード感を重視し、2022年度内に施行される可能性も考えられる。早期施行でレベル4実証を加速し、実用化を加速させていくパターンだ。早ければ2022年度内、遅くとも2023年春ごろにはレベル4法が施行される見通しだ。

■レベル4の概要
自動運転レベル4とは?

日本政府が採用している自動運転レベルの区分けは、米自動車技術会(SAE)が策定した「SAE J3016」に基づいており、これによるとレベル4は「高度運転自動化」に位置付けられている。定義としては、「運転自動化システムが全ての動的運転タスク及び作動継続が困難な場合への応答を限定領域において持続的に実行。作動継続が困難な場合、利用者が介入の要求に応答することは期待されない」といった内容だ。

出典:SAE(※クリックorタップすると拡大できます)/https://www.sae.org/binaries/content/assets/cm/content/blog/sae-j3016-visual-chart_5.3.21.pdf
出典:国土交通省資料(※クリックorタップすると拡大できます)

つまり、自動運転システムが許容するODD内においては、システムがすべての車両制御を担い、ODD外となった際もドライバーの存在に依存することなく自動で車両を安全に停止させることを指す。一定条件下において、人間を介することなく自動運転を実現する技術レベルだ。

レベル3との違いは?

自動運転の初歩と言えるレベル3は「条件付き運転自動化」と定義されている。一定条件下において自動運転システムがすべての車両制御を担う点はレベル4と同一だが、ODDを外れた際は人間が車両制御を引き継がなければならず、このため自動運転中も有事に備えドライバーが待機していなければならない。この点が大きな相違だ。

レベル3は、2021年3月発売のホンダの「レジェンド」を皮切りに自家用車における実用化が始まっている。また、世界各地で実用化されている自動運転バスや自動運転タクシーなども、セーフティドライバー同乗のもとサービスを提供しているものは実質的にレベル3相当となる。

自動運転サービスの実証や実用化の初期段階においては、多くの場合セーフティドライバーを同乗させて有事に備えている。セーフティドライバーが走行状況を常時監視しながら必要に応じて手動介入する実質レベル2(部分運転自動化)相当、常時監視義務はないもののシステムからの要請に応じて手動介入するレベル3相当などを経て、セーフティドライバーを必要としない段階まで技術を磨いて初めてレベル4が実現するのだ。

世界初の自動運転タクシーを2018年に実用化した米Waymoも、当初はセーフティドライバー付きの実質レベル3で運用していたが、2019年末ごろにドライバーレスによる運用を開始し、名実ともにレベル4を達成した格好だ。

■レベル4のユースケース
自動運転レベル4の自動運転タクシーを一部で実現している米Waymo=出典:Waymo

レベル4は、まず自動運転バスやタクシーといった移動サービスや、無人でモノを運ぶ自動運転トラックなどの輸送サービスなどで実用化が大きく進むことが見込まれる。その理由として、大きく2点を挙げることができる。

1つ目は、レベル4の大きな利点である「無人化」だ。この無人化の恩恵は、ドライバー不足への対応や人件費抑制による費用対効果の面から、移動サービスなどの事業用途で最大の効用を発揮する。

もう1つは、ODDの設定だ。初期のレベル4は応用力が乏しく、「高速道路限定」や「高精度3次元地図作製エリア限定」といった具合に厳しく道路条件や地理条件を設定する必要がある。

一定路線を走行するバスやシャトルサービス、一定エリア内を走行するタクシーなどは、こうしたエリアを設定しやすい。サービスを提供したいエリアを任意で設定し、マッピング作業をはじめ実証を重ねて精度を高めることができるからだ。その上で、エリア内に限定する形で無人サービスを提供し、エリア外は原則走行禁止、あるいは手動運転と明確に区別することができる。

他方、道路条件や地理条件が基本的に存在しない自家用車の場合、自動運転エリアと手動運転エリアを明確に線引きすることが難しくなる。高速道路のように区切られた道路はともかく、一般道を線引きするのは困難なため、各エリアの区別があいまいになり、ドライバーの混乱を招く可能性がある。

まずは移動サービスや輸送サービスで実用化

こうした理由から、まずは移動サービスや輸送サービスなどでレベル4の実用化が進むことになるのだ。小型の自動運転バス(シャトル)は仏Navya、自動運転タクシーはWaymoや中国百度(Baidu)などがすでに実用化域に達しており、サービス展開を図っている。

【参考】商用自動運転車については「自動運転、「商用展開」を実現済みの企業・事例まとめ」も参照。

一方、自家用車におけるレベル4開発も着々と進められているようだ。米インテル傘下のMobileyeと中国の浙江吉利控股集団(Geely)系ブランドが、コンシューマー向けのレベル4車両を共同開発し、2024年にも中国で発売する計画を明かしている。ODDなど詳細は不明だが、そう遠くない将来実現する構えだ。

【参考】レベル4自家用車については「自動運転で未知の領域!「市販車×レベル4」にMobileyeが乗り出す」も参照。

■【まとめ】レベル4実現は早ければ2022年度内に

国会議論待ちではあるものの、レベル4の国内実現が目前まで迫ってきた印象だ。法律面での実現時期は、早ければ2022年度内、遅くとも2023年度早期が見込まれる。これに前後する形で実証が進み、法改正と同時、あるいは少し遅れたタイミングで実証含みのサービス展開が始まるものと思われる。

カウントダウンが迫りつつあるレベル4。ドライバーレスの本格的な自動運転時代がまもなく訪れようとしているのだ。

【参考】関連記事としては「自動運転シャトル・バスの車種一覧(2022年最新版)」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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