自動運転レベル4は「ドライバーフリー」!国交省が呼称明記

レベルごとに説明、レベル3は「アイズフリー」



出典:国土交通省資料

車両に搭載される自動運転技術の能力を端的に示す自動運転レベル。レベル1~2はADAS(先進運転支援システム)で、レベル3~5が自動運転となる。

こうしたレベル分けの内容がコンシューマーに至るまで広く認知されると、余計な誤認を生みづらくなり、各車両の安全な利用が促進される。そのためには、より分かりやすい呼称や「ハンズオフ」「アイズオフ」のようなキャッチコピー的な言葉があると理解が進みそうだ。


国内では、国土交通省自動運転戦略本部が最近発表した資料の中で、レベル1からレベル4まで「フット・フリー」などのキャッチコピーを使用している。

この記事では、同資料に記載されたキャッチコピーとともに、各自動運転レベルの内容を解説していく。

▼国土交通省自動運転戦略本部
http://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_tk7_000018.html
▼自動運転に関する取組進捗状況について
http://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001583988.pdf

■自動運転レベルの内容
「ドライバーフリー」などの表現を使用

国土交通省自動運転戦略本部は、2023年1月に開催された会合の中で「自動運転に関する取組進捗状況について」という資料を作成・公表した。この中で、レベル1を「フット・フリー」、レベル2を「ハンズ・フリー」、レベル3を「アイズ・フリー」、レベル4を「ドライバー・フリー」と表現している。ドライバー・フリーは他では見ない目新しい表現だ。


出典:国土交通省資料(※クリックorタップすると拡大できます)
自動運転レベルは6段階、SAE基準に準拠

自動運転レベルについて、日本は米自動車技術会(SAE)が作成した基準に準拠している。SAE基準は世界標準と言えるほど最も普及している基準で、国際標準化機構(ISO)による自動運転システムの定義もこれに準拠している。

SAE基準では、自動運転レベルを0から5までの6段階に分類している。レベル0は「自動化なし」で、自動運転機能はもちろん衝突被害軽減ブレーキをはじめとしたADASも一切備えていない車両を指す。

レベル1は「フット・フリー」

レベル1は、自動車の縦・横方向どちらか一方の制御をシステムが支援するシステムを指す。自動車の制御は、アクセル・ブレーキによる縦方向の制御と、ハンドル(ステアリング)による横方向の制御に大きく分けることができる。

このどちらか一方の制御について、システムがドライバーの運転を支援するのがレベル1となる。例えば、縦方向の制御は衝突被害軽減ブレーキやクルーズコントロールなどがある。横方向はレーンキープアシストシステムが代表的だ。


縦方向の制御をシステムが支援してくれれば、ドライバーは一時的にペダルから足を離すことができる場合がある。これが「フット・フリー」だ。同様に横制御の場合は「ハンズ・フリー」となる。

横方向のみの制御機能が付いている場合、その車両はレベル1の「ハンズ・フリー」となるが、多くの車両は縦方向の制御機能が優先搭載されている。

これは、前走車両などを検知する縦方向制御の方が、白線を認識して狭い範囲で横方向制御を行うよりも技術的に容易なためだ。そのため、レベル1を「フット・フリー」と称しているものと思われる。

レベル2は「ハンズ・フリー」

レベル2は、縦方向・横方向の両方の制御を行い、運転を支援するシステムを指す。上述したクルーズコントロールとレーンキープアシストを同時に実行するイメージだ。

横方向の制御を非常に正確に行うことができる高度なレベル2は、運転中にハンドルから手を離すことができる。これが「ハンズ・フリー」だ。ハンズフリーが可能なシステムは縦制御も可能としている場合が多く、ドライバーはハンドルだけでなくペダルから足を離すこともできるケースが大半だ。

ただし、システムはドライバーの運転を支援するものであり、あくまで運転主体はドライバーとなる。このため、ハンズフリー走行中もドライバーはしっかり前方を注視し、車両が置かれている状況を常に把握していなければならない。

レベル3は「アイズ・フリー」

レベル3は、特定の条件下でシステムが全ての車両制御を行い、自動運転を実現する。ただし、システムから手動運転の要請(テイクオーバーリクエスト)があった場合、ドライバーは直ちに運転操作を行わなければならない。

自動運転システムが作動する条件は、運行設計領域(ODD)という。例えば、好天時の高速道路上において時速80キロ以下で走行する――といった具合だ。このODDを満たせば自動運転を行うことができるが、ODD内でも不測の事態などが発生した際にテイクオーバーリクエストが発される可能性があるため、ドライバーはすぐに運転操作に戻れる状況でなければならない。

ドライバーは自動運転中、車両周囲の常時監視義務を負わず、前方から目を離すことができる(=アイズ・フリー)。このため、スマートフォンやカーナビの操作などが可能になるが、テイクオーバーリクエストに備えるため、睡眠などを行うことはできない。

【参考】自動運転レベル3については「自動運転レベル3でできること(2022年最新版)」も参照。

レベル4は「ドライバー・フリー」

レベル4は、特定の条件下でドライバーを必要としない完全自動運転を実現する。ODDを満たす限りにおいてドライバーは不要となるため、自動運転バスなどのサービス用途に用いられることが多い。

万が一走行を継続できないような状況に陥った際も、自動運転システムが路肩に車両を停止させるなど安全を確保する。ODD内のみを走行する前提で設計された車両は、ハンドルやアクセルといった従来の制御装置を備えないものも多い。

手動運転と両立させることもでき、自家用車にレベル4が搭載された場合、例えば高速道路上のみ自動運転を行うことができ、その際ドライバーはレベル3の時以上にゆったりくつろぐことが可能になる。

【参考】自動運転レベル4については「自動運転、レベル3とレベル4の違いは?」も参照。

レベル5は「オール・フリー?」

レベル5は、ODDに左右されることのない完全自動運転を実現する。ドライバーが手動運転可能な状況を全て網羅しているため、レベル5が実現すればドライバーという概念は必要なくなり、運転席や運転免許なども無用のものとなる。

現時点における技術では実現は難しいとされており、AI(人工知能)やセンサー、SoCなどのさらなる高度化が必須となる。このレベルを形容する言葉は示されていないが、あえて言うならば「オール・フリー」と言ったところだろうか。

【参考】自動運転レベル5については「自動運転、レベル4とレベル5の違いは?」も参照。

■自動運転レベルに対する表記
フリーかオフか?

各自動運転レベルに対するコピーは、一般的には「ハンズオフ」や「アイズオフ」などが用いられることが多い。自由を意味する「フリー」と、無作動状態を意味する「オフ」だが、事実上解釈は同一となる。日本人に対しては「フリー」の方が伝わりやすいのかもしれない。

なお、こうした表現の起源は定かではないが、BMWが2015年9月に開催した投資家向けのカンファレンスの中で、レベル1を「Feet-off」、レベル2を「Hands-off」、レベル3を「Eyes-off」、レベル4を「Brain-off」と表現している。FeetはFootの複数形で、Brainは脳を意味する。

■【まとめ】自動運転の各機能・能力の理解増進が重要に

自家用車においてはレベル3の搭載が始まり、移動サービスなどではまもなくレベル4の実装が本格化する。実用化が進むにつれ自動運転は大衆化し、一般消費者が利用する機会も大きく増加していく。

機能誤認による間違った使用を防止するためにも、自動運転レベルをはじめとした各機能・能力の理解増進を図る取り組みは重要性を増していくことになる。その意味でも、ハンズ・フリーなど分かりやすい表現は有用だろう。

※自動運転ラボの資料解説記事は「タグ:資料解説|自動運転ラボ」でまとめて発信しています。

【参考】関連記事としては「自動運転レベルとは?(2023年最新版)」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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