自動運転、レベル3とレベル4の違いは?(2024年最新版)

ドライバーの存在を前提とするか否か



レベル0から5まで6段階に区切られた自動運転レベル。現在、自家用車へのレベル3搭載がスタートしたほか、移動サービスや輸送サービスの用途でレベル4の開発・実用化が進められている。


レベル3は自家用車向け、レベル4はサービス用途向けといった印象が強いが、両者の違いはどこにあるのか。この記事では最新情報をもとに、レベル3とレベル4の相違点について解説していく。

【参考】関連記事としては「自動運転レベルとは?定義・呼称・基準は?」も参照。

■レベル3とレベル4の特徴

レベル3はドライバーが不可欠

レベル3は、一定条件下においてドライバーに代わってシステムがすべての運転操作を行う。一定条件はODD(運行設計領域)といい、「高速道路で時速80キロ以内」といった感じで自動運転システムごとに設定される。

ODD内で自動運転を実現するレベル3だが、ODDを外れる場合や、ODD内であっても自動運転の継続が困難とシステムが判断した場合、ドライバーに運転操作の交代が要求される。ドライバーは、この要求に応じ迅速に運転操作を行わなければならない。このため、レベル3はドライバーの存在が不可欠となる。


一方のレベル4は、レベル3同様一定条件下においてシステムがすべての運転操作を行うが、一番の相違点は「人に依存しないこと」だ。ODD内で自動運転を行う際は、原則としてドライバーの存在を前提としない走行を実現する。

自動運転中に万が一の事態が発生した際も、自動運転システムがリスクを最小化する判断を下し、安全に路肩に停止するなどの措置をとる。レベル4は、この安全措置も含め人の手を煩わせることなく自動運転システムが走行を完結させなければならない。

【参考】関連記事としては「自動運転とODD(運行設計領域)とは?」も参照。

レベル3は長距離移動の負担を大きく軽減

レベル3は現状、高速道路などの自動車専用道路における渋滞時に自動運転を利用できる。実用性の観点から考えると疑問符が付くところだが、これは国際基準に準拠しているためだ。同基準は2022年までに車線変更を可能にする改訂や速度上限を時速130キロまで伸ばすなど改訂を繰り返しており、今後発売されるレベル3や、既存のレベル3もOTAアップデートなどで進化していく可能性が高い。


制限速度を満たす走行が可能になれば、長距離バスや長距離トラックへの導入にも期待が寄せられる。高速道路における長距離運転の負担を大きく軽減してくれる。

また、一部で遠隔監視・操作型のレベル3システムの実用化が移動サービス用途で始まっている。運転席を無人とする代わりに、遠隔地のコントロールセンターのオペレーターがドライバーとなり、必要に応じて運転操作に介入する仕組みだ。

現在実用化されているのは一般公道以外の実質専用区間に限定されているが、今後法改正などと相まってODDが拡大していく可能性が考えられる。

開発が進む自動走行ロボットなども、当初はこの遠隔監視・操作型のレベル3で運用することが考えられる。人の介在が不必要となるレベルまで技術が高度化すれば、レベル4に進化を果たす。

ちなみにレベル3に関しては、市販車向けに機能を搭載している自動車メーカーとしては、ホンダとメルセデスのみだ。ホンダは2021年3月に発売した新型LEGENDに搭載し、メルセデスは2022年後半から「DRIVE PILOT」という機能を新型Sクラス向けに展開している。

レベル4はドライバーレスのメリットを移動・輸送サービスで発揮

一方、レベル4は人に依存しないため、ドライバーレスの走行が可能になるのが特徴だ。ODDは限られるため、一定エリア内や特定ルートで走行する移動サービスなどでの活用に期待が寄せられる。

従来大きなコストとなって事業を圧迫していた人件費を抑制できる点が魅力で、地方公共交通の維持・継続の観点からも高い注目を集めている。

一定エリア内を走行する自動運転タクシーや、特定路線を走行する自動運転バスやシャトルなどがその代表例となる。

レベル4のセカンダリアクティビティは?

レベル3では、運転以外にドライバーに許容される行為「セカンダリアクティビティ」は、スマートフォンやカーナビの注視・操作などに限られる。システムからの運転交代要求に迅速に応答しなければならないため、現状は厳しく設定されている印象だ。

仕事や読書、簡単な食事など、問題ないのでは?――と思われる行為については、今後警察庁などが一定の指針を発表するものと思われる。

では、レベル4におけるセカンダリアクティビティはどこまでが許容されるのか。ドライバーレス、つまりドライバーがいない状況においてはセカンダリアクティビティを論じる必要がないが、状況によってはドライバーが存在するケースもある。

例えば、高速道路のみでレベル4が可能な自動運転システムを、長距離バスや長距離トラックに導入するケースだ。高速道路走行中はシステムが自動運転し、一般道に降りた後はドライバーが手動運転するケースが想定される。

また、モービルアイのように、レベル4を搭載したコンシューマー向け車両を販売する計画も公表されており、ドライバーによる手動運転と自動運転の両立を前提とした車両も今後続々と登場する可能性が高い。

こうしたレベル4車両では、自動運転中におけるドライバーのセカンダリアクティビティは大きく拡大することが予想される。自動運転が可能なODD内に限っては、システムから運転交代要請が行われることは原則なく、直ちに運転操作を行うことができる状態を保つ必要がなくなるからだ。

スマートフォンの操作はもちろん、食事やゲーム、仕事なども可能になるものと思われる。状況によっては仮眠をとることもできそうだ。飲酒については議論の余地があるが、禁止される可能性が高そうだ。

【参考】セカンダリアクティビティについては「自動運転レベル3でできること」も参照。

レベル4走行には新たな法整備も?

レベル4は、法律面の整備も必要不可欠となる。現行の道路交通法では自動運行装置によるレベル3走行が認められているが、あくまでドライバーの存在を前提としている。

また、2022年の国会で可決された新たな改正法では、レベル4による運行を「特定自動運行」とし、従来の「運転」の定義から除くこととしている。許可制度のもとドライバーレス走行を可能にする改正法だが、特定自動運行計画の策定や特定自動運行主任者の選任など、移動サービスなどの事業形態を前提としている印象が強い。

レベル4自家用車のような形態でストレスなく走行するには、さらに走行ルールを改正していく必要がありそうだ。

【参考】改正道路交通法については「【資料解説】自動運転レベル4を解禁する「道路交通法改正案」」も参照。

■【まとめ】新たなサービス形態の誕生に注目

人(ドライバー)の存在を前提とするかどうかが、レベル3とレベル4の一番の相違点となる。人に依存しないレベル4はドライバーレス走行が可能になり、自動運転技術を各種サービス用途に活用しやすくなるのだ。

また、レベル3は自家用車、レベル4はサービス用途が開発の中心となっているが、レベル3、レベル4ともに進化の過程にあり、今後どのように市場を拡大していくか、そのポテンシャルはまだまだ未知数な部分が多い。

引き続き各社の開発動向とともに、新たなサービス形態の誕生などに注目したい。

■関連FAQ

    自動運転レベル3とは?

    口語的には「条件付き運転自動化」という。特定の条件下に限って「アイズオフ」(※目線をはずせること)が可能な技術水準を指す。

    自動運転レベル4とは?

    「特定エリアにおける完全自動運転」のことを指し、最高位のレベル5の一歩手前の段階だ。特定エリアから出ない限りは、人間のサポート・介入を一切前提とせずに自動運転ができなければならない。

    レベル3はすでに実現している?

    実現している。ホンダが2021年3月に新型LEGENDを発売し、この車両には自動運転レベル3の技術が搭載された。市販車でレベル3の技術を搭載したのはホンダが初だ。その後、メルセデスもレベル3の有料オプションを展開し始めた。

    レベル4はすでに実現している?

    2022年9月時点では、「ほぼ実現している」と言える。例えばGoogle系Waymoアメリカ国内において、車内無人の自動運転タクシーを商用展開している。ただし、導入間もないこともあり、人間による監視体制にかなり気を配っており、「完全なるレベル4」と言えるかは微妙なところだ。

    レベル5はいつ実現する?

    自動運転レベル5の実現時期は、現在のところ推測するのは難しい。レベル5実現へのアプローチは2種類ある。1つは、世界中をマッピングし、常にデータを最新のものに保ち、その地図データを頼りに完全自動運転する方法だ。もう1つは、カメラを「人間の目」として、AIを「人間の脳」として機能させ、カメラとAIだけでレベル5を実現する方法だ。テスラなどは後者でレベル5の実現を目指している。

(初稿公開日:2022年8月8日/最終更新日:2024年4月16日)

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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