2045年には自動車生産の「過半数」が自動運転車になる──。特定条件下でシステム任せが可能となる「自動運転レベル3以上」を自動運転車だとした場合、こうした市場予測が成り立つという。
市場調査会社の富士キメラ総研がこのほど発表した「2024年 自動運転・AIカー市場の将来展望」によると、レベル3以上の自動運転車は2035年以降に本格的に普及し、5,202万台になると予測されている。レポートを詳しく見ていこう。
【参考】関連記事としては「自動運転レベルとは?定義や実用化状況は?(2024年最新版)」も参照。
■レベル3は2045年には2,409万台に
2024年の自動運転車の生産台数は、レベル2が4,513万台、レベル3が30万台と見込まれる。レベル3に対する法制度が進まない地域があることや、事故時の責任の所在について議論している最中であることが、レベル2が主流となっている理由だ。ただし中国ではレベル3の自動運転車の生産が先行しているという。
自動運転の実装について、自動車メーカーは法整備を含む将来的なインフラ整備を想定し、OTA(Over The Air)により自動運転レベルを上げられる車種の展開を増やしている。そのため今後はレベル3以上の普及が進むと予測されている。
法整備が進み自動運転技術が向上することにより、自動運転車が2035年以降に本格的に普及していく。そして2045年には自動車生産台数の過半数がレベル3以上になると予想されている。具体的には、2045年の生産台数はレベル2が4,111万台、レベル3が2,409万台、レベル4〜5が2,793万台との予測だ。
なお自動運転レベル2とレベル3の一番の違いは、運転の主体がドライバーからコンピューターへと移行することだ。レベル2はあくまでADAS(先進運転支援システム)であるのに対し、レベル3では通常時はレベル2同様に全ての責任をドライバーが負うが、システム作動時は運転の主体がドライバーからシステムに完全に移行する。そのため責任もシステム側が負うことになる。ドライバーは使用者としての責任を負うが、あくまで運転の主体はシステムとなる点が、レベル2と大きく異なる部分になる。
【参考】関連記事としては「自動運転、レベル2とレベル3の違いは?(2024年最新版)」も参照。
■レベル3以上の国別生産台数
富士キメラ総研は、レベル3以上の自動運転車のエリア別生産台数についてもまとめている。2024年の見込みは、日本・欧州・北米・その他のエリアでごくわずかなのに対し、中国は30万台となっている。つまり、前述した世界の合計の生産台数30万台というのはほぼ全てを中国が占めているということになる。
中国では政府が自動運転の実用化を積極的に推進している。2024年6月には、中国工業情報省がレベル3の自動運転システムを搭載した車両の公道試験を自動車メーカーなど9社に初承認している。今後中国での生産は加速し、市場拡大をけん引していくことが期待されている。
2030年の予測では、日本19万台、欧州86万台、北米40万台、中国264万台、その他27万台となっている。そして2045年には、日本423万台、欧州942万台、北米757万台、中国2,294万台、その他786万台まで拡大するという予測だ。
中国のほか欧州や北米でも生産が増加すると予想されている。日本では、OTAによるソフトウェアのアップデートでレベル3への移行が可能とみられる車両が販売されていることや、レベル3のシステムが2025年頃から搭載されるといったことなどにより、徐々に生産台数が伸びていきそうだ。
■「ドメインコントローラー」と「ビークルコンピューター」
富士キメラ総研は、注目市場として「自動運転ドメインコントローラー」と「ビークルコンピューター」を挙げている。ドメインコントローラーは自動運転の全機能を統合制御・管理するECUで、ビークルコンピューターは特定領域で区別することなく自動車の全機能を統合制御・管理するECUのことだ。
この市場では、2023年比で2045年の予測は16.1倍になるという。また「LiDAR」については、2023年比で2045年の予測は76.3倍と大幅に拡大するという予測をしている。
レベル3以上の自動運転車は、この5年ほどで一気に生産が拡大する。そして2045年には新車の半分以上がレベル3以上の自動運転車となり、本格的な自動運転社会を迎えることになる。
日本でも首都圏を中心に自動運転タクシー実用化に向けての取り組みがすでに始まっている。今後の開発各社の進捗状況にも注目していきたい。
【参考】関連記事としては「自動運転車の市場調査・レポート一覧(2024年最新版)」も参照。