自動運転バス・シャトルのサービス事例一覧 事故の発生状況は?

レベル4見据えた取り組みが前進中



出典:ティアフォープレスリリース

2023年4月に改正道路交通法が施行され、自動運転レベル4の運行が可能になった。許可制で無人移動サービスの提供が可能になったのだ。2025年を目途に無人移動サービスを50カ所で実現するという政府目標のもと、民間各社の取り組みも徐々に熱気を帯びてきた。

この記事ではすでに展開しているサービスをはじめ、まもなく定常サービスに移行するものと思われる国内の自動運転バス・シャトルの取り組みを紹介する。


【参考】関連記事としては「自動運転バス・シャトルの車種一覧(2024年最新版)」も参照。

<記事の更新情報>
・2024年9月22日:事故の発生状況を追記。関連記事を追加。
・2024年4月30日:最新情報にアップデート
・2022年3月2日:記事初稿を公開

■Gaussin Macnica Mobility(旧Navya)製ARMA&EVOを活用したサービス

マクニカ勢がNavya買収

出典:マクニカプレスリリース

自動運転バス・シャトルの先駆けとして世界各地で多くの導入実績を誇る仏Navya。2021年 末時点で25カ国で200台以上の販売実績を持ち、日本でも早くから導入されていた。

同社の主軸シャトルARMAは、全長4,750×全幅2,110×全高2,640ミリと乗用車ほどのサイズで最大定員15人を乗せることができ、最高速度25キロで走行することができる。

コンパクトなサイズ感で低速走行するため安全性を確保しやすく、2010年代の開発初期において世界各地で私有地を中心に実証や導入が進んでいった。その後、レベル4ソリューションとして性能を高めた後継モデルEVOも発売した。


現在、ARMAはレベル3相当、EVOがレベル4相当に位置付けられており、今後はEVOの導入が中心となりそうだ。

Navyaの国内総代理店を務めていたマクニカは2023年4月、EV開発企業の仏Gaussin(ゴーサン)と合弁Gaussin Macnica Mobilityを設立し、Navyaを買収することを発表した。エンジニアをはじめとする同社の資産を引き継ぎ、国内外での新たな展開を推し進める構えだ。

茨城県境町

出典:ソフトバンク

茨城県境町では、ソフトバンクグループのBOLDLYとマクニカの協力のもと、仏Navya製の自動運転バスARMAを活用した定常運行を2020年11月に開始した。運行形態としてはオペレーターが同乗する実質レベル2となるが、公道を走行する自治体の路線バスに自動運転バスを導入した国内初の事例だ。

BOLDLYは、ARMAの運行業務を行うとともに自動運転車両運行プラットフォーム「Dispatcher(ディスパッチャー)」による運行管理を担っている。一方、マクニカは国内総代理店としてARMA3台を提供し、車両やシステムのメンテナンスなどを担当している。


2024年9月17日時点で累計乗車人数は3万1,632人、累計走行便数は2万2,797便に到達している。

2021年度の安定稼働レポートによると、運行時における自動走行の割合は平均73.5%で、この割合を高めるには信号機との協調や路上駐車の回避策などが必要という。

バス停を町民から提供された私有地に設置することで停車中に後続車が追い越しやすい空間を確保し、またバス停を短い間隔で設置することで後続車が追い越すタイミングを設けるなど、円滑な走行に向けさまざまな工夫を講じている。

HANEDA INNOVATION CITY

羽田空港に隣接する複合施設「HANEDA INNOVATION CITY(羽田イノベーションシティ)」の開発を進める羽田みらい開発とBOLDLY、マクニカ、日本交通、鹿島建設の5社は、2020年9月から敷地内でARMAの定常運行を行っている。

当初は車内にオペレーターと保安要員を配置していたが、保安要員撤廃によるワンマン運行化や一時停止後の走行再開の自動化、運行速度アップを図るなど、経験を積み重ねながら本格的な自動運転化に向けた取り組みを進めている。

2021年9月には、オペレーターが操作せず3台の自動運転バスを同時運行する実証を行うなど、着々とレベル4の準備が整ってきているようだ。同年12月には、羽田空港第3ターミナルまでの公道を含む往復ルートの走行実証にも着手している。

2022年2月末までに、累計乗車人数4万4,776人、累計走行便数1万108便に達している。なお、乗車料金は無料となっている。

2024年4月時点で、累計走行便数は1万2,000便超、乗車人数は6万3,000人を超えている。

【参考】HANEDA INNOVATION CITYの取り組みについては「HANEDA INNOVATION CITYで、仏製自動運転バスが定常運行!」も参照。

北海道上士幌町

境町同様、北海道上士幌町では2022年12月から定常運行を開始している。冬季間の積雪状態での運行ノウハウ蓄積なども進めている。

2024年4月時点で、累計走行便数は1,200便超、乗車人数は1,800人となっている。

【参考】上士幌町の取り組みについては「「雪道の自動運転」で日本が世界をリード!実証続々」も参照。

愛知県日進市

愛知県日進市では2023年1月に定常運行を見据えた実証に着手し、同年5月から事実上の定常運行に移行している。

2024年2月に2代目のARMAを導入し、マイナンバーカード連携など新しい取り組みも進めているようだ。同市では累計走行便数は1,700便超、乗車人数は5,100人を超えている。

岐阜県岐阜市

岐阜県岐阜市では、2023年11月に定常運行を開始した。同市は自動運転バスの通年運行事業を進めており、バス3台を導入して5年間継続して運行することを決定している。

1周約5キロの中心部ルートと、1周約9キロの岐阜公園ルートの二つのルートを設定し、信号協調や路車協調システムの実装を進めながらレベル4運行を目指す構えだ。

2024年4月時点で、累計走行便数は1,900便超、乗車人数は1万9,000人超となっている。

【参考】岐阜市の取り組みについては「自動運転バス、攻めの「5年間通年運行」宣言 岐阜市で運行スタート」も参照。

■Auve Tech製MiCaを活用したサービス

BOLDLYがエストニア製自動運転車を導入

出典:BOLDLY公式サイト

BOLDLYは2022年10月、エストニア自動運転開発企業Auve Tech(オーブテック)と戦略的協業に合意し、レベル4対応の新型車両「MiCa(ミカ)」の日本仕様車の開発を進めると発表した。

MiCaは全長4,2×全幅1,8×全高2,5メートルとコンパクトで、最大8人が乗車できる。全天候型で、1時間の急速充電で20時間走行可能という。

ARMAに代わる主力の位置づけのようで、2023年10月に基準緩和のもとナンバープレートを取得して公道走行要件を満たし、以後国内各地での展開を積極的に進めている。

MiCaは下記のほか、HANEDA INNOVATION CITYに追加で導入されるなど、その数を大きく伸ばし始めている。

【参考】MiCaについては「BOLDLY、エストニア製自動運転バス「MiCa」展開へ」も参照。

三重県多気町

まだ定常運行には至っていないが、三重県多気町の商業リゾート施設「VISON(ヴィソン)」で2023年12月、BOLDLYなどによるMiCaを活用した3カ月にわたる長期実証が行われた。

国内初となる公道でのMiCaによるレベル4運行を目指すほか、将来に向け同町内での自動運転サービスの展開を検討していく方針だ。

2024年4月時点で、累計走行便数は553便、乗車人数は3,055人となっている。

新潟県弥彦村

新潟県弥彦村では、BOLDLYが大日本印刷などの協力のもと2024年2月にMiCaの通年運行を開始した。北海道での運行実績を生かし、同年1月から降雪・積雪の環境下でMiCaを走行させ、適切なルート設定などの事前準備を進めてきたという。

同村ではMiCa2台を導入し、村役場を起点とする片道約5.7キロの北吉田ルートと、同2.5キロの井田ルートの二つのルートを走行する。ルート上の3カ所にDNPの屋外デジタルサイネージ「モビリティポート」を設置し、MiCaの運行状況や利用方法、イベントなどの地域情報を配信し、利便性向上や地域活性化を図っている。

2024年4月時点で、累計走行便数は280便、乗車人数は465人となっている。

ちなみに弥彦村の運行する自動運転バスは、2024年8月に縁石に乗り上げる自損事故を起こした。村の説明によれば、事故直前に自動運転機能が解除されており、その理由は、オペレーターがタブレット型の操作用端末に乗車中に誤って触れてしまったためのようだ。

愛媛県伊予市

愛媛県伊予市では、BOLDLYや地元の植西運送などが協力し、2024年度中の通年運行を目指し1カ月間の実証が行われた。

同市では2022年度にARMAを用いた実証を行っており、約1カ月間で850人が乗車したという。2024年1月から実施された今回の実証ではMiCaを導入し、駅を起点とする片道約5.5キロのルートを走行した。

2024年4月時点で、累計走行便数は238便、乗車人数は673人となっている。

■ティアフォー製Minibusを活用したサービス

ティアフォーがレベル4ソリューション量産化へ

出典:アイサンテクノロジー・プレスリリース

国内屈指の自動運転開発企業ティアフォーは2023年6月、自動運転機能に対応したEV生産を加速する新たなソリューション「ファンファーレ」の提供を開始したと発表した。レベル4水準の小型バスの提供から開始し、2024年までに9車種の商用車モデルを順次出荷する予定としている。

同年10月には、GLP ALFALINK相模原で開発・運用していた自動運転システム「AIパイロット」が国土交通省からレベル4の認可を取得するなど、その勢いを増している。

移動サービス関連では、ファンファーレのラインアップとして提供する小型バス「Minibus」が社会実装の中心となっている。

車体は7190×2320×3050ミリでARMAなどより一回り大きく、定員23人(客席15人)を収容できる。最高時速35キロで、航続距離は約150キロとなっている。

このほか、3820×1862×2268ミリのコンパクトサイズで乗員6人、最高時速20キロの「Shuttle Bus」もラインアップしている。

Minibusは、パートナー企業のアイサンテクノロジーも導入しており、全国各地における自動運転プロジェクトを支援し、社会実装を推進するとしている。

ティアフォーによると、2023年度に国内23カ所で走行実証を行っており、その多くでMinibusが活用されている。

アイサンテクノロジーやBOLDLYのほか、WILLERとのパートナーシップでは2025年度に10カ所で自動運転モビリティの実用化を目指す計画を掲げており、各社との取り組みは今後大きく加速していくことになりそうだ。

【参考】ティアフォーMinibusについては「ついに「国産自動運転バス」が全国展開!アイサン、ティアフォー製を各地で」も参照。

千葉県横芝光町

千葉県横芝光町では、同町とBOLDLY、京葉銀行が2024年2月に自動運転バスの通年運行事業を開始した。

ティアフォー製自動運転バスMinibusを導入し、JR横芝駅をはじめ病院やスーパーなどを結ぶ1周約5.5キロのルートを走行している。運行速度は時速35キロ以下としており、ARMAなどに比べ制限速度に近い速度を実現しているようだ。2024年4月時点で、累計走行便数は735便、乗車人数は1,102人となっている。

横芝光町では、2024年3月7日に自動運転バスの実証実験中に接触事故が発生した。ただし自動運転バスは「手動運転中」で、けが人や物損はないという軽微なものであった。事故現場は、JR横芝駅近くの踏切。手動運転中の自動運転車両前方部に踏切遮断機が接触した。

石川県小松市

石川県小松市では、BOLDLY、ティアフォー、アイサンテクノロジー、損害保険ジャパンが2023年10月から約半年にわたる実証を重ね、2024年3月にMinibusによる通年運行を開始した。

JR小松駅と小松空港を結ぶ片道約4.4キロの有料シャトルサービスで、時速35キロで運行している。

2024年4月時点で、累計走行便数は539便、乗車人数は2,792人となっている。

■ヤマハ発動機製カートを活用したサービス

永平寺町で国内初のレベル4サービス

ヤマハ発動機は、ゴルフ場内で活躍するゴルフカー・ランドカーの自動運転化に早くから取り組んでおり、電磁誘導式の独自システムをゴルフ場やテーマパークなどで実装してきた。

超小型で低速で走行するゴルフカーは、グリーンスローモビリティにマッチし自動運転化しやすいことから、国や産業技術総合研究所が取り組む自動運転事業に採用され、三菱電機やソリトンシステムズを交えながら公道向けの自動運転開発に本格着手した。

自動運転ゴルフカーは道の駅を拠点とした自動運転実証をはじめ、福井県永平寺町などで導入され、着実に成果を上げている。

車両にはカメラなどの自律走行システムを搭載しているが、あらかじめ走行ルートに敷いた電磁誘導線をセンサーで認識しながら走行するタイプだ。

福井県永平寺町

出典:経済産業省プレスリリース

福井県永平寺町は、鉄道廃線跡地「永平寺参ろーど」で遠隔監視・操作システムを活用した自動運転移動サービス「ZEN drive」の試験運行を2020年12月に開始した。

当初は常時遠隔監視・操作するレベル2で運行していたが、2021年3月に遠隔監視・操作型の自動運行装置として正式に認可を受け、保安要員のみのレベル3による運行に移行。その後、2023年4月の法改正に伴い、同年5月にレベル4での運行に移行している。公道におけるドライバー不在のレベル4定常運行は国内初だ。

レベル4の運行で使用されている自動運転車は、ヤマハ発動機のグリーンスローモビリティ(電動カート公道仕様)「AR-07」がベースとなっている。GPSアンテナやカメラ、ミリ波レーダー、RFID読取装置などが搭載され、車両は7人乗りとなっている。

自動運転は、電磁誘導線とRFIDによって行われ、約2キロの経路を時速12キロ以下で走行する。

【参考】永平寺町における取り組みとしては「自動運転、日本でのレベル4初認可は「誘導型」 米中勢に遅れ」も参照。

沖縄県北谷町

永平寺町と同じ遠隔型自動運転システムを搭載した車両を活用し、沖縄県北谷町でも海沿いの非公道を周回する移動サービスが2021年3月に運行を開始している。

1人の遠隔監視・操作者が2台の無人車両を運行するレベル3相当の仕様で、北谷タウンマネジメント&モビリティサービス合同会社が運営に当たっている。走行路は町有地の通路で、道路交通関連法規上の道路にはあたらないという。

主に観光客をターゲットにしており、乗客向けの広告収入で運行経費を賄うことで運賃を無料化している。土日のみだが、13~18時まで約10分間隔で運行している。

なお、永平寺町、北谷町と同様のラストマイル自動運転の実証は石川県輪島市や茨城県日立市でも行われており、今後実用化を目指す動きが加速する可能性がありそうだ。

秋田県上小阿仁村「道の駅 かみこあに」

国土交通省が力を入れる「道の駅を拠点とした自動運転サービス」の中で、いち早くサービスを本格導入したのが秋田県北秋田郡上小阿仁村の道の駅「かみこあに」だ。2019年11月に各集落を結ぶ全長約4キロのルートで有償サービスに着手した。

車両はヤマハ発動機製のカートを改造したもので、埋設した電磁誘導線の磁力を感知して規定ルートを自動で走行する。ルートの一部を専用道とすることで無人運行を実現したが、その後は主にレベル2で走行しているという。公道走行のため、地元の有償ボランティアがドライバーとして乗車し、ハンドルなどを操作せず運行を監視する形だ。

運行速度は時速12キロで、運賃200円でNPO法人上小阿仁村移送サービス協会が運営している。人の移動のほか、農作物などの運送も計画している。最新情報は不明だが、当初は1日2本の定期便とオンデマンド運行を行っている。

【参考】上小阿仁村の取り組みについては「道の駅拠点!200円自動運転サービス、利用者1日4→9人に急増」も参照。

■JR東日本のBRT路線における自動運転バスサービス

BR専用道におけるレベル4システム認可

出典:JR東日本プレスリリース

JR東日本は2024年3月、気仙沼線BRTの柳津駅~陸前横山駅間で実証を重ねている自動運転バスに搭載されている自動運行装置(K-AITO)が、レベル4として認可を受けたと発表した。レベル4認可は国内4事例目だ。

同区間では、2022年12月から自動運転バスによる営業を進めており、実質レベル2の状態で運行している。開発企業などは明かされていないが、過去の実証などに参加している先進モビリティなどが関わっているものと思われる。

各種センサーのほか、BRT専用道内に2メートルごとに敷設した磁気マーカーを読み込みながら走行する。最高時速60キロは国内最高値だ。

今後、特定自動運行許可を申請し、同区間でレベル4による営業運転を実現する。ドライバーの監視や制御は不要だが、有人によるレベル4運行を行うとしている。

【参考】気仙沼BRTにおける自動運転については「自動運転、次は東北で「なんちゃってレベル4」認可 汎用性に課題感」も参照。

■【まとめ】レベル4移行の動きが加速

まだ大半が実質レベル2状態だが、おそらく2024年度中にレベル4へ移行する取り組みが続出し始めるものと思われる。

BOLDLYやティアフォー、アイサンテクノロジー(A-Drive)、WILLER、マクニカなど、複数エリアでのサービス展開を試みるプレイヤーが揃ってきたほか、トヨタホンダ日産なども自動運転サービスに向けた取り組みを本格化させようとしている。

マイルス―トンとなる2025年に向け、各社・各陣営はどのように取り組みを加速していくのか。それぞれの動向に要注目だ。

(初稿公開日:2022年3月2日/最終更新日:2024年9月22日)

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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