自動運転バス・シャトルでの移動サービス一覧(2023年最新版)

NAVYA ARMAやヤマハ発動機製カートが活躍



日本国内でも、自動運転バスやシャトルがすでにサービスを開始している。現状は安全面や法規制を考慮し、常時監視付きのレベル2や遠隔監視付きのレベル3といった運行形態が主だが、法改正によるレベル4の解禁に伴い、電磁誘導線を活用したレベル4の自動運転移動サービスも登場した。


この記事では2023年時点までに国内で展開実績がある自動運転バス・シャトルを使った定常サービスを紹介する。

<記事の更新情報>
・2023年6月6日:福井県永平寺町における取り組みを更新
・2022年3月3日:記事初稿を公開

■NAVYA ARMAを活用したサービス
茨城県境町
出典:ソフトバンク

茨城県境町では、ソフトバンクグループのBOLDLYとマクニカの協力のもと、仏NAVYA製の自動運転バス「NAVYA ARMA(ナビヤ アルマ)」を活用した定常運行を2020年11月から継続している。公道を走行する自治体の路線バスに自動運転バスを導入した国内初の事例だ。

BOLDLYは、ARMAの運行業務を行うとともに自動運転車両運行プラットフォーム「Dispatcher(ディスパッチャー)」による運行管理を担っている。一方、マクニカは国内総代理店としてARMA3台を提供し、車両やシステムのメンテナンスなどを担当している。


法規制上レベル4運行は認められていないため運行時はオペレーターが乗車し、ゲームコントローラーのような制御装置を手に常時走行を監視している。実質レベル2となる。

2022年3月現在、道の駅さかいから高速バスターミナルまでのルートと、道の駅さかいからシンパシーホールまでのルートが設定されており、停留所数は計16カ所に上る。前者は1日4往復、後者は6往復の計20便が運行されている。乗車料金は無料。運行速度は時速20キロとなっている。このほか、モニターを対象としたオンデマンド運行にも取り組んでいる。

運行開始から2021年11月までの1年間で、走行便数4,756便、走行距離1万4,525キロ、乗車人数は5,292人に達したという。視察も103件あったそうだ。

2021年度の安定稼働レポートによると、運行時における自動走行の割合は平均73.5%で、この割合を高めるには信号機との協調や路上駐車の回避策などが必要という。バス停を町民から提供された私有地に設置することで停車中に後続車が追い越しやすい空間を確保し、またバス停を短い間隔で設置することで追い越すタイミングを増加させるなど渋滞緩和策なども講じているようだ。


今後、新たなルートの設置や夜間運行などサービスをさらに増強していく方針で、現地採用を促進している運行スタッフの役割も徐々に強化し、持続可能な運航体制を構築していくとしている。

【参考】茨城県境町の取り組みについては「自治体×自動運転バス、定常運行「国内初」は茨城県境町!BOLDLYとマクニカが協力」も参照。

HANEDA INNOVATION CITY
出典:ソフトバンクプレスリリース

羽田空港に隣接する複合施設「HANEDA INNOVATION CITY(羽田イノベーションシティ)」の開発を進める羽田みらい開発とBOLDLY、マクニカ、日本交通、鹿島建設の5社は、2020年9月から敷地内で「NAVYA ARMA」の定常運行を行っている。

当初は車内にオペレーターと保安要員を配置していたが、保安要員撤廃によるワンマン運行化や一時停止後の走行再開の自動化、運行速度アップを図るなど、経験を積み重ねながら本格的な自動運転化に向けた取り組みを進めている。

2021年9月には、オペレーターが操作せず3台の自動運転バスを同時運行する実証を行うなど、着々とレベル4の準備が整ってきているようだ。同年12月には、羽田空港第3ターミナルまでの公道を含む往復ルートの走行実証にも着手している。

2022年2月末までに、累計乗車人数4万4,776人、累計走行便数1万108便に達している。なお、乗車料金は無料となっている。

【参考】HANEDA INNOVATION CITYの取り組みについては「HANEDA INNOVATION CITYで、仏製自動運転バスが定常運行!」も参照。

■ヤマハ発動機製カートを活用したサービス
福井県永平寺町
出典:経済産業省プレスリリース

福井県永平寺町は、鉄道廃線跡地「永平寺参ろーど」で遠隔監視・操作システムを活用した自動運転移動サービス「ZEN drive」の試験運行を2020年12月に開始した。

当初は常時遠隔監視・操作するレベル2で運行していたが、2021年3月に遠隔監視・操作型の自動運行装置として正式に認可を受け、保安要員のみのレベル3による運行に移行。その後、2023年4月の法改正により解禁されたレベル4での運行に乗り出している。これは日本国内で初のことだ。

レベル4の運行で使用されている自動運転車は、ヤマハ発動機のグリーンスローモビリティ(電動カート公道仕様)「AR-07」がベースとなっている。GPSアンテナやカメラ、ミリ波レーダー、RFID読取装置などが搭載され、車両は7人乗りとなっている。

自動運転は、電磁誘導線とRFIDによって行われ、約2キロの経路を時速12キロ以下で走行する。走行条件は以下の参考記事を参照してほしいが、電磁誘導線がないエリアは自動運転で走行できず、「条件付きレベル4」と言った方が誤解がないかもしれない。

沖縄県北谷町

永平寺町と同じ遠隔型自動運転システムを搭載した車両を活用し、沖縄県北谷町でも海沿いの非公道を周回する移動サービスが2021年3月に運行を開始している。

1人の遠隔監視・操作者が2台の無人車両を運行するレベル3相当の仕様で、北谷タウンマネジメント&モビリティサービス合同会社が運営に当たっている。走行路は町有地の通路で、道路交通関連法規上の道路にはあたらないという。

主に観光客をターゲットにしており、乗客向けの広告収入で運行経費を賄うことで運賃を無料化している。土日のみだが、13~18時まで約10分間隔で運行している。

なお、永平寺町、北谷町と同様のラストマイル自動運転の実証は石川県輪島市や茨城県日立市でも行われており、今後実用化を目指す動きが加速する可能性がありそうだ。

秋田県上小阿仁村「道の駅 かみこあに」
出典:国土交通省東北地方整備局道路部(※クリックorタップすると拡大できます)

国土交通省が力を入れる「道の駅を拠点とした自動運転サービス」の中で、いち早くサービスを本格導入したのが秋田県北秋田郡上小阿仁村の道の駅「かみこあに」だ。2019年11月に各集落を結ぶ全長約4キロのルートで有償サービスに着手した。

車両はヤマハ発動機製のカートを改造したもので、埋設した電磁誘導線の磁力を感知して規定ルートを自動で走行する。公道走行のため、地元の有償ボランティアがドライバーとして乗車し、ハンドルなどを操作せず運行を監視する形だ。

運行速度は時速12キロで、運賃200円でNPO法人 上小阿仁村移送サービス協会が運営している。人の移動のほか、農作物などの運送も計画している。最新情報は不明だが、当初は1日2本の定期便とオンデマンド運行を行っている。

【参考】上小阿仁村の取り組みについては「道の駅拠点!200円自動運転サービス、利用者1日4→9人に急増」も参照。

滋賀県東近江市蓼畑町「道の駅 奥永源寺渓流の里」
出典:国土交通省プレスリリース

道の駅関連の自動運転サービス2カ所目は、滋賀県東近江市蓼畑町に位置する道の駅「奥永源寺渓流の里」だ。かみこあに同様、ヤマハ発動機製の自動運転車両を導入し、2021年4月から往復4.4キロの区間でサービスを提供している。

週4回、1日6便往復しており、運賃はチケット制で1回150円のほか、1日乗車券や定期券、荷物輸送券なども販売している。運営は、東近江市都市整備部公共交通政策課が担っているようだ。

【参考】奥永源寺渓流の里の取り組みについては「運賃150円の自動運転サービス、滋賀県の道の駅で始動!全国2例目、電磁誘導型」も参照。

福岡県みやま市

道の駅関連の自動運転サービス3カ所目は、2021年7月に運行を開始した福岡県みやま市だ。道の駅ではないが、バイオマスセンター「ルフラン」から市民センター、地元商店を結ぶ往復7.2キロのルートを1日5便往復している。

運賃は一般100円、高齢者や障がい者、小学生50円などで、現金のほか回数券やPayPay、みやまスマイルペイアプリなどに対応している。運営主体はみやま市だが、運行管理は交通事業者に委託しているようだ。

島根県飯石郡飯南町「道の駅 赤来高原」

道の駅関連の自動運転サービス4カ所目は、島根県飯石郡飯南町の道の駅「赤来高原」で2021年10月にスタートしている。道の駅を拠点にコミュニティスペースや町役場などを周回する3つのルートを設定し、週5回、1日あたり6~10便を運行している。

運営主体は飯南町で、運行管理は地元の赤来交通が担っている。運賃は一般200円のほか、高校生半額、中学生以下無料で、定期券も販売している。

【参考】赤来高原の取り組みについては「全国で3カ所目!道の駅×自動運転移動サービス、島根県で開始へ」も参照。

■【まとめ】2022年中にもレベル4実証に着手?

法改正に伴って日本国内で自動運転レベル4の移動サービスが始まり、着実に自動運転社会の到来が近ずきつつあることを感じさせる。

ただし、電磁誘導線を使ったレベル4の自動運転移動サービスは、海外でWaymoなどが展開する完全無人&電磁誘導線なしの自動運転タクシーと比べると見劣りすることもあり、自動運転市場が拡大する中で、日本政府、そして日本企業の正念場は続く。

(初稿公開日:2022年3月2日/最終更新日:2023年6月6日)

【参考】関連記事としては「自動運転レベルとは?定義・呼称・基準は?」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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