自動運転バスの乗車人数、すでに「町の人口超え」!茨城県境町、延べ3万人超に

2020年11月から運行、BOLDLYなど尽力



出典:BOLDLY公式Facebook

日本の自治体で初めて自動運転バスの定常運行を実現したのが、茨城県の境町だ。2024年9月17日時点で累計乗車人数3万1,632人、累計走行便数2万2,797便を達成したという。

境町の人口は約2万4,000人だ。延べ人数では、すでに乗車人数が町の人口を超えているということになる。2020年11月の定常運行開始から、着実に実績を積み上げていることが分かる。


この背景には、境町の町長の行動力や先見の明、町の協力体制、運行を手掛けるソフトバンク傘下のBOLDLY(ボードリー)などの尽力がある。

▼境町で自動運転バスを定常運行しています【自治体初!】|茨城県境町
https://www.town.ibaraki-sakai.lg.jp/page/page002440.html
▼境町自動運転バス(ARMA & Mica)運行情報|X
https://x.com/abi_sakai

■境町に自動運転バスが導入された背景

境町には鉄道駅がないが、地元のバス会社に増便をお願いするも人手不足から手が回らないという課題があった。そのため高齢者が運転免許を返納するのが難しいという状況であったという。

境町での自動運転バスの取り組みは、橋本正裕町長が2019年11月にインターネットで自動運転バスについての記事を読み、導入を検討したことから始まった。早速、翌12月にはBOLDLYの代表取締役社長兼CEOである佐治友基氏と面談した。その4営業日後には、町議会で自動運転バスの導入の決議がされるというスピーディーさであった。


そして最初の面談からおよそ1年後の2020年11月から定時運行を始めるに至った。自治体が自動運転バスを公道で定常運行するのは、国内で初の快挙となった。

BOLDLYは自動運転バスの運行業務を行うとともに、複数の自動運転車両の運行を遠隔地から同時に管理・監視できる自動運転車両運行プラットフォーム「Dispatcher(ディスパッチャー)」により、自動運転バスの運行を管理している。さらに、ルートの選定・設定や3Dマップデータの収集、障害物検知センサーや自動運転車両の設定など、走行までに必要な作業を担った。

また専門商社のマクニカは仏Navya(現GAUSSIN MACNICA MOBILITY)の製品の国内総代理店として、自動運転バス「NAVYA ARMA」を3台提供した。そのほか、自動運転テクノロジーの知見をベースに、技術サービス・ソリューションプロバイダーとして車両・システムのメンテナンスを行うなど、技術面を中心に境町での自動運転バスの安全・安定運行を全面的に支援している。

■自動運転バス導入による経済効果は約28億円

境町では現在、午前7時40分〜午後4時までの間、18便の自動運転バスを運行している。同時に2台を運行し、その間に他1台の充電やメンテナンスなどを行っている。停留所は17カ所あり、乗車料金は無料だ。

境町は2023年12月にはBOLDLYの協力の下、エストニア企業Auve Techの自動運転バス「MiCa(ミカ)」1台を国内の自治体として初めて導入した。現在は定常運行開始に向け準備中のようだ。なおこの車両は、自動運転レベル4にも対応している。

出典:BOLDLYプレスリリース

BOLDLYが2023年9月に公開した資料によると、境町における自動運転バス実用化の経済効果は27.96億円になるという。その内訳としては、町民消費効果1,984万円のほか、1回10万円の視察研修プログラムを約200件実施していることなどが挙げられる。

また、ふるさと納税の活用や観光・視察ツアーなどの取り組みも行っている。2023年までに合計282件、1,725人が観光視察しており、1,621万円の収入効果があった。広告宣伝効果については、13.1億円に上る。政府補助金による累計効果額は13.71億円だという。

出典:境町公式ウェブサイト

■日本各地で自動運転バスの取り組みが活発に

現在、日本各地の自治体でも自動運転バスの取り組みが盛んに行われるようになった。

北海道上士幌町では2022年12月から、愛知県日進市では2023年1月から定常運行されている。また岐阜県岐阜市や千葉県横芝光町、愛媛県伊予市、石川県小松市、新潟県弥彦村でも自動運転バスを社会実装し、毎日運行されている。

少子高齢化や働き方改革などにより、特に地方での移動の問題は深刻だ。その解決に向けて、各自治体は自動運転バスの実用化に積極的だ。地元の人にとっては買い物や通院が便利になり、自動運転という新技術を好意的に受け入れている声が圧倒的だ。

現在は自動運転レベル2で走行している境町だが、将来的にはレベル4の実現も目指している。自動運転レベルの高度化においても、境町は日本の自治体の先陣を切るのだろうか。引き続き注目していきたい。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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