自動運転業界のキーマン「突然の退任」 BOLDLY人事に衝撃走る

設立から10年、新体制でさらなる躍進



出典:ソフトバンク公式サイト

ソフトバンク子会社BOLDLY(ボードリー)創業者の佐治友基氏が2025年12月9日付で代表取締役社長兼CEOを退任し、ソフトバンク本社に戻った。日本の自動運転業界のキーパーソンの1人である佐治氏の突然の退任。新社長には、ソフトバンクから同社に出向中の北内諒氏が就任した。

創業から約10年。国内における自動運転サービスの実用化に大きく貢献してきた同社が、一つの節目を迎えたようだ。人事の概要とともに、BOLDLYのこれまでの歴史を振り返ろう。


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■BOLDLYの人事概要

10年の節目迎え新体制へ移行?

人事発表によると、佐治氏は2025年12月9日付で代表取締役社長兼CEOを退任し、ソフトバンクに戻ってモビリティ関連事業の推進に携わっていくという。同氏によると、公共ビジネスエグゼクティブに就任し、全社モビリティ視察や渉外に関与するとしている。

新代表取締役社長兼CEOに就任する北内諒氏は2011年にソフトバンクテレコム(現ソフトバンク)に入社し、中堅・中小企業向けの新規開拓からエンタープライズ、公共、グループ企業向けのアカウント営業まで、さまざまなセグメントを担当し、提案から導入・定着まで一気通貫でプロジェクトを担当。また、営業推進部門も歴任してきた。

出典:BOLDLYプレスリリース

2025年4月にBOLDLYに出向し、ガバナンスの改善や事業戦略、社内情報システム・開発部門を管掌。さらに、安全対策(検査部)、契約、ドキュメント管理などのマネジメント業務をビジネスシステム推進本部長として担い、組織運営に取り組んできた。

▼代表取締役の交代に関するお知らせ|BOLDLY
https://www.softbank.jp/drive/set/data/press/2025/shared/20251209_01.pdf


2026年4月に設立10周年を迎える同社。体制を変え、新たなフェーズへの移行を進めているのかもしれない。

■BOLDLYの概要

ソフトバンクの社内コンテストで評価、事業化へ

鳥取県八頭町とSBドライブが連携協定を締結したときの写真。左から3人目が佐治友基氏=出典:SBドライブ(現BOLDLY)プレスリリース

BOLDLYは、ソフトバンク社内で行われたビジネスアイデアコンテストから生まれた。2015年春に実施されたコンテストに参加した佐治氏が、新たに取り組むべき事業として「自動運転技術を活用した交通インフラ事業」のアイデアを出したところ、最終審査で2位となった。

事業化に向け経営幹部と議論を重ね、1年後の2016年4月、ソフトバンクと自動運転開発を手掛ける先進モビリティの合弁としてSBドライブ(現BOLDLY)が設立された。発案者の佐治氏が同社に出向し、代表取締役社長兼CEOに就任した。

発案のきっかけは、ソフトバンクの事業の柱の一つである「IoT」だ。「一番世の中を変えるIoT製品は何だろう?」と考え、自動運転技術に目を付けたという。


自動車産業は、カーシェアやライドシェアなどのサービス拡大によって所有型から利用型へと進化する中で市場がさらに大きくなると予想し、将来、自動運転が普及した世の中を想像すると、好きな場所で自動運転車を呼び出せるアプリや、自動運転車の安全を遠隔監視する仕組みなどが不可欠となる。

ソフトバンクが持つ通信インフラとクラウド上のビッグデータを活用した技術が果たす役割は大きいと考え、自動運転技術にたどり着いたという。

いち早く自動運転サービスの運行管理に着目

Waymoがやっと公道走行を成功させたころの話だ。自動運転サービスが実現するかまだ不透明な時期に、自ら開発を手掛けるのではなく、ソフトバンクの強みを生かす形で運行管理面に注目したところが大きなポイントだ。

10年前は、自動運転サービスが未知の時代だ。無人運行に対する漠然としたイメージを持ちつつも、実際のオペレーションなどは全くの手探り状態となる。既存の移動サービス事業者や自治体などは、どこからどう手をつければ良いか見当もつかない状態だ。

一方、自動運転開発事業者の多くも、移動サービスに関する知見やノウハウを持っていない。自動運転システムの開発と並行して、サービス面の知見も積み重ねていかなければならないのだ。それゆえ、開発事業者と運行事業者や自治体が共同で試行錯誤することとなる。

この未知の部分を事業化し、開発事業者と自治体の橋渡し役となるのがBOLDLYだ。自動運転実証や初期の実用化時期において存在感を増し、ビジネスとして成立させた。

佐治氏によると、創業7年目となる2021年に黒字化を果たし、以来3期連続黒字で売り上げは拡大しているという。直近の業績は不明だ。

BOLDLY(ボードリー)の自動運転戦略(2023年最新版) ソフトバンク子会社

国内トップの実証数、レベル4サービスも実現

いつでも誰もが行きたい場所へ安全に移動できる社会の実現に向け、移動にまつわるあらゆる問題の解決に貢献することをビジョンに据え、自動運転技術を活用した新しいモビリティサービスの創出に力を注いでいる。

当初の事業内容には、自動運転技術の導入・運用に関するコンサルティングと、旅客物流に関するモビリティサービスの開発・運営を掲げていた。

当時、いち早く自動運転モビリティを製品化していた仏Navya(現Navya Mobility)に注目し、同社製の自動運転シャトルARMAを導入して国内における自動運転実証に着手した。

実証数はおそらく国内トップで、最新情報は不明だが、2024年2月時点で全国140回超の実証実績を誇る。

2020年9月には、羽田空港に隣接する大規模複合施設「HANEDA INNOVATION CITY(HICity)」で自動運転車両(ARMA)を活用した定常運行を、同年11月には、茨城県境町で一般車道における路線バスの定常運行をそれぞれ開始した。

このほか、2024年3月までに北海道上士幌町、岐阜県岐阜市、愛知県日進市、新潟県弥彦村、千葉県横芝光町、三重県多気町、石川県小松市、愛媛県伊予市でも自動運転バスの実用化を達成している。

このうち、羽田と上士幌町、多気町、小松市ではレベル4認可を取得しており、小松市を除く3カ所では自動運転サービス提供に必要な特定自動運行許可も受けている。

定常運行に至っていない実証エリアも数多い。経験値を蓄積し、将来的なレベル4サービスへの進化に期待が寄せられるところだ。

自動運転車両運行プラットフォーム「Dispatcher」

BOLDLYの運行管理サービスを支えるのが、自動運転車両運行プラットフォーム「Dispatcher」だ。自動運転バスと遠隔監視者をつなぎ、乗客の安全を守るソリューションで、さまざまな自動運転車に接続・統合し、同じ操作で運行管理することができる。

車内外のカメラ映像を含む車両情報を安全で高速なプロトコルでコンパクト化し、4G LTEでも大幅な遅延なくリアルタイムで遠隔監視可能にしており、遠隔監視するオペレーターは、常時バスの位置や遅延情報などを確認することができる。

オペレーター1人が複数台の車両を監視・操作することもでき、自動運転車にトラブルが起きた際も、エンジニアや保険会社など関連するすべての人にDispatcherのログを共有することでスムーズに後処理を行うことができる。

車両からアラートが上がった際、遠隔監視オペレーターは車内通話や車内ディスプレイへの表示、車両制御などで対応することができる。

自動運転特有の「遠隔監視・操作」には、どのような機能が求められるのか、そのためにはどのような技術が必要か…を早期に研究した成果であり、同社の屋台骨となるソリューションと言えるだろう。

ARMAに代わり、MiCaやMinibus、Robobusなどが主力に

BOLDLYが利用する車両はかつてARMAが中心だったが、近年は他社製新モデルへの移行が加速している印象だ。ARMAは本来レベル3相当の車両であり、日進月歩で進化する自動運転業界では機能的に旧モデル扱いになったためと思われる。

BOLDLYは2022年10月、エストニアの自動運転開発企業Auve Techとのパートナーシップを発表し、レベル4対応の新型車両「MiCa(ミカ)」の日本仕様車の開発・導入に着手した。現在の主力車種の一つだ。羽田や多気町などで導入されている。

ティアフォーが開発した「Minibus」との連携も進んでおり、小松市では通年運行が行われている。

2025年には、WeRideの自動運転バス「Robobus」の導入が始まった。公式発表はないものの、おそらくBOLDLYが日本での導入を進めているものと思われ、すでに伊予市や鳥取県米子市の実証や、愛知県が2026年1~3月に実施する実証に活用されることが判明している。

中国トップクラスの自動運転システムだけに、今後の動向に大きな注目が集まりそうだ。

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■【まとめ】自動運転時代到来とともにBOLDLYはさらに躍進

BOLDLY生みの親の佐治氏は今後、ソフトバンク内でどのような事業に取り掛かるのか。そして、新体制となったBOLDLYはどのようにビジネスを進化させていくのか。

この1~2年同社のプレスリリースがほぼ止まっている点が気になるところだが、自動運転時代を迎えつつある今、同社はこれまで以上に大きな花を咲かせるはずだ。今後の動向に引き続き注目したい。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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