自動運転、中東の最新事情(2022年最新版)

イスラエルやドバイなどで社会実装が加速



産油国のイメージがいまだ根強い中東だが、石油依存からの脱却を目指す動きも顕著で、取り組みの一環としてスマートシティ化を図る国も続々と登場している。







その中で、新たな産業創出と課題解決を図るべく自動運転技術の導入を目指す取り組みも多い。この記事では、中東における自動運転関連の動向を解説していく。

■イスラエル
自動運転サービス法案が可決

イスラエルでは、自動運転による旅客移動サービスの試験展開を可能にする法案が2022年3月に可決されたようだ。過去には、フォルクスワーゲンとモービルアイが自動運転車の配車サービスを2022年から同国でスタートする計画を発表するなど、民間の意欲も高い。

また、イスラエルはテクノロジー企業の宝庫で、同国第2の都市テルアビブは中東のシリコンバレーと言われるほどスタートアップをはじめとした新進気鋭の企業が参集している。

自動運転関連企業も非常に多く、同国を代表するモービルアイをはじめ、LiDAR開発を手掛けるInnoviz Technologies、CMOSベースのイメージングシステム開発を手掛けるBWV、サイバーセキュリティ開発のCybellumやArilou、自動運転シミュレーションシステム開発のCognataなど、有力企業が目白押しだ。

【参考】イスラエル政府の動向については「イスラエル政府、完全自動運転タクシーの試験走行にゴーサイン」も参照。イスラエルの自動運転関連企業については「自動運転関連のイスラエル企業一覧(2022年最新版) スタートアップ含む20社まとめ」も参照。

モービルアイの躍進に注目
モービルアイのアムノン・シャシュアCEO=出典:インテル

モービルアイはすでに同国内で公道実証を重ねており、2022年4月には夜のエルサレムを自動運転走行する最新の動画を公開した。セーフティドライバーが同乗しているが、ハンドルには一切触れておらず、自動運転システムのみで複雑な市街地を走行する様子がノーカットで40分間披露されている。

ドイツや米国、フランスなど各地で実証を進めており、本格的な世界展開を見据えているモービルアイ。2022年中には株式市場への再上場も計画している。米国・中国企業が席巻する自動運転業界に風穴を開ける第3勢力として、同社の躍進に要注目だ。

Innoviz Technologies製LiDARの採用も続々

LiDAR開発を手掛けるInnoviz Technologiesも注目の1社だ。同社製品はBMWのレベル3車両への採用が決定しており、2022年中に市場に導入される見込みだ。

2021年12月には、建設大手の大林組が自動タワークレーンシステムに同社製LiDARを採用したことも発表されている。自動化を促進する「目」の活用は、今後応用範囲をどんどん拡大していきそうだ。

【参考】Innoviz Technologiesについては「驚異的伸び!LiDAR企業Innoviz、3年で売上100倍へ 自動運転の目を開発」も参照。

■サウジアラビア
政府とNAVYAが自動運転導入に向け協定

サウジアラビア政府は2022年3月、仏NAVYAと自動運転の導入に関する協定を結んだ。アラビア半島全体にわたるレベル4自動運転車の大規模展開をスピードアップするため、パイロットプロジェクトの実施やユースケースの検証、規制の在り方などを図っていく。

サウジアラビアではすでに6台のシャトルを稼働させているが、スマートシティ化に力を入れる同国において自動運転シャトルフリートを配備するサポートを全面的に行っていく計画のようだ。

ARMAをはじめとした自動運転シャトルのみならず、空港や工業地帯で輸送用の自動運転トラクターの導入も進め、町の中心部や空港などにおいて新しいファーストマイルとラストマイルのユースケースを検証し、研究開発をより高いレベルに引き上げていく構えだ。

【参考】NAVYAの取り組みについては「「サービス売上」の伸び鮮明!自動運転シャトルの仏NAVYA、前年比23%増」も参照。

大学も自動運転シャトルの実証に着手

キングアブドゥッラー科学技術大学(KAUST)は2019年、米Local Motorsの「Oli」と仏EasyMileの「EZ10」の2大の自動運転シャトルの試験導入を発表した。

KAUSTやサウジ公共交通などのプロジェクトで、自動運転技術やサービスの研究に活用していく方針という。

■UAE~ドバイ~
2023年にも自動運転実用化へ

UAEの中でもいち早く原油依存からの脱却を目指し、産業多角化・近代化を図ってきたドバイは、交通イノベーションへの意欲も強い。自動運転やエアモビリティなどの先端技術の導入に積極的で、2022年に自動運転車の公道走行を可能にするルールを策定し、2023年にも実現する計画が報じられている。2030年までにモビリティ全体の25%を自動運転車に置き換えていく構想も掲げている。

政府機関も、ドバイ交通局(RTA)が自動運転に関する世界会議や技術を競うコンテスト「Dubai World Congress for Self-Driving Transport」を主催したり、ドバイ警察が空飛ぶバイク型ドローンの導入に取り組んだりするなど強いリーダーシップを発揮しているようだ。

【参考】ドバイの取り組みについては「ドバイ、2023年に自動運転車を公道解禁 無人タクシー展開へルール策定」も参照。

Cruise「Origin」を採用 2030年までに4,000台規模へ

GM傘下のCruiseは2021年4月、自動運転タクシーを独占的に運行する契約をRTAと結び、2023年からドバイで自動運転タクシーの運行を開始すると発表した。

投入する車両は自動運転サービス専用の「Origin(オリジン)」で、レベル4以上の技術で運行する。2023年10月に「ボルト」モデルの自動運転車を試験運用し、年末までにOriginを導入していく。当初は使用台数やエリアを限定するものの、2030年までに4,000台規模まで拡大し、サービスエリアを徐々に拡げていく計画だ。

2022年3月には、ドバイ皇太子がOriginに試乗し、車両の説明を受けたようだ。現在、サービス実装に向け、車両の公道走行試験やデジタルマッピングなどについて協議を進めているようだ。

【参考】Cruiseの取り組みについては「準備着々!自動運転の「Cruiseタクシー」、ドバイで2023年から運行」も参照。

Neolixの配送ロボットをドバイやアブダビが導入
Neolixがドバイで導入するとみられる自動運転配送車=出典:Neolix公式サイト

サウジアラビアに本拠を構える中東最大のECプラットフォーマーNoonは2019年、自動走行ロボットの開発を手掛ける中国Neolixと戦略的パートナーシップを結び、自動配送ロボット5,000台を発注したことが報じられている。報道によると、アブダビとドバイの一部地域に配備する計画という。

2021年には、Neolixの車両を活用した自動運転デリバリーサービスがドバイ中心部で始まることをドバイ道路交通局の幹部が明かしている。

【参考】Neolixの取り組みについては「ドバイで自動運転デリバリー開始へ 中国ベンチャー「Neolix」の車両採用」も参照。

Careemが自動運転モビリティ導入に向けパートナーシップ

Uber傘下で中東で配車サービスを展開するCareemは2016年、連結可能なモジュール式ポッドタイプの自動運転モビリティ「NEXT pod」の導入に向けNext Future Transportationとパートナーシップを結んだと発表した。

その後の展開は不明だが、ドバイでは実際に走行実証も行われている。斬新で目を引くデザインはドバイのイメージとマッチする。続報に期待したいところだ。

【参考】Next Future Transportationについては「自動運転バス・シャトルの車種一覧(2022年最新版)」も参照。

三笠製作所とドバイ警察が動く交番を共同開発

ドバイでは、日本の技術も導入されている。ドバイ警察と三笠製作所が共同で世界初となる移動式交番「SPS‐AMV(Smart Police Station-Autonomous Mobile Vehicle)」の開発を進めており、中東最大の情報通信技術展示会「GITEX Technology Week 2018」で初披露された。

ドバイ警察とインタラクティブ通信し、犯罪や交通違反を検知・通報する前後方360度のカメラシステム機能を搭載予定で、速度違反や駐車違反の自動検出や警察本部におけるライブストリーミング映像のVR視聴などを可能にするほか、不審者・不審車両の検出や火災判定、交通量調査、道路状況の監視、砂塵嵐・砂嵐予測監視システムといった機能拡充も検討しているという。

交番機能以外にも、移動先の住民に各種支払いや住民票の出力、遺失物の紛失・盗難届など、約30の行政サービスを可能にするなど、実用化されれば多方面で活躍可能なモビリティとなりそうだ。

SPS-AMVの2号機は2021年開催のドバイ国際博覧会でも展示・配備されたようだ。

こうした具体性のある多目的モデルは世界的にも珍しく、日本国内でも導入に向けた取り組みが進むことに期待したい。

【参考】移動式交番については「自動運転の無人交番、日本の三笠製作所が開発!ドバイ万博に納車」も参照。

■UAE~アブダビ~
WeRideが最高気温45度の条件下で実証
出典:WeRide

UAEでは、アブダビでも自動運転導入に向けた取り組みが進められているようだ。中国WeRideは2022年3月、暑さや寒さといった過酷な環境下における自動運転実証に成功したと発表した。

「暑さ」の舞台は最高気温45度に達するアブダビで、熱回収と冷気排出管理を効果的に実行することで高温に耐え得る熱管理システムを設計し、走行実証を成功させたようだ。

実証実験はアブダビの交通局や地理空間データサービスを展開する地元企業Bayanatなどと共同で実施しており、2022年半ばに車両台数を増やしさらなる実証を行う予定という。

【参考】WeRideの取り組みについては「中国WeRide、世界で飛躍!アブダビの自動運転タクシーにシステム提供」も参照。

■【まとめ】豊富な資金と高度な技術が大きな武器に

イスラエルを中心としたテクノロジーと、オイルマネーを源泉とするインフラ開発力が結びつき、中東の都市開発を大きく変え始めているようだ。豊富な資金と高度な技術が自動運転開発に向けられれば、米国・中国に勝るとも劣らない自動運転立国が可能となるかもしれない。

オイルマネーが自動運転マネーに代わる日は訪れるのか。今後の動向に要注目だ。

【参考】関連記事としては「自動運転、日本政府の実現目標(2022年最新版)」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)









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