【最新版】中国のDiDi Chuxing(滴滴出行)完全解説 ライドシェア・配車事業、日本での展開は?

知られざる事業史に迫る



出典:DiDi Chuxingプレスリリース

5.5億人が利用する世界最大規模の交通プラットフォーム「DiDi」を世界400都市以上で提供している中国ライドシェア大手DiDi Chuxing(滴滴出行/ディディチューシン)。2012年の創業からわずか6年で世界各国に進出し、2018年9月には正式に日本進出も果たしている。

日本においても今後知名度が飛躍的に増すだろうDiDi。その沿革から事業概要、最近のニュースまでまとめてみた。


  1. DiDiモビリティジャパン、大阪でタクシー配車サービススタート
  2. 中国ライドシェア大手DiDi、深夜営業を一部中止
  3. 中国ライドシェア利用者3億5000万人、1年で2倍に
  4. タクシー配車アプリや提供企業を一挙まとめ
■DiDiの沿革・企業概要
発端は2012年、小桔科技が「DiDi Dache」ローンチ

DiDiの歴史は、現CEO(最高経営責任者)を務める程維氏が2012年に北京で立ち上げた「Xiaoju Technology(小桔科技)」が、配車サービスアプリ「DiDi Dache(嘀嘀打車、後に滴滴打車)」を始めたことに端を発する。また、同年には後に合併する「Kuaizhi Technology(快的打車)」も杭州に設立され、アプリによるオンラインタクシー歓迎サービスを開始している。現社長の柳青氏は2014年にCOO(最高執行責任者)として入社し、翌年に同社の社長に就任している。

2015年2月、小桔科技と快的打車は合併して「DiDi Kuaidi(滴滴快的)」となり、同年9月に現在のDiDi Chuxing(滴滴出行)にリブランドされた。

【参考】なお、小桔科技は中国インターネット大手のテンセント、快的打車は同アリババ、ウーバーチャイナは百度(バイドゥ)からそれぞれ出資を受けており、この3社が合併・買収により一つになったことで、中国3大インターネット企業から出資を受ける唯一の企業となった。

2015年8月、GrabやLyftとパートナーシップ

また、2015年8月には東南アジアのGrab(グラブ)、9月には米Lyft(リフト)とそれぞれパートナーシップを結んで投資や製品開発、技術などにおける連携を模索しており、12月にはインドのOla(オラ)を含め包括的な輸送プラットフォームを構築するためのグローバル戦略パートナーシップ枠組みを策定している。


2016年には、ライバルの米Uber(ウーバー)が中国で展開するウーバーチャイナを買収。同年は1日平均の乗車回数が2000万回以上となり、創業から6年を費やして10億回を達成したウーバー社を大幅に上回るほどの規模に成長した。

2016年にはアップルから、2017年にはソフトバンクからの出資も

また、2016年5月には米アップル社から10億ドルの戦略的投資を受けたほか、2017年にはソフトバンク系ファンドの「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」(SVF)からも出資を受けている。

2017年8月には、欧州とアフリカでライドシェア事業を手掛けるTaxify(タクシファイ)、中東と北アフリカの同業Careem(カリーム)と戦略的パートナーシップを発表。2018年1月にはブラジルの99社を買収し、同年6月にはオーストラリアへの進出を発表するなど、世界展開を積極的に進めている。

2018年に日本進出、ソフトバンクとタクシー配車事業

2018年6月にはソフトバンクとの合弁で日本法人「DiDiモビリティジャパン」を設立し、9月から日本国内でタクシー配車プラットフォームの提供を開始している。


このほか、2018年4月にはライドシェアやカーシェアリングの世界的な普及を目指す企業連合「洪流連盟(DiDi Auto Alliance)」を設立。トヨタをはじめ世界の部品大手企業など31社が参加している。2018年5月には、ブロックチェーンを活用したライドシェアアプリの開発計画が表面化し、中国最大の仮想通貨取引所Binanceからの出資も取り沙汰されている。

■DiDiの中国における事業

通常のライドシェアサービスのほか、タクシー事業として、カープールを設け通勤用タクシーを乗り合いできるサービス「DiDi Express」や、ハイエンド車による高品質なサービスを提供するタクシー「DiDi Premier」、専門ドライバーによる5つ星のリムジンサービス「DiDi Luxe」、同じ方向に向かう乗客が相乗りするサービス「DiDi Hitch」などを手がけている。

また、法人顧客に効率的で管理しやすいワンストップ輸送ソリューションを提供する車両管理プラットフォーム「DiDi Enterprise Solutions」や、自動車所有者にプロのドライバーを派遣し運転を代行する「DiDi Designated Driving」、バス事業の「DiDi Bus」「DiDi Minibus」、カーレンタル事業の「DiDi Car Rental」、自転車シェアリングサービズ「DiDi Bike-Sharing」など、幅広い移動サービスを展開している。

このほか、自動車保険のサービスプラットフォーム「DiDi Car Insurance」や自動車オーナー向けの健康保険プランなども行っている。

研究開発部門では、中国と米国に研究開発センターと試験車両を持っており、AI(人工知能)やビッグデータの活用を進めている。DiDiのプラットフォーム上で生成された膨大なデータを自動運転アルゴリズム訓練の基礎として役立てており、Vehicle-to-Road(V2R/路車間通信)やVehicle-to-Vehicle(V2V/車車間通信)などさまざまな研究を行っているようだ。

■DiDiの日本における事業

日本法人「DiDiモビリティジャパン」が2018年9月から大阪エリアでタクシー配車プラットフォームの提供を開始した。

主なエリアは関西国際空港を含めた泉州エリアや大阪市域内で、第一交通産業グループなど計12社のタクシー事業者と提携し、AIを活用した高度な分析・予測テクノロジーで、タクシー配車の最適化を実現していくこととしている。

中国国内で利用しているDiDiアプリは日本でもそのまま使うことが可能で、同社が調査した国慶節(10月1〜7日)休暇中における大阪での中国人のサービス利用動向によると、中国人ユーザーの割合は5割以上を占め、関西国際空港から新大阪駅や、難波駅から京都市までの55キロメートル以上といった長距離を移動したユーザーがいる一方、1.34キロメートル程度の短距離の移動でも利用されるなど、大阪の市街地や大阪府外への移動など幅広く利用されたという。

DiDiモビリティジャパンは強烈なPR戦略でも注目を集める。2018年11〜12月にかけて「金土初乗り無料キャンペーン」を実施し、タクシー配車アプリ業界でのその後のPR合戦の火付け役となった。

タクシー配車アプリでは既に全国的に利用されている「JapanTaxi」が最大のライバルと言えるが、ウーバー日本法人やディー・エヌ・エー(DeNA)、ソニー系の「みんなのタクシー」も同様の事業を手掛けており、いち早く日本国内でのブランド認知を果たしたい考えだ。

同社は今後大阪に加え、訪日外国人の利用が見込める東京や福岡、京都、沖縄などの国際空港隣接都市からサービスを拡大展開していく方針。

■DiDiに関連する最近のニュース
上場にらむDiDi、時価総額800億ドルでUber超えも

DiDiが早ければ2018年度中に香港市場での上場を目指していることが2018年5月に香港メディアなどで報じられた。上場時の時価総額は700億~800億ドル(約7兆7000億~8兆8000億円)に達する可能性があり、実現すればライバルの米ライドシェア大手Uber(ウーバー)の約700億ドルを上回る公算だ。

ヒッチサービスで2度の殺人事件発生

中国国内で2018年5月と8月、同じ方向に向かう乗客が相乗りするサービス「DiDi Hitch」の利用者が殺害される事件が起こっている。

いずれも男性ドライバーが女性利用者を殺害したもので、事態を重く見た同社は「DiDi Hitch」サービスを無期限凍結した上で、組織と経営資源を安全と利用客サービスに傾斜させ管理体制を強化すると誓約した。

自動車関連31社とアライアンス結成

DiDiは2018年4月、31社の自動車業界パートナーとともに「洪流連盟(DiDi Auto Alliance、Dアライアンス)」を設立することを発表した。同社のプラットフォームを活用し、スマートモビリティの促進などに向け幅広く活用していくこととしている。

アライアンスには、独フォルクスワーゲンやコンチネンタル、ボッシュなどのほか、トヨタやルノー・日産・三菱自動車連合、パナソニックなど日本企業も参加している。

■Uberとの勢力争い激化 Dアライアンスの動きにも注目

本家本元のライドシェア事業においては、世界進出の手を緩めることなく拡大路線を続けており、米ウーバーとの2強による勢力争いは今後ますます激化しそうだ。有力ライドシェア事業者に軒並み出資しているソフトバンクとの協業も注目されており、日本国内での展開も含めしばらくは目が離せない状況が続きそうだ。

Dアライアンスの動きも気になるところで、ライドシェア事業を超えた大きな枠組みでMaaS(移動のサービス化)をはじめとした自動車業界の新たな動きに一石を投じそうだ。


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