【最新版】ライドシェアとは? 意味や仕組み、ウーバーなど日本・世界の企業まとめ

日本ではカープール型が発展中



インターネットを活用し、遊休資産の活用を図るシェアリング・エコノミー。自動車関連では、カーシェアリングをはじめ駐車場シェアリングなどが日本国内でも事業化されているが、世界で急成長を遂げているライドシェアリングについては消極的に感じる。


法律による規制が最大の要因だが、では具体的にどういった部分が抵触するのか。そもそもライドシェアはひとくくりにして良いものなのか。さまざまな形があるのではないか。こういった疑念を解消するため、ライドシェアについて一から解説してみよう。

記事の目次

■ライドシェアの概念

ライドシェアは、直訳すると「ライド=乗る」ことを「シェア=共有」することで、一般的には「相乗り」や「配車サービス」を指す。自家用車の所有者と自動車に乗りたい人を結び付ける移動手段で、自動車そのものを貸し出してシェアするカーシェアリングとは区別される。

その成り立ちは第二次世界大戦中の北米にさかのぼる。北米ではすでに自動車の普及が始まっており、戦時中の燃料節約対策として政府が相乗りを推奨していた。戦後に入ると高速道路網が整備され、都心部の過密化の進行とともに郊外都市が開発され、自動車が移動手段の主流となる。その際、人口密度の低さによりバスや鉄道などの公共交通は成り立たず、自動車で都心へ通勤する人が著しく増加し、道路混雑が問題視されるようになった。

1970年代のオイルショック時には燃料節約が死活問題となり、相乗りが一気に普及・定着していったと言われる。そして1990年代以後、インターネット・スマートフォンの普及により乗せたい人と乗りたい人のオンラインマッチングがリアルタイムで可能となり、利便性を一気に増したライドシェアは産業として大躍進を遂げることになる。


■ライドシェアの類型

ライドシェアはいくつかの形態に分類することができるが、相乗り文化が乏しい日本ではライドシェアの定義そのものが曖昧であり、近年注目されている配車サービス型を指す場合が多い。

前段でも説明したが、ライドシェアはもともと純粋な相乗りに端を発するものであり、日本国内でも相乗り自体は規制されていない。規制対象となるライドシェアと規制対象外となるライドシェアを区別するため、大きく4つに分類して解説する。

カープール:元祖ライドシェアというべき純粋な相乗りサービス

一般のドライバーが出発地や目的地が同一である人を自家用車に同乗させる相乗りで、基本的にドライバーはガソリン代などの実費程度を受け取ることができるが、利益を得ることはできない。

バンプール:バンを用いた多人数乗車型 社用車利用も

大型車両であるバンを利用することで多人数を運ぶ相乗り。費用は乗客が分担するが、社用車的な扱いやバスに代わる存在として企業や行政が直接運営する場合や、補助を出して負担軽減を図っている場合などもある。


カジュアルカープール:ヒッチハイク型相乗りサービス

一般のドライバーが通勤の途中で道路沿いの所定の乗り場に並んでいる人を自家用車に同乗させる相乗り。ライドシェア用のバス停・タクシー乗り場のようなものをイメージするとわかりやすい。ドライバーと乗客は互いに面識がないことが特徴で、カープールとヒッチハイクを掛け合わせたようなものとなる。

TNCサービス:海外で主流となっている有償ライドシェアサービス

「Transportation Network Company」の略で、リアルタイムライドシェア、オンデマンドライドシェア、ライドソーシングとも呼ばれる。事業主体は自ら運送せず、スマホアプリなど自らが運営するプラットフォームにおいて一般ドライバーと乗客を仲介し、一般ドライバーが自家用車を用いて有償の運送サービスを提供する。

利用者はスマホアプリで予約、評価、決済などを行い、事前に料金などを知ることもできる。

■ライドシェアの市場規模

リサーチステーション合同会社が2019年1月に発表したライドシェア市場に関するレポートによれば、ライドシェアの世界市場は2018年段階で613億ドル(約7兆円)規模。今後はさらに市場が拡大し、2025年には3倍以上に拡大する見込みだという。

また日本で認められているコストシェア型ライドシェアの国内市場も、今後拡大が期待される。調査会社の富士経済によれば、運転手と利用者がガソリン代や高速代といった交通費を割り勘するカープール型ライドシェアの国内市場(仲介手数料ベース)は、2018年の1億円(見込)から2030年には131億円(予測)まで拡大するようだ。

■日本におけるライドシェアに関する法的見方
有償サービスには道路運送法を適用

日本において自家用自動車を有償で運送の用に供することは、道路運送法第78条により例外を除いて禁止されている。このため、国土交通大臣の許可のない自家用自動車は有償で運送できないというのが現在の状況だ。

実際に、米Uber社の日本法人が2015年2月、福岡市でTNCサービス型ライドシェアの実証実験を行ったところ、「道路運送法に抵触する可能性がある」と判断し、行政指導を行った。

実費の範囲内であれば道路運送法は適用されず

では、ドライバーが非営利で、同乗者が実費の範囲内で相応分の金額を負担するカープール型の場合は道路運送法に抵触するのか。

同様のサービスを運営する株式会社nottecoによると、国土交通省と経済産業省からこの問い合わせに対する回答を得ており、「旅客自動車運送事業の対象とならず、道路運送法の許可や登録を必要としない」とのことだ。

【参考】道路運送法第78条では、災害で緊急を要する場合や市町村が運営する場合、公共交通空白地でNPO法人などが運営する場合、福祉目的の場合などを例外と定め、有償運送を認めている(一部運輸支局などへの登録が必要)。また、国家戦略特区改正法により、外国人観光客の交通手段確保などを目的に特区認定を受けたエリア内においても有償運送を認めている。

■日本版・ライドシェアサービスを提供している企業
株式会社notteco:相乗りサービス10年超の実績 会員数は4万人以上に

カープール型の長距離ライドシェアマッチングサービス「notteco(ノッテコ)」を運営している。同じ目的のドライバーや同乗者をマッチングするサービスで、ガソリン代や高速代などの実費を乗員で割り勘するシンプルな仕組み。2007年のサービス開始以来、会員数は4万人以上に達しているという。

2017年には北海道北部に位置する天塩町と提携し、同町から北に約70キロメートル離れた稚内市をつなぐ新たな交通手段として、日本初の地方都市特化型長距離ライドシェアサービスの実証実験を実施している。

株式会社NearMe:タクシー向け相乗りサービスを展開

タクシーで同じ方向に行きたい人を見つけ、相乗りするサービス「nearMe.」を運営している。アプリで行き先を入力すると目的地が近い人とマッチングし、メッセージや通話機能などを活用して合流し、相乗りを行う仕組み。アプリ内でクレジット決済するため、現金のやりとりも不要だ。

株式会社Azit:大型資金調達で業務範囲拡大中

都市圏を中心にカープール型マッチングシステム「CREW」を運営している。ドライバー登録には対面での面接による審査が必要で、SNS情報連携による身元の透明性の確保などトラブルの事前防止に力を入れており、ドライバーと同乗者の相互評価システムにより質の向上も図っている。

2018年6月には鹿児島県大島郡与論島の観光協会と手を組み、公共交通機関不足に対応するため観光客を対象とした「互助モビリティプラットフォームサービス」の実証実験を行っている。

また、同年9月には総額約10億円の資金調達を発表。マーケティングを進め、全国各地への事業拡大に取り組んでいく構えだ。

株式会社GORIDE:カリフォルニアにも拠点、WEB開発力を発揮

長距離ドライブやフェス、サーフィン、観光などアウトドアアクティビティを中心とした自動車相乗りサービス「GO RIDE」を運営している。日本のほか米カリフォルニアも拠点を置いており、WEBサービス全般を担う開発力を有する。

【参考】GO RIDE公式サイトは「こちら」。

株式会社ZERO TO ONE:アクセスの悪いイベントなどにうってつけ コラボキャンペーンも 

国内最大級相乗りアプリ「nori-na(ノリーナ)」を運営。スポーツ観戦や音楽フェスなど、アクセスの悪い郊外で開催されるイベントなどを訪れるユーザー同士を結びつけている。

2017年冬には、日本スキー場開発株式会社が運営する5箇所のスキー場と手を結び、新規顧客の集客と相乗りの利用促進を目的としたコラボキャンペーンを開始するなど、相乗りサービスの認知度向上にも力を入れている。

【参考】nori-na公式サイトは「こちら」。

■世界版・ライドシェアサービスを提供している企業
Uber(ウーバー・テクノロジーズ/米国):ライドシェアの代名詞的存在

世界最大級の配車サービスを展開する代表格。北米を皮切りに世界各地の市場を開拓し、現在65カ国、600を超える都市でサービスを行っている。いち早く世界戦略を進めた同社だが、同業他社や新興勢力との競争激化、ライドシェアに対する国の考え方などを背景に訴訟案件や事業撤退なども相次いでおり、パイオニアならではの苦労も絶えないようだ。

また、2018年に入ってからはサイクルシェア事業に注力する動きを鮮明にしており、事業の多角化を推し進めている状況だ。2019年初旬にも上場するとの報道も話題になっている。

日本においては、タクシー会社と提携して配車アプリを提供している。2018年12月時点では名古屋でサービスを展開しており、2019年には大阪にも進出する。料理配達サービス「ウーバーイーツ」事業も展開している。

滴滴出行(Didi Chuxing・ディディチューシン/中国):中国発ライドシェア 日本含め世界展開図る

中国のライドシェア最大手企業。世界戦略も活発に進めており、2018年4月にはライドシェアやカーシェアリングの世界的な普及を目指す企業連合「洪流連盟(Dアライアンス)」の設立を発表した。トヨタ自動車や仏ルノー・日産自動車・三菱自動車の3社連合、世界の部品大手企業など31社が参加しており、今後大きな影響力を持つ組織に成長しそうだ。

ただ2018年、同社の配車アプリのドライバーによる殺人事件が連続して起き、中国国内でDiDiのサービス提供体制に対する批判が高まり、業績に与える影響も懸念されている。

日本国内においては、ソフトバンクと合弁会社「DiDiモビリティジャパン」を設立し、2018年9月からタクシー配車サービスを開始した。「金土無料キャンペーン」などシェア獲得に向けて強烈なPR戦略を実施している。

Lyft(リフト/米国):ウーバーと並ぶ北米大手ライドシェア

米国でウーバーと競合する配車サービス大手。2018年5月の現地メディアの報道によると、米国における業界シェアが35%に達し、2016年11月のシェア20%から75%の伸びを記録したという。Lyftは2019年3月29日に米ナスダック市場に上場し、時価総額を約220億ドル(約2兆4000億円)までのびした。

月額料金定額制プランや、ドライバーがレンタカーを使ってライドシェアで収入を得るという新たな枠組みの導入実験を行うなど、さまざまなアイデアを実践している。近年は、ウーバー同様サイクルシェアに力を入れている様子だ。

Grab(グラブ/シンガポール):東南アジア最大手 ソフトバンクやトヨタが出資

東南アジア最大の配車サービス事業者で、東南アジア217都市でライドシェアサービスを展開。一日600万回の配車を行っているという。

2014年にソフトバンクが2億5000万ドル(約270億円)を出資しているほか、2018年にはトヨタ自動車も10億ドル(約1100億円)の出資を発表しており、東南アジアにおいてモビリティソリューションをワンストップで提供できる会社を目指すこととしている。

Cabify(キャビファイ/スペイン):欧州発の有償ライドシェア事業者

欧州では珍しい有償ライドシェアサービスを運営する事業者。スペインのほか、メキシコやチリ、コロンビア、ペルーといったスペイン語圏で事業展開を図っているという。

BlaBlaCar(ブラブラカー/仏):欧州で高い支持 カープール型を展開するフランス発の事業者

長距離に特化したカープール型のライドシェアを展開しており、国をまたいだ移動が安価で気軽に利用できるため、欧州では人気のようだ。

■日本のタクシー業界の動き:相乗りタクシー実証実験進む 提携の動きも活発化

ライドシェアサービスと競合するタクシー業界も黙っていない。国土交通省の呼びかけのもと、配車アプリを活用してタクシーを相乗りで割安に利用できるサービス「相乗りタクシー」の実証実験を大和自動車交通グループや日本交通グループ、ジャパンタクシーなどが相次いで実施している。

また、同業他社や通信事業者などと提携する動きも広がっている。ソフトバンクは中国・滴滴出行(Didi Chuxing)と合弁会社を設立し、タクシー会社と連携しながら大阪で2018年秋にも配車サービスをスタートさせることを既に発表。配車アプリ「全国タクシー」の運営会社であるジャパンタクシーはNTTドコモと資本業務提携を交わし、プラットフォームの機能強化を進めている。

このほか、グリーンキャブ、国際自動車、寿交通、大和自動車交通、チェッカーキャブ、東都自動車、日の丸自動車のタクシー会社7社と、ソニー、ソニーペイメントサービスの計9社が2018年に「みんなのタクシー株式会社」を設立した。ウーバーも名古屋でタクシー配車事業を開始している。

AI(人工知能)技術などを活用した配車サービスや決済代行サービス、後部座席広告事業などのサービスを展開する予定となっており、現段階で相乗りサービスに対する言及はないものの、こういった動きにも注目しておきたい。

■ライドシェアに関するさまざまな意識調査内容
ライドシェアを利用したいと思わない「67.4%」

PGF生命が2016年6月に実施した「シェアリング・エコノミーと所有に関する意識調査 2016」によると、「ライドシェアを利用したことがある」と回答した割合は0.7%、「利用したことはないが利用してみたい」は7.3%、「利用したことはないが利用を検討してもよい」が24.7%、「利用したことがなく、利用したいと思わない」が67.4%だった。

ライドシェアを利用したことがある「2.8%」

MMD研究所が2018年8月23日までに発表した「シェアリングエコノミーサービスに関する調査」によると、ライドシェアを経験したことがある日本人は2.8%であるという。

ミレニアル世代の利用意向は「45.2%」

また、ジャパンネット銀行が2018年2月に発表した「ミレニアル世代のシェアリング・エコノミーに対する意識調査」によると、ライドシェアサービス(相乗り)を利用したいと回答した割合は45.2%に上ることがわかった。

【参考】ジャパンネット銀行の調査については「ミレニアル世代(18〜25歳)の45%、ライドシェアサービス利用に関心|自動運転ラボ」も参照。

有償のライドシェアサービスを実現できない日本においては、ライドシェアの利用率は著しく低いものの、カープール型を含め興味や関心のある層が3〜5割の範囲で存在するという結果がうかがえる。

法整備や運用規則など詳細を煮詰め、安全性を担保したうえで実現することができれば、まだ顕在化していない需要も掘り起こされる可能性があるものと思われる。

■ライドシェアの今後

日本国内において有償ライドシェアを妨げているのは道路運送法により規制だが、その根底には自家用車を利用する上での車両整備などの安全面や事故時の責任の所在、労働者としてのドライバーの位置づけ、競合が予想されるタクシー業界の雇用問題などが挙げられ、有償サービス型に関して国土交通省は慎重な姿勢を崩さない。

こういった情勢に対し一石を投じようとする団体がある。楽天株式会社の三木谷浩史社長が代表を務める一般社団法人新経済連盟だ。同連盟は2018年5月に関係省庁に対し全72ページに及ぶ「ライドシェア新法の提案」を提出した。

提案には、ライドシェア実現に向けた具体策が盛り込まれており、従来型のサービス提供者にのみ規制を課す業法の在り方について、サービス提供者への規制を緩める代わりにプラットフォーム提供者にも規制を課し、両者の責任が合わさることで全体最適を担保すべきとしている。

その上で、プラットフォームは登録制、ドライバーは届出制とし、資格や運行管理責任、車両整備責任、事故時の責任などを明確化する案を示している。

同連盟は過去にも内閣府が設置している規制改革ホットラインにライドシェアの実現に向けた提案を出しているものの、その際の対応は不可だった。今回の新たな提案に対し国はどういった結論を出すのか、注目が集まりそうだ。

【参考】ライドシェア新法の提案については「「ライドシェア新法」提言の全貌、全72頁の未来のカタチ 新経済連盟|自動運転ラボ」も参照。

■【まとめ】世界のライドシェアブームを支えている「需要」

海外では労働者の待遇や乗客の安全性の確保、タクシーをはじめとする既存業界との関係などさまざまな問題が取り沙汰されているが、事実としてライドシェア事業は世界で急成長を遂げており、それを支えているのは需要である。

日本国内でも潜在的需要は高いはずだ。結論がどうなるかはわからないが、国土交通省をはじめとした国は当たらず障らず事なかれ主義のような消極的態度をいつまでも続けるわけにはいかない。官民交えた本格的な議論が遅かれ早かれ求められることになる。


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