ライドシェア推進派の政治家一覧(2024年最新版)

国会議員や知事、市町村長をピックアップ



出典:flickr / G20 Argentina (CC BY 2.0)/首相官邸/首相官邸

解禁に向けた議論が大きく加速しているライドシェア。国は規制改革推進会議を中心に本格議論に着手し、2024年3月の一部解禁も決定。国会議員の中にも超党派勉強会を立ち上げるなど取り組みが熱を帯び始めた。

依然として慎重な姿勢を崩さない政治家も多いが、前向きに議論を進めようとする政治家が台頭してきた印象だ。


ライドシェア推進派……とも言えそうな、議論推進を望む政治家の考え方や発言を、国政、都道府県、市町村別に取りまとめてみた。

【参考】ライドシェアについては「ライドシェアの法律・制度の世界動向(2023年最新版)」も参照。

■国会議員

菅義偉氏(自民党)

出典:首相官邸

国政関連では、菅義偉前首相がライドシェア議論の火付け役となった。菅氏は2023年8月、地方での講演でライドシェア解禁に向けた議論の必要性を訴えた。都市圏を中心にタクシー供給不足が顕著となったことを受け、公共交通空白地以外での導入についても議論の余地がある――とする主旨だ。

11月に出演したテレビ番組「日曜報道 THE PRIME」でもライドシェアの必要性を強調した。キャスターからの「全面解禁すべきか、タクシー不足の地域だけに限定すべきか」という問いかけに対し、「ライドシェアもタクシーも選択できるのは望ましい」と回答した。


キャスターから「地域を限定せずということ?」と再度問われると、「最終的にはそういう方向と思っている」と話した。全面解禁も視野に収めているようだ。

河野太郎氏(自民党)

河野太郎大臣=出典:flickr / G20 Argentina (CC BY 2.0)

8月の菅氏の発言に呼応するかのようにライドシェアに言及したのがデジタル大臣・規制改革担当を担う河野太郎氏だ。河野氏もテレビの報道番組に出演した際、地域ごとにライドシェアや自動運転サービスが自動解禁されていく独自案を示した。

その後、内閣府の規制改革推進会議における重要課題の1つにライドシェア(タクシー・バスの運転手確保、移動の円滑化)を盛り込み、作業部会となる地域産業活性化ワーキング・グループで本格的な議論に着手している。

小泉進次郎氏(自民党)

出典:首相官邸

小泉進次郎氏は2023年11月、自らが発起人の1人となり超党派のライドシェア勉強会を発足した。自民、公明、立憲民主、維新、国民民主から計21人が設立メンバーに名を連ね、ライドシェア導入に向けた見識を高めていく狙いだ。


ライドシェアとタクシーが共存できるような仕組みを模索するほか、ライドシェアに反対する意見も聞き入れながら方向性をまとめていく方針だ。

鈴木英敬氏(自民党)

三重県知事時代に「活力ある地方を創る首長の会」の事務総長を務めており、地方との橋渡し役としても期待が高い。

ライドシェア勉強会にも参加しており、「タクシーかライドシェアかではなく、ライドシェアもタクシーも……として地域の実情に合わせた選択肢を増やせる制度設計が必要」と発言している。

音喜多駿氏(日本維新の会)

ライドシェア導入に賛成の立場をとる日本維新の会では、高い情報発信力を持つ音喜多駿氏に期待したい。ライドシェア勉強会にも参加している。

自身のブログでは「ライドシェアや現在の過剰なタクシー規制に関わる論点を丁寧に紐解いていけば、ライドシェアの必要性は自ずと理解されるはず」「ライドシェアにおいてはきちんと新法を制定し、安全性を担保する規制も含めてきっちりと規定するべき」「できない理由を並べて忌避する局面ではなく、どのように日本に適切な形で導入するべきかを検討するべき時がきている」など考えを披露している。

馬淵澄夫氏(立憲民主)

立憲民主党では、国土交通大臣経験者ながらライドシェアに理解のある馬淵澄夫氏に期待したい。ライドシェア勉強会にも参加している。

ライドシェアに対しては、運行管理や整備管理、事故対応など安全面に不安があるとしつつも、公共交通確保の観点から交通手段の選択肢を増やし、慎重かつ抜本的対策を打ち立てるべく議論を進めるべきというスタンスをとっている。

■都道府県知事

黒岩祐治氏(神奈川県知事)

菅氏や河野氏、小泉氏を輩出する神奈川県は、県としてもライドシェア導入に意欲的だ。黒岩祐治知事は2023年10月、「神奈川版ライドシェア検討会議」を立ち上げ、県内での議論に本格着手した。

タクシー事業だけでは対応することが困難な需要の変動を補う形で、タクシー会社による運行管理や時間帯・地域を限定した導入を軸としている。タクシー会社がアプリを活用し、一般ドライバーと利用者をマッチングさせるとともに、車両の運行管理や整備管理も担う構想だ。

吉村洋文氏(大阪府知事)

大阪では、2025大阪・関西万博を見据えライドシェア議論を本格化させている。公共交通の維持困難とともに、都市部や観光地におけるインバウンドなどのタクシー需要に対応できない現状から、タクシー会社以外のプラットフォーマーなどの民間事業者が自由に参入できるライドシェアの導入が不可欠としている。

安全にライドシェアによる旅客運送ができる法人を運行主体に、エリアや時間制限を設けず、需給に応じた自由な価格設定を可能とする内容を目指しているようだ。

馳浩氏(石川県知事)

馳浩石川県知事も、「石川版ライドシェア」導入に向け検討を開始することを明らかにしている。エリア限定や既存事業者との連携などを軸に、不足する移動サービスを補う観点から検討を進めていく方針のようだ。

熊谷俊人氏(千葉県知事)

熊谷俊人千葉県知事は、インバウンド需要で成田空港周辺における交通供給が不足し、かつ白タク行為が増加していることなどを受け、空港周辺地域の域内や地域と成田空港を結ぶ新たな移動手段としてのライドシェアの活用について、既存公共交通との適切な役割分担のもと利用者視点での検討を規制改革推進会議に要望した。

2023年8月の定例会見でも、記者からの質問に対し「どのような取り組みがあり得るのか、研究をしていくよう指示をしているところ」と回答しており、県内での議論にも本格着手する見込みのようだ。

平井伸治氏(鳥取県知事)

平井伸治鳥取県知事も動きを加速している。平井知事は2023年11月の定例会見で「コミュニティ・ドライブ・シェア(鳥取型ライド・シェア)の導入」に言及した。

「バスやタクシー、ハイヤー、そうした事業者と協調しながら足らざる交通をコミュニティで支えていく」ことを軸としており、本格的なライドシェアではなく、自家用有償旅客運送の緩和を求めていくような内容だ。

NHKによると、実証に向けシステム構築などライドシェア関連の補正予算7,000万円を県議会に提案する予定という。

■市町村長

田中幹夫氏(富山県南砺市長)

「活力ある地方を創る首長の会」の地域公共交通小委員会委員長を務め、ライドシェアに対する地方自治体の意見を取りまとめている。

同市はバス路線に自家用有償旅客運送を用いているほか、2016年にはいち早くウーバージャパンと提携し、同社アプリを使用したタクシー配車やボランティア市民ドライバーによる自家用有償運送の実証を実施しようと事業を策定したが、予算取り下げに追い込まれた過去を持つ。

議論が再燃した今、首長の会の担当委員長としてどのように動いていくのか、要注目だ。

広瀬栄氏(兵庫県養父市長)

国家戦略特区制度のもと、マイカー運送サービス「やぶくる」を2018年に開始するなど、先駆的に取り組んできた養父市。バスやタクシー事業者、観光団体、行政などが一体となったNPO法人を設立し、運営を継続している。

利用はなかなか伸びていないようだが、2023年11月に河野太郎氏が視察に訪れるなどその取り組みは注目されている。

高島宗一郎氏(福岡県福岡市長)

かつてウーバーがライドシェア実証を行い、白タク行為として国土交通省から指導を受けた地が福岡市だ。同市もタクシー不足が顕著で、高島宗一郎市長も言葉を選びつつライドシェア導入に向けた提言を行っている。

ライドシェアは「安全性」と「業界との共存」が課題とし、タクシー会社の採用ハードルを下げるなどの規制緩和とともに、都市部の時間帯交通空白地に対応できない自家用有償旅客運送の運用拡大を求めるなど、各地域任せではなく、国において全国統一的なルールが必要としている。

長野恭紘氏(大分県別府市長)

一大観光地である別府市でも運転手不足が深刻化しており、観光地の観点からライドシェア導入に向け提案を行っている。

自家用有償旅客運送制度において、外国人観光客・深夜帯などを許可対象に追加することや、地域公共交通会議などの協議不要でタクシー不足分を自家用有償制度で補充できるようにすること、交通空白地以外でも運用可能にすること、上限運賃に関する文言をなくすこと、既存事業者や行政だけでなく全国民参加型の制度設計にすることなどを求めている。

藤井裕久氏(富山県富山市長)

藤井裕久富山市長も富山テレビに出演した際、ライドシェアに前向きな意向を示したようだ。藤井市長は「富山市は公共交通が不便な地域がたくさんある。そういうところではライドシェアサービスが非常に役に立つのではないか」と発言した。

その上で「導入する場合、事故の補償をどうするか、現存するタクシー事業者との共存をどうするか、事業者の理解をどうとっていくかが問題。これらを両立できれば地域社会にとって特に地方都市にとってはいいサービスだと思う」としている。

大泉潤氏(北海道函館市長)

大泉潤函館市長はライドシェア勉強会に足を運び、タクシー業界の今後の予測を踏まえた上で日本の実情に合ったライドシェアの仕組みを地域で構築していく環境整備を要請したようだ。

■地方自治体首長の約9割がライドシェア議論に賛成の立場

活力ある地方を創る首長の会会員を対象に2023年9月に実施した「地域公共交通・ライドシェア」緊急首長アンケートの結果によると、「国は自治体の現状に即したライドシェアの条件変更や規制緩和を行うべきか」との問いに対し、89.1%(117人中106人)が行うべきとの意向を示した。「現行制度のままでよい」は3人、「わからない」が10人の状況だ。

国会議員に比べ、地方の首長のほうがライドシェアに高い関心を示していることがよくわかる数字だ。もちろん、ほぼすべての首長が地域交通との共存を望んでおり、純粋な営利目的のライドシェアを無差別容認するような内容ではないものと思われる。

■【まとめ】潮目変わったライドシェア議論

少し前まではライドシェア解禁議論は半ばタブー視されていたが、大きく潮目が変わった印象だ。特に、地方自治体首長の約9割が何らかの規制緩和を求める声を挙げたことは大きい。

依然反対論者も多い国会だが、法改正を伴う変革に結びつけることができるのか、あるいは現行法のもと規制緩和を拡大していく方向でバランスをとるのか。

この流れでいけば規制緩和は必須の情勢だが、日本でライドシェアの無差別容認はまずあり得ない。ライドシェア導入に対しどういった条件が付されるかに注目が集まるところだ。

【参考】関連記事としては「自動運転推進派の政治家・議員・知事一覧」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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