トヨタe-Paletteを「手動運転」で使用!豊田市、自治体初の「乗客あり」実証

Autono-MaaS専用EVとして開発中



出典:豊田市プレスリリース

トヨタが開発中のEV(電気自動車)「e-Palette(イーパレット)」を用いた自治体初の「乗客あり」での走行実証は、「手動運転」で行われるようだ。

愛知県豊田市で、e-Paletteを鞍ケ池公園のパークトレイン用車両として走行させる実証が、2024年1月13〜14日、20〜21日の計4日間行われる。


e-Paletteは、同社がAutono-MaaS専用EVとして開発した車両だ。Autono-MaaSは「Autonomous Vehicle(自動運転車)」と「MaaS(モビリティサービス)」を融合させたワードで、e-Paletteは最終的に自動運転シャトルとして運行することを目指し、開発されてきた経緯がある。

一方、この実証実験では以下のようにプレスリリースで説明があるように、運転手がいることから、自動運転では走行しないとみられる。

パークトレインの運転手が「e-Palette」に乗客を乗せ、鞍ケ池公園サービスセンーから鞍ヶ池ハイウェイオアシス間の園路(片道約760メートル)を往復走行(出典:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000040.000110999.html

■Autono-MaaS専用EV「e-Palette」とは

e-Paletteは、移動や物流、物販など多目的に活用できるモビリティサービスを目指したMaaS(Mobility as a Service:移動のサービス化)専用次世代EVのコンセプトカーだ。2018年1月に米ラスベガスで開催された技術見本市「CES 2018」で初公開された。


トヨタのオウンドメディア「トヨタイムズ」ではe-Paletteについて、社会実装を控えた手動運転も可能な運転席があるタイプと、将来の無人自動運転を見据えた運転席がないタイプの2種類について紹介している。

まずは2020年代前半に、運転席があるタイプを用いた実社会でのサービス提供をスタートし、運転席がないタイプは建設中の実証都市「Woven City(ウーブン・シティ)」などを見据え開発が進んでいるようだ。

今回の実証で活用されるのが、運転席があるタイプの車両ということのようだ。

【参考】関連記事としては「トヨタのe-Palette(イーパレット)とは?自動運転EV、東京五輪で事故」も参照。


■片道約760mのルートを往復走行

今回の実証は、豊田市とトヨタが実施主体となっている。豊田市は、実証フィールドの提供やアンケート調査の実施、公共施設での活用検討を行う。トヨタは車両の提供と、実証の効果検証を担当している。

実証が行われる鞍ケ池公園では、元々パークトレイン「てんとう虫号」が運行している。多くの世代が利用する同公園で実際にe-Palette乗客を乗せて走行させることで、市民などの次世代モビリティへの期待と導入機運を高めるという。また、豊田市の公共施設における具体的な活用方法の検討に役立てていく。

実証では、パークトレインの運転手がe-Paletteに乗客を乗せ、鞍ケ池公園サービスセンターから鞍ヶ池ハイウェイオアシス間の片道約760メートルのルートを往復走行する。乗車料金は、てんとう虫号と同じ大人100円、子ども50円に設定されている。

乗客に対して、安全性や快適性、次世代モビリティに期待することなどに関するアンケート調査を実施する。アンケート結果や走行データを検証し、市内公共施設における人や物の移動手段としての活用方法を検討していくという流れになっている。

▼報道発表資料 全国の自治体で初めて実施「e-Palette」に乗客を乗せた走行実証について|豊田市
https://www.city.toyota.aichi.jp/pressrelease/1057361/1057392.html

■多用途に活用できるe-Palette

自動運転タイプのe-Paletteは、2021年に開催された東京五輪の選手村ですでにデビュー済みだ。しかし、パラリンピックの開催期間中に事故を起こした。オペレーター同乗で自動走行中に、視覚障がいのある日本人選手と接触するという事故であった。その後、安全対策を実施した上で運行を再開することと、安全対策が講じられたことが報告されている。

今回豊田市で行われる実証では、e-Paletteについて「『街の景色を変え、人々の暮らしを支えるモビリティサービスを実現する』というコンセプトのモビリティサービス専用バッテリーEV」と紹介されている。低床かつ大開口で開放感ある車室空間と、車高調整機能やスロープを備えることで、多くの人の移動を支えると共に、モノやサービスを運ぶなどさまざまなモビリティサービスへの活用を目指しているという。

自動運転ではなく、まずは手動運転で街に溶け込み、その後自動運転での実装も図っていく計画のe-Palette。Woven Cityでは2024年夏に第1期の建物が完成予定で、その後、e-Paletteも走行することが予想される。引き続き注目していきたい。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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