シェアサイクル・シェア自転車のサービス提供企業まとめ 世界・日本版、ウーバー参入も

スマホ普及で急成長、公共交通の役割も



米国勢のウーバー(Uber)やリフト(Lyft)、中国の滴滴出行(DiDi Chuxing)など右肩上がりで業績を上げ続けるライドシェア事業者。しかし、今年に入ってUberとLyftが相次いで自転車シェアリング(サイクルシェア・バイクシェア)に参入するなど、事業の多角化を図る動きが激しくなってきた。


日本国内においては、厳しい規制などを理由に本格的なライドシェア事業はいまだ展開されていないが、規制が緩い自転車シェアリングはどうか。面積が狭く密集した都市などでは有効な交通手段であり、サイクルツーリズムなど観光分野でも注目度が高まっている。何より環境負荷も小さい。

欧州や中国などでは身近な存在として定着しており、米国でも近年急速に普及を始めているようす。この自転車シェアリングは日本でも数年前から企業による参入が加速。しかし、参入を表明したネット大手DMM.comが放置自転車の懸念でサービス開始を断念するなど、拡大基調一辺倒というわけでもない。

世界と日本の各事業者のサービス内容などを通して、今後の展望を見通してみる。

【参考】UberとLyftのシェア自転車事業参入については「米ライドシェア大手のUberとLyft、シェア自転車企業買収で事業多角化」も参照。


■日本企業
オープンストリート:コンビニと連携し「HELLO CYCLING」を全国展開

ソフトバンク傘下のオープンストリート社は、東京を中心に全国各地で利用可能なサイクルシェアリングサービスシステム「HELLO CYCLING」を展開している。利用方法は簡単で、ウェブサイトで会員登録後、近くのサイクルステーションを探して借りるだけ。一部を除き24時間利用可能で、返却はHELLO CYCLINGのロゴがある無人ステーションであればどこでも乗り捨てが可能だ。支払いはクレジットカードのほか、携帯キャリア決済が利用できる。

各地域の運営会社を募集しており、用意するのは自転車だけ。スマートキーを装着すればHELLO CYCLINGシステムで管理・運営でき、注文管理や売上集計、アナライズ機能も利用できる。

2017年からはコンビニ最大手のセブンイレブンが協業を発表しており、大都市圏を中心にセブンイレブン店舗の敷地にステーションが設置され、利便性が飛躍的に増しているようだ。

【参考】HELLO CYCLINGの公式サイトは「こちら」。


ドコモ・バイクシェア:導入コスト削減した安心のハードやシステムを提供

NTTドコモ傘下のドコモ・バイクシェア社は、自転車とモバイルを融合させた環境に配慮したサイクルシェアリングシステム「ドコモ・バイクシェア」を提供している。

シェアリング用の制御装置を自転車に実装する直接管理方式により専用の機械ラックは不要で、GPS・準天頂衛星により自転車位置をリアルタイムで管理可能なほか、電動アシスト付、保険加入、ICカード(おサイフケータイ)対応な自転車を用意している。域内のサイクルポートであれば、どこでも返却可能。

また、自治体やマンションなどの民間施設、他のサイクルシェアリング運営事業者に対し、システム提供やコンサルティング業務なども行っている。

2012年のロンドンオリンピック・パラリンピックでの自転車シェアリング導入の先例もあり、近接した会場間の移動に自転車は有効なため、2020年の東京五輪を見据えた事業展開を図っているほか、インバウンドの旅行者へのサービス拡大なども検討しているという。

【参考】ドコモ・バイクシェアの公式サイトは「こちら」。

ソウゾウ:メルカリのグループ会社として「メルチャリ」サービス提供

フリマアプリでおなじみのメルカリのグループ会社ソウゾウは、オンデマンドシェアサイクルサービス「メルチャリ」を提供している。2018年2月に福岡県福岡市内で事業を開始し、6月には福岡市のスマートシェアサイクル実証実験事業にも採択されている。

個人(客)と地域が参加型で運営を行う新しいスタイルのサービスが特徴で、ポート(駐輪場)は、地域の民間企業に加え個人宅や店舗の軒先など、大小問わず地域住民からスペースを提供してもらうことでより多くのポートが設置され、乗りたいときにすぐ自転車を利用できる環境を構築している。

安心・安全面においては、自転車に内蔵されたGPSで常時自転車の駐輪場所を把握することに加え、カスタマーサポートによる監視と対応を365日実施。突然の故障やトラブル時にも安心してサービスを利用できる。また、地域の民間企業と連携し、サポートトラックが放置・違法駐輪の自転車や故障車を移動・回収することで、各ポートを常に最適な状態に保つ。

レンタルから返却まではすべてスマートフォンで完結する。

【参考】メルチャリの公式サイトは「こちら」。

(番外編)Charippa:駐輪場シェアで空き地を有効活用

自転車シェアリングではなく、駐輪場シェアリングを目指す事業者も出てきた。Charippa(ちゃりっぱ)は、自宅や職場のちょっとした空きスペースを、駐輪場としてスマホやPCで簡単に貸し借りできる駐輪場シェアサービスを展開している。

空きスペースを活用することで、駐輪場が慢性的に不足している地域に新たに駐輪場所を提供することが可能になり、スペース所有者、空きスペースを貸し出すことで収益を得ることも可能だ。

駐輪場需要の高い主要都市をはじめ、全国に1万台分の駐輪場所の確保を2018年度内に目指すこととしている。

【参考】Charippaの公式サイトは「こちら」。

■海外企業
(米国)JUMP Bikes(Uber):ウーバーが買収、電動自転車シェアをNYなどで展開

Uberが買収した電動自転車レンタル企業で、Uberのシェアサイクル事業の根幹を成す。買収額は1億ドル(約110億円)と言われている。

JUMP Bikesはウーバーと2018年前半に提携し、レンタルサイクルをウーバーのアプリから利用できるようにしていた。JUMP Bikes自体はニューヨークやワシントンなど8都市で利用することが可能となっており、欧州に進出する計画も明らかになっている。

【参考】JUMP Bikesの公式サイトは「こちら」。

(米国)Motivate(Lyft):Lyftが買収、北米でのシェアサイクル事業を展開

アメリカのシェアサイクル大手であるMotivateは、米ライドシェア業界でUberを追いかけるLyftの買収を受け入れることで2018年7月に合意している。その額は2億5000万ドル(約280億円)と言われ、LyftはMotivateのブランドを維持しつつ事業の運営を手掛けることになる。

Motivateはニューヨークやカリフォルニアなどアメリカ国内9都市において、「Citi Bike」や「Ford GoBike」というブランド名でシェアサイクル事業を展開している。

ちなみにLyftは「Lyft Bikesの紹介」というページをウェブサイト上に立ち上げているが、Lyft Bikesとしてのサービス開始に関する話は出ていない。Motivate事業を総称してLyft Bikesと呼ぶのではないかという見方も出ている。

【参考】Motivateの公式サイトは「こちら」。

(米国)LimeBike:米国発の事業者、使いやすいアプリが魅力

米カリフォルニア州を本拠地とする自転車シェアリングサービス事業者。米国内各州のほか、フランスやドイツ、スペイン、スイスでも事業を展開している。

どこでも乗り捨て可能で、スマートフォンでアプリを起動すると、地図上に乗車可能な自転車一覧がマッピングされており、ハンドルの根元にあるQRコードをアプリのカメラで読み取ってロック解除すれば利用できる。

【参考】LimeBikeの公式サイトは「こちら」。

(米国)Bird:電動キックボードに注目したスタートアップ

自転車ではなく電動キックボード・キックスケーターのシェアリングサービスをカリフォルニア州サンフランシスコで事業展開するスタートアップ。UberやLyftで役員を務めた経歴を持つ人物が創業したという。

まちの歩道を埋め尽くすほどの人気で注目を集める一方、スケーターの放置も問題視されている。

【参考】Birdの公式サイトは「こちら」。

(中国)モバイク:世界最大級の自転車シェアリング事業者、日本にも進出

北京に本社を置く世界最大クラスの自転車シェアリング事業者。各自転車にはGPSが搭載されており、携帯アプリで自転車を探しQRコードをスキャンすると電子ロックが解除される仕組み。

利用者のマナーを啓発するためスコア制を導入しており、危険な走行や交通ルールを無視した走行、指定した駐輪場以外への返却、自転車の破壊行為などによってスコアが減点され、一定以下になると利用料金が変動したりアカウントが停止され利用不可となったりする。

イングランドやイタリアにも進出しており、日本でも日本法人モバイク・ジャパンが2017年8月に北海道札幌市で事業を開始したのを皮切りに、福岡県福岡市や神奈川県大磯町にも拡大している。

【参考】モバイクはその後「Meituan」に完全に統合され、「Meituan Bike」と改名されている。モバイクに関する情報としては「こちら」を参照。

(中国)ofo:1日平均3200万回利用、世界最大級のシェアサイクルプラットフォーム

2014年に創業された、世界最大級のシェアサイクルプラットフォーム。世界21カ国・250都市で1000万台の自転車でシェアサイクルを展開しており、これまで2億人を超えるユーザーに1日平均3200万回、合計60億回利用されているという。

日本国内では、OFO JAPANが和歌山県和歌山市で2018年3月にサービスを開始し、これまでに福岡県北九州市、滋賀県大津市でもサービス提供を行っている。

【参考】ofoの公式サイトは「こちら」。

■乗り捨てシステムが今後主流に? 公共交通としての役割も

以前は決められた駐輪場所に停めることが前提だったが、ドコモ・バイクシェアのように自転車本体に制御装置を付けることでどこでも乗り捨てが可能なサービスが増えていくことが予想される。その反面、放置自転車の問題などもあり、ルールづくりやマナー啓発がより重要視されそうだ。

また、自転車シェアリングサービスを公共交通の一つとしてみる動きも出始めている。大都市では交通渋滞の緩和、地方では公共交通空白地域の代替手段として注目されているほか、観光客が気軽に利用できることなどもあり、福岡県福岡市や東京都国立市など実証実験に乗り出す自治体も出てきた。

新興企業も続々名乗りを上げており、スマートフォンと連動することで飛躍的に利便性も増していることなどから、日本国内でも自転車シェアリングが急速に普及する可能性は高そうだ。

【参考】シェアサイクルやライドシェア業界はシェアサービスの代表格として膨脹が続く。ライドシェア市場については「ライドシェア企業、世界で300社突破 日本企業はゼロ?|自動運転ラボ」も参照。


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