アメリカの企業動向調査会社「Crunchbase」などによれば、世界規模では米ウーバー・テクノロジーズ、各国レベルでは米リフトや中国の滴滴出行(DiDiチューシン)をはじめしたライドシェアの新興企業の数が、北南米や欧州、アジア、中東、アフリカ地域などで続々と増え、その数は300社を突破しているようだ。
世界で進むライドシェア市場の拡大とは対照的に、法規制が壁になっている日本。記事では日本の現状を紹介するほか、現在頭角を現しつつある米スタートアップ企業Drive.ai、最大手ウーバーやそのライバルのリフトの最新動向を紹介する。
■ライドシェア業界に進出する日本企業はゼロ?
日本企業は法律の壁もあり、ライドシェア業界への参入が実質的に進まない状況となっている。
2016年6月に国家戦略特区法が改正され、「外国人観光旅客その他の観光旅客の運送」を主な目的としてのライドシェアは認められるようになった。「国家戦略特別区域自家用有償観光旅客等運送事業」が道路運送法の特例として定められた形だ。
ただ実際には、ライドシェア事業を展開しやすい組織は非営利団体(NPO)などに限られていたり、ライドシェアを全国展開できるような枠組みになっていなかったりしており、日本の企業がビジネスとして日本でライドシェア事業を展開するのは、まだまだ難しい状況が続いている。
【参考】日本ではコストシェア型の長距離ライドシェアサービス「notteco」などが展開している。運転手の利益目的ではなく、ガソリン代などの経費をシェアする目的で利用するサービスで、国土交通省に法的見地からの回答を得た上で展開している。詳しくは「コストシェア型の日本のライドシェアアプリ「notteco」ってどんなサービス?|自動運転ラボ 」を参照。
■新進気鋭のDrive.aiは「歩行者と会話する自動運転車」を展開
ウ―バーやリフトなどによってライドシェア市場が拡大される中、カリフォルニア州マウンテンビューに本拠を置く米スタートアップDrive.ai(ドライブ・エーアイ)は2018年5月、自動運転車のライドシェアサービスの行動テストをテキサス州フリスコ市で開始することを明らかにした。
Drive.aiは「AI(人工知能)の世界的権威」とも呼ばれる研究者のアンドリュー・エン氏(スタンフォード大学准教授)が率いるライドシェア企業だ。
そのエン氏が率いるDrive.aiの自動運転車には可視センサーと4つのスクリーンが配置され、歩行者に対するメッセージとしてスクリーンに「渡るのを待っています」「お客さまが乗車しています/降車しています」などと表示されてメッセージを送る。つまり歩行者と会話をする自動運転車というわけだ。
試験を行うフリスコ市の交通局も渋滞緩和や新たな交通手段としてDrive.aiのサービス展開に期待を寄せている。行政の後押しとAIの権威の合わせ技で、Drive.aiはより事業展開を加速させていきそうだ。
■ウーバーやリフト、全米で患者の送迎サービスにも注力
米国のウ―バーとリフトは、全米の低所得者や高齢者が必要としている病院までの送迎サービスの提供に本腰を入れ、ライドシェアを医療分野にも広げている。
自動車メーカーとライドシェア企業の提携・出資も進む。米ゼネラル・モーターズ(GM)やイギリスの自動車会社ジャガー・ランドローバーはリフトに出資し、トヨタ自動車は将来的なライドシェア向け自動運転EV(電気自動車)の量産化に向け、ウーバーと提携した。ソフトバンクのウーバーへの巨額出資も話題を呼んだ。
ライドシェア業界にはGoogleやAppleなど IT業界の巨大企業も興味を示す。今後の動向が一層注目されていきそうだ。