ホンダの自動運転戦略まとめ レベル3車両発売、無人タクシー計画は?

地図なし自動運転技術にも注目



出典:Ian Muttoo / Flickr (CC BY-SA 2.0)

世界初の自動運転レベル3搭載量販車の販売で自動運転史に名を刻んだホンダ。同分野では比較的おとなしく静観している印象が強かったが、2020年代に入って攻勢に出たようだ。

一方、時代の波に翻弄される面もうかがえる。自動運転分野でパートナーシップを結んでいた米GM、Cruise(クルーズ)が自動運転タクシー事業から撤退した影響で、ホンダも計画変更を余儀なくされた。日産との協業・経営統合関連でも踊らされた感が強い。


変革真っ只中の自動車業界を飲み込まんとする荒波を、ホンダはどのように乗り越えていくのか。そして、どのような自動運転戦略で次世代の波に乗っていくのか。ホンダの戦略を紐解いていく。

<記事の更新情報>
・2025年4月3日:ホンダの取り組みを大幅にアップデート
・2024年2月7日:Honda SENSING Eliteの紹介ページの情報などを更新
・2023年10月27日:ホンダの自動運転タクシー計画などについて追記
・2021年9月16日:記事初稿を公開

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■ホンダの自動運転開発に対する考え方

根本は本田宗一郎氏提唱の「積極安全」

ホンダの自動運転は、「事故に遭わない社会」を追求する思想の延長線上にある。1970年代、創業者の本田宗一郎氏が事故を未然に防ぐ「積極安全」を提唱して以来、脈々と続く研究開発の賜物だ。

ホンダが1981年に世界初となるカーナビゲーション「ホンダ・エレクトロ・ジャイロケータ」を実用化したことは有名だが、実はこのカーナビも将来の自動運転を見据えた開発の成果・過程という。当時はGPSによる位置情報が入手できない時代で、ジャイロセンサーとスピードセンサーによる慣性航法で自車の方位と移動量を検出・算出していた。


余談だが、当時は地図もデジタル化されておらず、アナログな「地図シート」をCRT型ディスプレイに重ねて走行軌跡と照合していたという。

1987年には、国産車で初となるエアバッグをレジェンドに搭載したほか、2000年に世界初の屋内型全方位衝突実験施設を建設するなど、事故などの際に人体への影響を最小限に抑える「パッシブセーフティ」に力を入れる一方、事故を未然に防ぐ「アクティブセーフティ」の開発・実用化においても世界最先端を走り続けてきた。

レーザーレーダーとカメラによって外界を認識し車速や車間、車線維持を図る「HiDS」を2002年にアコードに搭載すると、翌2003年には、世界初の追突軽減ブレーキ「CMS」をインスパイアに搭載した。現行のADAS「Honda SENSING」(2014年発表)の基礎となっていく技術だ。

【参考】エレクトロ・ジャイロケータについては「ホンダが40年前に自動運転の構想を立てていた」も参照。


レベル3開発におけるホンダは「亀」

事故ゼロ社会を目的に自動運転開発を進める自動車メーカーは少なくないが、ぶれることなく早くから安全性を追求してきた結果が、世界初のレベル3量販車へとつながった。

同社公式ホームページ内に掲載されているインタビュー記事の中で、エグゼクティブチーフエンジニアとしてレベル3開発に携わった本田技研先進技術研究所の杉本洋一氏は「ホンダの安全に対する向き合い方の特長は愚直さ」とし、レベル3開発においても「初期段階で安全に関わる基本的な部分にしっかり向き合い、根幹となる構想を固めることにかなりの時間を費やした」と話す。

その上で「(ホンダは)『ウサギと亀』の亀のようなもので、その段階では外から見ると技術開発が遅れているように思えたとしても、結果としてそれが一番早いやり方だった」と回顧している。

レベル3開発に向けては、初期段階で想定ケースを洗い出してシミュレーションを重ねた上で、想定外を減らすために実証実験車両で高速道路を地球30周以上に相当する約130万キロ走行した。収集したデータに基づいてシミュレーションを行う作業を繰り返し、約1,000万通りもの膨大なシミュレーションを行ったという。

このレベル3開発に向けた取り組みの進捗などはほぼ公表されていなかったため、「ホンダは自動運転開発に慎重?」とする見方が強かったが、これはウサギばかりを追いかけ亀から目を離していたからに過ぎない。ゴールが迫った段階で、初めて亀の研究開発の完成度に気付かされたのだ。

自動運転時代も運転する楽しさを

自動運転技術の特徴として「ドライバーレス運転」が挙げられるが、ホンダは運転する楽しさやワクワクする感覚、目的地を決めずにドライブそのものを楽しむこれまでの価値を今後も提案し続けていくことを強調している。

自由な移動を実現しつつ、交通事故も渋滞も環境汚染もない社会・経済・環境面でのプラスの影響を究極まで高めたモビリティが、ホンダが目指す「自動運転システム」だ。

トヨタなどと同様、自家用車においては運転する楽しさと自動運転による快適性や安全性などの両立を図っていくことが根底にあるようだ。

■ホンダの最新ADAS

Honda SENSING 360、360+の搭載開始

出典:ホンダプレスリリース

自家用車市場において、ホンダはHonda SENSING(2014年発表)、Honda SENSING Elite(2020年発表)、Honda SENSING 360(2021年技術発表)、Honda SENSING 360+(2023年技術発表)――とADASを進化させている。

Eliteは後述するレベル3システムを含む高機能ADASで、特別版・限定版的な色が強い。今後、搭載するモデルが現れるのか注目したい。

360は、従来のシステムのセンシングの範囲を全方位へ拡大した全方位センシングを可能にしており、衝突軽減ブレーキや渋滞追従機能付アダプティブクルーズコントロールといった各機能も強化されている。国内ではアコードに搭載されている。Honda SENSINGの後継版として、今後搭載車種が増加していくものと思われる。

360+は、360の全方位センシングに加え、ドライバーの異常や周辺の道路環境や走行車両を的確に検知することで事故を未然に防ぎ、ドライバーの運転負荷をさらに軽減させる機能を持つという。一定条件下におけるハンズオフ運転も可能にしている。

中国市場向けのアコードから適用開始し、グローバル展開を図っていくとしている。

【参考】Honda SENSING 360+については「ホンダの新ADAS「Honda SENSING 360+」の実力は?」も参照。

■ホンダのレベル3「トラフィックジャムパイロット」

ホンダが発売したレベル3乗用車「新型LEGEND」=出典:ホンダプレスリリース

ホンダは2020年11月、自動運転レベル3 システムの型式指定を国土交通省から取得し、2021年3月に渋滞時に自動運転を可能にするトラフィックジャムパイロットを含む「Honda SENSING Elite」と、それを搭載する新型LEGEND(レジェンド)を発表した。レジェンドは100台限定のリース形式で販売された。

ちなみに型式指定における自動運行装置の構成については、国土交通省が公表した資料(https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001372477.pdf)によると以下となっている。

外界認識カメラ/レーダー/LiDAR(ライダー)
自車位置認識高精度地図/全球測位衛星システム(GNSS)
ドライバー状態検知ドライバーモニタリングカメラ
機能冗長化電気系統/ステアリング機能/ブレーキ機能
自動運行装置に必要な対応・装備サイバーセキュリティ/ソフトウェアアップデート/作動状態記録装置/外向け表示(ステッカー)
出典:国土交通省(クリックorタップすると拡大できます)

Eliteは、高速道路や自動車専用道でシステムがアクセルやブレーキ、ステアリングを操作・支援し、ハンズオフ運転を実現する高度なレベル2システム(レベル2+)を搭載している。また、ハンズオフ機能で走行中に渋滞に遭遇すると、システムがドライバーに代わって周辺を監視しながらアクセル、ブレーキ、ステアリングを操作するレベル3システム「トラフィックジャムパイロット」の使用も可能になる。最大時速50キロ以下の範囲で作動する。

新型レジェンドは、LiDAR5基、ミリ波レーダー5基、カメラ2基、超音波ソナー12基を搭載しており、自車周辺360度の状況を高精度で把握することができる。これら各種センサーとGNSS、高精度3次元地図を活用することで、レベル3を実現したのだ。

トラフィックジャムパイロット作動時、ドライバーは車両周囲の常時監視義務を免れ、ナビ画面でテレビやDVDを視聴したり、スマートフォンを操作したりできる。

一方、システムから手動操作要求があった際は、ドライバーは直ちに運転操作を行う必要がある。操作要求に応じずにいると、警告類やシートベルトの振動で注意を喚起し、それでも反応がない場合は、ハザードランプとホーンで周囲のクルマに警告を発しながら減速・停車を支援する。路肩がある場合には左車線への車線変更も支援する。

停車後は自動でパーキングブレーキをかけ、シフトポジションを「P」に変更しドアを解錠する。また、緊急案件としてヘルプネットでコールセンターに接続する。

また、ナビ画面の左脇に近赤外線ライトを内蔵したドライバーモニタリングカメラを搭載しており、ドライバーの顔の向きや目の開閉状況、動作の有無などを検知し、システムからの操作要求に対応できる状態かどうかを見守りながらシステムを作動させる。

▼Honda SENSING Elite紹介ページ
https://www.honda.co.jp/hondasensing-elite/

【参考】ホンダのレベル3については「ホンダが自動運転レベル3車両を3月5日発売!新型「LEGEND」がデビュー」も参照。

■自動運転分野における協業

Waymoと米国で公道実証

ホンダは2016年12月、米グーグル系の自動運転開発企業Waymo(ウェイモ)と米国で自動運転技術領域の共同研究に向けた検討を開始したと発表した。

ウェイモの自動運転技術を構成するセンサーやソフトウェア、車載コンピューターなどをホンダが提供する車両に搭載し、共同で公道実証実験に使用する方針としている。

なお、今のところ進捗に関する続報はなく、ホンダが後にクルーズと手を結んだことで協業関係は解消されたと見る向きが強いようだ。

SenseTimeとAI技術を共同研究

ホンダは2017年12月、自動運転技術の確立に向け、中国スタートアップのSenseTimeとAI技術に関する共同研究開発契約を締結したと発表した。

SenseTimeが持つ移動体認識技術とホンダの「シーン理解」「リスク予測」「行動計画」といったAIアルゴリズムを融合することで、複雑な交通状況の市街地でも走行を可能にするより高度な自動運転技術の開発を目指す方針だ。

開発期間は5年間で、自動運転のみならずロボティクスにも拡大していく予定としている。

GM Cruiseとともに自動運転タクシーを日本展開するも中止

出典:ホンダ・プレスリリース

ホンダは2018年10月、GMとGM傘下のクルーズと自動運転技術を活用したモビリティの変革に向け協業を行うことに合意したと発表した。

将来的なグローバル展開の可能性も視野に入れながら、クルーズ向けの無人ライドシェアサービス専用車を共同開発していくとした。

また、協業に向けホンダがクルーズに7億5,000万ドル(約850億円)出資するほか、今後12年間に渡る事業資金として約20億ドルの合計27億5000万ドル(約3,000億円)を支出する予定としている。

協業は順調に進み、2020年1月にクルーズはサービス専用自動運転車「Origin(オリジン)」を発表した。2021年1月には、日本における自動運転モビリティサービス事業の展開に向け年内にも技術実証に着手すると発表した。

実証は同年9月に開始し、高精度地図の準備が整い次第、2022年には栃木県宇都宮市と芳賀町で公道実証を実施する計画を明らかにした。車両にはクルーズが開発した「クルーズAV」を活用する。

2022年4月には、モビリティサービス事業を手掛ける運営子会社のホンダモビリティソリューションズが東京都心部での自動運転モビリティサービスの提供に向け帝都自動車交通と国際自動車と検討を進める基本合意書を締結した。

2023年10月には、ホンダ、GM、Cruiseの3社が日本国内で自動運転タクシーサービスを2026年初頭にも開始する計画を発表した。

計画では、サービス提供を担う合弁を2024年中に設立し、2026年1月から東京都内のお台場エリアで有償サービスを開始する。その後、中央区、千代田区、港区、江東区の一部に順次エリアを拡大し、最大500台までフリートを拡大していくとしていた。車両はオリジンを導入する。
国も情報共有を促進して施策につなげるべく、自動運転開発・実装プロジェクト「RoAD to the L4」の下に「L4モビリティ・アクセラレーション・コミッティ」を設置し、ホンダからの説明や要望を受けていた。

順風満帆に思われていたが、計画が発表された同月、Cruiseの自動運転タクシーが米サンフランシスコで起こした人身事故を契機に事態は一変することになる。

Cruiseのタクシーが、他の車両にはね飛ばされた被害者に衝突したのだ。ここで正しい対応を行っていればその後の重い処分を免れることができたかもしれないが、事故を認識したCruise車は安全な場所に車両を避けるため、被害者を引きずりながら路肩に移動した。

一連の対応を問題視され、カリフォルニア州道路管理局(DMV)と同州公共事業委員会(CPUC)は州内における営業停止と無人自動運転走行許可の停止を発表した。Cruiseはただちにソフトウェアのリコールを実施し、他州での自動運転走行も停止した。また、カイル・ヴォグトCEOも辞任した。

翌年、ドライバー同乗のもと細々と事業再開に動き始めるも、親会社のGMが2024年12月、自動運転タクシー事業に今後投資しない方針を発表し、事実上Cruiseの事業は停止した。CruiseのエンジニアはGMの開発チームと統合され、自家用車のADAS・自動運転開発に集中していく方針とされている。

この件に対しホンダは公式発表を行っていないが、NHKなどによるとホンダも中止する方針を固めたと報じられている。

【参考】GM・Cruiseとの協業の動向については「ホンダ、自動運転タクシー計画を「白紙撤回」か GM撤退による影響不可避」も参照。

中国ではAutoXと提携

出典:AutoXプレスリリース

中国では、ホンダの現地法人が自動運転開発スタートアップのAutoXと2021年4月に提携を発表した。ホンダ車にAutoXの最新の自動運転システムを搭載し、自動運転タクシーのフリートを構築していく方針のようだ。

【参考】AutoXとの取り組みについては「ホンダ車が中国で自動運転タクシーに!?AutoXとの提携で予感されるもの」も参照。

新興AIスタートアップとの協業も続々

ホンダはこのほか、オープンイノベーションプログラム「Honda Xcelerator Ventures」を通じて米Helm.aiや米SoundHound AI、米Drivemode(2019年に買収)、米SiLC Technologiesなどとパートナーシップを結んでいる。

Helm.aiは独自の教師なし学習技術でパーセプション分野の開発を進めるAI企業だ。SoundHound AIはAI エージェントによる音声技術、Drivemodeはコネクテッド・アプリ開発、SiLC TechnologiesはFMCW LiDAR チップ開発をそれぞれ手掛けている。

自動運転、生成AIが「検証用動画」を無限に作成!米Helm.aiが発表

■CESに見るホンダの将来技術

自動ライドシェア機能を備えたAIコンセプトカー「Honda NeuV」

毎年米ラスベガスで開催される世界最大の技術見本市「CES」では、世界各国の企業が最先端の技術をお披露目する。ホンダは2017年、AI技術「感情エンジンHANA(Honda Automated Network Assistant)」を搭載した自動運転コンセプトカー「Honda NeuV」や、遠隔操作が可能なパーソナルモビリティ「UNI-CUB β」を出展した。

NeuVは、ドライバーの表情などからストレス状況を判断して安全運転のサポートを行うほか、ライフスタイルや嗜好を学習し、ドライバーとの自然なコミュニケーションを実現する。また、所有者が使用しない待機時間に、所有者の許可のもと自動運転で移動しライドシェアを行うアイデアも発表している。

一方、UNI-CUB βは着座して利用する超小型モビリティで、身体を傾けて体重移動することで前後左右や斜めに自由に移動可能という。また、遠隔操作を活用することで、無人で荷物を運んだりあらかじめプログラムしたルートで人を案内したりするなど、さまざまな活用が可能という。

アタッチメントでさまざまな用途に活用可能なロボット出展

CES2018では、チェア型のパーソナルモビリティ「3E-B18」や、AI搭載のサポートロボット「3E-C18」、AI搭載のプラットフォーム型ロボティクスデバイス「3E-D18」などを発表した。

いずれも上部のアタッチメントを変えることで、ベビーカーや荷物カート、物販、移動広告、消火活動、農作業など、さまざまな用途に活用できる。2021年に発表した自動配送ロボットも、これらのロボットをベースにしている。

CES2019では、前年の「3E-D18」をベースに開発した自動運転モビリティプラットフォーム「Autonomous Work Vehicle」を出展したほか、前後・左右・斜め360度自由自在に移動できる独自の車輪機構「Honda Omni Traction Drive System」や、ロボティクスソリューションの開発を容易にするソフトウェアプラットフォームコンセプト「Honda RaaS Platform」、コネクテッドカー技術によってスムーズな交通の流れの実現を目指す技術コンセプト「SAFE SWARM」などを発表した。

SAFE SWARMはCES2017で発表された技術で、2018年初頭からV2X技術を搭載した車両で米オハイオ州において実証実験を行っている。

自動運転を超える自由運転コンセプトも

CES2020では、完全自動運転が実現した時代のパーソナルモビリティのコンセプト「Augmented Driving」を発表した。自動運転を超え、クルマが黒子になって運転をサポートすることで、ドライバーが興味を抱いた場所に意のままに立ち寄ることを叶えるような自由な移動の実現を目指す「自由運転」という概念だ。

出典:ホンダプレスリリース

Honda 0シリーズでレベル3をグローバル展開

CES2024では、新グローバルEV「Honda 0シリーズ(ホンダ ゼロシリーズ)」を世界初公開した。新たな開発アプローチ「Thin, Light, and Wise(シン ライト アンド ワイズ)」を軸に、自動運転・ADASやIoT・コネクテッドによる新たな空間価値などを追及していくという。

CES2025では、ゼロシリーズの「Honda 0 SALOON」、「Honda 0 SUV」のプロトタイプを世界初公開するとともに、独自のビークルOS「ASIMO OS(アシモ オーエス)」を発表した。

ゼロシリーズでは、まず高速道路での渋滞時アイズオフから自動運転技術の実装を開始し、OTAによる機能アップデートを通じてADASやレベル3適用範囲を拡大していくという。レベル3のグローバル展開を意識したモデルで、世界に先駆けて全域アイズオフを実現し、移動の新たな可能性を切り開くとしている。

Honda 0 SALOON、Honda 0 SUVの量産モデルは2026年中に北米市場への投入を開始し、その後日本や欧州などグローバル展開していく予定だ。

ホンダの新EVコンセプトは「ハンドルあり」 自動運転レベル4は当分先か

「ASIMO OS」で自動運転・ADASも個人最適化?

自動車のコンピュータ化が進展する現在、ソフトウェアデファインドビークル(SDV)の在り方が重要視されている。この領域で核となるのが「ASIMO OS」だ。

ホンダのヒューマノイドロボット「ASIMO」の名を引き継ぎ、ロボティクス技術と先進知能化技術を融合することで独自のSDVの価値を提供することを目指すという。

ASIMO OSは、車載コンピュータをはじめとする車両全体を制御するための基本ソフトウェアとしてECUを統合的にコントロールし、スマートフォンにおけるAndroid OSやiOSのようにさまざまなアプリケーションを動かすための環境を車両に提供する。ADASや自動運転のOTAにも対応する。

ホンダはSDV開発においてもっともチカラを入れている分野に自動運転・ADASを挙げている。画一的な機能のアップデートに留まらず、個人最適化した自動運転・ADASの提供も視野に収めているようだ。

SDV(ソフトウェア定義型自動車)の意味は?自動運転化の「最低条件」

■モビリティサービス関連

ホンダはカーシェアサービス「EveryGo」を2017年11月に開始したほか、2020年1月には中古車を活用した月極定額モビリティサービス(サブスクリプションサービス)「Honda Monthly Owner(ホンダ マンスリー オーナー)」も開始している。

2020年2月には、モビリティサービス事業を担う事業会社「ホンダモビリティソリューションズ」を設立した。将来的に自動運転モビリティサービスやロボティクス・エネルギーなどを組み合わせた新しいサービスを提供していく構えだ。

ホンダモビリティソリューションズの高見聡社長は公式サイトにおいて代表メッセージで「移動とくらしに役立つ商品群を活かし、『コト作り』の視点で、一人ひとりの人生に寄り添うサービスを提供していきます」と語っている。

GM勢との自動運転タクシーは中止を余儀なくされたが、自動運転サービス実装への意欲は失われていない。今後、ホンダ単独、あるいは新たなパートナーとともにどのような動きを見せるのか、要注目だ。

■自動配送ロボットの開発にも本格着手

ホンダは2021年7月、楽天グループと自動配送ロボットの走行実証実験を開始すると発表した。ホンダが開発した自動配送機能を備えた車台に、楽天が開発した商品配送用ボックスを搭載し、一部公道を含む筑波大学構内で実証を行った。

自動運転機能に加え、交換式バッテリー「Honda Mobile Power Pack(モバイルパワーパック)」を採用している点も注目だ。ロボットの稼働時間に柔軟性を持たせ、配送サービスを継続して提供することができる。

なお、自動運転機能を搭載したロボット関連では、ロボット芝刈機「Miimo」をすでに製品化している。

【参考】ホンダの自動配送ロボットについては「トヨタとホンダ、「無人配送」でもガチンコ勝負 自動運転技術を応用」も参照。

トヨタとホンダ、「無人配送」でもガチンコ勝負 自動運転技術を応用

■その他トピック

独自AI「CI」や地図レス協調運転技術の実証に着手

本田技術研究所は2025年3月、AIや自動運転などの先進技術を活用したモビリティの実現、及びそれらを活用した地方都市の交通課題の解決を目指し、栃木県芳賀町と「交通・環境課題解決へ向けた技術実証実験に関する共同研究契約」を締結したと発表した。

地方都市における交通・環境課題の分析を行うとともに、ホンダは独自の協調AI「Honda CI(Cooperative Intelligence(CI)」を搭載したモビリティの実用化を目指し、「CI運転支援システム」や「地図レス協調運転技術」の技術実証を行う。

CI運転支援システムは、ドライブレコーダー型デバイスに組み込んだCIが周辺環境の運転リスクを検出するとともにドライバーの注視方向も認識し、交通シーンとドライバーの認知状態に応じてドライバーに注意喚起を行う。

地図レス協調運転技術は、事前に高精度地図を整備する必要がなく、車両自ら周辺環境を認識しながら自動走行できる技術だ。

開始時は、搭乗型のCIマイクロモビリティ「CiKoMa(サイコマ)」にセーフティドライバー同乗のもと、芳賀町の公道で時速20キロ未満の低速域で技術検証を行う。その後、N-VAN e:に同技術を搭載し、時速40キロまでの中速域で自動走行の技術検証を行う計画としている。

日産勢と知能化・電動化で協業検討 経営統合は白紙に

ホンダと日産は2024年3月、戦略的パートナーシップの検討開始に関する覚書を交わした。8月には、三菱自動車参画のもと、環境対応技術・電動化技術・ソフトウェア開発などの領域での協業を見据え、幅広いスコープでの検討・協議を3社で進めている。

その後、12月に日産サイドから経営統合を含む新たな連携の在り方について協議を持ち掛けられ、3社協業形態の検討に関する覚書や経営統合に向けた検討に関する基本合意書を締結したが、いずれも2025年2月に解約している。

新たな連携の話は流れたが、8月に締結した覚書は残っており、戦略的パートナーシップの枠組みにおいて連携しながら知能化・電動化時代に向け新たな価値の創造を目指すとしている。

【参考】日産・三菱自との連携については「ホンダ・日産、自動運転技術を「共通システム化」か GM Cruiseとも一本化?」も参照。

ホンダ・日産、自動運転技術を「共通システム化」か GM Cruiseとも一本化?

■【まとめ】レベル3のグローバル戦略に改めて注目

自動運転タクシー計画が流れてしまったのは残念だが、2026年予定の0 SALOONの市場投入により、自家用車におけるレベル3でレジェンド以来5年ぶりに動きが出るかもしれない。最終的にどのような技術が搭載されるのか、続報に期待したい。

レベル4サービス関連では、栃木県芳賀町での実証のように自社技術による取り組みも出始めている。ホンダ自身の自動運転技術で新たな波を乗り切るのか、こちらの動向にも要注目だ。

■関連FAQ

    ホンダが発売した「自動運転車」の車種は?

    新型LEGEND(レジェンド)だ。2021年3月に100台限定のリース形式で発売された。価格は1,000万円。自動運転レベル3の技術が搭載されている。

    ホンダの自動運転車は「世界初」の市販車?

    自動運転レベル3の機能を公道で作動させられる市販車としては、ホンダの新型LEGENDが世界初だ。ホンダより前にAudiが、レベル3の機能を搭載可能な「A8」を発表していたが、市販車への機能搭載には至っていない。

    新型LEGENDの自動運転機能の名称・機能は?

    ホンダが発売した自動運転車「新型LEGEND」には、Honda SENSING Eliteが搭載されており、その機能の1つである「トラフィックジャムパイロット」が自動運転レベル3での走行を可能にしている。この機能は渋滞中の高速道路で利用でき、作動中は運転手は車両周囲の常時監視義務から解放され、モニターでDVDを視聴したり、スマートフォンを操作したりできる。

    ホンダは自動運転開発ではトヨタより進んでいる?

    自動運転ビジネスへのアプローチが異なるため、優劣はつけにくい。ホンダは市販車への自動運転機能の搭載に力を入れてきたのに対し、トヨタは自動運転シャトルの開発に力を入れている印象だ。トヨタが発表済みの自動運転シャトルとしては「e-Palette」(イーパレット)がある。

    ホンダとGM Cruiseの関係は?

    この両社は関係が深い。2018年、自動運転技術を活用したモビリティの変革に向け協業を発表し、2021年には日本における自動運転モビリティサービス事業の展開に向け、技術実証に取り組むことを発表した。自動運転車の開発でも協力している。

(初稿公開日:2021年9月16日/最終更新日:2025年4月3日)

【参考】関連記事としては「トヨタの自動運転戦略」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
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