ホンダの新EVコンセプトは「ハンドルあり」 自動運転レベル4は当分先か

格納式ハンドル採用、進化版レベル3に期待



出典:ホンダ公式YouTube動画

ホンダは2024年1月、米ラスベガスで開催されたCES2024でグローバル展開を目指す次世代EV(電気自動車)「Honda 0(ゼロ)シリーズ」を公開した。北米市場を皮切りに2026年から市場化を促進する計画だ。

ホンダのイノベーションを象徴するモデルとして多くの注目が集まるところだが、自動運転機能がどこまで実用化されるのか気になるところだ。自動運転レベル3を進化させるのか、もしくはレベル4の搭載も……と勘繰りたくなるが、初公開されたコンセプトモデルはいずれもハンドルを備えており、最大でも手動運転を前提とした条件付き自動運転となるのが濃厚なようだ。







ホンダの次世代モデルはどのようなスペックを誇るのか。自動運転技術をはじめとする搭載予定の最新技術をもとに、その全貌に迫る。

■Honda 0シリーズの概要
ゼロシリーズは5つのコアバリューを提供

CES2024では、Honda 0シリーズのコンセプトモデル「SALOON(サルーン)」と「SPACE-HUB(スペース ハブ)」が初公開された。

「ゼロ」には、原点に立ち返り次世代に向けた新たな起点をつくる思いや、ゼロからの独創的な発想で新価値創造に取り組むこと、環境負荷ゼロや交通事故死者ゼロ達成に向けた決意が込められている。

開発にあたっては、新たな開発アプローチとなる「Thin, Light, and Wise(シン ライト アンド ワイズ)」を軸に、以下の5つのコアバリュー提供を目指す。

  • ①共鳴を呼ぶ芸術的なデザイン
  • ②安全・安心のAD・ADAS
  • ③IoT・コネクテッドによる新たな空間価値
  • ④人車一体の操る喜び
  • ⑤高い電費性能

「Thin(薄い)」は、フロア高を抑えたEV専用プラットフォームにより、低全高のスタイルなど自由なデザインとともに高い空力性能を実現する。

「Light(軽い)」では、原点に立ち返り生み出した独自技術により、これまでのEVの定説を覆す軽快な走りと電費性能を実現する。

そして「Wise(賢い)」では、これまで培ってきた知見と知能化技術を進化させ、クルマそのものが賢くなる独自のソフトウェアデファインドモビリティの実現を図っていくとしている。

以下、5つのコアバリューを1つずつ紹介していく。

▼Honda 0シリーズ特設サイト
https://0.honda/jp/

共鳴を呼ぶ芸術的なデザイン

デザインコンセプト「The Art of Resonance(ジ アート オブ レゾナンス)」のもと、「環境、社会、ユーザーとの共鳴」をテーマに見る者の共鳴を呼び起こし、暮らしの可能性を拡げるサステナブルなモビリティを提供する。

安全・安心のAD(自動運転)・ADAS(先進運転支援システム)

世界に先駆けてレベルを実現した「Honda SENSING Elite(ホンダ センシング エリート)」で培った技術を世界中のユーザーに届けるため、同技術を活用したADASの採用に加え、2020年代後半に自動運転システムを採用し、より多くのユーザーが手の届く自動運転車として展開していく。

この自動運転システムは、「人間中心」という哲学のもと培った安全思想をベースに、AI(人工知能)やセンシング、認識判断、ドライバーモニタリングといった知能化技術をいっそう進化させ、人の感性に近い自然で高精度な危険予測を実現していく。

これにより、高速道路における自動運転領域を拡大するとともに、高速道路のみで使用可能なハンズオフ機能の一般道への拡大も目指していく。

出典:ホンダプレスリリース
IoT・コネクテッドによる新たな空間価値

独自のビークルOSを軸とするIoT・コネクテッド技術により、「運転して楽しい、使って楽しい、繋がって楽しい」価値の創出を目指す。AIやビッグデータを活用することで、音楽などのユーザーの好みや運転中の行動傾向をクルマが学習し、さまざまな提案を行う。

さらに、下車してから目的地までのラストマイルについてもクルマが周辺情報や経路を教えるなど、使えば使うほどクルマとユーザーが親密になり生活のさまざまな場面において「つながる楽しさ」を提供するという。

人車一体の操る喜び

独自の電動化技術とダイナミクス技術によって、軽快で心も身体もクルマと一体となれる高揚感を得られるような次世代の操る喜びの提供を目指す。

Honda 0シリーズの低全高スタイルに、モータースポーツで鍛え上げた空力技術を投入することで、空力性能やダイナミクス性能、デザインを高次元で融合させる。

出典:ホンダプレスリリース
高い電費性能

ハイブリッド車の開発などで培った電動化技術をベースにエネルギー効率を突き詰め、高い電費性能の実現を図っていく。具体的には、電気変換効率やパッケージングに優れたe-Axle(イーアクスル)、軽量かつ高密度なバッテリーパック、高い空力性能により、バッテリー搭載量を最小限にしながら十分な航続距離を目指す。

また、EV普及のカギを握る充電時間やバッテリー劣化についても、ストレスフリーな充電性能と長年使用しても性能劣化が少ないバッテリー性能を提供する。

2020年代後半に投入するHonda 0シリーズモデルでは、15%~80%急速充電時間を10~15分程度に短縮するとともに、100万台を超えるリチウムイオン電池搭載車の走行データから培ったバッテリーシステム制御技術により、使用開始から10年後のバッテリー劣化率10%以下を目指す。

コンセプトモデル「SALOON」「SPACE-HUB」

Honda 0シリーズのコンセプトモデル「SALOON」は、低全高でスポーティーな流線形ボディのフラッグシップで、ステア・バイ・ワイヤ技術やシンプルで直感的な操作が可能なHMIを採用し、洗練されたシームレスなUIを実現する。

「SPACE-HUB」はミニバンのような丸みを帯びたボックススタイルで、「人々の暮らしの拡張」を提供することをテーマに開発したという。広々とした空間と見晴らしの良い視界を実現し、ユーザーの「やりたい」に即座に応えるフレキシブルな空間を備えるという。後部座席は広々とした対面式となっているようだ。

出典:ホンダプレスリリース
格納式ハンドルを採用、レベル3進化バージョンを実装か

コンセプトムービーを見る限り、両モデルともハンドルを備えている。おそらくステア・バイ・ワイヤ技術を活用したF1のようなタイプで、格納式となっている。ボタン1つ、あるいはドライバーを認識するなどしてダッシュボードから浮かび上がってくるようなイメージだ。

「操る喜び」をコアバリューの1つに据える通り、次世代モデルもベースは手動運転となることは間違いない。また、2026年の市場化を考えるとやはりレベル3の進化バージョンの実装が濃厚だ。

レベル3を世界初実装したホンダだけに、高速道路における世界初の自家用レベル4にも期待が寄せられるところだが、オーナーカーにおいてはこうした完全自動運転はまだ見据えていないようだ。

実用性が一気に高まる進化版レベル3

2021年発売の新型レジェンドに搭載されたレベル3「トラフィックジャムパイロット」は、ODD(運行設計領域)が最高時速50キロ以下に制限された高速道路における渋滞時の条件付き自動運転となる。

メルセデス・ベンツのレベルシステム「DRIVE PILOT」などもそうだが、渋滞時限定ではODDが狭すぎるため実用性に欠けている面は否めない。あくまでお試しレベルであり、レベル3の存在を社会一般に認知してもらうための布石的な存在と言える。

しかし、このレベル3のODDから「渋滞時」が抜け、制限速度を満たす走行が可能になれば、実用性は一気に高まる。万が一の際に備える必要性はあるものの、高速道路における長距離ドライブが飛躍的に快適になるのだ。

自家用車の自動運転化における今後の焦点は、こうしたレベル3の進化が中心となる。一部企業は高速道路におけるレベル4や駐車場におけるレベル4などの開発・実装を進めているが、まずは進化版レベル3が開発の軸となり、次第にODDを広げつつ、レベル4への道を切り開いていくことになりそうだ。

【参考】ホンダのトラフィックジャムパイロットについては「ホンダの自動運転レベル3搭載車「新型LEGEND」を徹底解剖!」も参照。

■【まとめ】進化版レベル3の動向に注目

レベル4はまだお預けとなりそうだが、格納式ハンドルを採用するあたり、レベル4を見据えた開発も並行して進めている可能性がある。少なからず、進化版レベル3がレベル4実用化につながっていくことは間違いないことだ。

ホンダの新規格EVと進化版レベル3は、2年後、2026年に登場予定だ。実用的なレベル3を最初に市場化するのはどのメーカーとなるのか、こうした点にも引き続き注目したい。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)









関連記事