
「自民党である限り自動運転はどこも勝たないで終わり」――。ニュース番組「ABEMA Prime(アベプラ)」で、実業家のひろゆき氏が日本国内における自動運転の現状に噛みついた。
容赦のないひろゆき節を炸裂された自民党と自動運転業界。ひろゆき氏は何を語ったのか。真相に迫る。
記事の目次
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■ひろゆき氏の発言の概要
日本の自動運転ウォーズの行方は?
表題にある発言は、アベプラが2026年7月2日に配信した「【自動運転】米vs中vs英の3つ巴ウォーズ?事故ゼロ主義な日本じゃ無理ゲー?|アベプラ」で発されたものだ。米国、中国の2強に英国を加えた3つ巴の競争の行方や、日本の位置付けなどに迫る内容となっている。
番組には、 NewsPicks CMOで経済ジャーナリストの池田光史氏、自動車ジャーナリストの桃田健史氏がゲスト出演しており、自動運転の「現在」を非常にわかりやすく解説している。非常に興味深い内容なのでぜひ一度見てもらいたい。
自民党はタクシー業界に逆らわないから勝ち目なし?
まずは、冒頭のひろゆき氏の発言部分に触れておこう。日本における自動運転ウォーズの行方について司会者から尋ねられたひろゆき氏は、「ライドシェア自体がまず日本に導入されていないっていうのがあって、最近も高市さんと規制改革担当大臣の城内さんがライドシェア入れないって決めたばっかりなので、便利であるとかは関係なく、タクシー業界の献金が多いから自民党はそれに逆らわないよねっていうのがある。自民党である限りは、自動運転はどこも勝たないで終わりじゃないですか」と答えた。
さらに、「ライドシェアを飛ばして自動運転という未来は?」と質問されても、「いや、ないっすないっす。ライドシェアを入れることでタクシー会社の売り上げが下がるのが嫌。無人運転入れたらタクシードライバーいらなくなり、やっぱりタクシー会社は売り上げが下がる。なので、ライドシェアの方がまだましなんだけど、それすら入らないので自動運転はもっと難しい」と述べた。
ひろゆき氏の論理としては、自動運転サービスの受け皿であり、競合にもなり得るタクシー事業者は、自動運転タクシーをやりたがらない。このタクシー業界から多額の献金を受ける自民党は、業界の意向に沿った施策を行うため、日本の自動運転に勝ち筋はない――といった感じだろうか。
タクシー業界は自動運転を受け入れる?拒絶する?
突っ込みどころはあるが、一理ある点も感じられる。まず、日本のタクシー業界は自動運転タクシーについてどのように考えているのか。
全国ハイヤー・タクシー連合会は、自動運転タクシーに前向きだ。2026年の最新資料の中で、「タクシー業界においても、現在のタクシー事業と同等か、それ以上の安全性がタクシー事業者の責任において確保されることを基本として、自動運転タクシーの社会実装に向けて取り組みを進めます」としている。
図式的には日本版ライドシェアと同様とも言える。「タクシー事業者の責任において確保されることを基本として」とあるように、タクシー事業者が受け皿となることを前提としている。仮にWaymoやテスラなどが業界と独立する形でサービス展開を行おうとすれば、おそらく阻止するのではないだろうか。
一方、連合会内部でどこまで意思疎通・統一が図られているか不明な点もある。連合会をけん引する川鍋一朗会長のリーダーシップが強過ぎるためだ。
川鍋氏は、業界を守るため、そして移動サービスの安全性を保つため断固としてライドシェアに反対してきたが、事業効率を高める可能性があり、安全性に期待できる自動運転タクシーには肯定的だ。
ただ、全国各地のタクシー事業者の大半は、まだ半信半疑なのではないだろうか。正直なところ、自動運転タクシーの技術水準や将来的なコスト、運営手法などを把握し、未来に向けた新たなビジネススタイルをしっかりと描くことができている経営者はまだそれほど多くないものと思われる。
業界内部の温度差が大きければ、自動運転タクシー普及の阻害要因となり、結局米中に対抗できるような体制は構築できない。
業界とは別にWaymoらがサービス展開可能になれば普及に弾みがつくが、その際、改めて業界がどのように動くか。そして、自民党は業界にどのような配慮を行っていくか……と考えると、ひろゆき氏の主張も的外れとは言えないものとなるかもしれない。
ただ、ひろゆき氏が言う「無人運転は売り上げが下がる」という部分は何とも言えない。仮に売り上げが下がったとしても、無人サービスが本格化すれば利益率が高まり、経営上はプラスとなる可能性が高いためだ。
ドライバーの雇用を守る観点から言えば業界として反対すべき――となるが、経営上最終的にメリットが大きくなるからこそ実用化が推進されているのが事実だ。
果たして、ひろゆき氏の思惑通りにコトは進むのか。要注目だ。
海外先行勢は自己責任のもと取り組みを加速しているが……
番組では冒頭、自動運転の勝者の行方に関して問われたひろゆき氏は、「自動運転の場合、画像認識などのデータ量の差で行くので、グーグル・テスラに日本が追いつくのはまあ無理だと思う。もう一つ無理だと思うのが、じゃあ自動運転が人を殺したときに誰がそのお金を払うのか。アメリカの場合だと、年間1000人くらい殺すからこのぐらいお金を積み上げましょう的なことができるが、日本だと一人も殺すべきではないみたいな議論になって進まない。アメリカの会社がやって死ぬんだったら仕方ないよねみたいな形になって持っていかれると思う」と述べた。
表現はともかく、ある意味的を射た意見と言える。Waymoやテスラなどは自己資金による「自己責任」で実証やビジネスを推進しているのに対し、日本のこれまでの自動運転実証は補助金ありきで、企業側の主体性が著しく弱い。
自動運転実現に対する考え方が根本的に異なるのだ。資金面の違いも大きいが、海外先行勢は事故などに対しても自身で責任を負う覚悟を持っており、事業推進には一定数の事故が発生することも念頭に置いたうえで取り組んでいる。テスラはその象徴で、事故により反自動運転運動が展開されようと、ギリギリまで己の姿勢を貫くだろう。
もちろん、強気に出過ぎれば、GM系Cruiseのように走行ライセンスを停止され、親会社からも見限られるような結末を迎えることもある。それも自己責任だ。
一方、日本ではこうした先進的な取り組みは世論に左右されやすく、企業サイドの意志をたびたび世論が上回る。一件の事故が取り組みを停滞させてしまう恐れが高いのだ。
SNS全盛の時代、バッシングを受けながら取り組みを継続するような強いメンタルは発揮し辛く、多くの企業が萎縮しがちだ。自己責任でコトを成し遂げる社会環境にないと言える。桃田氏も「(日本は)コンサバ。ガードが高い」と述べている。
E2Eの登場で日本型は再びビハインド
番組ではこのほか、ルールベースからエンドツーエンドモデル(E2E)への移行に関わる技術の進化や、Waymoとテスラの技術的アプローチやビジネスモデルの違い、そして、日本における自動運転ビジネスウォーズに触れている。
池田氏によると、「左折(日本でいう右折)」は2022年くらいまで各社が苦手としていたが、2023年くらいに急にブレークスルーが起き、うまくできるようになったという。そのすべてがE2Eによる解決かどうかには言及していないが、さまざまなエッジケースへの対応が進み始めているとしている。
桃田氏は、「日本は2010年代、世界の一周半遅れと言われていた。産学官連携のもとSIPで開発を進めたが、この3~4年でE2E AIベースの考え方が一気に出てきて、今までのルールベースや高精度3次元地図といった日本型のものがビハインドとなった。ストーリーが丸ごと変わってしまった」とし、「日本は戦略を練り直している真っ最中」と状況を説明した。
国内は「トヨタ陣営 VS ソフトバンク陣営」の構図に?
興味深いのは、日本における自動運転ビジネスウォーズの構図だ。番組では、「トヨタ―Waymo、日本交通、GO」陣営と「ソフトバンク―Wayve、日産、Uber」陣営に分けている。
トヨタとソフトバンクグループはMONET Technologiesを通じて協業しているが、自動運転タクシーをめぐる陣営としては確かにこのような形となる。
ソフトバンク陣営は、Wayveを中心に上手くパートナーシップの輪が形成されている。Wayveはソフトバンクグループから出資を受けており、日産とはレベル2ADASで協業関係にある。さらに、Uberとの自動運転タクシー事業において、日本では日産をパートナーに選んでいる。
一方、トヨタ陣営は、トヨタがどのように関わるかが不明だ。Waymo、日本交通、GOは自動運転タクシー実用化に向け一丸となっているが、同事業へのトヨタの関わりが不透明だ。
トヨタはGOの前身となるJapanTaxi時代に出資を行っており、Waymoとも自動運転開発で協業関係を結んでいるが、自動運転タクシー事業に言及することはない。陣営の各企業が強力なだけに、今後トヨタが絡んでくるのかどうか、注目が集まるところだ。
国内では、ホンダが改めて自動運転タクシー事業を進めているほか、ティアフォーなどの新興勢も開発を進めている。
【参考】関連記事「自動運転タクシー(ロボタクシー)とは?日本やアメリカ・中国の状況は?」も参照。
■【まとめ】結局のところ、日本に勝ち筋は残されているのか……
ひろゆき氏個人の感想はさておき、自民党政府は改めて自動運転開発・実用化に力を入れていることは間違いない。現状、タクシー業界も同調している。その一方、Wayveなど海外企業の技術に依存した状態では、日本としての勝ち筋を見出すことができないのでは――とも感じる。
仮に、Waymoがルールベースを脱却し、E2Eによる自動運転を実用化したらどうなるか。おそらく、世界の大半の開発事業者が太刀打ちできなくなるのではないだろうか。スマートフォン同様、プラットフォームとしてWaymoの技術が世界標準となる未来も否定できない。
本丸となる自動運転開発に注力しつつも、こうした未来を冷静に見据えた上で、新たな商機・勝ち筋に向けた議論を早期に進める必要もあるのではないだろうか。
【参考】関連記事としては「タクシー業界、ライドシェアの「普及阻止」に成功か」も参照。













