ロボタクシーの実用化など、ついに自動運転分野に足を踏み出そうとしている米テスラ。マスク氏は、6月にもテキサス州オースティンで有料自動運転サービスを開始すると豪語している。
その一方、たびたび話題となるのがテスラ車による重大事故だ。大部分はオーナーの過失によるものだが、テスラの自動運転やADASは本当に安全なのか?――と感じずにはいられない内容だ。
いまいち信頼感に乏しいテスラだが、同社のレポートによるとADAS「Autopilot(オートパイロット)」作動時の事故は全米平均の10分の1に抑制されているという。しっかりと交通事故防止・削減に寄与しているようだ。
FSD(Full Self-Driving)やオートパイロットは本当に安全なのか?──。その謎に迫る。
【参考】関連記事としては「【最新版】自動運転車の事故一覧 日本・海外の事例一覧・まとめ」も参照。
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■テスラの安全性レポート
2025年第1四半期は744万マイルに1件の割合で事故発生
テスラの発表によると、2025年第1四半期におけるオートパイロット使用時の事故は、走行距離744万マイルごとに1件の割合で発生したという。オートパイロットを使用していないテスラドライバーによる事故は、走行距離151万マイルごとに1件発生した。
一方、NHTSA(米国運輸省道路交通安全局)とFHWA (連邦道路交通局)の最新データ(2023年)によると、米国では約70万2000マイルごとに1件の自動車事故が発生しているという。
このデータと比較すると、オートパイロットは事故の発生を10分の1以下に抑えていると言える。テスラ車の事故は注目が集まりがちだが、実際には交通事故の抑止にしっかりと貢献しているようだ。
なお、テスラはオーナーカーの車両群から受け取る利用可能なデータに基づき、オートパイロット作動中または手動運転中の各車両の走行距離を収集している。衝突または故障の種類に基づいて区別せず、衝突の 5 秒前以内にオートパイロットが解除されたすべての衝突、およびインシデント警告でエアバッグまたはその他のアクティブ拘束装置の展開が示されたすべての衝突をカウントしている。追突された場合なども含まれるのだ。
以前は、エアバッグやその他のアクティブレストレイントが作動しなかった特定のイベントや、単一のイベントが複数回カウントされたもの、無効または重複した走行距離記録も含まれていたが、車両安全レポートの手法と矛盾するため2023年1月からは除外している。
オートパイロットの安全性は着実に進化
レポートは2018年第3四半期から公表されている。

比較対象として望ましい第1四半期の過去データを見ていこう。
2019年第1四半期は、オートパイロット使用時が走行距離288万マイルごとに1件、オートパイロット不使用時のテスラ車は同124万マイル、全米平均は同48万3,000マイルだった。2020年第1四半期は、オートパイロット使用時486万マイル、オートパイロット不使用時145万マイル、全米平均55万3,000マイルだった。
2021年第1四半期はオートパイロット使用時464万マイル、オートパイロット不使用時98万4,000マイル、全米平均65万2,000 マイルだった。2022年第1四半期はオートパイロット使用時657万マイル、オートパイロット不使用時121万マイル、全米平均67万 マイルだった。
2023年第1四半期はオートパイロット使用時518万マイル、オートパイロット不使用時110万マイル、全米平均70万2,000 マイルだった。2024年第1四半期はオートパイロット使用時763万マイル、オートパイロット不使用時95万5,000マイル、全米平均70万2,000 マイルだった。
その期ごとにばらつきがあるが、全米平均が着実にスコアを伸ばす中、テスラのオートパイロットはそれを上回る進化を遂げているようだ。
■テスラのADASを取り巻く状況
誤認誘発行為とODDの広さが事故を招く要因に?
テスラは高度なレベル2の代表格で、早くからクルーズコントロールとレーンキープアシスト機能を組み合わせた強力な運転支援システムを提供してきた。
その性能は自動車メーカーのADASの中では突出しており、本来はもっと評価されてしかるべきだが、ADAS使用時における重大事故もたびたび話題にもなっている。
高性能にもかかわらず重大事故が目立つ背景には、二つの理由が考えられる。誤認誘発とODD(運行設計領域)の広さだ。
オートパイロットやFSDといったネーミング、そしてマスク氏による自動運転を連想させるような過剰ともいえる宣伝により、運転支援システムを自動運転と誤認するオーナーが次々と無謀な運転を行った結果、他社に比べ重大事故が悪目立ちするようになった。
オートパイロットを起動して走行中、居眠りしたり運転席を離れたりする人が多からず出始めたのだ。これらの行為は自殺行為であり、他の交通参加者の命を脅かす厳禁行為だが、システムの性能を過信または誤認し、こうした運転を行うドライバーが一定数出始めてしまった。
また、最先端を目指すあまり、バージョンアップを重ねる過程で予期せぬエラーが出ることも珍しくなく、そのエラーに起因する事故も発生している。代表例が「ファントムブレーキ」だ。得体のしれない何かにセンサーが反応し、何もないところで急ブレーキをかける事案が頻発した。
こうした問題に対しテスラは都度改善を重ねているが、基本的にマスク氏は悪びれる様子もなく、正当性を主張するケースが多くを占めている。こうした背景のもと、テスラ車による事故がニュースとなることが多く、悪目立ちしてしまうのだろう。
市街地でもハンズオフ可能なFSDは他社を圧倒
ただ、余計な情報を排除し、純粋にオートパイロットをレベル2システムとして見た場合、どうだろうか。
GMやフォード、トヨタ、ホンダなどのレベル2は、基本的に自動車専用道路をODDとしている。安全を確保しやすい郊外の一般道路などでも作動可能な場合は多いが、ハンドルから手を離すことができる高度なレベル2(レベル2+)に関しては、自動車専用道路を絶対条件としているケースが大半だ。
一方、テスラは明確にODDを設けておらず、市街地の交差点においてもレベル2走行を可能にしている。条件が整っていることが前提となるが、オートパイロットは広範囲で使用することが可能なのだ。
このODDの広さも事故増加要因につながっているわけだが、走行リスクが高い一般道路でレベル2を展開する技術力は、自動車メーカーの中では突出していると言える。
近年は、FSDで市街地における実質レベル2+も実現している。これまでテスラは、モラルハザード対策としてハンドルに手をかけた状態でなければオートパイロットが作動しない仕様を採用し、ドライバーの異常行動を抑止していた。
しかし、2024年のFSD.Ver.12.4のアップデートで、こうした対策をドライバーモニタリングシステムで代替するシステムの導入を開始した。ドライバーが運転席に座り、正しく周囲を監視している状態であれば、ハンドルを握らずともシステムが作動するアップデートだ。これによりレベル2+が可能になった。
オートパイロットの公式サイトでも、FSD(Autopilot Full Self-Driving Hardware)によるハンズオフ走行の動画が公開されている。
▼オートパイロット公式サイト
https://www.tesla.com/jp/autopilot
NHTSAの事故統計ではテスラが群を抜く……
NHTSAがレベル2以上の車両に義務付けている事故報告統計によると、レベル2の事故は2021年(7~12月)226件、2022年543件、2023年550件、2024年825件が報告されている。2025年は3月中旬までに156件の状況だ。
累計2,300件に上るが、メーカー別ではこのうち2,024件をテスラが占める。ホンダ112件、スバル46件、GM42件、フォードとトヨタが各26件、BMW19件と続く。
テスラが圧倒的に多く、数字だけを見れば「テスラのADASは危険?」と言いたくなるが、その要因はレベル2搭載車両の絶対数の多さと、前述したODDの広さだ。メーカーとしての販売台数そのものは特別ではないが、基本的にテスラは全車両がレベル2に相当する。
そのうえ、市街地を含むあらゆるエリアでレベル2を可能にしているため、どうしても事故件数が突出してしまうのだろう。
走行距離当たりの事故件数など、公平に比較可能なデータが欲しいところだ。
【参考】ハンズオフ機能搭載車両については「手放し運転(ハンズオフ)ができる車種・機能一覧 トヨタ・ホンダ・日産・・・」も参照。
【参考】レベル2におけるモラルハザードについては「ハンドルに「手を添えてます」詐欺、海外で横行!日本人ならしない?」も参照。
トランプ政権下、規制緩和が実現?
NHTSAによる事故の報告義務は、緩和される見通しのようだ。トランプ新政権のもと、かねてから報告義務の撤廃を含む緩和策が検討されていることが報じられていた。同政権を支援するマスク氏への配慮との噂も飛び交っている。
米メディアによると2025年4月、米運輸長官が緩和策に言及したという。これまでの連邦安全基準を満たさない新規格の自動運転車を規制から除外して開発・実用化を促進するほか、深刻ではない事故については都度報告ではなく月次の報告を認めるなど合理化を図っていくという。
テスラへの配慮云々はさておき、どのようなルールが設けられ、開発企業の取り組みがどのように促進されるのか。要注目だ。
【参考】トランプ政権の動向については「トランプ氏、自動運転車の「事故報告義務」撤廃へ テスラに”恩返し”か」も参照。
■テスラの動向
FSDは自動運転の一歩手前の水準に?
バージョンアップを繰り返して完全自動運転を実現するというお触れでオプション設定されているFSDは、2024年秋にVer.13に達した。駐車状態からFSDを作動し、目的地に向かう機能などが追加され、手動介入回数も前バージョンに比べ大幅に改善されたという。
走行経路・環境にもよるが、駐車場から目的地まで手動介入なしで到達することも不可能ではなくなったようで、限りなく自動運転に近づいた印象だ。
ただ、高性能というのはあくまでADASとしての評価だ。これをレベル4以上の自動運転として評価すれば、まだまだ粗さが目立つものと思われる。
オートパイロットはともかく、FSD走行における事故発生頻度や手動介入頻度をどれだけ低く抑えられているかがカギとなるが、自家用向けのレベル4の場合、自動運転タクシーやバスなどのように特定の遠隔監視員が介入することは難しく、さらなるブラッシュアップが必要となる。
マスク氏は、どのタイミングで自動運転化に踏み切るのか。毎年のように「今年中には~」「来年には~」と自動運転実現を口にしているが、徐々に現実味を帯び始めているのも事実だ。
ロボタクシー計画が成功すれば評価はうなぎ上りに
テスラは2024年10月、ロボタクシー「Cybercab(サイバーキャブ)」を発表し、2025年6月にもテキサス州オースティンで自動運転タクシーの有料サービス実証を開始する計画を明かしている。
市販向けのFSDと同一なのか異なる仕様なのかは不明だが、Waymoなどと比較すると公道実証が不足している感も強く、懐疑的に見る向きも少なくない。
いつものように延期される可能性もあるが、計画通り実装し、特段問題もなく走行した場合、社会に与えるインパクトは非常に大きなものとなる。疑問視されているだけに、それを打ち破った際はテスラの評価は爆上がりとなりそうだ。
■【まとめ】ADASとしては世界屈指のレベル
テスラの技術を自動運転として見た場合、粗さが残るのは事実で、実装レベルに達しているか?――と問われれば懐疑的にならざるを得ない。しかし、ADASとして見れば世界屈指の技術であることは間違いない。
この屈指のADASは、信頼すべき水準にいつ頃到達するのか。その答えの一端は、おそらく同社のロボタクシーからうかがい知ることができる。まずは6月に本当にサービスを実現することができるのか。要注目だ。
【参考】関連記事としては「テスラの自動運転(Autopilot, FSD)とロボタクシー計画を徹底解説」も参照。