【試乗ルポ】ハンドルが無人でクルクル…興奮必至の自動運転タクシー「Easy Ride」に乗ってみた 日産とDeNAが開発

2020年代早期の本格サービス開始へ



試乗会で使われた自動運転車両と専用アプリ=撮影:自動運転ラボ

日産自動車と株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)が実用化に取り組んでいる自動運転車のオンデマンド配車サービス「Easy Ride」。2019年3月18日から20日の3日間、この「無人タクシー」とも呼べる次世代型サービスの報道機関向け試乗会が、横浜市みなとみらいエリアの一般公道で行われた。

試乗会は神奈川県横浜市の日産グローバル本社から横浜中華街へ向かうルートで実施され、自動運転ラボも参加して専用アプリを使った配車から乗車、降車を体験した。結論から言えば、試乗会での約1時間の体験は一言で言えば「なんてスマートなんだ…」だった。今回はこの体験を乗車ルポとしてお届けする。


(ちなみに今回の試乗会は2月19日から3月16日に一般モニター40組を対象に行われた実証実験を報道陣が体験するという趣旨のものだ)

■スマホにインストールされたアプリで配車、そして乗車へ
iPhoneにインストールされた専用アプリ=撮影:自動運転ラボ

自動運転車の配車は米アップルの「iPhone(アイフォーン)」にインストールされた専用アプリから行った。アプリを起動すると行きたい場所を入力する画面が立ち上がり、今回は横浜中華街まで行くという試乗会だったので、「行きたいリスト」に登録されていた「横浜中華街」を目的地として選択。出発時刻と到着予定時刻を確認して「配車する」をタップして、配車予約を完了させた。

配車手続きの完了後、アプリの画面には「あと3分で2号車が到着します」と表示が出て、地図で示された乗車地への移動を促された。ちなみに乗車地はあらかじめ登録された地点から最も近い場所が選ばれる仕組みとなっており、今回は自動で「日産グローバル本社」が選択された。

そして自動運転車が到着し、アプリの指示に従って車両ドアの窓ガラスに貼られている「QRコード」をiPhoneで読み込むと、ドアロックの解除に成功。配車から乗り込むまでの一連の手順はアプリのUI(ユーザーインターフェース)が分かりやすかったため、普段からスマートフォンを使いこなしているユーザーでも問題なく扱えそうな印象を受けた。


車両に乗り込むと助手席の背面にタブレット端末が設置されていた。その端末の画面に表示された指示に従ってシートベルトを締め、車内に設置された「GO」ボタンを指でポチッと押すと、自動でドアが閉まった。その後、自動運転車がセンサーで周囲に障害物や人がいないか確かめる過程を経て、自動運転車はそろりとその場をスムーズに出発した。

車内に設置された「GO」ボタン=撮影:自動運転ラボ

【参考】ちなみにアプリの目的地は「行きたいリスト」から選ぶのでなく、任意に検索することもできる。よく行く場所をあらかじめ登録しておいた場合は、最短で3タップ、時間にすると10秒前後で配車が可能になる。また、グルメや観光、買い物などの「目的」から行き先を選ぶことも可能だ。周辺地域の最新イベントも表示される。

■運転技術はまるで、無事故無違反の安全運転ドライバーのよう

運転席には万が一に備えてスタッフが運転席に座った状態で、自動運転車は日産グローバル本社を出発した。自動運転車はその後、停止や発進も滑らかにやってのけ、三車線道路での車線変更や右左折における運転操作も無事故無違反の安全運転ドライバーのように丁寧にこなした。前の車との車間距離もばっちりだった。


「下手なペーパードライバーよりはよっぽど安心して乗っていられるな」というのが記者の印象だった。正直、事前に自動運転だとわかっていなければ人の手による運転だと勘違いしてしまうほどだった。もちろん、法定速度に則り、信号無視や一時停止無視などもしなかった。

自動運転中の車内。運転席には人が同乗しているが、ハンドルは触ってはいない=撮影:自動運転ラボ

そして運転席を見ると、人が触っていないのにハンドルが動いていた。直進時は人間もするのと同じように、右に左にハンドルがこまめに動かされる挙動が繰り返され、車線上を真っ直ぐ進むように調整された。

【参考】自動運転車は将来的にはハンドルが無くなるとも言われているが、緊急時は人が運転を代わる「自動運転レベル3(条件付き運転自動化)」では、ハンドルは確実に必要とされる。詳しくは「自動運転レベル0〜5まで、6段階の技術到達度をまとめて解説」も参照。

■色々な情報を教えてくれる「後部座席タブレット」が便利
助手席の後ろに後部座席用に設置されたタブレット端末=撮影:自動運転ラボ

後部座席用に設置されたタブレット端末には、走行予定ルートと現在位置、目的地までの所要時間が常に表示され、走行している場所に合わせてグルメスポットやイベント情報なども表示された。ちなみにスマホの専用アプリでも同じ情報を見ることができる。

担当者によれば、将来は近くのスポットと連携し、買い物やグルメを楽しめるクーポンなども配信していくという。途中下車機能を実装する可能性もあり、ユーザーアンケートなどで需要を調べていくという。

そして目的地に近づくと、タブレット端末に「まもなく到着します」という通知がホップアップで表示された。そして今回の試乗会では駐車地点に別の車両が停まっていたため、スタッフが介入して自動運転車を停車させた。その後、周囲の安全を確認して降車するようタブレット端末にメッセージが表示され、自動で開いたドアから降車した。

■2020年代早期の本格サービス開始へ

グーグル系の自動運転開発会社ウェイモが2018年12月に商用サービスを開始させ、競争が激化している「無人タクシー」開発戦線。今回一般モニターが参加した実証実験はEasy Rideとしては2度目のもので、次の実証実験ではさらにレベルを上げてくるだろう。

DeNAオートモーティブ事業本部の吉田守博シニアマネジャーは試乗会後、自動運転ラボの取材に「2020年代早期の本格サービス開始を目指しています」と力強く語った。現在は管制システムなど運営プロセスの改善に取り組んでおり、徐々に実証エリアを広げながら商用化に向けてサービスと技術の両方のレベルを高めていくという。

自動運転ラボのインタビューに応じる吉田守博シニアマネジャー=撮影:自動運転ラボ

▼お知らせ
自動運転ラボは後日、吉田守博シニアマネジャーへのインタビュー詳細を記事にして掲載します。試乗会でのさまざまなシーンでの撮影動画もまとめて公開する予定です。


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