「スバルが一般道で自動運転」の違和感 メディアの表現は適切?

見出しに並ぶ「自動運転」が事故を誘発?



SUBARU(スバル)が一般道における高度な自動運転レベル2技術の実用化を2020年代後半にも目指すことを明らかにしたようだ。複数のメディアが報じている。







高速道路などと異なり、交通環境が複雑な一般道でハンズオフ運転など高度なレベル2を実現するハードルは高く、今後の開発に期待が寄せられるところだが、本記事の主旨は別のところにある。

ずばり、自動運転に対する各メディアの「表現」だ。各社が配信する記事の見出しを飾る「自動運転」「自動運転車」といった言葉に違和感を覚えた読者も多いのではないだろうか。

この記事では、スバルの取り組みを例に、ADAS(先進運転支援システム)と自動運転の区別の在り方について考察していく。

■スバルのアイサイトX

スバルは2020年、自動車専用道路においてハンズオフ運転を可能にする最新ADAS「アイサイトX」の実装を開始した。GPSや準天頂衛星「みちびき」などからの位置情報と3D高精度地図データを組み合わせ、車線単位の高精度な制御を実現した。

こうした高度なレベル2システムを一般道で実用化するには、高精度地図の大規模な整備をはじめ、歩行者や自転車、交差点、駐停車車両など、複雑に変化する交通環境に高次元で対応しなければならない。

今回のスバルの取り組みが、国道などの幹線に限定したものか市町村道なども含むものかは不明だが、技術の高度化と普及において大きな一歩となることは間違いなさそうだ。

■ADASをめぐる表現

このスバルの取り組みに対する報道を見ると、「一般道の自動運転、スバルが実用化へ」「SUBARU、一般道の自動運転車投入へ」「スバル自動運転、一般道にも投入」「一般道で『レベル2』相当の自動運転車」――といった見出しが並ぶ。なお、本文中においては「自動運転」などの表現を控えているメディアも一部あった。

各メディアの記者や編集者は、レベル2が自動運転に当たらないことを承知しているものと思われるが、読者の目を引くためか、誇大な表現を使用している。厳密にいえば、誇大を通り越して誤りである。

国土交通省も自動運転レベル2の車両の呼称を、以下のように「運転支援車」と決めており、レベル2はあくまでADASであり、「自動運転車」とする表現が明らかな誤りであることは言うまでもない。

▼自動運転車両の呼称|国土交通省
https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001377364.pdf

出典:国土交通省(クリックorタップすると拡大できます)

スバル自身は、アイサイトXについて「高度運転支援システム」「安全運転をサポート」といった表現を用いるほか、「アイサイトXは自動運転装置ではありません」とする注意書きも添えている。

同様に、ハンズオフ運転を可能にするトヨタ・レクサスの「Lexus Teammate」や日産の「ProPILOT2.0」も「自動運転」といった表現は控えている。

■ADASと自動運転を切り分けなければならない理由
機能誤認が事故を誘発

この記事が重箱の隅をつついているかのような印象を持たれるかもしれないが、ADASと自動運転を明確に区別しなければ、消費者の誤認による重大事故が多発する可能性がある。

過去には、衝突被害軽減ブレーキが「自動ブレーキ」と表現されることでその機能を誤認するケースが相次ぎ、国土交通省や自動車公正取引協議会らがADAS技術について誤認を防ぐべく表現の線引きを図る動きがあった。衝突被害軽減ブレーキだけでもその誤認に多大な注意を要するのだ。

今後、ハンズオフ運転を可能とする高度なレベル2の社会実装が加速していくものと思われるが、高速道路における走行をベースとしているため、この技術の誤認・過信は重大事故に直結する。

テスラの機能が誤認されるケースも

事実、海外では米EV(電気自動車)大手テスラのオーナーによる事故がたびたび発生し、大々的に報じられることも少なくない。テスラのADAS「Autopilot」は直訳すると「自動操縦」を意味する上、同社CEO(最高経営責任者)のイーロン・マスク氏による誇大気味な発言に引きずられる形で本来の機能が誤認されるケースが多い。

記憶に新しいところでは、2021年4月に運転席が不在と思われる状態で木に衝突・炎上した死亡事故が大きく報じられた。

中国でも、EVメーカーNIOのオーナーが同社のADAS「NOP(Navigation on Pilot)」を稼働中に死亡事故を起こす例が出ている。こうした事案を受け、EVメーカー小鵬汽車(Xpeng)のようにADASの宣伝文句の中から「自動運転」を連想させる語句を排除する動きも出始めているようだ。

今後、国内のみならず、ADASと自動運転を明確に切り分ける取り組みは世界的に進んでいくものと思われるが、自動車メーカーら業界が誤認防止に積極的に取り組む中、メディアがこれを誘発することだけは避けたいところだ。

【参考】ADAS誤認による事故については「死亡事故続く「中国版テスラ」 NIOの車は「自動運転」できない」も参照。

■【まとめ】「自動運転レベル」表記も誤認要因に?

メディアによる誤認誘発は、当メディアにおいても他人事ではない。常に意識下に置かなければならない問題だ。

ただ、ADASに対し、アメリカの「自動車技術会」(SAE)に準拠する形で「自動運転レベル2」「運転自動化レベル2」といった語句を使用することは多々ある。正確を期するために準拠しているものだが、この語句自体が誤認要因となり得ることも指摘しておかなければならない。

表現上、従来の「自動運転レベル1~2」を「運転支援レベル1~2」に変更するなど、ADAS関連の語句から可能な限り「自動運転」という言葉を切り離していく取り組みが必要なのかもしれない。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)









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