【インタビュー】日産×DeNA、自動運転タクシー「Easy Ride」の進化に迫る

DeNAオートモーティブ事業本部の吉田氏に聞く





自動運転ラボのインタビューに応じるDeNAオートモーティブ事業本部の吉田守博シニアマネジャー=撮影:自動運転ラボ

株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)と日産自動車がタッグを組んで技術開発とサービス開発に取り組んでいる「Easy Ride(イージーライド)」は、自動運転車両を使った交通サービスの名称だ。

両社は「2020年代早期」を本格的なサービス提供の開始時期と定め、2019年3月に一般モニターが参加する実証実験を2年連続で実施した。自動運転ラボも実証実験に合わせて試乗し、その内容を先日「試乗ルポ」にまとめたところだ。







自動運転ラボは試乗取材後、Easy Rideのサービス企画を担当するDeNAオートモーティブ事業本部の吉田守博シニアマネジャー(自動運転サービス事業開発部ロボットビークルグループ)にインタビューし、事業の方向性などについて話を聞いた。

記事の目次

■今年は「無人乗降」「オンデマンド配車方式」を導入
Q まず改めてEasy Rideのコンセプトについて聞かせて下さい。

吉田氏 Easy Rideは「もっと自由な移動を」をコンセプトに掲げています。無人運転車両を活用することで地域の既存の交通機関を補完し、交通に関する日本の社会課題を解決していきたいと考えています。

具体的には、タクシーと置き換わるような形ではなく補助的な役割からスタートし、地域の路線バスを補完するような形で、ほかの交通インフラや社会インフラと連携しながら社会を良くしていくためにEasy Rideを活用していきたいと考えています。

Q 昨年の実証実験と今年の実証実験の違いについて聞かせて下さい。

吉田氏 全体的なことについて言えば、前回も今回も実証実験を通じて安全性やサービス品質を高め、管制システムなどの運営プロセスを改善することに取り組んでいます。今後は次第に実証実験のエリアを広げ、2020年代早期の本格サービス開始を目指しています。

その上で昨年と今年の実証実験の違いについてお話ししますと、まずEasy Rideの利用方法が異なっています。去年は「事前予約方式」で実施したのですが、今年は営業時間内ならいつでも利用可能という「オンデマンド配車方式」で行いました。

つまり、実際に無人運転サービスが実用化されたときのことを想定して検証したということになります。タクシーの配車アプリと同じ要領だと考えていただければ分かりやすいと思います。

また車両への「無人乗降」が実現したという点も進化のポイントです。昨年は注意事項の説明などを人が行う「有人サポート乗降」となっておりましたが、今年はこの乗降プロセスを完全に無人化しました。

実証実験に使用された車両=撮影:自動運転ラボ
■実証実験のエリアを6倍以上に拡大
Q 今年の実証実験でサービスエリアを拡大しましたか?

吉田氏 拡大しました。今年は日産グローバル本社から中華街の入り口までのかなり広いエリアをサービス地域にしました。昨年よりもルート長では約6倍となりました。

このエリアでのほかの公共交通機関と比較すると、みなとみらいエリアで運行する横浜観光スポット周遊バス「あかいくつ」とほとんどカバーエリアが同じです。乗降地に関してはやや少ないですが、同じぐらいの利便性を確保できているかなと考えています。

またこの地区は人口密度が高く、交通量も多いので、実証実験を行うエリアとしての難易度は高め。このような地区において有人サービスと並ぶような形で一般の方が自動運転のサービス実証に参加した意義は大きいと考えています。

■乗り心地については好意的な感想が多数
Q 乗り心地については一般モニターの方からどのような感想が寄せられましたか?

吉田氏 実際に先ほど実際に試乗してみてどういった印象を持たれましたか?

自動運転ラボ 乗っているときは「自動運転」という特別な感覚はなくて、自然な感じでした。運転に慣れてない人よりよっぽど上手という感じもありました。

吉田氏 まさにそういうユーザーの声が多かったですね。「ドライバーの個人差がないので安心」という意見もありました。タクシー業界の方や専門ジャーナリストの方からも「かなり良くなってきたね」といった趣旨の意見が多いです。

■子供の毎日の送り迎えに利用した家族も
Q 今年の実証実験ではどのようなシーンでEasy Rideが利用されるケースが多かったですか?

吉田氏 ご家族で利用されたモニターの方が多かったですね。子供の幼稚園への送り迎えで毎日同じ時間に利用してくださるというお客様もいらっしゃいました。

自動運転ラボ 公式ページの動画(https://www.youtube.com/watch?v=YdXSnw819mY)にも似たような利用シーンがありましたね。実証実験とはいえ、時間の決まった送り迎えに実用できるぐらいのレベルになっているということですね。

吉田氏 その通りです。例えばご自宅から乗られて、決まった場所でお子様を降ろされて、また別の場所でお子様をピックアップして帰られるというケースもありました。

自動運転ラボ あらかじめ迎えの時間に予約をしておくこともできるのですか?

吉田氏 今年度は開発の優先順位の都合上、予約機能は実装していません。今回の実証実験でのお客様の声をまだ整理できていないんですが、そういったご要望が多ければ実装を視野に進めていきたいと考えています。ここが弊社の強みかなと思うのですが、様々な事業で培ったノウハウがありますので、無人システムへの実装も決して難しくありません。

■今後は「安心」と「快適性」の向上もテーマに
Q 一般モニターの方へのアンケートの中から改善点や課題などが見つかりましたか?

吉田氏 実証実験だからということもありますが、まだ台数が限られていたため、配車依頼をしてから車両がなかなか来ないという声がありました。

また、どちらに車両が曲がるのかを事前に表示しておいてくれた方が安心だという意見がありました。これは技術的に難しいことではないこともあり、今後取り組んでいくべき点だと考えています。

自動運転ラボ 確かに曲がる方向が分かっていると安心ですね。

吉田氏 次の課題は、利用者にもっと安心していただく仕組み作りと、もっと快適に過ごしていただく空間の作り込みだと考えています。

後部座席からの前方風景=撮影:自動運転ラボ
■乗降地の選定や待機・充電について大きな気付き
Q 今年度の実証実験における一番の成果はどのような点ですか。

吉田氏 今年度は、キーポイントであった無人乗降をクリアできたというのが大きな成果でした。公道の路肩で無人乗降するのは我々が想像していたよりずっと大変で、これに目処がついたというのが社会実装に向けた大きな一歩だと考えております。

自動運転ラボ 想像したより難しかったというのはどのようなポイントですか。

吉田氏 例えば乗降地の選定が難しいポイントでした。法律上NGである駐停車禁止の場所はもちろん、渋滞が発生するなど事故リスクが高くなるような場所、例えば、追い越し禁止の1車線道路は避けるなどの配慮もしました。このような注意すべき点が分かったことは大きな成果だと思っております。

自動運転ラボ バス停で乗り降りできればいいですよね。

吉田氏 バス停に停車できればお客様にとってわかりやすいので、来年度以降は地域の交通業者様と連携していくという形も模索できればと考えております。

Q 今回の実験の中では「空車」の状態もあったと思うのですが、その時はどのように車両を待機させていたのでしょうか。

吉田氏 空車中は公道を回遊している車両もありましたし、指定された場所で待機している車両もありました。

自動運転ラボ 今回使った車両は電気自動車(EV)車両でしたが、充電に関しては日産本社で行っていたのですか?

吉田氏 そういうことになります。充電についても将来の自動運転時代には重要な話で、今回は待機と充電について大きな気づきがありました。例えば待機エリアや充電エリアを1カ所に固めるのではなく、分散させた方がいいとかですね。今回はエリア内の端の方にそのような場所が固まる形になってしまったので、カバーが手薄なエリアも実証実験中に出てきてしまいました。

■タクシー業界と二人三脚の体制で
Q 今後の展開として、ほかの企業が手掛けている乗り換え案内アプリやタクシーアプリとの連携などは検討されていますか?

吉田氏 そのような希望を強く持っています。特にタクシー事業者様とはしっかり二人三脚で新しい交通サービスを作り上げていくことを我々としては強く希望しています。

今回の実証実験でも神奈川県のタクシー業界の方と協議をしておりますし、来年度以降も一緒に取り組ませて頂ければと考えています。例えばEasy Rideは管制センターで遠隔監視をするのですが、タクシー業者様は管制センターを中心にして安全運行に取り組んで来られたという実績があります。そのようなノウハウを商用化に向けてご協力頂きたいと考えております。

Q 最後に今回の実証実験の手応えを教えて下さい。

吉田氏 今回の実証実験は自動運転に関わる事故が一つもなく終わったこともあり、実用化に一歩一歩近づいていると感じました。まだまだ法規制も含めて解決すべき課題はありますが、官公庁や交通事業者の方々と連携しながら一歩ずつ進んでいきたいと考えております。

■【取材を終えて】自動運転サービスの社会実装は着実に前進

Easy Rideの試乗を通じ、自動運転の技術レベルは着々実用化に近づいていると感じた。またより本番に近い環境で実証実験を行わなければ発見できない課題があるということも、吉田氏へのインタビューから改めて気付かされた。次の実証実験までにDeNAと日産がどのような改善や新技術の開発を仕組んでくるのかが楽しみだ。

【参考】関連記事としては「日産とDeNA、今年も自動運転サービス「Easy Ride」実験を開始」も参照。







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