自動運転、2024年度に一般道20カ所以上で通年運行 政府目標

各都道府県で1カ所以上の計画・運行も目指す



日本政府は2024年度、一般道20カ所以上で自動運転サービスを通年運行させる計画だ。


自動運転については、2025年度をめどに50カ所程度、2027年度には100カ所以上実現するという目標がある。国土交通省が2023年10月に発表した資料によると、そのために2024年度は一般道での通年運行事業を20カ所以上で行う。

さらに、全ての都道府県において1カ所以上の自動運転の計画・運行を目指すという。

■2023年度は「全国の一般道10カ所以上」

地域公共交通などにおける自動運転の推進について、2023年度は62件の事業を採択し、全国各地で展開している。さまざまな状況における実走行データの収集などを通じ、自動運転技術の向上を目指しているという段階だ。

2023年度においては、一般道で通年運行事業を「10カ所以上」で実施・実施予定とされており、具体的な自治体名としては、茨城県日立市、千葉県横芝光町、東京都大田区、新潟県弥彦村、石川県小松市、岐阜県岐阜市、三重県多気町、愛媛県伊予市、沖縄県北谷町が挙げられている。


なお茨城県境町では2020年11月から、自治体では全国初の公道での自動運転バスの定常運行を開始済みだ。また北海道上士幌町や愛知県日進市でも定常運行が行われている。福井県永平寺町では、2023年5月から自動運転レベル4での移動サービスがスタートしている。

これらの自治体での自動運転運行事業について、自動運転バスに触れ、便利さを実感し、自動運転への理解と期待(=受容性)を高めることを目的にしているようだ。

■2024年度に掲げる3つの目標

2024年度は、3つの目標を掲げている。冒頭でも触れたが、1つ目は、一般道での通年運行事業を倍増させ、「20カ所以上」で行うことだ。さらに交差点等での円滑な走行を支援する「路車協調システム」の整備など、道路側の環境整備も実施する。走行環境の整備については、専用道の設定や、電磁誘導線や磁気マーカー、交差点センサーの設置などが挙げられている。

国交省は過疎地や都市部といった地域性や、通勤・通学需要への対応など、地域課題に応じた事業を積極的に支援していく方針だ。また通年運行を行う中で、事業採算性の確保方策についても検証を行うという。


2つ目は、2024年度中に全ての各都道府県で1カ所以上の計画や運行を目指すということだ。全国各地でいつでも気軽に自動運転バスやタクシーに触れ、地域の住民が見ることができる自動運転の導入を促進していくという。

3つ目は、高速道路においても自動運転レーンを活用した自動運転トラックの社会実装に向けた取り組みを実施するということだ。

出典:国土交通省資料
■日本の自動運転の現状は?

国内における自動運転技術の実装についても説明されている。自動運転レベル1については、衝突被害軽減ブレーキが2019年時点で9割を超える新車に搭載されている。レベル2については、ソフトバンク子会社で自動運転事業を展開するBOLDLYを中心に、自動運転移動サービスの実現に向け、全国各地で実証事業が行われている。

レベル3については、2021年3月にホンダが世界初のレベル3市販車である新型「レジェンド」を発売開始したことが紹介されている。レベル4については、道路交通法の改正により、2023年4月から可能になり、福井県永平寺町でレベル4の無人自動運転移動サービスが開始している。

完全自動運転となるレベル5については、現状は実現についての具体的な構想は発表されていない。当面はレベル4の実現を各自治体で行っていく構えのようだ。

出典:国土交通省資料
■今はまだ「なんちゃってレベル4」

ただし、日本国内で展開されている福井県永平寺町の自動運転レベル4に関しては、車両にセーフティドライバーが乗っていないものの、電磁誘導線の上を走行する形態の自動運転となっており、真のレベル4とはいえない。

一方、海外でGoogle系Waymoなどが展開しているレベル4の自動運転タクシーは、電磁誘導線を必要とせず、特定エリア内の公道であれば基本的にどこでも走行が可能だ。そのため言うなれば日本のレベル4はまだ「なんちゃってレベル4」の水準といえる。

また、日本国内で定常運行しているそのほかの自動運転バスは、将来的にはレベル4での運行を目指しているものの、現在はセーフティドライバー同乗のレベル2水準となっている。

つまり日本国内の自動運転バスはいずれも、将来的な普及フェーズにおける自動運転バスの「あるべき姿」に近い状態ではない状況であり、米中などと比べると出遅れが鮮明となっている。

■自動運転実現に向けた政府の推進体制

政府における自動運転の推進は、デジタル庁や内閣府の先導のもと、各省が連携して取り組んでいる。自動運転の核となる道路や自動車の技術、制度などを管轄しているのが国交省となっている。車両安全の基準整備や道路空間の基準整備などを行っている。

そのほか、警察庁は交通ルールのあり方の検討、法務省は刑事責任のあり方の検討、総務省は車車間通信などに関する技術開発や制度整備、経済産業省は車両の研究開発を推進している。

出典:国土交通省資料
■2024年も引き続き業界動向に注目

2024年度中に各都道府県1カ所以上で自動運転の計画策定や運行が行われるということは、一般市民が自動運転に触れる機会が多くなるということだ。

自動運転については、高度な技術開発のほか、地域住民の社会受容性の向上が非常に重要になってくる。少子高齢化などによる移動手段確保の問題が年々深刻化している現在、自動運転サービスの早期実装が望まれる。

2024年も引き続き、日本政府と民間企業の動きに注目したい。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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