ドイツの自動車メーカー大手フォルクスワーゲン(VW)が、米国で自動運転走行テストプログラムを2023年7月から開始することを発表した。同社がアメリカで自動運転実証を始めるのは初のことだ。
走行テストはVWの米国子会社であるVolkswagen Group of America(VWGoA)が、小型バスEV(電気自動車)「ID.Buzz」を用いて行う。まずはテキサス州オースティンで開始し、その後、4つの都市に順次拡大していくという。2026年までにオースティンでの自動運転車の商用化を目指す。
自動運転車開発で先行するGoogle系の米Waymoは2018年に世界初のロボタクシーサービスを開始しているため、VWが2026年に実用化するとしたら、8年ほど出遅れた格好になる。VWはどんな戦略を立てているのだろうか?
■自動運転実用化のために米国子会社設立
VWGoAは米国における自動運転車プログラムの展開のため、Volkswagen ADMT(Autonomous Driving Mobility & Transport)という子会社を設立しており、カリフォルニア州ベルモントとオースティンに拠点を置いている。Volkswagen ADMTでは、2022年10月に事業閉鎖を発表した米Argo AIで働いていたメンバーを雇用する予定だという。
VWGoAのCEO(最高経営責任者)であるPablo Di Si氏は「米国の道路にID.Buzzを導入でき、VWグループのグローバルな自動運転車プログラムを米国に拡大することは、当社にとって重要なマイルストーンになる」としており、「将来的にはVWのアイコンであるID.Buzzを活用し、新しいモビリティサービスに対する需要の高まりに対応していき、米国の消費者が信頼できる交通サービスをサポートできるような魅力的な製品を提供する」と意気込みを語っている。
初期テストの段階では、全ての車両にセーフティドライバーが同乗するという。
■提携中のMobileyeと技術開発
オースティンで行われる走行テストで使用されるID.Buzzには、VWグループが米インテル傘下のイスラエル企業Mobileye(モービルアイ)との提携により開発したSAEレベル4の自動運転プラットフォームが搭載される。このプラットフォームは、カメラやレーダー、LiDARなどで構成されている。
ちなみにVW傘下の高級車メーカーであるポルシェは、Mobileyeと提携したことを2023年5月に発表している。
【参考】関連記事としては「Mobileye(モービルアイ)と自動運転(2023年最新版)」も参照。
■米国におけるVWの自動運転事業に注目
VWグループは、自動運転技術に関する方針を2022年11月に発表している。それによると、2025年に独ハンブルクでID.Buzzを用いた自動運転でのライドシェアサービスを開始する予定となっている。
しかしVWは米国においては、独自のライドヘイリングやライドシェアリングサービスを構築していない。オースティンでの走行テストを皮切りに、米国でのどういったサービス展開を目指していくのか、関心が集まりそうだ。
【参考】関連記事としては「VWとArgo AI、2025年からID.Buzzで自動運転シャトル展開へ」も参照。