【最新版】日産の自動運転戦略や技術まとめ EV、コネクテッド化も柱

Easy Rideは2020年代早期実現へ





東京モーターショー2017で完全自動運転を実現するコンセプトカー「NISSAN IMx」を初公開した日産自動車。EV(電気自動車)専用プラットフォームや自動運転、コネクティビティなどあらゆる要素を盛り込んだ夢の一台だ。







市販車では堅実に運転支援機能を高め、高速道路でのハンズオフ運転を可能にする「プロパイロット2.0」の搭載が2019年秋には実際にスタートする。株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)と共同で開発を進めている自動運転レベル4(高度運転自動化)相当の無人移動サービスにも注目だ。

かつては「技術の日産」とうたわれた開発力を誇る同社。その技術の矛先は今どこに向かっているのか。戦略と技術を掘り下げ、展望を探ってみた。

■日産の自動運転技術

日産は「ニッサン・インテリジェント・モビリティ」という取り組み・ブランド戦略のもと、「インテリジェント・ドライビング=自動運転」「インテリジェント・パワー=EV(電気自動車)」、そして「インテリジェント・インテグレーション=コネクテッド」の3つの柱に沿って開発を進めている。

この中から実装済みの技術を含めいくつかをピックアップする。

ProPILOT 2.0(プロパイロット):高速道路上の同一車線を自動運転

日産は2019年5月に「プロパイロット2.0」を発表している。このプロパイロット2.0については、高速道路の複数車線をナビシステムと連動して設定したルートを走行し、運転手が常に前方に注意して道路・交通・自車両の状況に応じ直ちにハンドルを確実に操作できる状態にある限りにおいて、同一車線内でハンズオフが可能となる運転支援システムと説明されている。

車両に設置してあるカメラやレーダー、GPS(全地球測位システム)のほか、3D高精度地図データ(HDマップ)などを活用して自車位置の把握を行いながら、周囲の車両の動きをリアルタイムで検知することなどで、ハンズオフでの滑らかな運転が可能になるという。プロパイロット2.0は2019年秋に日本で発売されるスカイラインに搭載される予定だ。

脳波測定による運転支援技術 (Brain-to-Vehicle):脳波検知でよりエキサイティングなドライビングを提供

脳波測定技術を活用し、ドライバーの次の運転操作のタイミングやドライバーが持つ違和感を把握し、リアルタイムにクルマの制御に活用することで思い通りのよりエキサイティングなドライビングを提供する将来的な技術。

ドライバーがヘッドセットを着用して計測した脳波をシステムが解析・判断して自動運転に適用するほか、マニュアル運転時には、ドライバーが操作を開始する0.2〜0.5秒前にクルマが運転操作を開始し、ドライバーはシステムのサポートを意識することなく、スムーズに走行できるという。

シームレス・オートノーマス・モビリティ (SAM):事故などの道路情報を蓄積し、周囲のクルマと共有

NASAと共同開発した技術で、全ての無人運転車両が、事故・路上の障害など不測の事態に直面した際に、人が介入し遠隔でコントロールするとともに、クラウドに情報を集め全てのクルマをつなぐことにより、クルマを安全に誘導し、効率的な移動を実現するコネクテッド技術。

事故の際などに指令センターに通報すると、車両の状況をセンサーから把握しているモビリティ・マネージャーが解決法を提示する。その情報をクラウドに蓄積することで、同じ地域を走行中の他の車両に伝えることができ、自動運転車は迂回路を自身で設定できるため毎回同じ問題を支援する必要がなくなる。

インホイールモーター:車輪を独立制御、レイアウトの自由度も向上

EVの駆動系レイアウト方式の一つで、駆動輪のすぐ近くにそれぞれモーターを配置し、タイヤを直接駆動することで、クルマを従来以上に思い通りに走らせる将来技術。

アクセル操作に対する反応の良さにくわえ、左右の車輪を独立に制御することでハンドル操作に対する旋回時のクルマの挙動をより自由に作り出すことができるほか、レイアウトの自由度が向上するため、これまでにないようなさまざまなクルマを実現できる。

緊急操舵回避支援システム:緊急時、障害物がない方向へ自動でハンドルを操作

急ブレーキでは事故を回避できないと判断した時にドライバーの操作を補い、「衝突を回避しよう」という意思を支援する将来技術。

衝突しそうな対象物を見つけた際はECU(車載コンピュータ)が対応を判断するが、時間的に余裕がある場合にはまず警告音とライトによる警告を出し、ドライバーの操作が不十分であると判断すると、緊急ブレーキが作動して衝突回避操作を支援する。

それでも衝突が避けられない場合はハンドルを切って避ける必要があるが、その際に車線区分や周囲の車の位置や速度、歩行者の有無などを瞬時に識別し、適切な回避を試みるシステム。

全方位運転支援システム:全方位の危険を察知し、運転を支援

車線変更時の運転支援システム「ブラインドスポットインターベンション」と、後退時における運転支援システム「バックアップコリジョンインターベンション」を、すでに実用化している「インテリジェントペダル(ディスタンスコントロールアシスト)」、「レーンデパーチャープリベンション」と合わせ、車両の全方位に対する運転支援システムを搭載したシステム。

ブラインドスポットインターベンションは、サイドセンサーで隣接レーンの車両を検知し、ドライバーがレーンチェンジする際に警告を出すとともに各輪のブレーキを制御して隣接の車両に近づけないよう運転操作を支援する。

バックアップコリジョンインターベンションは、駐車場から後退して出る際などに付近の障害物を検知し、警告を出すとともにブレーキをかけることで障害物に近づけないよう運転操作を支援する。

インテリジェント・ライドコントロール:揺れを抑えて自然な乗り心地を向上

路面の凹凸に対し、エンジンとブレーキを制御することで不快な動きを抑制し、快適な乗り心地を提供するシステム。

ドライバーが感じない程度の微弱なブレーキを自動的にかけることで衝撃緩衝効果を生み出し、揺れを抑える技術を開発した。

プロパイロット・パーキング:駐車時に必要なすべての操作を自動制御

ゆっくりと前進して駐車したい場所の真横に車両を止めるなど簡単な3ステップの操作だけでステアリング、アクセル、ブレーキ、シフト、パーキングブレーキまで全て自動制御し、駐車完了するまでドライバーをアシストする機能。駐車スペースに合わせ、後向き駐車、前向き駐車、縦列駐車を選択することができる。

■日産の自動運転の実現目標

日産は2020年までに交差点を含む一般道での自動運転技術を投入する予定。一部報道によると、2022年を目途に完全自動運転の開発に取り組んでいるという。

また、2022年までにプロパイロット搭載車種を20種、20の市場に投入する計画も発表しているほか、無人運転車両による配車サービス事業への早期参画なども計画中で、株式会社ディー・エヌ・エーと共同開発を進めている新しい交通サービス「Easy Ride(イージーライド)」は、2020年代早期の実用化を目指している。

【参考】関連記事としては「【動画公開のお知らせ】Easy Rideに試乗!日産とDeNAが開発中」も参照。

なお、プロパイロットの最新の実験車両には、12個のソナー、12個のカメラ、9個のミリ波レーダー、6個のレーザースキャナー、HDマップを搭載し、車両の周囲360度の情報と自車の正確な位置を把握する。複雑な交通シーンを解析するAI技術を搭載しており、例えば高速道路の料金所に近づくと、システムが走行可能なETCゲートを検出して自動運転で通過するという。

■日産の自動運転関連のこの1年のニュースなど
完全自動運転コンセプトカー「NISSAN IMx」を世界初公開

2017年10月開幕の第45回東京モーターショー2017で、将来の「ニッサン インテリジェント モビリティ」を具現化したゼロエミッション クロスオーバーコンセプトカー「NISSAN IMx」を初公開した。

乗員全員がリラックスしたまま好きな場所へ移動することが可能な「プロパイロットドライブモード(PDモード)」や、ドライバーの前にステアリングが現れる「マニュアルドライブモード(MDモード)」など、自動運転も手動運転も楽しめるコンセプトだ。

【参考】詳細は「日産自動車ニュースルーム」を参照。

日本初のセルラーV2X実証実験開始

日産とコンチネンタル・オートモーティブ・ジャパン、エリクソン、NTTドコモ、沖電気工業、Qualcomm Technologies(クアルコムテクノロジーズ)が2018年1月、セルラーV2Xの実証実験を2018年から開始すると発表した。

セルラーV2Xは車両とあらゆるものをつなぐ通信技術で、5GHz帯を用いたセルラーV2Xの直接通信技術の通信距離、信頼性、低遅延特性を評価するとともに、LTE-Advanced(LTE-A)ネットワークと通信を相互補完する効果を確認する。

【参考】詳細は「日産自動車ニュースルーム」を参照。

無人運転移動サービス「Easy Ride」実証実験開始

株式会社ディー・エヌ・エーと共同開発を進める新しい交通サービス「Easy Ride(イージーライド)」の実証実験を2018年3月に開始すると発表した。

本実証実験終了後に無人運転環境でのサービスの検討や運行ルートの拡充、有人車両との混合交通下での最適な車両配備ロジックや乗降フローの確立、多言語対応などの検証を進め、限定された環境でのサービスを経て2020年代早期に本格的なサービス提供を目指すこととしている。

DIDI AUTO ALLIANCEに参加 世界最大の車両オペレータープラットフォーム構築へ

ルノー・日産自動車・三菱自動車は2018年4月、中国最大のモバイル交通プラットフォームを手掛ける滴滴出行(ディディチューシン)が設立した「DiDi Auto Alliance」にパートナーの1社として参加することを発表した。

ライドシェアリングに関するアライアンスで、スマートモビリティを促進するとともに、バリューチェーンに沿ったパートナー企業が一体となり、新エネルギーによる自動車産業を推進することでビジネスモデルに革新をもたらし、世界最大の車両オペレータープラットフォームになることを目指す。

Googleと次世代インフォテインメントシステムで提携

ルノー・日産自動車・三菱自動車は2018年9月、同アライアンスの車両にGoogle社のAndroidオペレーティングシステムを搭載し、高度なインフォテインメントやドライバー向けアプリケーションを複数のブランドと車種で展開するため、技術提携を結んだことを発表した。

Googleマップによるターンバイターン表示のナビゲーションや、Google Playストア上の豊富な自動車用アプリケーションのエコシステムの利用、内蔵のGoogle アシスタントを活用した音声による電話・メールへの応対、メディアの操作、情報検索や車両機能の管理が可能となる。搭載は2021年からを予定している。

日産自動車とルノー、グーグル系ウェイモと独占契約を締結

日産自動車とルノーは2019年6月、自動運転開発を手掛けるグーグル系ウェイモ(Waymo)と、無人モビリティサービスに関する独占契約を締結したことを発表した。これは日本において無人運転の乗客・配送向けサービスの提供の可能性を探るためのもので、今後、市場分析や共同調査を進めていくという。

ウェイモは自動運転タクシーの商用サービスを2018年12月からアメリカ国内の一部地域で提供しており、ウェイモと日産の技術を結集した自動運転タクシーが日本国内を走行する日も近いかもしれない。

■「技術の日産」は今なお健在

ルノー、三菱自動車とともに巨大なアライアンスを形成しつつも独自開発や異業種とのパートナー戦略に余念がなく、自動運転レベル2から3、4を経由して5に達するビジョンがしっかりとうかがえる。

EVにおいても国内メーカーの中では一歩先を進んでおり、技術の共有を図りながら電動化、自動運転、コネクティビティといった新しいモビリティサービスの確立に向けて着実に歩みを進めている。

コネクテッドカー領域での発表にも注目したい。2019年1月には「見えないものを可視化する」という新技術「Invisible-to-Visible」(I2V)について発表され、注目を浴びた。「技術の日産」は今なお健在だ。







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