フォードの自動運転戦略まとめ 開発状況は?実現はいつから?

2021年にレベル4実用化へ GMやWaymoの背中追う


出典:フォード社プレスリリース

米国自動車業界のビッグスリーとして長年にわたり世界にその名をとどろかせてきた米フォード・モター。世界金融危機などの影響で味わった苦境を乗り越え、自動運転やMaaS(Mobility as a Service)分野に戦略をシフトし改めて次世代の覇権を狙う。

創業100年を超える老舗メーカーは、どのような自動運転戦略で同業他社や新興勢力に立ち向かうのか。戦略を紐解いてみた。







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■フォードの企業概要

フォードは、米国の企業家であるヘンリー・フォード氏が1903年に設立。流れ作業をはじめとする大量生産システムを開発し、1913年には世界初のベルトコンベア式組み立てラインを自動車の製造に導入した。この時代には米国市場シェア5割を占めるほどの大会社となり、長らくゼネラルモーターズ、クライスラーとビッグスリーを形成することになる。

1990年代には、経営危機にあった英国のジャガーやランドローバー、スウェーデンのボルボを次々と買収したほか、資本提携関係にあったマツダへの出資比率を高め、自社の傘下に収めている。

2000年代に入ると状況は一変し、原油価格の高騰や世界的な金融危機の影響で業績は傾き、ジャガーなど3社を売却。マツダへの出資比率も抑えることになった。2011年にはマーキュリーラインを中止し、フォードとリンカーンブランドに集中。2016年にはマツダとの提携も終焉を迎え、日本市場から撤退している。

2010年以降は選択と集中を進め、業績回復を図るとともに自動運転分野への本格投資を始めている。

また、2016年には、コネクティビティや自動運転、MaaS(Mobility as a Service)などの研究開発を手掛ける子会社「フォードスマートモビリティ」を設立している。

■フォードの自動運転戦略
2021年までに自動運転レベル4実用化へ

2000年以降、米国防高等研究計画局(DARPA)主催のロボットカーレースへの参戦や、ブレーキ支援や衝突警告システムなどをテストするため試験車両を米国25州で走行させるプロジェクトなど地道に行ってきたフォード。2012年には、ビル・フォード会長が自動運転レベルを段階的に発展させていく方針を打ち出している。

2015年にカリフォルニア州で自動運転走行試験の許可を取得し、パロアルトに研究センターを開設するなど研究開発を本格化。2016年には、自動運転レベル4(高度運転自動化)を2021年までに実用化し、ライドシェアなどの配車サービス向けに供給することを発表したほか、モビリティサービス企業へと転換する計画も発表している。

当初は段階的に自動運転レベルを進化させていく予定だったが、自動運転レベル3(条件付き運転自動化)の技術はレベル4と同程度に困難であると判断し、一段飛ばしてレベル4の開発に焦点を当てたようだ。

【参考】自動運転レベル4については「自動運転レベル4の定義や導入状況を解説&まとめ 実現はいつから?」も参照。

提携や買収で開発力を強化

2016年8月には、LiDAR開発大手の米ベロダイン社へ7500万ドル(約84億円)の出資を発表。高価なLiDARを市販車へ搭載するため、低価格で量産が可能な開発体制構築を後押ししている。また、AI(人工知能)の機械学習やコンピュータービジョン開発を手掛けるイスラエルのスタートアップ・SAIPS社を買収したほか、生体認識技術や画像処理技術を持つ米Nirenberg Neuroscience社と独占ライセンス契約を結ぶなど、自動運転開発に向け大きく動き出した。

2017年2月には、AIシステム開発を手掛ける米スタートアップのArgo AI(アルゴAI)社に5年間で10億ドル(約1130億円)の出資を発表した。アルゴAIは、米グーグルとウーバーで自動運転の開発にあたっていた技術者2人が2016年11月に設立したばかりで、創業間もないスタートアップへの出資は、2016年に自動運転スタートアップのクルーズを買収した米ゼネラルモーターズへの対抗心の表れともいえる。

アルゴAIは、現在ではフォードのバーチャルドライバーシステムをはじめとした技術開発の柱を担っており、自動運転戦略の中心的存在に育っている。

2017年10月には、アルゴAIがLiDAR開発で独自技術を持つスタートアップのPrinceton Lightwave社を買収。2018年7月には、フォードの自動運転開発部門を独立させ、新会社「フォード・オートノーマス・ビークルズ」を設立したと発表した。新会社はアルゴAIと連携しながら自動運転開発を担っていく。

これに伴い、フォードは2023年までに計40億ドル(4440億円)を追加投資することも発表した。

また、2018年6月に独自動車大手のフォルクス・ワーゲングループと戦略的提携に向けた各書に調印したほか、同年10月には、フォルクス・ワーゲンと自動運転技術の共同開発に向け交渉を進めていることが明らかになっている。グーグル系Waymoなど自動運転分野で台頭する新興勢力への危機感が背景にあり、競争力強化に向け開発スピードを速める構えだ。

【参考】VWとの連携については「VWとフォード、共同で自動運転車や電気自動車を開発か」も参照。

このほか、中国ネット検索最大手の百度(バイドゥ)が展開する、自動運転車向けのソフトウェアプラットフォームをオープンソース化するプロジェクト「Project Apollo(阿波羅)=アポロ計画」にも参加しており、中国国内の公道で自動運転の実証実験を行うことを2018年10月に発表している。

実験期間は2年間を予定しており、百度が開発した自動運転ソフトを搭載し、自動運転レベル4の実用化を目指すこととしている。

コネクテッドカーに向けた取り組み

マイクロソフトと共同開発したコネクテッドシステム「SVNC」を2007年に実用化するなど、コネクテッド分野では先駆者の一つに数えられる。2015年に実用化した「SYNC Connect」は、アップデートなどにより段階的に機能拡張を図っており、アップル社の「Apple CarPlay」やグーグル社の「Google Android Auto」にも対応している。このほか、車内のWi-Fiホットスポットを楽しむことができる「FordPass Connect」などもある。

コネクテッド機能は、米国内では2019年までに全ての新車に、海外向けは翌2020年までに新車の90%に搭載する目標を掲げており、2017年には、トヨタ自動車やマツダ、SUBARUなどと非営利団体「SmartDeviceLinkコンソーシアム」の設立を発表している。コンソーシアムは、スマートフォン用アプリ開発に用いるオープンソースソフトウェアの管理を担う。車内アプリの業界標準化を目指す狙いもありそうだ。

また、中国の電子商取引(EC)大手アリババ・グループとも戦略的提携を交わしており、ECやクラウド、コネクティビティの分野などで協業の可能性を探ることとしている。

具体的には、オペレーティングシステムを開発する「AliOS」、クラウドコンピューティングプラットフォームを手掛ける「Alibaba Cloud」、デジタルマーケティング部門の「Alimama」、B2Cショッピングサイト「Tmall」の4つのアリババの事業部門と協力し、これらの分野とAI(人工知能)、IoTなどの可能性を中国市場で探ることとしている。

【参考】アリババとの提携については「自動運転分野、日本や海外の「IT系×自動車メーカー」重要提携まとめ」も参照。

フォードのADAS(先進運転支援システム)

レーダーとカメラで衝突リスクを検知し自動ブレーキをかける歩行者認識機能付きプリクラッシュアシストを2014年に一部モデルに採用し、その後搭載車種を増やしている。このほかにも、アダプティブクルーズコントロールやレーンキープアシスト、前後の障害物を知らせるフロント&リバースセンシングシステム、エンハンスドアクティブパークアシストなども実用化済みだ。

■フォードの自動運転に関する関連ニュース
ウォルマートと自動運転宅配サービス実証へ

米小売サービス企業最大手のウォルマートなどと共同で、自動運転車を使った商品の宅配サービスに関する実証実験を行うことが2018年11月18日までに明らかになった。

実験は、フォードが自動運転の走行テストを実施しているフロリダ州マイアミで行う。食品宅配サービスを手掛ける米スタートアップのポストメイツも参加するという。実証実験で得られたデータを効率的な宅配サービスの設計に役立てるものとみられる。

【参考】ウォルマートとの実証実験については「米フォードの自動運転車、小売大手ウォルマートの商品宅配 実証実験を実施へ」も参照。

自動運転車と歩行者の意思疎通規格の統一化を呼びかけ

完全運転自動車のAIの「意図」を歩行者などに伝えるため、光の動きや点灯を使った「サイン」の規格を世界で共通化させようと、フォードが他メーカーなどに呼び掛けている。

自動運転レベル4(高度運転自動化)以上の場合、運転に人が関与しないため、AIと人の何らかの「意思疎通」の方法を模索しなければならず、各社が別々の「サイン」を考案すると歩行者の混乱につながると考え、完全自動車が実用化する前に今回の呼びかけを行った形だ。

こうしたサインはアメリカ国内だけではなく、世界共通のサインにした方が良いとも考えられ、どの国のメーカーなどを問わずに提案をしていくものとみられる。

【参考】自動運転AIと歩行者の意思疎通規格については「自動運転AIと歩行者の「意思疎通」規格、米フォードが統一化へ連携呼び掛け」も参照。

ワシントンで初の自動運転実証実験実施へ

2018年10月24日までに、アメリカの首都ワシントンで自動運転の実証実験を開始すると発表した。ワシントンでの自動運転車両の実証実験としては初のケースとなる見込み。実用化に向け取り組みを加速している。

【参考】ワシントンでの実証実験については「米フォード、首都ワシントンで初の自動運転実証実験を実施へ」も参照。

■スタートアップの技術吸収しGMらを追い上げる

自動運転分野に関しどっしりと腰を据えていたイメージが強かったフォードだが、近年は明らかに取り組みを加速している姿が見て取れる。

絶対的なライバルであるゼネラル・モーターズ(GM)や新興勢力のWaymoは2018、2019年にも自動運転レベル4の実用化を計画しており、開発の遅れから水をあけられた事実は否めない。

巻き返しに向け、スタートアップの革新的技術を積極的に取り入れながらゼネラル・モーターズなどを追う格好となっているが、自動運転レベル3やレベル4はまだ次世代の入り口に過ぎない。自動車業界の大変革時代は幕を開けたばかり。覇権争いはしばらく続くものと思われる。







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