ダイムラーの自動運転戦略まとめ 計画や提携状況を解説

2020年代初めにもレベル4実現へ



ドイツのシュトゥットガルトを本拠地とする自動車メーカーのDaimler AG(ダイムラー)。メルセデスベンツや世界販売最大手のトラック部門などを抱え、日本国内においては三菱ふそうを傘下に収めている。


歴史に裏付けられた堅実な自動車づくりに取り組んでいるイメージが強いが、自動車業界全体が大変革のときを迎えている今、ダイムラーはどのような戦略で新たな時代に挑むのか。自動運転開発やMaaS(Mobility as a Service)の取り組みなど、その動きを追ってみよう。

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■自動運転に関する計画やロードマップ
CASE戦略でモビリティサービス会社へ

2016年のパリモーターショーにおいて中長期戦略を発表したダイムラー。その戦略は「CASE」という4文字に込められている。CASEは、Connected(コネクテッド)、Autonomous(自動運転)、Shared & Services(カーシェアリングとサービス)、Electric(電気自動車)の頭文字をとったもので、この4つのテーマの最適な組み合わせを実現することで、従来の自動車メーカーからモビリティサービスのプロバイダーへの変身を目指すこととしている。

EV(電気自動車)については、乗用車、トラック、バン、バスを含め2022年までに少なくとも10種類の完全電気モデルを導入する。

ボッシュと強力タッグで自動運転レベル4実用化へ

自動運転に関しては、独自動車部品メーカーのBOSCH(ボッシュ)社と2017年4月に提携を発表しており、自動運転システムのためのソフトウェアとアルゴリズムの共同開発を行っている。両社は、ドライバーの操作が不要な自動運転レベル4相当の完全自動運転車を2020年代初めまでに市場導入することを目指すほか、市街地の走行が可能な「自動運転タクシー」のためのシステムの開発と量産準備も進めることとしている。


2018年7月には、米エヌビディア(NVIDIA)社のAIプラットフォーム「Drive Pegasus」を採用すると発表。また、最初のテストフリートの実証実験場所として米カリフォルニア州を選び、2019年の下半期に、同州の主要都市において特定のルートで自動運転車両によるシャトルサービスを提供開始予定としている。

最初のプロジェクトでは、カーシェアリング(car2go)、配車サービス(mytaxi)、マルチモーダルプラットフォーム(moovel)などのモビリティサービスを結び付け、未来のモビリティ形成に向けた実証を行うこととしている。

【参考】ボッシュとの取り組みについては「ボッシュ&ダイムラー、エヌビディアAIで自動運転実験へ 米シリコンバレーで」も参照。

中国ではアポロ計画のもと自動運転開発 百度とコネクテッドサービス提携も

中国インターネット検索最大手の百度(バイドゥ)が進める自動運転システムの開発連合「アポロ計画」に参加しており、2018年7月には百度と自動運転とコネクテッドカーに関する戦略的提携を強化すると発表しており、百度のコネクテッドサービスを、メルセデスベンツのインフォテインメントシステムに統合することで合意している。

■ダイムラーの自動運転関連ニュース
ボッシュと自動バレットパーキング技術を開発

ダイムラーとボッシュは、2015年6月から駐車場内における自動駐車のパイロットプロジェクトを開始しており、2017年7月には独シュトゥットガルトにあるメルセデス・ベンツ博物館の駐車場で、実生活環境下における自動バレットパーキング技術を初公開した。

駐車場インフラから発信されるコマンドを車両側が受信することで、ドライバーは車両の動きを監視せずスマートフォンから駐車の指示を出すだけで、所定の駐車スペースに車両を自動的に駐車することができるシステムだ。

都市における自動運転技術の実用化プロジェクト「@CITY」に参加

ドイツ政府支援のもと、都市環境において自動運転技術の研究や実用化を目指す「@CITY」プロジェクトにダイムラーも参加しており、2018年8月に実働を始めたようだ。

プロジェクトにはダイムラーのほか、アウディやコンチネンタル、ボッシュ、ヴァレオ、ZF、ドイツ航空宇宙センター、ミュンヘン工科大学など15の企業や大学などが参加しており、技術やコンセプト、アプリケーション開発などを行う「@CITY」を2021年8月まで、それを自動運転機能に落とし込み実用化を図る「@CITY‐AF」を2022年6月まで共同で行うこととしている。

BMWグループとモビリティ・サービスの統合に合意

2018年3月、BMWグループとダイムラーAGは、持続可能なアーバン・モビリティ・サービスの提供に向けて協力体制を構築していくことを発表した。共同出資会社を立ち上げ、カーシェアリングやライドシェアリング、パーキング、チャージング(充電)、マルチモダリティ(多様式)などの各分野における既存のオンデマンド・モビリティ・サービスを組み合わせ、戦略的に展開する予定としている。

モビリティサービス会社へ MaaS分野着実に前進

ダイムラーは2018年7月、カーシェアリングを手掛ける子会社「car2go」の上半期における利用実績が約330万に達したと発表。また、同年8月には同社のモビリティサービス「moovel」の利用者が全世界で500万人に到達したことも発表している。

同年5月には、エストニアのライドシェア企業Taxify(タクシファイ)に資本参加することが明らかになっているほか、同年10月にも、中国自動車大手の浙江吉利控股集団と配車サービスの展開に向け合弁会社設立の交渉に入ったことが報じられている。

MaaS(Mobility as a Service)分野の強化は今後も続くものとみられる。

【参考】taxifyへの資本参加については「独ダイムラー、ウーバー競合のtaxifyに資本参加 ライドシェア投資加速」も参照。

■傘下の三菱ふそうの動き

ダイムラーの連結子会社である三菱ふそうは、2019年末までに自動運転レベル2の大型トラックを発売することを発表している。ダイムラー社と共同開発した最新技術を活用した新機能で、メルセデス・ベンツブランドの大型トラック「アクトロス」に搭載される技術を共用する。

同社の社長兼最高経営責任者(CEO)のハートムット・シック氏は今後について、自動運転レベル3(条件付き運転自動化)を飛び越して自動運転レベル4(高度運転自動化)の技術開発に向けてダイムラー社と話を進めているとしており、2025年にも高速道路などに限定した完全自動運転トラックを実用化する構えだ。

このほか、電気トラックの先駆的メーカーとしても知られる同社は、小型電気トラック「eCanter」に続き2019年にも大型電気トラック「E-FUSO Vision One」をデビューさせる予定だ。

【参考】三菱ふそうの自動運転開発については「自動運転トラックの開発状況&企業まとめ 利点は? 実現はいつごろ?」も参照。

■ダイムラーは「CASE」の生みの親 4テーマの融合がカギ

自動車業界に浸透しつつある「CASE」という造語を生み出したダイムラー。コネクテッド化や自動運転、移動のサービス化、電化といった潮流は見事に業界全体の動きを象徴している。

ダイムラーはこの4つのテーマそれぞれで確実に進展を図っており、これらが融合を果たしたとき、従来の自動車会社から進化した新たな事業体が世界に提示され、業界の構図が次々と塗り替えられていくのだろう。


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