自動運転の技術は自家用車のみではなく、商用車・トラックなどの物流分野においても研究開発が進められており、市販トラックは自動運転レベル2(部分運転自動化)の導入が2018〜2019年にも始まる。
また、トラックの隊列走行の実証実験なども本格化しており、官民ITS構想・ロードマップによると、2020年に新東名高速道路における後続車無人隊列走行技術の実現を目指すこととし、限定地域における無人自動運転配送サービスの実現も視野に入れている。
物流分野において、自動運転がもたらすメリットにはどのようなものがあるのか。自動運転トラックの開発状況はどのレベルまで達しているのか。今回はトラックにスポットを当て、自動運転の効用や現状を探ってみる。
■自動運転トラックが実現すると良い点
ドライバーの人手不足解消
ドライバー不足が深刻な問題となっている物流業において、ドライバーを必要としない自動運転車は救世主になるかもしれない。もちろん、荷物の積み下ろし作業などの課題は残るが、大幅に人件費を下げることが可能になり、ひいては輸送コストの低減がサービスの向上につながっていくことも考えられる。
効率的な配送の実現
ドライバーを必要としない自動運転トラックは「睡眠」の必要もなく、給油やメンテナンスをしっかりしていれば一台当たりの稼働時間を大幅に伸ばすことが可能になる。走行速度など一定の環境下で運行するため、輸送時間も安定し、燃料費も抑えられる可能性が高い。
大事故の減少
大型トラックが事故を起こした際、それが大事故に直結するのは言うまでもないことだ。自動運転により事故が減少すれば、凄惨な交通事故も当然減少し、道路交通の安全性が一層高まる。
過疎地域における配送サービスの向上
著しく人口密度の低い地域では、都市部に比べ配送頻度は低い。こういった場面において、小型の自動運転トラックが配送を行うことで安定した物流サービスを提供できる。
■各企業の自動運転トラック開発状況
日野自動車:フォルクスワーゲンと協力関係構築
車両安定制御システムや歩行者検知機能付き衝突被害軽減ブレーキなどをすでに実用化しており、現在はドライバー異常時対応システムやトラック隊列走行の技術確立に向け開発を進めている。
2018年4月には独フォルクスワーゲングループのバス・トラック部門と戦略的協力関係の構築に向けた合意を交わし、既存の内燃パワートレーンやハイブリッド、電動パワートレーンをはじめ、コネクティビティー、自動運転システムなどを含む技術領域で、両者の強みを生かせる協力体制の構築を目指す。
【参考】日野とVWの協力体制については「日野とVWが戦略的協力関係構築へ合意 「自動運転×商用車」の将来性も見据え|自動運転ラボ」も参照。
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— 自動運転ラボ (@jidountenlab) June 10, 2018
いすゞ自動車:日野と共同開発 独自技術のVATやAEBSなど標準搭載進める
プリクラッシュブレーキや車線逸脱警報、ミリ波車間ウォーニングを備えた先進視覚サポート技術「VAT」を、大型トラック「ギガ」シリーズに続きカーゴ系主要車型に標準装備しているほか、歩行者に対応した衝突被害軽減制動制御装置(AEBS)を2018年中に小型トラックELFに搭載する予定。
コネクテッド分野では、情報通信による遠隔モニタリングを実用化しており、稼動している車両の状況把握を可能としている。
2016年には、日野自動車と自動走行・高度運転支援に向けたITS技術の共同開発を行うことに合意し、視界支援、路車間通信、加減速支援、プラットホーム正着制御の4つの技術を開発しており、2018年以降順次実用化を進めていく方針だ。
三菱ふそうトラック・バス:2019年末までにレベル2トラックを市場へ
ドイツの自動車会社ダイムラーの連結子会社である三菱ふそうは、2019年末までに自動運転レベル2の大型トラックを発売することを発表している。
ダイムラー社と共同開発した最新技術を活用した新機能で、メルセデス・ベンツブランドの大型トラック「アクトロス」に搭載される技術を共用しており、あらゆる速度域でブレーキ、アクセル、ステアリングを制御する「アクティブ・ドライブ・アシスト」(ADA)」、前走車を含む前方の障害物へ衝突が差し迫った場合、必要に応じて自動フルブレーキを作動する「アクティブ・ブレーキ・アシスト5(ABA5)」を搭載する。
各種報道によると、社長兼最高経営責任者(CEO)のハートムット・シック氏は今後について、人が緊急時は運転を担う自動運転レベル3(条件付き運転自動化)を飛び越し、走行領域は限られるが人が運転に関与しなくなる自動運転レベル4(高度運転自動化)の技術開発に向けてダイムラー社と話を進めており、2025年にも高速道路などに限定した完全自動運転トラックを実用化する構えだ。
なお、ダイムラーも量産トラックとしては世界初となるレベル2搭載の大型トラックの受注を2018年9月に開始しており、2025年までのレベル4実現を目指すこととしている。
【参考】三菱ふそうの戦略については「三菱ふそう2019年中に自動運転レベル2導入 その後はレベル4へ「飛び級」|自動運転ラボ」も参照。
自動運転の波がついに…レベル2技術を大型電気自動車トラックに搭載 三菱ふそうトラック・バス|自動運転ラボ https://t.co/RWm8kGNwxM @jidountenlab #三菱ふそう #自動運転 #トラック
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UDトラックス:2030年に完全自動運転と大型フル電動トラック量産化へ
スウェーデンの自動車メーカーボルボの子会社であるUDトラックスは、2018年4月に次世代技術ロードマップ「Fujin & Raijin(風神雷神)—ビジョン2030」を発表。自動化や電動化について、2020年にかけて特定用途で実用化し、これをベースに2030年に向けて完全自動運転と大型フル電動トラックの量産化を実現するとしている。
現在は、工場の構内や港湾など一定区域における安全な低速自動運転技術の開発や、高速道路での自動運転や協調型車間距離維持支援システム(CACC)によるトラックの隊列走行技術などの開発を進めている。
【参考】UDトラックスについては「UDトラックス社、2030年目途に完全自動運転や電動化実現へ|自動運転ラボ」も参照。
フォード:レベル4のコンセプトトラック発表
自動車メーカー大手の米フォードの商用車部門も、自動運転技術を搭載した電動大型トラックのコンセプト「ビジョン」を2018年に発表している。
自動運転レベル4の技術を搭載するほか、電動化、コネクテッド化、軽量化などに関して同社の将来像を表したものという。
テスラモーターズ:EVトレーラーでトラック事業参入か
テスラの第2世代の自動運転技術「エンハンスト オートパイロット」を搭載したEVセミトレーラートラックを、2019年に生産開始すると発表している。自動ブレーキ、車線維持システム、車線逸脱警報システムが装備されており、1度の充電で約800キロメートルの走行が可能という。
Kodiak Robotics:自動運転トラック開発に特化したスタートアップ
自動運転トラックの開発に尽力するスタートアップも存在する。米コディアック・ロボティクス社は、かつて米ライドシェア大手のUber社が買収した、自動運転トラック開発スタートアップOtto社の共同創業者であるドン・バーネット氏が立ち上げた会社だ。
2018年8月には4000万ドル(約44億円)の資金調達を発表しており、今後の動向に注目が集まりそうだ。
【参考】Uberのトラック事業撤退については「米ライドシェア大手ウーバー、AI自動運転トラックの開発終了 スタートアップ買収で2年前から推進|自動運転ラボ」も参照。
■トラックの自動運転レベル4実現は2024年以降?
官民ITS構想・ロードマップ2018では、2020年に新東名高速道路における後続車無人隊列走行技術の実現を目指すこととし、実証実験と並行して電子けん引の要件やインフラ面の事業環境の検討などを進めている。
一方、レベル4の自動運転トラックについては、2021年以降に自家用の自動運転車の技術の応用を進め、2024年度以降に高速道路において実現を目指すこととしている。配送サービスでは、早ければ2020年にも限定地域での無人自動運転配送を実現することとしている。
■自動運転レベル4はトラックにこそ最適?
限定区域において完全自動運転を実現するレベル4。一般の乗用目的の場合、「ここからここまで手動で運転して、ここから先は自動で—」といった運転方法は、長距離ドライブ以外ではそれほどメリットがないものと思われる。
しかし、長距離輸送の多いトラック配送においては、高速道路の移動中に仮眠をとるなど休憩をとることもでき、無人の場合にもインターチェンジでドライバーが待ち受け、無人トラックを引き継いでいくような使い方も可能になるかもしれない。
また、空港内などの限定地域におけるモノやヒトの輸送に効果を発揮するほか、過疎地域での物流や移動への活用にも期待が持たれている。
乗用車に比べ車体が大きく重いトラックを自動制御するのは困難かもしれないが、レベル4実用化のメリットを最も享受するのがトラックやバスに代表される物流や移動サービスではないだろうか。
【参考】自動運転レベル4については「自動運転レベル4の定義や導入状況を解説&まとめ 実現はいつから?|自動運転ラボ」も参照。
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— 自動運転ラボ (@jidountenlab) September 17, 2018