ボルボの自動運転戦略まとめ コネクテッドカーの開発状況は?トラック部門は?

乗用車は2021年にレベル4発売目標


出典:ボルボ社プレスリリース

スウェーデンを拠点とする自動車メーカーVOLVO(ボルボ)。創業以来安全性にこだわったクルマづくりに誇りを持っており、その精神は乗用車部門(ボルボカーズ)と商用車部門(ボルボグループ)に分かれた今なお両社に受け継がれている。

ボルボにとって自動運転技術の開発はあくまでも安全や快適さを提供するための手段であり、目的ではない。そんな同社の自動運転戦略はどのようなものなのか探ってみよう。







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■ボルボグループとボルボカーズの概要

ボルボは1926年、アッサール・ガブリエルソン、グスタフ・ラーソンらが大手ベアリングメーカーSKFの出資のもと、ヨーテボリにあった同社の工場の一棟を使って創業した。

翌1927年に「Jakob(ヤコブ)」の愛称で親しまれた初代ボルボ「ÖV4」の生産を開始し、1928年にはトラックの製造も開始。第二次世界大戦後の1946年に製造を開始した小型車「PV444」が世界一安全なファミリーカーなど高い評価を受け、同社の生産体制の本格化に大きく寄与した。乗用車やトラックをはじめ、航空機や船舶など次第に手を広げ、ボルボグループを形成していく。

1990年代、世界的な自動車業界の再編が進む中で、ボルボはグループ内の乗用車部門を米フォード社に売却し、フォード傘下の「ボルボカーズ」が誕生する。2010年には、経営危機を迎えたフォードがボルボカーズを中国の自動車メーカー浙江吉利控股集団(ジーリーホールディンググループ)に売却。ジーリーがボルボカーズを傘下に収めた。また、2017年にはジーリーがボルボグループの筆頭株主にもなっている。

現在乗用車を扱っているのはこのボルボカーズで、ボルボグループは主にトラックなどの商用車を扱っている。グループは2018年現在、ボルボ・トラックス、ルノー・トラックス、マック・トラックス、日本生まれのUDトラックス、船舶を扱うボルボ・ペンタ、テレックストラックス、プレヴォ、ノヴァバス、アルクス、SDLG、Eicher、東風トラックの12ブランドを扱っている。

■ボルボカーズの自動運転戦略
2021年に自動運転レベル実用化へ ヨーテボリで市民交えた大規模実証実験中

ボルボカーズは2021年までに不確実な自動運転レベル3(条件付き運転自動化)を飛び越し、自動運転レベル4(高度運転自動化)相当の完全自動運転車の発売を目指している。自動運転の実現に向け2013年に発表した「Drive Meプロジェクト」では、スウェーデン運輸管理局などの協力のもと、ヨーテボリ周辺の約50キロメートルの決められた道路で日常的な利用条件下で自動運転実験車を走らせる大規模実証実験を構想している。

【参考】自動運転レベルの定義については「自動運転レベル0〜5まで、6段階の技術到達度をまとめて解説」も参照。

自動運転機能「インテリセーフ・オートパイロット・テクノロジー」を搭載した100台のSUV(多目的スポーツ車)「XC90」をモニターとして市民らにリースし、高速道路や渋滞発生区間なども含む日常の交通環境下で走行することで、自動運転機能の検証をはじめ、自動運転が生活に及ぼす変化など、さまざまなデータをフィードバックする狙いがある。

自動運転システムの設計は完成しており、カメラ、レーザー、超音波センサーを組み合わせることで周囲360度を監視し、車載コンピューターネットワークが情報を処理する。高性能のGPSとクラウドベースの3Dデジタルマップにより走行環境の変化をリアルタイムで把握する。コンピューターやステアリング、センサーなどに故障が生じても、バックアップシステムが作動するという。

2017年までに100台の実験車両を走らせる当初予定より遅れが生じているが、2017年12月には2組の家族にXC90が納車された。自動運転技術は100%検証されておらず、ドライバーは車両の運転状況を監督する責任があるため、テストの初期段階では2組の家族は運転する際にステアリングホイールから手を放すことなく運転する。特別なトレーニングを経て、次第により先進的な運転支援機能を持った車が提供されていくという。

自動運転開発へ合弁会社設立 NVIDIAとの協業強化

2017年には、エアバッグなどの自動車安全部品を製造するスウェーデンのAutoliv(オートリブ)社と、自動運転や運転支援システムのソフトウェアを開発するための合弁会社「Zenuity」設立の最終合意文書に調印したことを発表。両社が持つADAS(先進運転支援システム)知的所有権の使用認可と譲渡を行い、これをベースに新しいADAS製品とAD(自動運転)テクノロジーを開発することとしている。

2017年11月には、ライドシェア大手のウーバーテクノロジーズ社へ数万台の自動運転対応車を販売することを発表した。ベース車両は、自社開発の完全モジュール方式「スケーラブル・プロダクト・アーキテクチャー(SPA)」に基づいて開発されたもので、同社のハイエンドモデルの90シリーズや新型XC60に使用されている。

ベース車両には、ウーバーが独自の自動運転テクノロジーを追加する際に必要なあらゆる安全技術やシステムの多重化技術、および中核技術が組み込まれており、2019年から2021年までに数万台車両を販売する方針。

2017年6月には、オートリブ社とともに半導体大手の米NVIDIA社と提携することを発表。NVIDIA社のAI車載コンピューティングプラットフォームを独自の先進ソフトウェア開発の基盤として使用し、自動運転車の先進システムとソフトウェア開発を進めていくこととした。

また、2018年10月には、NVIDIA社との協力関係を強化すると発表している。次世代のスケーラブル・プロダクト・アーキテクチャー2(SPA 2)プラットフォームを採用する新型車にNVIDIAの「DRIVE AGX Xavier」テクノロジーを実装することとし、高度なAI対応コア・コンピューターの開発を進めていく。新しいコア・コンピューターを搭載する最初のモデルは、2020年代初頭に導入する予定という。

Vision 2020 2020年までに交通事故死者ゼロ目指す

2020年までに、新しいボルボ車での交通事故死亡者や重傷者の数をゼロにするという目標を掲げている。実際に起きた衝突事故のデータを使い、徹底的な調査とテストを行うことで自社のクルマの安全性を高め、新しいモデルにはそれまでのクルマの開発で培われてきた貴重なノウハウをフィードバックさせている。また、安全な道路や交通インフラ作りにも協力している。

このビジョン達成のために必要となるのが次世代の自動運転技術で、その足掛かりとして開発した「パイロット・アシスト」を新型ボルボXC90に初めて搭載している。自動的に設定速度や前方車両との距離を維持するほか、ステアリングアシストにより車線内を走行するようにアシストする。

コネクテッド分野では、2017年5月にグーグル社との提携を発表しており、車内インフォテイメントシステムやコネクティビティの次世代システム開発に向け、アンドロイドをベースにした幅広いアプリやサービスへのアクセス提供を目指すこととしている。

また、試験運用プログラム「コネクテッド・セーフティ」を実施しており、各ボルボ車の情報をクラウドで共有し、道路上での安全強化を図っている。テスト車両には、凍結して滑りやすくなっている道路の情報を、近隣を走行している他のクルマや道路の安全管理者に送る「スリッパリー・ロード・アラート」機能や、近隣にいるハザードランプを点灯させた別のボルボ車の情報を知らせる「ハザード・ライト・ウォーニング」機能などを搭載している。

■ボルボグループ:ボルボトラックの自動運転戦略
自律運転トラック2019年にも本格運用

ボルボトラックが実用化しているADASには、前方車両との車間距離を自動で調整するアダプティブクルーズコントロールや、トラックが横滑りを始めた際などに車両の姿勢を立て直す姿勢制御補助装置、レーンキープサポートシステムなどがある。

自動運転に関するロードマップは不明だが、2018年9月に発表した自動運転EVトラックコンセプトカー「Vera(ベラ)」は、自動運転、電化、コネクティビティを組み合わせた運転席のない自律型トラックで、物流業務における最適なフローを提供できるという。

自車位置をセンチメートル単位で把握し、周囲のクルマと通信することで安全性を高める。各車両はコントロールセンターに接続されており、センターは輸送の進捗状況や車両の位置、バッテリーの充電量など、さまざまなパラメーターを正確に監視できるという。

また、2018年11月25日までに、ボルボトラックとしては初めて商用自動運転トラックの提供を行うことを発表した。提供先はノルウェーの鉱業企業で、自律走行する輸送サービスを提供する形式だ。

発表によれば、6台の自動運転トラックを提供し、作業を行う鉱山と近くの港を結ぶ5キロの距離を自動運転で走行するという。車両を販売するのではなく、運ぶ岩の重さに応じて料金を請求する形のようだ。

現在は安全管理のためドライバーが乗車しているが、本格運用を予定している2019年には無人による運搬サービスが実現する見込みだ。

■ボルボグループ:UDトラックスの自動運転戦略
2030年に完全自動運転と大型フル電動トラック量産化へ

UDトラックスは、次世代技術に関するロードマップ「Fujin & Raijin(風神雷神)—ビジョン2030」を2018年4月に発表。自動化や電動化について、2020年にかけて特定用途で実用化し、これをベースに2030年に向けて完全自動運転と大型フル電動トラックの量産化を実現するとしている。

自動運転に関しては、現在工場の構内や港湾などの一定区域における安全な低速自動運転技術を開発しているほか、高速道路での自動運転や協調型車間距離維持支援システム(CACC)によるトラックの隊列走行技術、長期的にはこれらをさらに進化させた一般道での高度自動運転の開発を進めている。

電動化では、エネルギー効率や積載量、航続距離、静粛性を最大限に確保したゼロエミッション大型トラックの実現に向けた技術開発に取り組んでおり、バッテリー技術が進化する中、バッテリー型電動トラック、パラレルやシリーズ型電動トラックなどの実験を行っている。

コネクティビティとデジタル化については、日本国内で販売する車両に搭載したテレマティクスシステム「UDインフォメーションサービス」を通じ、約4万5000台の車両から収集したデータを解析し、車両の稼働率向上に貢献しており、各車両の運転状況から収集したデータを、より安全で信頼性の高いトラックの開発に役立てている。

【参考】UDトラックスのロードマップについては「UDトラックス社、2030年目途に完全自動運転や電動化実現へ」も参照。

■交通事故死者ゼロに向けた自動運転開発という原点

ボルボカーズは2020年までにボルボ車による交通事故死亡者や重傷者の数をゼロにするという明確な目標を掲げ、その手段として自動運転の開発を進めていることがわかった。安全面を重視する姿勢は、自動運転開発の本来あるべき姿といえる。また、大規模実証実験「Drive Meプロジェクト」も、実際の道路交通環境下で一般ドライバーによる実証を行うことで、よりリアルな形で自動運転の成果や効能、課題を浮き彫りにすることができるだろう。

一方のボルボグループは傘下の各社で開発状況にばらつきがありそうだが、ボルボトラックやUDトラックスなど、着実に未来の自動運転時代を見据えた開発を行っているようだ。鉱山の採掘現場など特定環境下における無人運転トラックは、応用可能な水準が上がればトラック業界に変革をもたらすインパクトを発揮しそうだ。







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