トヨタのコネクテッドサービス「T-Connect」と「e-Palette」を完全解説

DCM標準搭載車種増加、コネクテッドアプリも続々登場





出典:トヨタ自動車プレスリリース

新型クラウンとカローラスポーツに車載通信機(DCM)を標準搭載し、2018年6月にコネクテッド事業を本格スタートさせたトヨタ自動車。あれから約1年が経過し、同社のコネクテッドサービスはどのように進化したのか。

各サービスを紹介し、トヨタのコネクテッド事業の「今」に迫るとともに、モビリティサービス提供会社を目指すトヨタにとって、コネクテッド事業がどのような位置付けにあるのかを調べてみた。







■トヨタのコネクテッドサービス利用方法

クルマがトヨタスマートセンターと通信でつながり、安心・安全、快適・便利なサービスを提供するサービス。クルマとドライバーが対話する新しい関係の構築や24時間365日オペレーターとつながる機能、スマートフォンのようにカーナビにアプリをインストールすることで機能を拡張できる機能など、さまざまなコンテンツが続々と誕生している。

コネクテッドサービスを使用するには「T-Connect」への申し込みが必要で、車載通信機DCM(Data Communication Module)を搭載するか、スマートフォン端末などからWi-FiテザリングかBluetooth接続することで利用できる。

DCMパッケージは、無料期間(初年度)経過後は年間1万2960円の利用料がかかる。スマートフォン利用の場合は、基本料金は各通信事業者・回線によって異なるが、概ねオプション対応か定額サービスの範囲内、もしくは月額540円で利用できる場合が多い。

T-Connect対応車種は、すべての新車に標準装備か販売店オプションで対応可能なようだが、一部車種ではスマートフォン接続には未対応などばらつきがあるため、個別にチェックすることをお勧めしたい。

【参考】トヨタのコネクテッド事業については「【決算深読み】トヨタのコネクテッド戦略「3つの顔」とは?」も参照。

■機能①ヘルプネット:事故発生時における緊急通報システム

事故発生時など有事の際に緊急通報するシステムで、ドライバーが場所を把握していないケースなどにボタン一つで位置情報などをオペレーターに送信できるワンタッチタイプと、エアバッグが作動した際に自動でオペレーターに通報するエアバッグ連動タイプがある。

この緊急通報を受けたオペレーターは、車載システムから会員情報や車両情報、緊急事態発生地点の地図などを把握し、ドライバーと音声通話で救援活動に必要な情報の確認を行う。また、必要に応じて救急機関への連絡も行う。

緊急通報の一機能「D-Call Net」は、交通事故発生時などに、衝突方向・衝撃度やシートベルトの着用有無などの車両データを活用して乗員の重症度を推定し、この重症度データを消防署やドクターヘリ基地病院に提供することによってドクターヘリやドクターカーの早期出動の判断を行い、交通事故から医師による治療開始までの時間を短縮し、救命率向上を目指すシステムだ。

■機能②マイカーSecurity:遠隔監視・通信でマイカーを見守る機能

「マイカーSecurity」は、離れた場所にあるマイカーを見守るシステムで、車両に搭載されたDCMにより、車両盗難などの異常察知や位置追跡などを行えるカーセキュリティサービスだ。

このサービスは合わせて6つの機能を備えている。例えば、ドアのこじ開けなどによりクルマのオートアラーム作動を検知した場合にメールや電話で通知するアラート通知機能、マイカーが盗難にあった際に要請に基づいてオペレーターが盗難車両の位置情報の追跡を行う車両の位置追跡機能、マイカーの盗難やオートアラームの作動を検知した際にエンジン停止を確認後、要請に基づいて警備員を現場に派遣し状況を報告する警備員の派遣機能がある。

そのほか、エンジン・ハイブリッドシステムの始動を検知して指定のメールアドレスに通知するエンジン始動通知機能、車内侵入などによりオートアラームの作動を検知した際に要請に基づいてエンジンの再始動やステアリングロックの解除を禁止するリモートイモビライザー機能、ドアロックやウィンドウの閉め忘れ、ハザードランプの消し忘れなどを検知してメールで通知するうっかり通知機能がある。

■機能③eケア:警告灯点灯時に適切なアドバイス

何らかの警告灯点灯時に、クルマから発信される情報をもとにオペレーターが適切なアドバイスを行ってくれるサービス。販売店にも状況を伝え、必要に応じて点検フォローも実施される。

このほか、警告灯点灯状態をはじめエンジンオイル量や電子キーのバッテリーなどについて、T-Connectアプリで確認するヘルスチェックレポート機能なども備えている。

■機能④ロードアシスト24:JAFに円滑に取り次ぎ

雪道でのスリップやガス欠、パンク、エンジン不始動など、思わぬ路上トラブルの際に、JAFの救援車両手配の取り次ぎサービスを受けることができる24時間有人対応のサービス。車両の位置情報をロードアシスト24デスクが把握し、土地勘のない場所でのトラブルにもスムーズに対応してくれる。

■機能⑤エージェント:音声認識システムでナビと会話

ナビに話しかけることで、エージェントが音声で応えて目的地や情報の検索をしてくれるサービス。目的地のセットまで全て音声で操作できる。指定した条件から目的地を絞り込んでいくことが可能で、「○○通り沿い」「駐車場付き」などの車での移動を考慮した検索もでき、検索結果にさらに重ねて条件をつけ加えることで目的の場所を見つけやすくしている。

このほか、ニュースや天気、取扱説明書の検索機能も備えている。エージェントでうまく認識できなかった言葉を解析・学習することで、音声認識システム自体も進化するという。

■機能⑥エージェント+:ルート予測など先読み情報を案内

高速道路走行中のクルマのふらつきを検知し、ナビ音声を使ってドライバーへ質問を投げかけるなど注意喚起を促し、事故を未然に防ぐ機能。ナビがドライバーと会話することで、集中力の低下したドライバーの意識を運転に戻す。

このほか、ビッグデータから今後の行先と走行ルートを予測し、カーナビの目的地が未設定でも自動で先読みし、ルート上の交通情報や天候・路面情報を知らせる機能も備えており、よく行く目的地の情報やこれから走行すると予測されるルートの交通情報、燃料残量を予測した給油情報、天気情報、おすすめスポット情報、新着ニュース、周辺のスリップ車両情報などの通知機能がある。

■機能⑦ハイブリッドナビ:リアルタイム情報分析で既存のナビゲーション機能を強化

トヨタスマートセンターで収集した、リアルタイムの走行情報やVICSなどの外部情報を組み合わせた膨大なデータを用いて、センター内に保有する地図データで最適なルートを探索し、従来の5ルートに加え新たなルートをナビに配信する。また、案内ルートを外れた時のリルートなど、素早い応答が必要な場合は、ルートの再探索をナビでの処理に切り替える。

■機能⑧マップオンデマンド:マップを最新状態に保つ機能

新しい道路情報をダウンロードし、ナビの地図データを3年間無料で更新できるサービス。高速・有料道路は最短即日(平均10日程度)で更新する。一般道路はデータ収集・整備後、順次配信する。

エンジン始動時や目的地設定時に自動でトヨタスマートセンターへアクセスし、面倒な操作なく自動更新する機能も有する。

なお、4年目以降の利用には、トヨタ販売店で最新版地図ソフトの購入が必要となる。2018年モデル販売店装着オプションナビの場合は、ナビ購入後3年の間に販売店で最新版地図ソフト(1回無償)で全地図更新することで、最長5年間無料でサービスを受けることができる。

■機能⑨Apps(アップス):ナビに好みのアプリを追加できる機能

T-Connect対応のカーナビを自分好みにカスタマイズできる機能。走行情報や車両位置などと連動したカーナビ専用のアプリで、好みのアプリをインストールすることでより便利に使用することができる。

アプリには、これまでの走行履歴から行き先や経路を予測し、事故・渋滞・天候・残燃料などの案内をナビ画面で知らせる「エージェント+」をはじめ、ナビ画面上にオービスの位置をアイコン表示し、自車がオービスアイコンに接近すると音声で知らせる「いつもNAVIスピード注意」、飲食店情報を発信するぐるなび提供のカーライフに役立つレストラン情報を検索・閲覧することができる「ぐるなび」などがある。

そのほか、入力したメンテナンス履歴や車から自動的に取得した走行履歴などを確認できる「マイカーログビューアー」、ブレーキのスムーズさを診断してポイント化する「停止の達人。」、仲間とコミュニケーションしながらドライブを楽しむ「コミュまっぷ」、ドライブシーンを自動で判断してそのシーンにマッチしたオリジナルミュージックを再生する「ドライブシンクロナイザー」など、さまざまな種類が用意されている。

■機能⑩LINEマイカーアカウント:LINEを介してナビ設定などできる機能

アプリ「LINE」に、愛車を友だちとして追加することで、LINEを通じてナビの目的地設定やガソリン残量確認などを確認することができるサービス。到着したい時間を伝えると、出発すべき時間を知らせる機能や、T-Connectと連携したアプリ呼び出し機能などもある。

【参考】トヨタのコネクテッドサービス実用化については「LINEから操作可能に!? トヨタカローラがコネクテッドカーに変貌」も参照。

■e-Paletteの概要

e-Palette(イーパレット)は、トヨタが2018年1月に米ラスベガスで開催された「CES 2018」で初公開したコンセプトカーだ。移動や物流、物販など多目的に活用できるモビリティサービスを目指したMaaS(Mobility as a Service:移動のサービス化)専用次世代EV(電気自動車)となっている。

Autonomous Vehicle(自動運転車)とMaaSを融合させた、トヨタによる自動運転車を利用したモビリティサービスを示す造語「Autono-MaaS」を具現化する存在として、電動化、コネクテッド化、自動運転化が図られている。

全長4800ミリ×全幅2000ミリ×全高2250ミリのサイズで、低床・箱型デザインにより広大な室内空間を確保している。荷室ユニット数に応じて全長4~7メートルほどの異なるサイズの車両を用意可能で、バリアフリーデザインによるフラットかつ広大な空間に、ライドシェアリング仕様をはじめホテル仕様、リテールショップ仕様といった、サービスパートナーの用途に応じた設備を搭載することができる。

MSPFを最大限生かすためのモデル

イーパレットは、トヨタがコネクテッド化を通じて2016年から構築を進めている多様なモビリティサービスとの接続機能を備えた統一プラットフォーム「モビリティサービス・プラットフォーム(MSPF)」を最大限生かすためのモデルであり、トヨタがモビリティサービス領域に軸足を移す象徴的モデルともいえる。

イーパレットの活用を通じて、トヨタはこれまで培ってきた車両制御インターフェースを自動運転キット開発会社に開示する。これにより、自動運転キット開発会社は、MSPF上で公開されたAPI(Application Program Interface:プログラミングの際に使用する関数)から開発に必要な車両状態や車両制御などを取得することができ、自動運転制御ソフトウェアやセンサー類など自社開発したキットを搭載することが可能になる。

車両情報を収集しTBDCに蓄積

また、車両に搭載されたDCM(データコミュニケーションモジュール)から車両情報を収集し、グローバル通信プラットフォームを介して、TBDC(TOYOTA Big Data Center)に蓄積する。その車両情報に基づいて、車両をリースや保険などの各種ファイナンスや、販売店と連携した高度な車両メンテナンスなどとあわせて提供するとともに、MSPF上で、車両状態や動態管理などサービス事業者が必要とするAPI(Application Program Interface:プログラミングの際に使用する関数)を公開する。

さらに、自動運転キット開発会社が、自動運転キットの利用やソフトウェアのメンテナンス更新といった自動運転に関するモビリティサービスをMSPF上で提供することで、サービス事業者は安全なモビリティを利用することができ、自ら自動運転キットを選ぶこともできるという。

イーパレットにより、自動運転技術の柔軟な運用と利用者による多角的なサービスの両立を図るような仕組みだ。

e-Paletteを活用した取り組み

より実用性の高い車両仕様の検討や、イーパレットを活用した新たなモビリティサービスを実現するMSPFの構築を推進するため、初期パートナーとして有力各社とアライアンスを締結している。

モビリティサービスパートナーとして、米EC大手のAmazon.com(アマゾン)、中国ライドシェア大手のDidi Chuxing(ディディ)、米ファストフードチェーン大手のPizza Hut(ピザハット)、米ウーバーが参加するほか、技術パートナーとしてディディとマツダ、ウーバーがそれぞれ参加し、サービスの企画段階から実験車両による実証事業に至るまで共同して進めていくこととなっている。

具体的な取り組みについては、2019年6月時点で公式発表はないものの、例えばアマゾンやピザハットは配送・配達での利活用、ディディやウーバーは配車プラットフォームとの連携や新たな移動サービスにおける利活用などが予想される。

また、新しいモビリティサービスの構築に向け、2018年10月に発表したソフトバンクとの合弁会社「MONET Technologies(モネ・テクノロジーズ)」や、2019年5月に発表したパナソニックとの合弁会社「プライム・ライフ・テクノロジーズ株式会社」でも、イーパレットの活用に期待が持たれる。

モネ・テクノロジーズはオンデマンドモビリティサービスやデータ解析サービス、Autono-MaaS事業を手掛けていくこととしており、2018年度内にオンデマンドモビリティサービス領域において自治体や企業と連携した「地域連携型オンデマンド交通」や「企業向けシャトルサービス」の実施に向け始動したほか、2020年代半ばまでにイーパレットによるAutono-MaaS事業を展開することとしている。

プライム・ライフ・テクノロジーズは、人々の暮らしを支える全てのモノやサービスが情報でつながり、クルマを含めたまち全体、社会全体という大きな視野で考える「コネクテッド・シティ」構想に基づくもので、トヨタが進めるモビリティサービスへの取り組みと、パナソニックが進める「くらし」のアップデートへの取り組みを融合させながら、まち全体で新たな価値の創出を目指すこととしている。

この取り組みの中においても、イーパレットの活躍が想定されるところだ

【参考】プライム・ライフ・テクノロジーズについては「トヨタとパナソニック、街づくり事業で合弁会社 CASEやIoT、MaaSの進展見据え」も参照。

なお、イーパレットは、トヨタがワールドワイドパートナーを務める東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会において、選手村での選手や大会関係者の移動に活用される予定だ。

■【まとめ】モビリティサービス会社への進化のカギを握るコネクテッド事業

トヨタの販売車両においてユーザー向けに提供されるコネクテッドサービスが「T-Connect」で、今後、カーナビにアプリを追加するような方式で機能の拡張を図るなど、スマートフォンの進化同様アプリ追加方式によってコネクテッドサービスが大幅に進化していく可能性が高そうだ。

一方、MSPFはモビリティサービス全体を見据えた取り組みであり、モビリティ全般に関わるあらゆる情報や技術が蓄積されるプラットフォームに進化していくイメージだ。この進化の過程に、イーパレットなどが活躍することになるのだろう。

トヨタにおけるコネクテッドサービスは、個々のユーザーにサービスを提供するだけでなく、さまざまなモビリティサービスが実現する未来を見通した一大事業なのだ。

【参考】関連記事としては「コネクテッドカー・つながるクルマとは? 意味や仕組みや定義は?」も参照。トヨタのコネクテッド事業については「【決算深読み】トヨタのコネクテッド戦略「3つの顔」とは?」も参照。







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