自動運転、テスラの戦略まとめ スマート・サモン機能導入!ロボタクシー構想も

完全自動運転、FSDで2020年末にも実現





出典:テスラプレスキット

EV(電気自動車)大手で先進的な自動運転機能を次々と発表する米Tesla(テスラ)。イーロン・マスクCEOのビッグマウスに呼応するかのように、数々のトラブルを巻き起こしながらもしっかりと業界における存在感を高めている。

そんな話題に尽きない同社の最新動向をまとめてみた。







■テスラの自動運転機能について
アップデートで進化するオートパイロット

テスラは、すべての新車にオートパイロット機能や将来利用可能となる完全自動運転に対応した先進のハードウェアを標準装備し、無線通信でソフトウェアを更新するOTA技術によって自動運転システムをアップグレードする手法を採用している。

ドライバーの監視を必要としない高度な自動運転機能を実現するには、何百万キロにもおよぶ走行経験に裏打ちされた人間のドライバーを超える信頼性を習得する必要がある。また、規制当局による認可も必要で、国や地域によっては長い時間がかかることが予測される。

こうした過程を経て自動運転機能の進化が実現するのに合わせ、ワイヤレスによるソフトウェアアップデートを通じて各車両を継続的にアップグレードすることで、顧客は常に最新の自動運転技術を利用することができるのだ。

現在のテスラの自動運転システム(ADAS/先進運転支援システム)「オートパイロット」は、同一車線内でステアリング操作や加減速を自動的に行う自動運転レベル2相当の技術が搭載されており、標準安全機能としては、自動緊急ブレーキや正面衝突警報、側方衝突警報、オートハイビームなどを搭載している。

ハード面では、搭載する8台のサラウンドカメラが360度の視界を確保し、前方最長250メートル、後方最長100メートル先までを視認することができる。アップデートされた12個の超音波センサーがカメラの視界を補完するほか、最先端のプロセッシング技術を採用したフォワードフェーシングレーダーがさらなる情報を認識し、豪雨や霧、塵や前方を走るクルマを見通す。

これらのハードウェアから得られるすべてのデータを解析するため、以前の40倍以上の処理能力を持つ車載コンピューターが各ソフトウェア用のニューラルネットを管理している。

2018年に追加リリースした「ナビゲート・オン・オートパイロット」では、目的地までのルートを最適化する車線変更を可能にした。この機能により、設定した目的地に応じて高速道路のインターチェンジの通過や乗り降りなどのステアリング操作が自動で行われるようになった。

FSD(Full Self Driving)、完全自動運転を2020年末に実現

テスラはもともと半導体分野でイスラエルのモービルアイと提携していたが、2016年5月のテスラ車事故をきっかけに決裂し、以後は米NVIDIAとの提携を深めながらAI(人工知能)の自社開発を加速化してきた。

2018年には、独自の自動運転用AIチップの開発・生産について正式発表し、2019年4月、投資家向けの技術説明会で満を持して完全自動運転向けのプロセッサ「Dual Redundant FSD Computer(FSD)」を発表した。

このプロセッサをボード上に2つ配置することで冗長性を確保し、従来品の21倍のパフォーマンスを発揮できるという。マスク氏は「このコンピューターを搭載したテスラ車のソフトウェアをアップデートすることで、完全な自動運転を達成できる」と話している。

マスク氏は以前から「完全自動運転(Full Self Driving)を実現する」と豪語し、その時期について言及しつつも先延ばしに――といったことが続いていたが、ついに現実味を帯びてきたようだ。最新の公約では、2019年末にも自動運転を完成し、2020年末に実現させるとしている。

なお、FSDはすでにModel 2やModel X、Model 3への搭載が始まっている。その後も、完全な実用化が始まっていない機能ながら自動運転オプションとして複数回にわたり値上げが発表されている。

■テスラの自動運転機能、Smart Summonについて

テスラは2019年9月に実施した最新のアップデートで「Smart Summon(スマート・サモン)」機能を追加した。駐車場に停めたテスラ車を自分のもとまで呼び寄せる自動運転技術で、大きな注目を集めている。

駐車場内や私道など公道以外で、目視可能な200フィート(約61メートル)に自車がある場合にスマートフォンのアプリで自車を「Summon(召喚する)」、つまり呼び寄せることができる機能だ。

SNS上にはさっそく新機能を試した映像などが次々とアップされ、話題となっている。一方で、説明書に沿った使用方法を守らないオーナーなどが接触事故を起こした映像なども数々アップされており、さまざまな議論を巻き起こしているようだ。

スマート・サモン機能は車載ソフトウェアの更新によって一部の顧客向けに提供されており、現時点では実用実証的な段階だが、改良を重ねて信頼性を高めることで、インフラ協調を必要としない駐車場内における自動運転レベル4技術としての道が開けそうだ。

■テスラのロボタクシー構想

マスク氏が2019年4月、FSDとともに発表したのが「Robotaxi(ロボタクシー)」構想だ。FSDを搭載した完全自動運転車をリース契約したオーナーが、マイカーを使用しない時間帯に「ロボタクシー」として利用できる新たなビジネスモデルだ。

オーナーは、テスラの配車サービスプラットフォーム「TESLA NETWORK(テスラネットワーク)」に登録することでロボタクシー事業を行うことができ、運賃を稼ぐことで高価格の車両代(リース代)の一部を賄うことも可能になる。

テスラの試算によると、1マイル(1.6キロメートル)あたり0.65ドル(約71円)を得ることができ、9万マイル(約14万5000キロメートル)走行すれば3万ドル(約330万円)得ることができるという。事故の際の責任はテスラが負い、リース契約終了後は車両をテスラに返却する必要がある。

自動運転レベル4以上の完全自動運転車は、価格や機能制限などを理由に当面は自動運転タクシーやバスといった商業車用途が大半を占めることが想定されるが、これを個人向けの乗用車に結び付けることでより多くの需要を生み出すことができ、また公道を走行する多くの自動運転車からフィードバックされた大量のデータをもとに解析能力などをより高め、自動運転システムをより進化させていくことも可能になる。

マスク氏は「2020年半ばまでに完全な自動運転車を100万台以上生産する」としており、この計画が予定通り進めば2020年末にも自動運転の実用化を達成できる公算だ。

【参考】テスラのロボタクシー構想については「米テスラ、2020年に100万台規模で自動運転タクシー事業」も参照。

■テスラの自動運転に関するトピックス
スタートアップのDeepScale買収

テスラが自動運転スタートアップの米DeepScaleを買収したことが2019年10月までに明らかになった。米CNBCなどが報じている。

公式アナウンスは出されていないものの、DeepScaleの創業者でCEOを務めるForrest Iandola氏がSNSで「テスラのチームに加わった」と記しており、信ぴょう性は高いようだ。

DeepScaleはAIを活用した認識技術が武器で、メーカーへのライセンス供与などを手掛けている。テスラはこうした技術を取り込み、自社の自動運転技術の高度化を図っていくものと思われる。

オートパイロットがカモの親子をとっさに回避

ネット上を騒がせるのはマスク氏だけではないようだ。ニュージーランド国内で、オートパイロットで走行中のModel 3が道路上を横断するカモの親子を発見し、とっさにかわす動画がアップされ話題となっている。

道路上を走行するModel 3が緩い右カーブに差し掛かった際、道路とほぼ同色のカモの一団が左側から道路を横断しており、Model 3はとっさに対向車線を縫って回避した。人の目でも一瞬では判別できそうもないシチュエーションで、同社の自動運転機能を賞賛する声が多く上がっている。(カモをかわすシーンは動画の6〜7秒目あたり)

上海のギガ・ファクトリー稼働へ ベルリンでも計画進む

生産体制の増強を進めるテスラは2019年10月、中国・上海で建設を進めていたEVの新工場を予定より前倒しして稼働させたことを発表した。年間15万台規模の生産能力とみられる。

また、同年11月には、ドイツ・ベルリンの工場に40億ユーロ(約4800億円)を投資する計画なども明らかになった。こちらも15万台規模の生産を予定しており、同社の「ギガ・ファクトリー」としては4カ所目にあたる。

ハンズオフ運転やレベル3の教訓生むテスラの事故

テスラ車のオーナーがオートパイロットを作動中に引き起こした事故は、近い将来世界各地で実現するだろう自動運転レベル3への教訓を含んでいる。

2016年5月7日、オートパイロットを作動させた「Model S」のドライバーが米フロリダ州の中央分離帯のあるハイウェイを運転中、前を横切った大型トレーラーの側面に衝突し死亡する事故が発生した。ドライバーは、システムから発されたハンドリングの要請を無視していた。

2018年3月23日には、オートパイロットを作動させた「Model X」のドライバーが米西部カリフォルニア州の高速道路を運転中、中央分離帯に衝突・炎上し死亡する事故が発生した。システムからのハンドリング警告はたびたび発せられていたが、その都度ドライバーはハンドルを握っていたが、衝突の6秒前に発せられた警告には従っていなかったようだ。

テスラ側がドライバーの過失を主張する一方、遺族側はシステムの異常を主張し、2019年5月に提訴している。

こうした問題は、ハンズオフ運転を可能とする高度なレベル2やレベル3の実用化に際し頻発する重要な課題とされており、システムの警告に従わない場合は車両を自動で停止する機能を義務化するなど、安全対策が求められている。

【参考】テスラ車の交通事故については「テスラ自動運転車の交通事故・死亡事故まとめ 原因や責任は?」も参照。

日本ではEVとして注目?

日本国内では、EVとしてのテスラが話題となった。2019年7月に千葉県市川市の村越祐民市長が市の公用車としてModel Xを導入したところ、高額過ぎると批判が相次ぎ、市議会も紛糾した。

村越市長は「環境保護に取り組む姿勢をアピールできる」として、国産公用車との差額分を自ら支払う提案などを表明していたが、同年11月にリース契約を解除したと発表した。

約1100万円という車両価格が公用車に適しているか、という点でやはり批判を避けきることはできなかったが、本格EVが低調な日本市場において、テスラとしては一種のプロモーションになったかもしれない。

■【まとめ】テスラ版CASE戦略進む 世界規模の自動車メーカーへ躍進

自動運転システムとEVに注目が集まるテスラだが、OTAを生かしたコネクテッド技術や、ロボタクシー構想に代表される将来的なシェアビジネスなども今後注目度が高まりそうで、必然的にテスラの「CASE(コネクテッド、自動運転、シェア・サービス、電動化)」戦略が着々と進んでいる印象だ。

車両の生産体制も着々と進んでおり、数年以内に年間販売台数100万台をクリアする可能性も高まってきた。一般的に自動運転機能は、実際に走行する各車両から集められたデータ数に比例して伸びていくため、生産・販売台数の増加が同社の経営とともに自動運転車の進化を支えていく基盤となる。

株式上場後も長らくスタートアップ気質が続いていた同社だが、ついに世界的な自動車メーカーとして花を咲かせる段階に来たようだ。

【参考】関連記事としては「自動運転、ゼロから分かる4万字まとめ」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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