トヨタ「LQ」を徹底解説!自動運転時代の愛車に

AIエージェント「YUI」が人とクルマをつなぐ





出典:トヨタプレスリリース

2年に1度開催される国内最大の自動車見本市「東京モーターショー2019」の会期が迫り、各社の出展内容が徐々に明らかになってきた。

注目のトヨタ自動車は2019年10月11日、最新の自動運転コンセプトカー「LQ」の出展を発表した。「TOYOTA Concept-愛i」を受け継ぐ未来志向型のコンセプトカーで、2020年の東京オリンピック・パラリンピックの時期には移動体験イベントも開催するようだ。







今回は、「クルマと人」「クルマと社会」の新しい関係を提案するコンセプトカーLQについて、搭載技術などを解説しその全貌を明らかにしていこう。

■LQの概要:レベル4技術や自動バレーパーキングシステム搭載

LQは、AI(人工知能)や自動運転など、人に寄り添う新しいテクノロジーによって「新しい時代の愛車」を具現化したトヨタ最新のコンセプトカー。東京モーターショー2019のMEGA WEB会場で10月24日から11月4日までの12日間にわたり開催される「FUTURE EXPO」に出展する。

【参考】「FUTURE EXPO」は東京モーターショー2019における一つのエリアで、NTTやパナソニック、NEC、富士通をはじめとするオリンピック・パラリンピック等経済界協議会の企業など、約60社の企業・団体の最新技術が集結したブースとなっている。詳細は「公式サイト」で。

2017年1月に米ラスベガスで開催されたCES2017に出展した「TOYOTA Concept-愛i」で表現した未来の愛車体験コンセプトを忠実に実現したもので、米国でAIや自動運転・ロボティクスなどの研究開発を行うToyota Research Instituteと共同開発したAIエージェント「YUI」や自動運転機能を搭載している。

開発テーマは「LEARN(理解し)、GROW(ともに成長して)、LOVE(パートナーとなる)」で、一人ひとりの嗜好や状態に合わせた移動体験の提供を通じて、時間とともにより愛着を感じられるモビリティを目指したという。LQという車名には「新しい時代の愛車(Beloved Car)を提案するきっかけ(Q/Cue)になれば」との想いが込められている。

開発には約400人ものエンジニアが関わっており、パーツ数は2万以上に上るという。五感フィードバック機能を備えており、乗客の表情やAIエージェント「YUI」との会話を通じて、シートのリラックス機能や音楽、車室内イルミネーションなどをオートで作動させることができる。

また、AR-HUDによるドライバーへの注意喚起や、YUIを起点に車両内外をシームレスに連続させる「INSIDE OUT」思想にもとづく意匠など、トヨタの技術を結集させた最先端の機能を有している。

デザインは、キャビンを前に出した未来的シルエットで、内装は、エアコンの吹き出し口を見えない場所に配置するインビジブルレジスタを採用することで、インパネ周辺の凹凸が少ないシンプルな造形とし、センターコンソールは、トポロジー最適化という設計手法と3Dプリンター工法の組み合わせによって、強度確保と意匠に分かれていた構造を一体化している。外装は、ドアの下部もガラス面とすることで、ドア部分と車内空間がシームレスにつながり、より洗練された造形を実現している。

全長4530×全幅1840×全高1480ミリの3ナンバーサイズで、ホイールベースは2700ミリ。乗車定員4人でパワートレインはEV仕様。航続距離は約300キロのようだ。

■AIエージェント「YUI」:人とクルマをつなぐAI 東京五輪期間に体験試乗会開催

YUIは、あらゆる情報やサービスがつながる将来、人とクルマ、そして社会を結びつけるAIエージェント。2017年に発表したコンセプトカー「TOYOTA Concept-愛i」において、すべての愛iシリーズにYUI(当時はYui)と名付けた共通のAIエージェントを搭載することで、乗り換えても瞬時にドライバーとの密な関係が継続される技術として紹介された。

このYUIとLQを掛け合わせた体験試乗会「トヨタYUIプロジェクトTOURS 2020」が2020年6~9月、東京都江東区のパレットタウン内にあるトヨタの展示ショールーム「MEGAWEB」やお台場・豊洲周辺の公道で開催される予定だ。

TOURS 2020では、YUIの開発思想である「LEARN、GROW、LOVE」のうち、「LOVE」を体感できる。2020年5月中旬からダウンロード可能となる「YUIアプリ」をパートナーにLQに乗車し、YUIとのコミュニケーションをはじめ自動運転レベル4相当の自動運転や無人自動バレーパーキングシステム、AR-HUD体験ドライブなど、未来の移動体験をすることができる。

TOURS 2020は東京2020オリンピック・パラリンピック開催期間と被るため、多くの来場を見込むとともに、トヨタの技術を世界へPRする格好の場となりそうだ。

また、YUIの開発とサービス向上に向け、株式会社JTB、AWA株式会社、株式会社NTTドコモの3社がそれぞれ協力しており、JTBは乗客の嗜好に適した施設案内情報やドライブルート、AWAはクルマの状況や乗客の嗜好に適したストリーミング音楽、NTTドコモは試乗拠点に次世代移動通信システム「5G」基地局を設置し、高速かつ安定した通信環境をそれぞれ提供する。

■無人自動バレーパーキングシステム: 高価なセンサーなしで駐車場内レベル4を実現

パナソニック株式会社オートモーティブ社とトヨタが共同開発した無人自動バレーパーキングシステムでは、車両や駐車場に専用の高価なセンサーを設置することなく、駐車場内における自動運転レベル4を実現した。

車両に搭載された複数のカメラやソナー、レーダーと、駐車枠や停止線といった簡単な2次元路面マップを用いて正確な自車位置を特定することで、隣接車両との間隔20センチといった極狭空間への駐車を可能にしている。

また、車載カメラと監視カメラがディープラーニングによる人検知を行い、駐車場内の歩行者を検知して安全に車両を停止する。

自動バレーパーキング機能を搭載した車両とインフラセンシングによる監視機能は、駐車場ごとに設けられた管制サーバーを介して繋がり、ドライバーはクルマから離れた場所でスマートフォンなどの操作端末を使用し、駐車場内での入出庫の指示を操作できる。

この技術により、駐車場での事故低減を安価に実現し、面倒な駐車作業からドライバーを解放するとともに、離れた駐車場の利用や狭い空間への駐車を可能とすることで、土地の有効活用を図ることもできる。

【参考】パナソニックの無人自動バレーパーキングシステムについては「無人駐車実現!パナソニック、自動バレーパーキングのシステム開発 自動運転レベル4」も参照。

■AR-HUD:風景とHUD情報を重ねて視界前方に投影

AR-HUD(Augmented Reality Head Up Display)は、運転席前方の空間に奥行き感のある大画面映像を重ねて表示し、車両から得られる情報をもとに、経路案内の表示や障害物を路面上に直接マーキングしたように見える注意喚起表示などを行うシステム。こちらもパナソニックとトヨタが共同開発した。

デジタルカメラや監視カメラ、プロジェクター、テレビなどのAV製品の開発で培ったパナソニックの光学技術を活用し、大画面ながら歪みの少ない高品位な表示を実現した。表示距離は7~41メートルで、約24メートルの距離で200インチ相当の大画面表示を実現している。

また、デジタルカメラなどに用いられている独自の手振れ補正技術を応用した振動補正技術により、車両の振動などによる現実空間と表示映像のズレも低減している。

映像は、ウィンドシールド越しに見える実際の風景と、HUDに表示する情報を重ね合わせて視界前方に投影することで、車線や標識などの注意喚起情報や経路案内などをより見やすく、わかりやすく表示することを可能にしている。

このシステムを導入することによって、運転中のドライバーの視点移動や焦点調整を減らすとともに、より直感的な情報の提示により安全運転を支援する。

出典:トヨタプレスリリース
■覚醒・リラックス誘導機能付きシート:眠気防止や自動運転時のリラックスをサポート

ドライバーの状態に合わせ、シートに内蔵した複数のエアブラダー(空気袋)や空調機能によって、覚醒やリラックスをサポートし、運転に適した状態を維持する世界初のシート。トヨタ紡織株式会社とトヨタが共同開発した。

ドライバーが眠気を感じている場合は、シートバック内のエアブラダーを膨らませることで背伸びのような姿勢をサポートするとともに、シート空調の冷風刺激によって、ドライバーの覚醒を促す。一方、自動運転モードなどドライバーがリラックスできるときは、シートバック内のエアブラダーを徐々にゆっくりと膨張・収縮させて腹式呼吸をサポートすることで、より深いリラックスを誘導する。

■さまざまな先進機能:新HMI機能やDMD式ヘッドライトなどを採用

LQは自動運転レベル4技術や無人自動バレーパーキングシステムなどの先進技術を搭載するほか、新しいHMI機能やトヨタ初となる有機ELメーター、大気浄化塗料などの技術も盛り込まれている。

これまで車両と乗員が情報をやり取りする接点ではなかった車両のルーフやフロアマットをHMI領域として活用し、ルーフやフロアマットの中にイルミネーション機能を搭載することで、自動運転モードと手動運転モードなどを乗員に直感的に伝えることができる。

有機ELメーターは、高い視認性を確保しながら、ディスプレイを大きく曲げることで先進的なインパネ造形を実現した。大気浄化塗料は、オゾンを酸素に分解する新開発の触媒塗料をラジエーターファンに塗布することで、車両走行時に光化学スモッグの原因となる地表付近のオゾンを分解するという。

また、ヘッドランプには、100万個の微小なミラーが内蔵されており、これを切り替えることによって複雑な図形や文字を路面に描画することができるDMD(Digital Micromirror Device)式ヘッドライトを採用しており、ドライバーに路面状況を知らせることや車内外のコミュニケーションを可能にしている。

出典:トヨタプレスリリース
■【まとめ】自家用車仕様の自動運転コンセプトカーLQ 東京モーターショーで要チェック!!

トヨタが2018年に発表したコンセプトカー「e-Palette(イー・パレット)」は移動や物流、物販など多目的に活用できる自動運転EVだったが、LQは個人向けの自家用車に適した仕様になっているようだ。

自動運転技術の導入によりクルマは所有から利用するものへと変化していく中、AIエージェント「YUI」によって一人ひとりのニーズに合わせた特別な移動体験を提供することで、新しい時代においてもクルマは「愛車」であり続ける――という思いが込められている。

東京モーターショーに足を運ぶ際は、出展各社の新型モデルのチェックにとどまらず、ぜひともこうした未来志向のコンセプトにもじっくりと触れてほしい。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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