自動運転タクシー、「2人乗り」が最適解か ポルシェ支援企業が展開へ

クロアチアのRimac、2026年からユーロ圏で



出典:Verne公式サイト

クロアチアで「2人乗り」の自動運転タクシーが2024年7月1日までに発表された。この車両を発表したのは、クロアチアのRimac Group(リマック・グループ)だ。

運転手が同乗する必要がない自動運転タクシーでは、2人乗りの車両で乗客がまるまる2人乗れる。従来のタクシーでも乗客は1〜2人程度のケースが多いことから、車両製造の費用対効果のことを考えると、自動運転タクシーは2人乗りが1つの最適解と考えられそうだ。


ちなみにRimac Groupはドイツの高級車メーカー・ポルシェが支援する注目のスタートアップだ。この自動運転タクシーは2026年にクロアチアで最初に導入され、イギリスやドイツにも展開を拡大する予定だ。

■クロアチア発自動運転タクシー

出典:Verne公式サイト

Rimac(リマック)が発表した自動運転タクシー「Verne(ヴェルヌ)」は、フランスの有名な冒険小説家Jules Verneにちなんで名付けられた。

このクルマには、ハンドルもペダルも備わっていない。シートベルトを締めた後にスタートボタンを押して発進し、ストップボタンで停車するという仕組みになっている。フロントにはテレビや映画を観るためのワイドスクリーンを備えており、リビングルームのようなインテリアとなっているのが特徴だ。スクリーンでは、ルートを表示したり移動中のエンターテインメントに使用したりといったこともできる。またスピーカーが17個設置されており、好きな音楽を流しての移動も可能だという。

米インテル傘下で自動運転技術の開発を行うイスラエル企業Mobileye(モービルアイ)の自動運転システムが搭載されている。ルーフに搭載された長距離LiDARや6台の短距離LiDAR、各種カメラなどにより自動運転を実現しているという。


2026年にクロアチアから展開をスタートし、その後イギリスとドイツにサービス範囲を拡大。すでに11都市と協定を結んでいるようだ。

▼Verne|Journey to the future of mobility
https://www.letsverne.com/media/verne-journey-to-the-future-of-mobility

■2人乗りの自動運転タクシーにした理由

リマックのチーフ・デザイン・オフィサーであるAdriano Mudri氏は、2人乗りの車両にした理由について、データによると90%が1人もしくは2人でクルマに乗っているからだと語っている。2シーターでほとんどの移動を満足させることができ、コンパクトサイズのクルマで他にはないような室内空間を生み出すことができると自信を見せている。

この自動運転タクシーは、アプリで呼び出す仕組みになっている。車内の温度や照明、音楽、香りの選択など機能は、迎車前にあらかじめ設定できる。広い室内空間と優れた機能性により、まさに「リビングルームのような」インテリアの車両になっていることをRimacはアピールしている。


なお同社は、この自動運転タクシーのプロジェクトを「Urban Autonomous Mobility Ecosystem(都市型自動運転モビリティエコシステム)」と呼んでいるようだ。

出典:Verne公式サイト

■ポルシェが支援するRimacとは

リマックは、CEO(最高経営責任者)のMate Rimac氏が2009年にクロアチアで創業したEVハイパーカーを開発・製造する企業だ。2021年11月にポルシェ、ブガッティ、リマックは合弁会社ブガッティ・リマックを設立し、Rimac氏がCEOに就いた。リマック・グループがブガッティ・リマックの株式を55%、ポルシェが45%を保有している。なおリマック・グループには、米ゴールドマン・サックスやソフトバンク・ビジョン・ファンドも出資している。

今回発表された自動運転タクシーは、リマック・グループが所有する別会社Rimac Technologyによるものだという。

現在36歳のRimac氏はこのクルマについて、2026年にクロアチアの首都ザグレブに登場すると、乗客は「安全で信頼できる運転手」と「最高のリムジンよりも快適な乗り心地」を手に入れることができると語っている。

■2026年の始動に期待

現在米国や中国では、自動運転タクシーがすでに商用化されている。しかしそのほとんどが既存の乗用車に自動運転システムを搭載し改造したものになる。自動運転タクシー専用として開発された2人乗り車両というのは、世界でも初めてのことになるという見方もある。

運転手が必要なくなる自動運転タクシーでは、乗客の席のみの設計で十分だ。このクルマがユーロ圏の人にどう受け入れられていくのか、2026年の始動に期待したい。

【参考】関連記事としては「ポルシェ、ついに「自動運転化」に興味?米Mobileyeと提携」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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